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スーパーロボット大戦パーフェクト 完結篇

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第六十六話 確信になる疑惑

                 第六十六話 確信になる疑惑
 ふとだ。ニコルが言った。
「あの」
「はい、何かあったんですか?」
 その彼にカトルが言葉を返す。
「だとすれば一体」
「カトル君がさっき弾いていた曲ですが」
 カトルはピアノの前に座っている。その彼に声をかけたのである。
「あれは確か」
「はい、ワーグナーです」
「そうですよね、ローエングリンですよね」
「結婚の曲です」
 ローエングリン第三幕のはじめの曲である。あまりにも有名な結婚の曲だ。
「それです」
「いいですね、あの曲は」
「そうですよね。アークエンジェルの武器の名前にもなってますしね」
「ははは、そうですね」
 ニコルはカトルの今の言葉に笑った。
「そういえば」
「ええ。本当に」
「そのアークエンジェルをかつては沈めようとしていたんですね」
 ニコルは今度は己の過去を思い出した。
「それが今では」
「そのアークエンジェルに乗ることもあったりして」
「そうですよね。不思議ですよね」
「本当に」
「普段はここにいても」
 彼等が今いるのはシティ7である。ロンド=ベルの面々も普段はここにいることも多いのである。
「アークエンジェルに入ったりしますからね」
「本当に人間の運命ってわかりませんよね」
「そうだよね」
 シンジもにこりとしてやって来た。
「僕だってね。何時の間にかここにいて」
「そうですよね。シンジ君も」
「最初僕達は敵同士だったしね」
「そうだったよね」
 シンジはカトルのその言葉にも応えた。
「色々あったよね、これまで」
「そうだよね。その間に」
「その間に?」
「カトル君に他に何かあったかな」
「マグアナック隊の人達も来てくれて」
 彼が言うのはその面々のことだった。
「皆で楽しくやるようになったりね」
「ああ、あの人達ですか」
「そういえばサンドロックカスタムになってから来てくれるようになったんだよね」
「昔からあの人達には助けてもらっていて」
 カトルは優しい笑顔になって話す。
「そうして今も」
「あれかなり羨ましいんだけれど」 
 アスカも来た。
「全く。どうしてあんたとマイクだけ」
「まあそれは何ていうか」
「けれどいいわ」
 アスカは珍しく優しい笑みになっていた。
「あんたならね」
「僕なら?」
「そうよ、あんたならね」 
 いいというのである。
「マイクもね。いいわよ」
「何でいいの?」
 シンジがそのアスカに問うた。
「カトル君とマイクは」
「キャラクターよ」
「キャラクター?」
「そうよ。これがあんたとかシンだったら許せないのよ」
「僕だったら」
「あんたは誰かに頼ったら駄目よ」
 シンジにはきっぱりと言い切るアスカだった。
「そこからまたなよなよになるんだから」
「なよなよって」
「だから駄目。あんたは一人でやるって決めないと駄目になるからね」
「それでなんだ」
「そういうことよ。それでね」
「うん」
「シンは問題外よ」
 シンにはより厳しかった。
「あいつはね。もう一人で暴れるし」
「暴れる。そうですね」
 ニコルはアスカの今の言葉に思わず笑ってしまった。それから言うのだった。
「シンの戦い方は本当に凄いですからね」
「最近じゃ遠くからもだけれど」
 インパルスデスティニーのその武器故である。
「基本は敵に殴り込んでもうあの手からビーム放ったりでしょ」
「確かにそうですね」
 ニコルも言う。
「僕今デスティニーに乗っていますがあれはそういう戦い方ですし」
「そんなので何人もなんていらないでしょ」
「一機でかなりの戦力ですしね」
「だからいいのよ。それでも」
「それでも?」
 シンジがアスカの今の言葉に問うた。
「何かあるの?」
「あいつはまあそう簡単に死なないし」
 アスカが今言うのはこのことだった。
「それでもいいのよ」
「簡単に死なないから?」
「そう、死んだら何にもならないじゃない」
「確かにそうだよね」
 カトルもアスカのその言葉に頷いた。
