スーパーロボット大戦パーフェクト 完結篇
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第八十話 講和成立すれども
第八十話 講和成立すれども
ジュリアはだ。こう話すのだった。
「私の考えはです」
「はい」
「講和ですね」
「そうです」
その通りだとだ。ロンド=ベルの面々に答える。
「そしてこれまでのグラドスの方針は全て捨てます」
「そして融和路線ですか」
「全ての文化、文明に対して」
「グラドスは間違っていました」
ジュリアはこのことも言った。
「これまでの。抑圧政策や虐殺は誤りでした」
「それはいいんだけれどな」
ディアッカが出て来て言う。
「それは」
「それはといいますと」
「だからだよ。あんた達のしてきたことをな」
ディアッカはこのことをジュリアに言うのだった。
「認めてな」
「はい」
ジュリアの返答は清らかなものだった。
「グラドスは誤っていました」
「それを認めてか」
「グラドスはその行いを正さなければなりません」
そうだというのだった。
「それがこれからの私達の務めです」
「謝罪しろとか強要するつもりはない」
イザークもそれは否定する。
「だが。注意しておくことだ」
「それか」
ゲイルも彼が何を言いたいのかはわかっていた。
「そうして何かを強要する者がいてもだな」
「おかしくはない。人に謝罪を強要する者はだ」
イザークはその言葉を続けてきた。
「いるからな」
「そうですね。そしてそうした人は」
ニコルも言う。
「その魂胆によからぬものがあるものです」
「自分は絶対に謝罪などしない」
アスランも出て来た。
「何があろうともな」
「そうした奴には注意しろよ」
ディアッカはまた彼等に話した。
「それはな」
「わかっている」
ゲイルが答えた。
「それはだ」
「ならいいがな。じゃあな」
「話を続けるか」
「そうしてくれ」
ディアッカはここで一旦引っ込んだ。そしてだった。
そのうえでだった。ジュリアはまた話すのだった。
「貴方達はそれでなのですね」
「その通りだ」
ロジャーが答えた。
「君達との共闘を申し出たい」
「グラドスの市民達の為に」
「君達にとってはとても信じられないことだな」
「はい」
それは否定しないジュリアだった。
「やはり。とても」
「それはわかる。しかしだ」
「信じてよいというのですね」
「むしろ信じて欲しい」
これがロジャーの言葉だった。
「グラドスの市民達の為だ」
「一つ御聞きしたいのですが」
ジュリアはそのロジャーを見て問うのだった。
「私達がしたことを知っていて」
「そうして助けることか」
「それは何故ですか。その様なことを」
「我々が戦う理由はだ」
ダイテツだった。
「それは人々を護る為だ」
「だからですか」
「そうだ、だからだ」
それでだというのである。
「だから我々は戦うのだ」
「グラドスの為にも」
「これでわかってくれるか」
ダイテツはまたジュリアに問うた。
「我々が何故そうするのかを」
「はい」
ジュリアもダイテツの言葉にこくりと頷いた。
「私も。貴方達を見ていましたから」
「それでだな」
「そうです。ですから」
「行動は言葉よりも重い」
サンドマンだった。
「そういうことだな」
「それではだな」
ゲイルがまた言ってきた。
「これからはだ」
「はい、これからは」
エイジが応える。
「一緒に」
「グラドスの為に」
ゲイルとエイジが握手をしてだった。それで決まったのだった。ロンド=ベルとグラドス穏健派は共に戦うことになったのである。
だがここでだ。ゲイルが深刻な顔をして言ってきた。
「宇宙怪獣は退けたが」
「後はプロトデビルンですね」
「それとル=カインですね」
「プロトデビルンは」
ここで話したのはキャサリンだった。
「自分達から来るわね」
「そうか、それじゃあ」
「今はね」
「あの連中は待ってそれで迎撃する」
「そうしようか」
「それと」
プロトデビルンだけではない。もう一つの敵についても話される。
「ル=カインはそれで」
