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スーパーロボット大戦パーフェクト 完結篇

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第六十四話 失われた者達への鎮魂歌

             第六十四話 失われた者達への鎮魂歌
 暗闇の中に浮かぶ城を前にしてだった。ロンド=ベルの者達は皇帝と亡霊達を見ていた。
「数は?」
「百万」
「それ位です」
 まずは数について確かめられた。
「多いか?」
「いや、少ないな」
「そうだな」
 すぐにこう思い直したのだった。
「数の問題じゃない」
「今の俺達は」
「倒す!」 
 この言葉が出された。
「それだけだ!」
「ああ、やってやる!」
「絶対に!」
 そしてだ。クスハもだった。
「許さない!」
「強念の力を持つ者か」
「私達の力が」
「そう呼ばれるのならそうだろうな!」
 ブリットもであった。
「けれどそれは今は」
「どうでもいい!」
「どうてもいいというのか」
「貴方の理屈なんてどうでもいい」
「そんなのは俺達に何の意味もない!」
 二人は明らかに激昂していた。そしてだった。
「私達は絶対に!」
「貴様を倒す!」
「私を倒すどうするつもりだ」
 皇帝は二人にこのことを問う。
「何をするつもりだ」
「イルイちゃんを!」
「返してもらう!」
 そしてだった。忍もだ。皇帝を見て言うのだった。
「くそっ、こいつ」
「そうだね」
「一体何者なんだってんだ」 
 沙羅と共に言うのだった。
「見れば見るだけ得体の知れないものを感じやがる」
「これは一体」
「精神エネルギーだ」
 亮が言った。
「奴が持っているものはだ」
「精神エネルギーっていったら」
 雅人はこの言葉でわかった。
「つまり俺達のいつもの」
「怒りだね」
 沙羅も気付いた。
「あたし達の怒りを奴にぶつけて」
「そうだ、それだ」
 アランも一緒だった。
「俺達の怒りを皇帝にぶつける。いいな」
「愚かな」
 皇帝はそれを聞いても動じない。
「まだ無駄な抵抗をしようというのか」
「その言葉も今まで何十回と聞いてるんだよ!」
 忍は既に獣になっていた。
「ダンクーガが生き残るか手前が死ぬか」
「どちらかだというのだな」
「ああ、そうだ!」
 まさにその通りだった。
「答えは二つに一つだ!」
「それは私の中で既に出ている」
「それを今から見せてやる!」
 気力がだ。さらにあがる。そしてだった。
「銀河分け目の大勝負!」
「ああ!」
「今からそれを!」
「俺達で」
「やあってやるぜっ!!」
 ダンクーガが先頭に出た。それを受けてだった。
 ロンド=ベルは突撃をはじめた。最早戦術は不要だった。
 トッドがリムルに言ってきた。
「なあ姫さん」
「はい」
「またあれを沈めるんだな」
「やらせてもらいますか」
 リムルはこうトッドに問い返した。
「それを」
「ああ、やりな」
「有り難うございます」
「あのお袋さんはここでも死ぬべきなんだよ」
 トッドの言葉が苦いものになっていた。
「それがあの人の因縁ってやつさ」
「因縁・・・・・・」
「業かも知れねえな」
 こうも言い換えたのだった。
「それはな」
「そしてその業は」
「娘であるあんたが振り払うんだ」
「それが私の使命なんですね」
「まあそういうこったな。やりなよ」
「・・・・・・はい」
 リムルはトッドの言葉に頷いた。そしてだった。
 ジェリルのハイパーレプラカーンにはだ。ショウが向かう。
「こいつは俺が・・・・・・!」
「ショウ、多分強さはあの時のままだよ」
「ああ、わかってる」
 チャムにこう返す。それはもう承知していた。
「それはな」
「それじゃあ」
「斬る!」
 一言だった。
「あいつの業、俺が斬ってやる!」
「うん、そうしよう」
 その彼の後ろにだ。二機のズワースが来た。それに乗っているのは。
「アレン、それにフェイ」
「よお」
「俺達も来ていいか?」