「死んでどうにかなるものじゃないから」
「だからあいつも死んだら駄目よ」
 アスカは真面目な顔になっている。そのうえでの言葉だった。
「それに」
「それに?」
「それにって?」
「ほら、ステラ助けた時よ」
 この時のことも話すアスカだった。
「あの時は本気で死ぬなって思ったわよ」
「あの時のシンは凄かったですね」
「そうだね」
 ニコルとカトルもあの時のことを思い出しながら話す。
「普段から熱くなりやすいシンですけれど」
「あそこまでは」
「キラも凄くいいアシストしたしね」
 シンジは彼のことも話した。
「そのおかげでね」
「あの時。よくステラを助けたわよ」
 アスカは明らかに感心していた。
「っていうか助けられなかった時は」
「その時は?」
「何かするつもりだったの?」
「あの馬鹿ぶっ殺すつもりだったわよ」
 本気の言葉だった。
「もう絶対にね」
「絶対になんだ」
「あそこまでいって助けられなかったってないでしょ」
 アスカはその本気の言葉でさらに言う。
「そうでしょ?やっぱり囚われのお姫様を助け出してこそよ」
「若しかしてさ」
 シンジはアスカの今の言葉を聞いて言った。
「アスカってさ」
「何よ」
「シンのこと結構好き?」
 少し戸惑いながら彼女に問うた。
「そんなこと言うなんて」
「ば、馬鹿言わないでよ」
 アスカのその顔が崩れた。
「そんなこと。あんな奴はね」
「あと甲児さんやケーンさんは?」
「どいつもこいつも大嫌いよ」
「エイジ君も?」
「勿論よ」
「けれどタケルさんは?」
「あの人は別よ」
 彼のことを話すことについては素直だった。
「あと一矢さんもね」
「やっぱり。一途だから?」
「一途過ぎるじゃない」
 それが心配とまでいった顔になっての言葉だった。
「あんまりにも」
「一途過ぎるんだ」
「あんなにマーグさんやエリカさんのことを想って」
「確かに。あれは」
「素晴しいですね」
 ニコルとマーグも同意だった。
「僕は一矢さんのことは実際に見ていません」
「けれど話には聞いてますね」
「はい、一矢さんの高潔さがわかりました」
 こう言うニコルだった。
「本当に」
「だからよ。あそこまで想われてる相手も幸せよ」
「マーグさんにエリカさんだね」
「そうよ。しかもあそこまで素晴しい人達によ」
 アスカはあくまで言う。
「そんなに想われて。あれでハッピーエンドに終わらないなんてね」
「その選択肢はないんだね」
「なるべくしてなったのよ」
 これがアスカの主張だった。
「ああいうふうにね」
「タケルさん、そして一矢さんだからこそ」
「そういうことよ。それにね」
「うん」
「何ていうかね。ああしたことってね」
「ああしたことって?」
「自分もって思わない?」
 アスカの顔が赤くなっていた。
「自分も。ああいうハッピーエンドになれたらって」
「そうですよね。僕もそう思います」
「ニコル、あんたもなの?」
「人として当然だと思いますよ」
 そこまでだというのだ。
「やっぱり」
「そうなのね」
「アスカさんも。ですから」
「あたしも?」
「そうした風に想える相手か、想ってくれる相手ができれば」
「あたしは無理よ」
 アスカのその顔が苦笑いになった。そうしてだった。
「どうしてかっていうとね」
「どうしてかっていいますと?」
「あの人達みたいに立派じゃないわよ」
 だからだというのである。
「それでどうして。あんな風に」
「そう言われるんですか」
「シンだってよ」
 ついつい彼のことも言ってしまった。
「ステラに言った言葉だけれど」
「あれだよね」
 カトルがそのことに応えた。
「君は死なない、って」
「ええ、あの言葉よ」
「君は俺が護るからって言ったあの時ですね」
「あんな言葉普通は言えないわよ」
 アスカはこのことをだ。痛い程わかっていた。だからこそ今言うのだった。
「あそこまでの言葉。咄嗟にね」
「咄嗟に、ですよね本当に」
「シン君だったら」
「そこまでステラを想ってるってことよ」
 アスカは何故かここでは顔が曇っていた。
「あんなに一途に純粋にね」
「じゃああの時のシンも」
「絶対にああなるものだったのよ」
 こうシンジに言った。
「ハッピーエンドにね」
「そうなるべきだったんだね」
「そういうことよ。それでね」
「うん」