「どうしようか」
「あいつは今何処で何してるんだ?」
「それが問題なんだけれど」
「ゲートの近辺に基地を置いてそこにいる」
ゲイルが面々に説明する。
「グラドスの刻印の辺りにだ」
「ああ、あのゲート」
「あれってここにつながってたの」
「そうだったんだ」
「そうだ、そこに軍を置いている」
そうしているというのである。
「そしてそこからだ。グラドスを手中に収めた後で」
「また地球に来るつもりか」
「それを狙ってか」
「あそこから」
「懲りない奴だな」
「ル=カインは銀河を己のものにしようと考えている」
また話すゲイルだった。
「そしてその為には」
「地球の軍事力か」
「それを狙ってか」
「何か予想通り」
「絵に描いた様な野心家」
まさにそれだとだ。全員で忌々しげに言うのだった。
「じゃあそんな奴はもう」
「ゲートごとやっつけるか」
「そうしないとね」
「また地球に被害が出るし」
「それなら」
ル=カインに対する対処も決まったのだった。そうしてだ。
ロンド=ベルはグラドス軍と共に本星に集結してだ。プロトデビルン達が来るのを待っていた。その中においてであった。
彼等はだ。ここでだった。
ゲイルが率いるグラドス軍を見ながら話すのだった。
「なあ」
「それでだけれどな」
「だよな。確かにグラドス軍と講和したけれど」
「それでも」
問題があった。それについての話も為されていた。
「戦犯とかどうなるんだろうな」
「いや、グラドスのやったことって戦争犯罪じゃないからな」
「それとは別の犯罪行為だからな」
「虐殺とか文化破壊って」
「どうなるんだ?」
この問題について話されるのだった。
「戦争犯罪じゃないから」
「そっちは一般法での問題になるけれど」
「それに問われてる連中はどうなるんだ?」
「一体」
「そのことだが」
ゲイルがだ。このことについてもロンド=ベルに説明してきた。
「そうした者は殆どがル=カイン派に行ってしまった」
「裁判に問われて処刑されるよりはってことか」
「それでか」
「向こうに行った」
「そういうことなんだ」
「その通りだ。それでだ」
こう話すのであった。
「彼等の殆どはそちらに流れた」
「じゃあ残りは?」
「あっちに流れなかった人は?」
「どうなったのかしら」
「全員裁判にかけられ罪を償った」
ゲイルは簡潔に述べた。
「そうなった」
「じゃあそっちの問題は」
「ル=カインを叩き潰せばそれで終わり」
「簡単になったんだな」
「その通りだ。ル=カインもまた同じだ」
彼もだというのだ。
「犯罪行為に問われている」
「あいつはなあ」
「ゴステロも酷かったけれどな」
「あいつが指揮官だったし」
「率先してやってたし」
このことをだ。ロンド=ベルの誰もが覚えていた。
それでなのだった。彼等も言うのだった。
「じゃあ。そこに集まってるのなら」
「もうその時にね」
「まとめて成敗してやるか」
「その犯罪者共を」
最早だ。彼等の中でル=カイン派は戦士でも軍人でもなかった。忌むべき犯罪者、それ以外の何者でもなくなっていたのである。
そうしてだった。待っているうちにであった。
そのプロトデビルン達が来た。指揮官はやはり。
「ふふふ、ここに来ていたか」
「ああ、また美野郎か」
「やっぱり来たな」
「あのでかいのも」
「いつも一緒なんだな、本当に」
ロンド=ベルの面々の言葉はクールだった。
「で、ここに来たか」
「いよいよ本星を狙いに」
「その通り」
ガビルからも答えが返ってきた。
「ここで勝つにしろ負けるにしろだ」
「最後の戦いか」
「そういうことね」
「この方面の戦力はこれで終わりだ」
ガビルからの言葉だった、
「だからだ」
「それでか。ここでの決戦ってことか」
「それを挑みに来たのかよ」
「私達に」
「御前達がいるとは知らなかった」
これはガビルの計算外のことだった。
「だが。それでもだ」
「戦う」
「そう言うんだな」
「つまりは」
「如何にも。そして」
さらにだ。ガビルは言ってきた。
「決戦美、今ここに!」
「ガオオオオオオオオン!」