 二人はこうショウに言ってきたのだった。
「あいつとの戦いな」
「参加させてくれるか」
「いいのか?仲間だったんじゃないか?」
「だからな」
「思うところがあってな」
 二人はこうショウに答えた。
「それでだ」
「駄目か?」
「いや、わかった」
 ショウはその二人に言葉を返した。
「それならな」
「仲間だったからな。いい加減あいつをな」
「解放してやりたくなってな」
「業からか」
「そういうことだ。もうあいつは眠るべきだ」
「ここでそうさせてやるさ」
 こう言ってだった。三人でハイパーレプラカーンに向かうのだった。
 カミーユはだ。シロッコに向かっていた。
「シロッコ、やはり妄執に捉われていたのか」
「カミーユ」
 フォウが横から彼に言ってきた。
「わかってると思うけれど」
「ああ、俺は捉われない」
 こうフォウに言葉を返した。
「絶対にだ」
「そしてこの戦いを」
「終わらせる、絶対に」
 彼等もそれぞれの戦いに向かっていた。百万の大軍と正面からぶつかってだ。
 激しい戦いだった。しかしである。
「雑魚はまとめて潰せ!」
「とにかく数を減らせ!」
 まずは彼等だった。
「数を減らしてだ!」
「そして!」
 目指す敵は彼等以外になかった。
「蘇ってきた奴等をな!」
「一人残らずぶっ倒してやる!」
「ラウ、いないか」
 レイはこのことに少し安堵していた。
「眠ったんだね、あれで」
「そうね、どうやらね」
 タリアがそのレイに応えてきた。
「彼は。もうね」
「二度と起きることはない」
「そして貴方は貴方の人生を生きられるわ」
 そうだというのだった。
「これで」
「俺の人生を」
「もう貴方はラウ=ル=クルーゼじゃないわ」
「レイ=ザ=バレル」
「ええ」
 その名前だというのだ。
「だからね」
「わかった。それではだ」
「前よ」
 あらためて彼に言った。
「いいわね、ドラグーンでね」
「倒す・・・・・・!」
 そのドラグーンを放って敵を倒していく。プロヴィデンスレジェンド、その力は彼によって、レイ=ザ=バレルによって戦場に発揮されていた。
 そしてであった。まずはだ。
 ダリウス大帝が倒れたのだった。
「よし!やったぜ!」
「ああ!」
「まずはこいつだ!」
 リーとピートがサンシローに続く。
「これで終わりですね」
「このややこしい奴とな」
「ええ、そうね」
 ブンタにヤマガタケ、それにミドリも言う。そしてサコンもだった。
「蘇えろうとも。敗れる時は敗れるのだ」
「じゃあサコンよ」
「ああ、戦いはまだ続いている」
 こうサンシローに返す。
「頼んだぞ」
「任せとけ!どいつもこいつも倒してやるぜ!」
 こう言ってだった。戦場でさらに暴れる彼等だった。
 そしてだ。帝王ゴールもドクター=ヘルも次々と倒れていく。
 アーチボルトもだ。今死んだ。レーツェルが真っ二つにしていた。
「くっ・・・・・・」
「私の因縁は」
 彼を斬ってだ。レーツェルは言った。
「これで完全に終わった」
「馬鹿な、私は・・・・・・」
 アーチボルトは再び死んだ。周りでも死闘が続いている。
 その中にだ。一機のマシンが出て来た。
「僕達も!」
「戦わせて下さい!」
 真人と神名だった。
「もう一度」
「皆さんの為に!」
「えっ、神名!?」
 神代が妹の姿を見て驚きの声をあげた。
「どうして戦場に」
「見てばかりじゃ駄目だから」
 だからだというのであった。
「だから私も」
「けれどもう貴女は」
「身体のことなら大丈夫よ」
「僕もね」
 真人も言ってきた。
「それはもう」
「何の心配もいらないよ」
「だからだというのね」
「ええ」
 妹が姉に対して答えた。
「だから。心配しないで」
「そう、わかったわ」 
 姉もここで頷いた。そして慎悟も真人に尋ねた。
「いいんですね、それで」
「うん、悪いけれどマシンは君達がかつて乗っていた」
「スサノオを」
「これでいいのね」
「はい」
 慎悟の返答は微笑みだった。
「では一緒に」
「うん、戦おう」