「ダバさんもよ」
 アスカは彼もだというのだ。
「あの人だって苦労したじゃない」
「クワサンさんのことで」
「そうよ、苦労の先には幸せがあるのよ」
 アスカは明らかに力説していた。
「だからね。絶対にね」
「アスカさんって」
「そうだよね」
 ニコルとカトルはそんな彼女の話を聞きながらにこりと笑って述べた
「本当に」
「優しいですよね」
「な、何馬鹿言ってるのよ」
 アスカの二人に対する反応は予定調和だった。
「あたしはね、そんなことはね」
「ないっていうの?」
「そうよ。ダバさんはね」
 そのダバのことを話に出して言い繕う。
「やっぱり。素晴しい人だから」
「幸せになって当然っていうんだね」
「そうよ。このペンタゴナだって」
 アスカはペンタゴナの話もした。
「そうなるべきなのよ」
「ええ、確かに」
「その通りだね」
 ニコルとカトルは強い顔でアスカの今の言葉に対して頷いた。
「ポセイダルの圧政を終わらせて」
「そのうえで」
「やってやるわよ」
 アスカの右手が拳になった。
「この戦いもね。派手に暴れるわよ」
「アスカも闘争心がどんどん高くなってるね」
 シンジはアスカにこのことを突っ込んだ。
「最後はどうなるのかな」
「どうにもならないわよ」
「ならないの?」
「別にガンダムファイターになるんじゃないし」
「そうなんだ」
「あたしはあんな変態にはならないから」
 ここでは露骨なまでに嫌悪感を見せる。
「それはね」
「変態ってやっぱりマスターアジアさん?」
「最近出てないけれどね」
 見てないという意味である。
「それでも何時出て来てもおかしくないし」
「例えばペンタゴナでの戦いとかに?」
「出る危険あるし」 
 アスカはこのことを真剣に危惧していた。
「もういきなりだからね。あの人は」
「そんなに警戒することないじゃない」
「するわよ」
 まだ言う彼女だった。
「もう一人いるし」
「シュバルツさんだね」
「何であんなことができるのよ」
 そのシュバルツについても言うのだった。
「忍者だなんて」
「忍者は普通にいるじゃない」
 シンジは平然と話した。
「神代さんだってそうだし」
「あの娘は普通じゃない」
「普通に忍者ってこと?」
「そうよ、めぐみさんもね」
 彼女の名前も出す。
「普通に忍者じゃない」
「じゃあシュバルツさんは?」
「あれは妖術っていうの」
 そこまでだというのである。
「あんな変態そのもの技。妖術じゃない」
「そうかな。格好いいけれど」
「あんた、本当にセンス最低ね」
「そうかな。綾波だっていいって言うし」
「あの娘もおかしいのよ。あんな変態爺さんが素敵だなんて
「僕も格好いいと思うけれど」
「全然格好よくないわよ」
 あくまでこう主張するアスカだった。
「っていうかあの変態爺さん、いい加減何とかならないかしら」
「多分無理だと思うよ」
 こんな話をする彼等だった。そうしてだ。
 ロンド=ベルは前方にあった宇宙ステーションに攻撃を仕掛けた。そこには帝国軍の戦力が駐留し展開しようとしていたのである。
「都合がいいな」
「そうだね」
 ダバはギャブレーのその言葉に頷いた。
「本当にね」
「ではあの基地に攻撃を仕掛けるのだな」
「うむ、そうだ」
 ダイテツがギャブレーに対して答える。
「そのうえで様子を見るとしよう」
「果たして十三人衆が本当にやって来るか」
「やって来て俺達と戦うのか」
「それを見極める為にも」
「その展開によって今後の動きが決まる」
 ダイテツのその目が光った。
「我々のその動きがだ」
「そうですね。ポセイダル軍が一つになって我々に来るか」
 テツヤもここで言った。
「それとも分裂しているかで」
「一丸となって来たら手強いですね」
 エイタもその場合については考えていた。
「けれど分裂していたら」
「それだけ楽だ」
 こう言うテツヤだった。
「敵がいがみ合ってくれればな」
「その場合だが」
 ダイテツはここで言うのだった。
「我々は反乱軍を狙わない」
「まずはですか」
「彼等はですね」
「そうだ、まずは放置する」
 そうするとだ。ダイテツはテツヤとエイタに話した。
「そのうえで正規軍と戦う」
「まずは奴等の戦力を弱める」
「そういうことね」
 ラウルとフィオナも察しをつける。
「連中が弱まれば反乱軍が動くからな」