グラビルもであった。そうしてだった。
プロトデビルン達は向かって来た。ロンド=ベルもだった。
宇宙ステーションから出る。そして。
「全軍出撃だ!」
「戦闘用意!」
こうしてだった。彼等も出撃してだった。
戦いに入る。無論ゲイル達も一緒だ。
共同して敵にあたることはだ。ここでもだった。ゲイルが部下達に言う。
「いいか」
「はい」
「それではですね」
「我等も共に戦う」
彼は言った。
「命を賭けてだ」
「友軍の為に」
「今ここで」
「戦いたくない者は下がっていい」
ゲイルは強制はしなかった。
「しかしだ。その心があればだ」
「はい」
「その時は」
「私と共に戦おう」
「グラドスの為に」
「そして銀河の為に」
こうしてだった。グラドス軍もロンド=ベルと共に戦うのだった。
ロンド=ベルはそのグラドス軍と共にだ。本星の前で方陣を幾つか組んだ。
そのうえでだ。マリューが言った。
「さて、これからね」
「そうですね」
ノイマンが彼女に応える。
「こうして守りは固めましたが」
「相手はどう来るかね」
「はい、それです」
そのプロトデビルン達だというのだ。
「相手がどう出るかですね」
「今までの戦術ですと」
ミリアリアも戦術を理解しだしていた。
「プロトデビルンはすぐに突撃してきますが」
「だよな、プロトデビルンってな」
トールもそれを言う。
「何かあったらもうすぐにだからな」
「突撃してくるね」
「戦術ってあまりなかったよな」
これはサイもカズイも把握していることだった。
「だから今も」
「守っていていいですかね、このまま」
「そうだな」
ラーディッシュからヘンケンも言ってきた。
「ここはな。そう来るな」
「それではですね」
「ここはこのまま守りましょう」
アドレアとナタルがヘンケンのその考えに賛同して話す。
「要は本星に行かせなければいんですから」
「相手を退けさせることが」
「つまりだ」
結論を述べたのは大文字だった。
「我々は勝つ必要はない」
「勝つんじゃなくて負けない?」
「この戦いって要するに」
「そういう戦いなんだ」
「少なくとも今の戦いはそうだな」
アルフレッドも頷く。
「勝つ必要はない」
「守るだけでいい」
「そういうことなんだ」
「結局は」
他の面々も彼の言葉に頷いてだった。そうしてだった。
彼等は守りを固める。それに対してだ。
ガビルはだ。本星ではなく彼等に向かうことにしたのだった。
「グラビルよ」
「ガオオン」
「ここはまずは敵を倒そうぞ」
「ガアオオン?」
それは何故だというのだった。
「敵がいては中々エネルギーの吸収に専念できない」
まずはその理由からだった。
「そしてだ」
「ガオオオン」
そして、という意味での叫びだった。
「敵と戦う喜び、戦闘美」
また美であった。
「それを楽しもうぞ」
「ガオオオオオン!」
頷いてからの叫びだった。これで決まりだった。
二人が率いるプロトデビルン達はそのままロンド=ベルに突っ込む。こうして戦いになったのだった。
それを見てだ。エキセドルが言った。
「では皆さん」
「ここはですね」
「慌てることなくですね」
「その通りです」
美穂とサリーに対しても述べry。
「方陣を崩さずにです」
「敵の消耗を待つ」
「今は」
「そうしましょう。それでいいですね」
「何か面白くねえな」
エキセドルの言葉を聞いてだ。バサラは顔を顰めさせて言うのだった。
「そういうのってな」
「あんた別に戦わないじゃない」
「俺は戦いは嫌いだ」
ミレーヌに返す。とにかく言うことは一貫しているバサラだった。
「けれどな」
「けれどってそれで何なのよ」
「俺の歌はな」
その彼の歌だというのだ。
「聴かせてこそなんだよ」
「だから前に出るのね」
「俺の辞書にはな」
今度は辞書だった。
「そうした退くとか止まるって言葉はねえんだよ」
「最初からそんな言葉ないでしょ」
ミレーヌはここでは突っ込みに徹していた。
「あんたの場合は」
「おうよ、自然に身体が出るんだよ」
それこそがバサラだった。
「もうな、後ろに下がったことなんて一度もねえんだ」