 こうして二人も再び戦場に立った。戦いはこれで勢いが戻った。
 ロンド=ベルは百万の大軍を倒していって。遂にだった。
 皇帝一人だった。残るはだ。
「さて、死に損ない共は全部倒したし」
「後はな」
「あいつだけだ!」
 その皇帝だけがだ。戦場にいたのだった。
 その彼にだ。ダンクーガが向かった。
「手前は俺達が!」
「タンクーガか」
「覚悟しやがれ!」
 忍が言うのだった。
「このダンクーガの力見せてやるぜ!」
「一つ言っておく」
「何だ!?」
「私をあの者と同じにしないことだ」
 こう言うのだった。
「シャピロ=キーツとだ」
「あいつか」
「あの男は所詮は小者だった」
 これは皇帝から見てもだった。
「あの様な者とは同じにしないことだ」
「へっ、最初からそのつもりはねえぜ」
 忍の返答はこれだった。
「手前は手前だ!」
「そうか」
「だから倒してやる。行くぜ!」
「ならば来い」
「うおおおおおおおおおおおおっ!!」
 叫んでだ。剣を振るう。そうして激しい戦いを繰り広げた。
 一時間程戦った。双方傷が深くなっていた。しかしであった。
 皇帝はだ。ここで攻撃を繰り出してきた。暗闇がダンクーガを襲う。
「!?これは」
「何なんだよ」
 亮と雅人がその攻撃を見て言う。
「暗闇が来る」
「まさかこれって」
「いかん!」 
 アランが危機を察した。
「あの暗闇が来る前にだ」
「忍!」
 沙羅は忍に叫んだ。
「ここで決めないと!」
「ああ、あれしかねえ!」
 忍もわかっていた。そうしてだった。
「皆行くぜ!」
「ああ、いいよ!」
「ここでだね!」
「あれで決める」
「それならだ」
「ファイナル断空砲!」
 今白い光が起こった。それが突き進み暗闇を切り払う。
 そしてそのまま。皇帝を貫いたのだった。
「よし、これで!」
「終わった!」 
 勝利を確信した。実際に皇帝は動きを止めてしまっていた。
 だがそれでもだった。皇帝はまだ言うのだった。
「この宇宙の私を倒すことは出来ぬ」
「ええっ!?」
 マヤがそれを見て叫んだ。
「エネルギーが皇帝から」
「間違いありません!」
 メイリンもだった。
「何、これって」
「ま、まさかこれは」
 クリフも顔を青くさせている。
「悪霊の力なのか!?」
「そんな筈がありません」
 アルシオーネが師の言葉を否定しようとする。
「あれだけの攻撃を受けてまた立てるとは」
「その通りだ。だが」
 クリフはそれでも言うのだった。
「あの男はまだ」
「まさか」
 アキトが言った。
「俺達の力では無理だっていうのか?」
「運命は御前達を試そうとしているが」
 その皇帝の言葉だった。
「それも無駄だったのだ」
「おい、待て!」
 忍がその皇帝に問うた。
「それはどういう意味だ!」
「死にいく者に語る言葉はない」
 皇帝は答えようとはしない。
「ロンド=ベルよ。悪霊にその身を委ね永遠に覚めぬ悪夢の中で散るがいい」
「ちいっ!!」
 その彼にだ。ファイナルダンクーガがまた迫った。
「忍!」
「何をするつもりだ!?」
「俺は諦めねえ!」
 こう返す彼だった。
「こんな野郎に負けちまったらな!」
「!?」
「負けたら」
「俺達の為に死んでいった人達に申し訳が立たねえ!」
 こう言うのである。
「そうなったらな!」
「そ、そうだよな」
「ここで負けたら」
「それで終わりだ」
「これまでのことも」
「負けてたまるか!」
 忍はさらに叫んだ。
「絶対にだ!」
「愚かな」
 皇帝はその忍を見て言った。
「まだ無駄な抵抗をしようとするのか」
「それが無駄かどうかな!」
「今見せてあげるわよ!」
「俺達の心!」
「今ここで!」
 誰もが叫んでだった。そうしてであった。
「俺達の為に死んでいった人達の心も」
「その想いも」
「見せてやる!」
 こうしてだった。何かがタンクーガに宿った。
「何だこれは」
 皇帝もその何かを見た。
「ダンクーガに力が集まっていく」
「悪霊が存在するのなら」
 今言ったのはモニカだった。
「真理の下に辿り着いた魂も力として存在します」