「正規軍を倒しにね」
「今バルマー帝国自体が力を弱めています」 
 フェアリがこのことを指摘した。
「それが彼等の問題です」
「既に二つの方面軍が崩壊か」
 男秋水が言った。
「やっぱりでかいよな、これって」
「そうよね。五つのうちの二つだからね」
 女秋水も話す。
「これってやっぱり」
「我々の予想以上に大きいと思います」
 フェアリはまた言った。
「だからこそ反乱も起こるのでしょう」
「バルマーも磐石じゃない?」
 今言ったのはトウマだった。
「本当に」
「磐石ではないことは間違いないな」
 それはカイも言った。
「実際に反乱も見られる」
「ユーゼスか」
 クォヴレーの顔が曇った。
「あの男か」
「過去にそうしたこともあった。だからこそね」
「そうだよな」
 皆ここで話す。そうしてだった。
「それじゃあここは」
「あの基地を一気に」
「攻めてそうして」
「様子を見るか」
「そうしましょう」
 それぞれこう話してだった。そのうえで戦いに赴くのだった。
 ステーションに向かうとだ。すぐにヘルモーズが一隻に多くの軍勢が出て来た。
「司令、ここは」
「どうされますか?」
「既に援軍は要請しているな」
 司令官はペルガモだった。その彼が部下達に問うた。
「そうだな」
「はい、それは既に」
「要請しています」
 部下達もすぐに話してきた。
「ギワザ閣下に既に」
「ですからここは」
「わかった。それではだ」
 ペルガモはそれを聞いて頷いた。それからだった。
「戦闘用意だ。その援軍と共にだ」
「ロンド=ベルを討つ」
「ここで遂に」
「そうする。奴等を倒すのは余だ」
 ペルガモはこうも言った。
「よいな、それで」
「はい、では」
「我等もまた」
「総員出撃!」
 ペルガモが指示を出してであった。
 バルマー軍はすぐに展開する。そうしてロンド=ベルとの戦いに入る。
 その時にだ。ペルガモはしきりに周囲を見る。ヘルモーズの中からだ。
 まずはだ。三分経った。
「まだか」
「はい、まだです」
「来られません」
「そろそろだと思うが」 
 神経質そうな表情での言葉だった。
「そうですね、時間的には」
「もうすぐだと思いますが」
「待つか」 
 ここでは落ち着いていた。
「そうするとしよう」
「はい。ロンド=ベルの攻撃は激しいですが」
「まだもちます」 
 それにより既に軍の二割が倒されていた。
「それでもですね」
「まだ」
「そうだ、待つ」
 また言うペルガモだった。
「そうするぞ」
「待ってそのうえで」
「援軍と共に」
「疲れ切った奴等を討つ」
 これがペルガモの作戦だった。そうしてだ。
 己の軍にだ。こうも言った。
「陣を整える」
「守りの陣ですか」
「ここは」
「その通りだ。守るぞ」
 こう言ってなのだった。彼等は守り続けた。
 それからまた三分経った。しかしであった。
 ギワザの軍はまだ来ない。その間にもだ。
「行けっ!」
「ファンネル達!」
 ギュネイとクェスが同時にファンネルを放ってそれで敵を一掃していく。ファンネルは乱れ飛びそのうえで敵を屠っていくのだった。
 それを見てだ。ペルガモは遂に焦りを覚えていた。
「まだか」
「は、はい」
「まだです」
「一機も見えません」
「何故だ」
 その眉が歪みだしていた。
「何故まだ来ない」
「何かあったのでしょうか」
「これは」
「わからん。しかしだ」
「はい」
「しかし?」
「この戦いはまずい」
 戦局を見ての言葉だった。
「最早一個艦隊ではロンド=ベルの相手はだ」
「できませんか」
「それは」
「できないな」
 ペルガモは断言した。
「これまで七個艦隊を一度に相手にしても勝ってきているな」
「はい、確かに」
「既に方面軍を二つ倒しています」
「だからか」
 ペルガモはそれでも冷静なままだった。そのうえでの言葉だった。
「これだけの強さは」
「勝利により経験を積んでいる」
「そうだというのですね」
「その通りだ」
 こう言うペルガモだった。
「今のあの者達の戦いが何よりの証拠だ」
「閣下、既にです」
「艦隊の損害が尋常ではありません」
「どれだけだ」
 その損害の割合を問うた。
「どれだけやられた」
「六割です」
「間も無く七割に達します」
「そうか、わかった」
 ここまで聞いてだった。すぐにだった。