「止まることは?」
「それもねえ」
やはりそうであった。
「だから今もな」
「まさかと思うけれど」
「俺の歌を聴けーーーーーーーーーーっ!!」
ここでもこう叫ぶバサラだった。そしてギターを手にして。
一機でプロトデビルン達に突っ込む。歌いながら。それを見てだった。
グラドス軍はだ。唖然となっていた。驚きを隠せない。
「な、何っ!?」
「一機でだと!?」
「しかも何の武器も持たずにか」
「歌で突っ込むだと」
「何なのだ、あいつは!?」
「わからん」
ゲイルもだった。見るのは今がはじめてでないがそれでもだった。
唖然としてだ。こう言うのだった。
「地球人の中にはああした行動を取る人間もいるのか」
「彼は特別よ」
エクセレンが驚く彼に話す。
「ああしたことって普通はしないから」
「そうなのか」
「し、しかしあれは」
「武器も持たないでだ」
「ああして敵の中に突っ込むとは」
「正気なのか、彼は」
「そうだ、正気だ」
今度はキョウスケだった。
「あれがあいつのやり方だ」
「信じられんな」
ゲイルはまた言った。
「地球人といえばだ」
「劣った文化しか持っていなくて好戦的」
「そういう認識だったんですよね」
「グラドスじゃ」
「その認識は誤りだとわかった」
このことも言うゲイルだった。
「だが。しかしだ」
「ああしたことはですね」
「なかったっていうんですね」
「やっぱり」
「グラドスでも」
「有り得ない」
また言うゲイルだった。
「戦いの場においては武器を持つものだからな」
「だからそれが常識なんですよ」
「地球でもね」
「普通はそうなんですよ」
「けれどバサラは」
彼はだというのだ。
「ああしてですね」
「戦いを終わらせる為に歌うんですよ」
「そうして一気になんです」
「動くんです」
「歌で戦いを終わらせる為に」
歌と聴いてだった。また驚くグラドスの面々だった。
「何という男だ」
「歌で戦いを終わらせるだと」
「無謀だ」
「無謀にも程がある」
「有り得ない」
グラドスの者達はこうまで言うのだった。
「そんなことできる筈がない」
「戦いは歌で終わりはしない」
「できる筈がない」
「そうだ、不可能だ」
「いや、できる」
しかしだ。アルトが彼等に話した。
「俺達は今までそれを見てきた」
「それをか」
「できると」
「歌で戦いを止めることが」
「できるのか」
「後でデータを渡す」
アルトはまた彼等に話した。
「リン=ミンメイ、それとシェリル=ノームとランカ=スター」
「その三人のことをか」
「我々に」
「それを渡すからな」
こう言うのだった。
「その時にある程度はわかる筈だ」
「それに」
輝はだ。今を話すのだった。
「今もだしね」
「今も!?」
「今もとは」
「まさか」
「ここでもだというのか」
「ああ、そうさ」
輝はまだ驚いているグラドスの面々にまた話す。
「ここでも見させてもらうよ」
「信じられないことばかりだ」
「何から何まで」
「それが地球人なのか」
「歌で戦いを終わらせるだと」
「その様な途方もないことをしたのか」
「馬鹿げている」
こうしてだった。バサラが突っ込みだ。プロトデビルン達の中で歌うのだった。
そしてマクロスクウォーターでもだ。
既にステージが用意されている。まだスポットライトがあたっていないそこで。
「ランカ」
「はい、シェリルさん」
二人は背中合わせに立っていた。
「あたし達の歌でね」
「ここでもですね」
「ええ、戦いを終わらせましょう」
「はい」
二人でだ。こう言い合うのだった。
「この戦いもまた」
「じゃあいいわね」
「はい!」
二人に七色の光が来た。そしてだった。
「聴いて皆!」
「あたし達の歌を!」
その光の中でだった。二人は歌うのだった。
その歌はだ。戦場に鳴り響いた。無論バサラの歌もだ。
その歌がだ。彼等も打った。
「な、何だと!?」
「この歌を聴くと」
「そ、そうだな」
「力がみなぎってくる」
「何処からか」
「何だ、この歌は」
まずはバサラの歌だった。それを聴いてだった。
「聴くとそれだけで身体が違う」
