ファイアーエムブレム~ユグドラル動乱時代に転生~
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導入
「魔王めけめけに続き大魔王スーパーでびろん、そして全ての元凶、邪神ワルーをも平らげてくれたこと、心より礼を申し上げるぞ勇者どの。ついては何なりと望みを言うとよい」
王冠をかぶりきらびやかな衣装を身にまとった恰幅の良い初老の男が俺に言葉をかけてくれた。
長い、実に長かった。
この世界に飛ばされて三年、ようやく隠しボスを倒し、ようやくこの世界とおさらばできるはず!
「このような無頼の流れ者に温かいお言葉をおかけいただき、陛下のご厚意心に沁みました。
お言葉に甘えること許されますならば、我が仲間にしかるべき地位をお与えくださいますればこれ以上の喜びはありませぬ」
国王の座る玉座手前のきざはしに片膝をつき頭を垂れて俺が答えると、
「ほう、おぬし自身は何も望まぬか? なんとも謙虚なことじゃ、よいじゃろう。 おぬしの仲間の者達には領地・恩給を与え、子々孫々まで篤く遇すること、この儂の名に懸けて誓おう、それとは別におぬし自身も何か望みあれば申してみよ、んん?」
国王はひと好きする笑みでそう応えてくれた。
たしかにもったいない申し出ではあったのだが、あの糞女神の言う通りこの世界を救ったので俺はもとの生活に戻れるはず。
そう、そして前回と同じ感覚が俺の体に満ちてくる……。
「迎えが来たようです。わたしはわたしを遣わした神の元へ戻らねばならないようです。みんなありがとう!……さらばだ!」
少し涙ぐんできた俺は、苦楽を共にした仲間達に振りかえり手を振ってそう告げながら光につつまれていった……。
気がつくとあたり一面が真っ白な世界のただなかに俺は立ちつくしていた。
「はーい御苦労さんwよくやったじゃないのー!」
なんて声とともに、にこやかな笑みを湛えた金髪美女が俺の目の前にあらわれた。
俺は言いたいことを、そしてぶつけたい怒りを耐えながらつとめて穏やかに口を開く
「……これでもとの生活に戻してくれますよね? ね?」
俺の言葉を耳にした美女は目を逸らし
「ふー、戻してあげると言ったけどそれが何年何月何曜、地球が何回まわったときとまでは言ってないですしーw
そう、1000年後……100億光年後に戻してあげるということも可能……ということ!」
どこからか取りだした名状し難い棒らしきもので喫煙者がタバコを吸うポーズをしてドヤ顔でのたまいやがった!
カミサマ、どこカに居るカミさマ、オレハ怒ッてイイデすヨネ?
「ふざけんなこのヤロー、はやく戻せこの糞女神! いますg、ぐほっ」
何の予備動作もなく恐ろしく重いボディブローが俺の鳩尾に入り息が詰まる。
涙目になりながらも俺は全身全霊をかけた正義の拳を余裕ぶっこいてる糞女神に叩きつけた。
「ちょっwニンゲンのクセにこのわたしちゃんに何てことをー!」
漫画のようなでかいタンコブを頭に作った糞女神は目のふちに涙をためるとぶんぶんと両手を振りまわして殴りかかってきた……。
……それからどれくらいの刻が流れたことだろう。
疲れ、傷だらけの俺と糞女神は真っ白な世界で大の字になりながらお互い荒い息をついていた。
「ちょ、ちょっと、あんた、ハァ、変態みたいにハァハァ言わせて、ハァ、変態じゃないの?ハァ、この、変態wハァ」
そんなふうに毒づく糞女神を俺は無視していた。
しばらくしてお互い息が整うと糞女神は
「はい、回復ビームwびびびw」
ふざけてはいるものの効果音つきで傷を治してくれた。
魔法にかかりにくい体質の俺はなかなか傷が治らず、彼女は何度も何度も回復魔法をかけてくれた。
糞女神から駄女神に格上げしてやるか……。
「傷を治してくれたことだけは礼を言う。 ありがと」