 ペルガモはだ。残った者達に言うのだった。
「撤退する」
「ここはですか」
「その様に」
「ポセイダル様の下に戻るぞ」
 こう部下達に言うのだった。
「いいな、それで」
「わかりました、それでは」
「無念ですが」
「致し方ない。しかし」
 だが、だった。ここでペルガモはこうも言うのだった。
「十三人衆だが」
「確かに」
「あの者達は一体」
「どうしたのでしょうか」
「敵か」
 ペルガモは最初にこう考えた。
「それでか」
「敵ですか」
「というと宇宙怪獣」
「それともプロトデビルンか」
「それと戦ってですね」
「そうだ。そして若しくは」
 さらに言うペルガモだった。
「反乱か」
「反乱ですか」
「それを考えているというのですか」
「あの者達は」
「有り得る」
 ペルガモのその顔がきぐするものになっていた。そのうえでの言葉だった。
「それもまた、だ」
「確かに。ユーゼス=ゴッツォの例もありますし」
「それは」
「その通りだな。特にギワザだが」
 やはり最初に言われるのは彼だった。
「あの男は特にだ」
「信じられませんか」
「やはり」
「そうだ。何かあればだ」
「はい、何かあれば」
「その時は」
「討つ」
 ペルガモは言った。
「余のこの手でだ」
「しかし今は」
「仕方ありませんな」
「撤退する」
 また言うのだった。
「よいな」
「では宇宙ステーションは放棄し」
「そのうえで」
 こうしてだった。ペルガモが率いる軍は撤退したのだった。そうしてだった。 
 ロンド=ベルはその宇宙ステーションに入った。そこに入るとすぐにそのステーションの中を調べる。そうしてそのうえでだった。
 刹那が言った。
「足掛かりには少し物足りないな」
「確かにね」
 ティエリアが彼の言葉に頷いた。
「この基地の規模はね」
「そうだ。少し物足りない」
 刹那はまたこう言った。
「バルマー軍と戦うにはだ」
「惑星を一つ解放できたらいいけれど」
 アレルヤはこう言った。
「それはどうかな」
「おい、ダバ」
 ロックオンがダバに声をかけた。
「そうした星はあるか?」
「俺達に協力してくれそうな惑星か」
「ああ、そういう星はあるか?」
 こう彼に問うのだった。
「ペンタゴナに」
「ないと言えば嘘になるね」
 こう答えたダバだった。
「それはね」
「っていうとどの星だ?」
「ヤーマンだ」
 そこだというのである。
「惑星ヤーマンは反ポセイダル勢力が多い。あそこを解放できれば」
「我々にとって大きな力になるな」
 レッシィも言った。
「間違いなくな」
「そうよね。私達前はヤーマンにいたしね」
「何か大昔に感じるけれどな」
 アムとキャオの言葉だ。
「あの時も色々あったわよね」
「そうだよな」
「あそこが一番いいだろうな」
 ギャブレーも賛成の言葉を述べてきた。
「それではだ。ヤーマンに向かうとしよう」
「わかったわ。それじゃあダバ君」
 スメラギがダバに対して言ってきた。
「ここはね」
「ここは?」
「ヤーマンへの道を案内して欲しいけれど」
 これがスメラギの彼への言葉だった。
「御願いできるかしら」
「はい」
 ダバはすぐに答えてきた。
「わかりました。それならすぐに」
「御願いね」
 こうしてロンド=ベルはダバの道案内の下ヤーマンに向かうことになった。その途中だった。刹那がふとこんなことを言うのだった。
「ダバにとってはだ」
「俺にとっては?」
「故郷だったな」
「ああ、そうさ」
 彼のその言葉に応えるダバだった。
「それはその通りさ」
「そうだったな」
「そうした意味では懐かしいかな」
 ダバはこんなことも言った。
「故郷に帰れてね」
「そうか」
「けれど」
 しかしだった。ダバはここでこう言うのだった。
「今は懐かしさよりも」
「ポセイダルを倒すことか」
「そうさ。俺達はペンタゴナじゃずっと戦ってきたんだ」
「その様だな」
 グラハムが出て来て言う。
「君達の戦いもかなり激しかったようだが」
「多くの仲間が死にました」
 ダバはグラハムにも答えた。
「そして。地球に流れる形で来て」
「そうだったのか」
 これは本質的に別の世界の住人であるグラハムは知らないことだった。話には聞いているがそれでもだった。
「君達も苦労したのだな」
「いえ、それは別に」