「戦えるぞ、何時までも」
「そんな気にさせてくれる」
「この歌は一体」
「何だというのだ」
「これは」
「それが俺の歌だ!」
バサラが驚くグラドス軍に話す。
「俺の歌はな!違うんだよ!」
「聴けばそれでというのか」
「力がみなぎってくる」
「そういう歌だと」
「そう言うのだな」
「ああ、そうだ!」
その通りだというのだった。
「そしてだ!」
「そして」
「何だというのだ、今度は」
「一体」
「今度は何だというのだ」
「俺だけじゃねえ!」
こう言うのだった。
「ランカとシェリルの歌もだ。聴け!」
「!?この歌もまた」
「かなりのものだな」
「凄まじいまでに気力があがる。それだけじゃない」
「体力も回復してくる」
「まさにそうしたものだな」
「不思議な歌だ」
グラドスの将兵達も驚きを隠せない。しかしだった。
実際に気力があがりだ。それが戦局にも影響を与えていた。
「動ける」
「しかも攻められる」
「ただ歌を聴いただけなのに」
「ここまでだというのか」
「地球の歌は」
「ああ、そうだ!」
バサラが答える。
「これが俺達の歌だ!」
「そして地球の文化か」
「何という力があるのだ」
「信じられん」
「ここまでとは」
彼等はその中で認識しだしていた。その地球の文化の凄さをだ。
そしてだった。彼等はだ。
「戦うぞ!」
「いいな!」
「グラドスを守る!」
「負けてたまるか!」
こう言い合いだ。戦う決意をさらに固めるのだった。
戦いはロンド=ベルだけでなくグラドス軍も極めて高い士気を保ちだった。そうしてプロトデビルン達を防いでいた。それを見てだった。
ガビルはだ。こう言うのだった。
「見事だ」
「こいつ本当にあっさり認めるよな」
「ああ」
「敵のことでもな」
「普通に」
「俺は敵であろうとも」
そのガビルの言葉だった。
「誰であろうと認めるのだ」
「まあそれはいいけれどな」
「いいことだけれどな」
「敵でも否定するってのはな」
「しかしな」
それでもだというのだった。彼等はだ。
「それでもな。違和感あるよな」
「こいつの言うことって癖あるからな」
「それもかなり強いし」
「何かっていうとあれだし」
「そう、誇りだ」
ロンド=ベルの面々をよそにだ。ガビルは言葉を続けていく。
「誇り、即ち」
「よし、出るな」
「今度もまたな」
「さて、今回は何よ」
「何美よ」
「尊厳美!」
これであった。
「かぐわしい。その美だ!」
「それ前に言わなかったか?」
「そんな気がするな」
ミシェルとクランが言う。
「まあ何でもかんでも二文字の後で美だからな」
「限られてくるな」
「それもまた美なのだ」
へこたれないガビルだった。
「それを様式美という」
「それはよく聞きますね」
今度はルカが突っ込みを入れる。無論戦いながらだ。
「その言葉は」
「定まっているものにも美はある」
そしてこうも言うガビルだった。
「美は全てにあるものなのだ」
「かなり独特の哲学だけれど」
「頷けるものはあるな」
「そうだよな、敵とはいえ」
「っていうと」
ここでだ。ロンド=ベルの面々も気付いたのだった。
「俺達もあいつと同じか?」
「個性が際立ってないだけで」
「それは」
「まあいいか」
「なあ」
そしてだった。彼等もそれを受け入れるのだった。
「とりあえずあいつは敵だけれどな」
「別に卑怯でも卑劣でもないしな」
「絶対に正面から来るし」
「だよな」
こう話してだった。戦いを続ける。敵の変態が来てもだ。
「よし、撃て!」
「ミサイル一斉発射!」
「美しく」
カットナル、ケルナグール、ブンドルが言ってであった。
三人の戦艦からミサイルを放つ、それで、であった。
敵をまとめて倒す。戦艦も前線で戦っている。
「ふむ、順調だな」
「うむ、上手くいっているな」
「いいことだ」
そしてこう話す三人だった。
「いい具合に進んでいる」
「敵の数を減らしていってな」
「守りはこれでいい」
だが、だった。ここでだった。
ケルナグールがこんなことを言い出したのだった。
「しかしなあ。わしはどうもだ」
「やはりか」