だが俺はプイと顔をそむけた。
そうしてしばらく俺たちは黙りこくっていた。
膝を抱え体育座りのような姿勢をとった駄女神は腿の辺りに顔を埋めて目線をこちらに向けると口を開いた。
「ねぇ、戻ったところでなんにもイイコトないかもよ? リストラされたりされなくても上司にパワハラされたり同僚に陥れられたり後輩にこそこそ悪口言われてたりするかもよ? ビョーキになったり事故に遭ったり何もかもうまく行かなくてニートったりホムレするかも知れないんだよ?」
ここに来る前の俺はコイツの言うことに何も言い返せ無いくらい何もかもうまく行かなくて、縮こまって、言うならば【生かされて】いた時間がとても長かった。
それでも気にかけてくれる人が少しだけ居てくれて、頑張ってみようと思って頑張ってみて、やっと結果が出そうになった、そんな時にここに呼ばれたのだった。
「それでも戻りたい」
俺は応えながら膝を抱えて座った。
「はーい、ごーかーくwおめでとうwww」
ぱんぱんぱーん、と、どこからか出したクラッカーを打ち鳴らして騒ぎだす駄女神の姿に俺は目眩がしてきた……。
「いやーーもし今、そうだねプロテインだねって応えてたらゲームオーバーでしたよw碓氷悠稀くんw
キミにはすーぱー強い意思のチカラを感じるのよ、うんうん。」
つかつかと俺のところへ歩いてきた駄女神はガッシと俺の両肩を掴んだ。
すると体の力が抜けていく感覚に襲われる……。
「いい? こうやってわたしちゃんはパワーを吸収するので、それが充分貯まったら元の世界に戻れる魔法をかけてあげるってすんぽーよ!」
「でも、個体差あるとはいえキミたち21世紀の先進国人は魔法が効きにくいのよねぇ、だからいっぱいパワーを貯めなきゃならないのよん(本当は……ニヤソ)」
どんどん力が抜けて行き、俺は意識を失った。
目が覚めると駄女神の膝の上に俺は頭を載せているのに気がついた。
「そのままで……」
なんて言う言葉と共に俺の額に手のひらを載せると駄女神は目を瞑った。
見た目はほんと綺麗だよな……そんなことを思っていると、
「このわたしちゃんの膝枕ですからねー100億万円はいただきますよーw」
全力で跳ね起きようとしたのだが、全く体がうごかないー
「というのは37%くらいの冗談として、次の行き先が決まったので質問とかあったらどぞん」
それならばということで
「チート能力みたいなのはもらえるの? あと、行き先はどんな世界?」
その途端、駄女神は一瞬にして三人に分身した。それぞれ微妙に髪型と髪の色が違うとかどうなってんじゃこりゃ
「キモーイw」
「チート能力が許されるのは小学生までよねーw」
「チョーウケルw」
ムカつくことを言いながらキャハキャハと笑いをかますとまた一瞬にして1人に戻った。
「まともな頭の使い手ならさっきのわたしちゃんの説明で察しがつくと思うんだけどw」
そんな前置きをすると澄ました顔で
「わたしちゃんから力とかぱぅあもらってたら納品パワーの収支がマイナスになるかもよ?」
ふぅむ、その理論はわからんでもない。
だが……待てよ、根本的な間違いがないか? などと思った俺はさらに質問した。
「俺をもとに戻すのになんか知らんがパワーって言うのが必要なら、今から飛ばす別の場所にもそれが必要なんじゃないか? オマエめっちゃ俺を騙してない?」
顔色が急に悪くなった駄女神はこう答えた。
「そ、それは、ほら、あの、そうよ! 東京から横浜行くのと、ニューヨーク行くのとじゃ着くまでの時間もお金も全然違うじゃない? そういうもんよ! ハイハイいってらっしゃーいwよい旅を^^」
「ま、まてーー行き先は……」
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