 ダバはこうグラハムに返した。
「ありませんでした」
「普通だったのか」
「普通じゃないですけれど今こうしてここにいますから」
 それでだというのである。
「僕は別に苦労は」
「そう言うのはですね」
 留美がそのダバに言ってきた。
「戦いに勝って言うべきですね」
「戦いに勝って」
「まずは勝ちましょう」
 士気を鼓舞する為の言葉だった。
「ポセイダルに」
「そうですね。それじゃあ」
「それに一つ確実なことがわかった」
 ここで言ったのはセルゲイだった。
「十三人衆だったな」
「はい」
「あの者達は間違いなく反乱を考えている」
 これまで疑念だったことを話すのであった。
「その証拠に先の戦いでは姿を現さなかった」
「それでなんですね」
「そうだ、間違いなく反乱を考えている」
 セルゲイはまたこう言った。
「これがどう影響するかだ」
「さしあたってはあれだよな」
 パトリックが話す。
「敵が減ってくれてるな」
「それは確かに」
「ありがたいことに」
 ハワードとダリルがパトリックの言葉に頷いた。
「彼等の軍が来ていればです」
「どちらの戦いもより激しくなっていたことは間違いありません」
「ヘビーメタルはあれだったな」
 ジョシュアも話す。
「ビームコートがしてあるんだったな」
「ああ、そうだぜ」
 キャオがジョシュアの言葉に答えた。
「だから結構厄介だぜ」
「それはダバ達のマシンを見ればわかるけれど」
 ソーマが言った。
「実際に戦うとなると」
「厄介な話になるな」
 アンドレイは難しい顔になっていた。
「敵にするとなると」
「実弾兵器があるにはある」
 ビリーは皆にこのことを話した。
「けれどそれでも」
「腕の立つ奴は切り払いますね」
 綾人の言葉だ。
「それも簡単に」
「ネイ=モー=ハンには注意して下さい」
 ダバはこの女の名前を出した。
「マシンの性能もかなりですし」
「げっ、あいつまだ生きていたのかよ」
 ビルギットがうんざりした顔と共に言った。
「しぶといな、おい」
「いや、オージェいましたし」
「ですから間違いなく」
「生きてますよ」
 周囲がこう言う。
「だから余計にです」
「気合を入れて進まないと」
「どっちにしろギワザ達とも戦わないといけないし」
「ですから」
「そうなんですよね」
 ダバがまた難しい顔で話した。
「結局のところは彼等とも」
「まあさしあたっては双方の分裂を利用して」
「そうして戦いを進めていこうか」
「それにはまず」
 話がここで具体的なものにもなった。
「ヤーマンを解放して」
「そのうえでポセイダル軍を倒すか」
「そうするか」
「それでダバ」
 ルイスがダバに問うた。
「ヤーマンまであとどの位なの?」
「三日だよ」
 ダバはこうルイスに答えた。
「三日でヤーマンに着くよ」
「そう、わかったわ」
「では三日後だ」
 刹那の目が鋭くなった。
「ヤーマンに入りだ」
「解放して」
「そのうえで」
「そこからポセイダル軍とか」
「決戦ね」
「ただ。ギワザをどうするかだな」
 レッシィがここでこう言った。
「あいつをどうするか」
「そうだな。あの男は小心で狡猾だ」
 ギャブレーも言う。
「そう簡単に出ては来れまい」
「じゃあ出て来ない?」
「容易には」
「そう思う」
 ギャブレーはまた言った。
「ギワザはそういう男だ」
「そうだよな。何度か戦ったけれどな」
「あいつはそういう奴だよな」
「ええ、じゃあやっぱり」
「そう簡単には出てこない」
 こう話してだった。これで結論が出たのだった。
「まずはポセイダル軍だよな」
「そうだな、連中を叩いて」
「頃合いを見計らって出て来たギワザを」
「その時に」
「そうだね、それがいいね」
 ダバも仲間達のその言葉に頷いた。そうしてだった。
「それじゃあとりあえずは」
「軍を進めて」
「そうして」
「それじゃあヤーマンにですね」
 また言うダバだった。
「そしてそのうえで」
「ヤーマンに降下して」
「戦うか」
 こう話をしてであった。ロンド=ベルはヤーマンに向かう。それが今の彼等だった。


第六十六話   完


                     2010・10・14
 
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