「守るのは嫌いなのだな」
「わしの性に合わぬ」
やはりであった。守るのはケルナグールにとってはそうなのだった。
「こう一気に攻めなければだ」
「わかっておる。しかしだ」
「今は仕方がない」
カットナルとブンドルが彼を止める。
「それは御主もだ」
「承知しているな」
「ううむ、それでもだ」
難しい顔をする彼だった。
「わしはどうもな」
「全く。たまにはいいではないか」
「守るのもな」
「そういうものか。前に出ぬのもか」
「そういう戦いもあるぞ」
「わかっていると思うのだがな」
「わかってはいる」
それは彼もわきまえている。だがそれでもだった。
腑に落ちないといった顔でだ。彼は諦めて言った。
「後で少し暴れるとするか」
「トレーニングでもしておけ」
「ケルーナでな」
「そうする。それではな」
こう話してであった。ケルナグールは今は我慢していた。
そしてであった。戦いが進むとだった。
損害はプロトデビルンにとって無視できなくなってきた。それでだ。
ガビルがグラビルに対して言ったのだった。
「グラビルよ」
「ガオオオオオン」
「これ以上の戦闘は無意味」
そして言う言葉は。
「撤退美を遂行する」
「ガオオオオン」
「また機会がある。その時にまた戦うとしよう」
こう言ってだった。彼等は撤退を決めたのだった。
決めると動きは速かった。すぐにであった。
プロトデビルン達は姿を消した。グラドス本星前での戦いは終わった。
それからだった。グラドスの兵士達はロンド=ベルの面々に対して言うのだった。
「それでなのだが」
「いいだろうか」
「彼の音楽を」
「あの二人の歌をだ」
「聴きたいのだが」
「是非」
こう言うのであった。
「頼む、頼めた義理ではないが」
「それでもだ」
「聴かせてくれるか」
「あの曲を今も」
「あの歌を」
「ああ、いいぜ」
バサラ本人が笑顔で答える。
「俺の歌は誰もが聴く歌だからな。いや」
「いや?」
「いやというと」
「誰であろうと聴かせる歌だ」
これこそが熱気バサラだった。
「この俺の歌はな。それだ!」
「聴かせてくれるか」
「それなら」
「頼む!是非だ」
「聴かせてくれ!」
「よし、聴け!」
バサラも彼等に応える。
「俺の歌を聴けーーーーーーーーっ!」
「おおっ、聴くぞ!」
「その歌を!」
「今から!」
最早グラドスも何も関係なかった。バサラの歌は彼等を変えた。
そしてだった。シェリルとランカの歌もだ。グラドスに知られるようになっていた。本星でもだ。
「一変しました」
ジュリアがこのことをエイジ達に話すのだった。
「誰もが。地球の文化をです」
「認めるようになったんだね」
「ええ。本当に一変したわ」
こうエイジにも話すジュリアだった。
「あれだけ頑なだったのに」
「本当にいいものは誰もがわかるものなんだ」
これがエイジの言葉だった。
「だから」
「それでなのね」
「それで姉さん」
今度はエイジからの言葉だった。
「僕達もね」
「貴方達も」
「うん。グラドスの文化を見せてもらいたいけれど」
それをだというのだった。
「それはどうかな」
「ええ、いいわ」
笑顔で応えるジュリアだった。
「是非ね」
「そうするべきだったのね」
こんなことも言うジュリアだった。
「グラドスは」
「相互理解はだ」
クワトロがそのジュリアに話す。
「銀河を平和にするのだ」
「この銀河を」
「グラドスもその中にいる資格がある」
クワトロはこうも話す。
「相手を認めるならば」
「そうすれば」
「それで」
他のグラドスの者達も話していく。
「我々もまた」
「相手を認めることか」
「俺達もだな」
今言ったのはデビットだった。
「これまでグラドスの奴等をぶっ殺すことだけしか考えてなかったけれどな」
「そうだね。それは違っていたんだ」
ロアンもわかったのだった。
「何にもならないんだ」
「グラドス人を銀河から消せばそれで終わるかも知れない」
「けれどそれは何の解決にもならない」
「銀河の本当の平和の為には」
「だからこそ」
お互いに言い合う。ロンド=ベルもグラドスも。
「お互いを知るか」
「そうよね」
「そうしよう」
彼等は真実を知ったのだった。こうして人類とグラドスは真の道を知りそうしてそれを歩むことになったのだった。全てはここからだった。
グラドスの本星に入ってだ。アムロが見たものは。
「成程な」
「何かあれだよな」
「そうだね」
アムロと共にいるカイとハヤトも話す。
「地球とは違うけれどな」
「根本は同じみたいだよな」
「そうだな」
アムロも二人のその言葉に頷く。
「グラドスも同じだな」
「てっきりどれだけ違うかって思ってたけれどな」
「案外似ている部分が多いかな」
「それは当然だな」
スレッガーもいた。
「考えてみればな」
「考えてみればですか」
「ああ、考えてみればいい」
スレッガーはこうセイラに話す。
「俺達とグラドス人の外見だがな」
「殆ど同じですね」
「そういうことさ。同じだろ」
また言うスレッガーだった。
「姿形が同じならな」
「文化文明も似たものになりますか」
「結局はそういうことさ」
スレッガーの言葉が続けられる。
「簡単に言えばな」
「それに」
今度はリュウが話す。
「文化や文明はだ」
「同じ物差しでは計れませんね」
「そういうことだな」
ハヤトに返すリュウだった。
「どれが優れているか劣っているかはな」
「ありませんか」
「そう思う、俺はな」
これがリュウの考えだった。
「グラドスも地球もない」
「そうなんですか」
「ですね」
アムロも頷く。
「地球もグラドスもありませんね」
「だよな。これまでかなり倒してきたけれどな」
カイも話す。
「それはそうだよな」
「グラドスも地球もない」
「じゃあそこにあるのは」
「思想の違い」
「それなんですね」
ロンド=ベルの面々はグラドス本星の中でそれをあらためて認識した。
そしてだった。さらにであった。
「そういえばジュリアさんって誰かに似てない?」
「ゲイルさんもだよな」
「ええと、あれは」
「確か」
そしてだった。この名前が出て来た。
「ミュージィ=ポー?」
「あのショット=ウェポンと一緒にいた」
「あの女に何か」
「似てるかな」
「それでゲイルさんは」
今度は彼だった。
「あの声、シュバルツさんだよな」
「そうそう、あの人」
「もうそっくり」
「よく聞いたら本当に」
皆そのことに気付いたのだった。
「そう考えてみれば」
「グラドス人も地球人とかと変わらないか」
「ただ。住んでいるところが違うだけ」
「それだけよね」
「やっぱり」
「声、ね」
今言ったのはマーベルだった。
「私も早瀬大尉と似たものを感じるからわかるわ」
「マーベルの場合はそっくりだしな」
ショウもそのマーベルに話す。
「俺も雅人やトロワとそうだけれどな」
「何ていうかこういう話したら」
「もう何が何だか」
「わかることはわかるけれど」
「カオスになるのよね」
「どうしても」
「私なんか」
ユンだった。
「すぐ包丁とか白馬の話になりますから」
「お腹切られて死んだ記憶あるとか?」
「首切られたっていうのも」
「どれも嫌な話ですね」
実際にその顔を曇らせているユンだった。
「どうしても」
「まああれだよ」
マサキがそのユンのフォローに入った。
「そっちの世界も色々あるからな」
「そういえばマサキそっちに縁あったっけ」
「何か仙人じゃなかった?」
「子供みたいな顔した」
「そうよね」
「何か」
「ああ、言われることあるぜ」
マサキも不承不承ながら頷くのだった。
「それはな」
「私もだ」
オオタコーチだった。
「あちらの世界は知っている」
「俺もだな」
凱もであった。
「そこでも王だったか」
「勇者王じゃなくて?」
「何王?」
「それじゃあそっちの世界じゃ」
「何になるんですか?」
「確か医者だったか」
凱はそれだと話すのだった。
「そっちでも光になれって言ってたな」
「確か」
突込みを入れたのはシーラだった。
「あちらの世界では凱さんは主人公だったのでは」
「ルートによってはそうだったな」
こう返す凱だった。
「俺もな。何かとな」
「色々あるってことか」
「だよな。ここにいる面々だってな」
「名前を変えてたりして」
「そうそう」
「そうね」
ドロシーもいた。
「私も言われるわ」
「私もデス」
スワンも何気に自白する。
「違う名前でというだけで」
「そちらの世界にもいると言われるわ」
「声だけでわかるって言われますよね」
ユンも困った顔でまた言う。
「私は河原じゃなくて柚木じゃないかって」
「いや、わかるよな」
「だよなあ。っていうか」
「何気にこういう話になったら」
「困る人いるけれど」
皆そういうことになると困っていくのだった。
そしてだった。さらに話すのだった。
「まあ言ってしまったらきりないけれど」
「そのままでも出てる場合あるし」
「ちょっとやばい作品でもね」
「だよなあ」
「男の人も女の人も」
「何かにつけて」
そしてだった。そんな話をしながらグラドスを見回っていくのだった。
その結果彼等は多くのことがわかった。そのことに満足してロンド=ベルの各艦に戻る。そこでまた話をしていくことになった。
「面白かったよな」
「何かと色々わかったし」
「だよなあ」
「勉強になったよ」
「そうだな」
ブライトも彼等の言葉に頷く。彼もグラドスを見てきたのだ。
「グラドス。我々と比して決して優れてはいない」
「ええ、確かに」
「それは間違いありませんね」
「それに」
「劣ってもいない」
ブライトは彼等に対してこうも話した。
「文化はそれぞれ違う。優劣はない」
「向こうも今それを勉強してるんですね」
「シティ7で」
「そこで」
「そうだ」
その通りだと返すブライトだった。
「今そうしているところだ」
「俺達と同じで」
「そうしていって」
「そういうことなんですね」
「相互理解を含めて」
「それからですか」
話が進んでいくのだった。
「本当の平和が実現するんですね」
「お互いを認めていって」
「そこからなんですか」
「認めることだな」
ブライトの言葉は哲学的な色彩も帯びてきていた。
「そういうことになる」
「ですね」
「じゃあ俺達ももっと」
「グラドスのことを学びますか」
「そうしていけばいいんですね」
「これからもだ」
ブライトの言葉が続く。
「グラドスのことを学んでいくとしよう」
「わかりました」
「それじゃあですね」
「作戦は」
「ゲートに向かう」
作戦はそうするというのだった。
「いいな」
「そしてそこにいるル=カイン立ちと決着を」
「それでグラドスでの戦いは終わりですね」
「それで」
「ゲートについてだが」
それについて話すのはヘンケンだった。
「破壊することになった」
「それでバルマーに利用されることを防ぐ」
「その為ですね」
「だからですね」
「その通りだ」
「わかりました」
こうしてであった。グラドスでの最後の作戦が決定したのだった。
そのうえでロンド=ベルはゲートに向けて出撃する。そこでだった。
「ル=カインか」
「それにグラドス強硬派」
「連中とも最後の戦いか」
「そうね」
一行はこのことにも感慨を感じていた。
「長い戦いだったけれどな」
「それもこれで終わりだよな」
「そうだよな、完全にな」
「次の戦いで」
「また一つの戦いが終わるんだ」
エイジもそれは同じだった。それを言うのだった。
「いよいよ」
「戦いが一つずつ終わってくな」
「そうだよな」
「銀河は平和になっていってるのかな」
「どうなのかしら」
「平和は手に入れるもの」
今言ったのはゲイルだった。
「そういうものだな」
「そうですね。確かに」
「俺達、随分長い間戦ってきましたけれど」
ロンド=ベルの面々も彼のその言葉に頷く。
「それでも。本当に」
「これで終わりですね」
「グラドスに平和が戻りますね」
「そうだ」
また言うゲイルだった。
「では行くとしよう。平和を手に入れる為に」
「はい」
「それじゃあ」
こうしてだった。彼等も最後の戦いに向かうのだった。このグラドスでの最後の戦いに。
第八十話 完
2010・12・7
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