「まさかそれが」
 セニアが双子の妹に問うた。
「神の力なの?」
「それはわかりません」
 モニカもそこまではわからなかった。
「ただ」
「それでもなのね」
「はい、それが今ダンクーガに力を与えようとしています」
 そうしているというのだ。
「それは間違いありません」
「そういうことね」
「この力まさか」
 皇帝も今は狼狽を隠せない。
「この者達は絶対運命をも切り開くというのか」
「獣の怒りを超え」
 何かが言った。
「人の憎しみを超え」
「!?何だ」
「何かが言っている」
「この声は」
「神の戦士として再生せよ!」
「神の戦士」
 忍がその声を聞いた。他の者もだ。
「神の戦士」
「それが俺達か」
「超獣機神ダンクーガとして!」
「ああ、わかったぜ!」
 忍にだ。何かが宿った。そしてだ。
 絶叫してだ。そして。
「喰らいやがれ!」
 切り裂きそのうえで砲撃を浴びせた。それでだった。
 さしもの皇帝も完全にだ。滅んだのだった。
「うおおおおおおおっ!」
「よし、やったぜ!」
「これで!」
「今の一撃はだ」
 ゼンガーがその皇帝の最期を見て言った。
「周囲の悪霊まで断ち切った」
「それなら」
「これで」
「そうだ、勝負ありだ!」
 まさにそうであった。
「この戦い終わった!」
「よし、やった!」
「俺達はまた勝ったんだ!」
 勝利に湧き返ろうとする。しかしだった。
 世界が揺れはじめた。急にだった。
「な、何だ!?」
「これは一体」
「何が起こるってんだ?」
「宇宙の終わりです」
 モニカがここでまた話す。
「皇帝が死ねば。この宇宙は彼が創り出したものですから」
「えっ、何だって!?」
「それじゃあ私達は」
「これで」
「ロンド=ベルよ」
 皇帝が最期の言葉を言ってきた。
「御前達はだ」
「ちっ、まだ生きてやがるのかよ」
「何てしぶといのよ」
「銀河の終焉を見る者だ」
 こう彼等に言うのだった。
「御前達こそがだ」
「そりゃどういう意味だ」
「ふふふ、精々あがくがいい」
 忍の問いに今は答えなかった。
「御前達が終焉を止められるならば」
「手前、一体」
 皇帝はここで爆発して消えた。それと共にだった。
「こ、今度は何だ!?」
「世界が!」
「白い光に」
 包まれてだった。そうしてだった。
 彼等は宇宙に戻っていた。彼等の宇宙にだ。誰もがいた。
「無事か」
「ああ」
「何とか」
「生きてるぜ」
「それでここは?」
「元の場所だな」
 クワトロが最初に気付いた。
「あのアステロイドだ」
「じゃあ完全に戻ってきたんだ」
「本当に」
「誰も死んでないな」
 アムロがこのことを確かめた。
「それに一機も失っていないな」
「ああ、けれどよ」
 カイがそのアムロに言う。
「もう弾薬もエネルギーもないぜ」
「皆だ」
 ハヤトも言う。
「幸い今は敵は近くにいないがな」
「シティ7を呼んだぜ」
 スレッガーが話す。
「補給はそれでしてもらえる」
「じゃあ一件落着か?」
「とりあえずムゲ帝国は」
「ああ、そうだな」
「これでね」
 皆このことにほっとする。リュウもだった。
「本当に死ぬかと思ったがな」
「はい」
 セイラはリュウのその言葉に頷いた。
「帰ってこれない危険はです」
「充分過ぎる程あったからな」
「だが俺達は何とか生きて帰って来た」
 アムロはこのことを言う。
「運がよかったのだな」
「そうかね」 
 だがここでだ。沙羅が言った。
「あたし達戦いに勝ったのかね」
「おい、沙羅」
 その沙羅に忍が言う。
「御前何言ってんだよ」
「そうは見えないからね」
「見えないって何でだよ」
「皆ボロボロじゃない」
 このことを話すのだった。
「力尽きてね」
「それでか」
「それで何で勝ったって言えるのさ」
 こう言うのだった。少し微笑んで。
「若しここに何か来たらね」
「終わりだな、確実に」
「それで勝ったなんてね」
 だからだというのである。
「言えないんじゃないのかい?」
「いや、我々は勝った」
 だがここでだ。葉月博士が言った。
「ムゲ帝国は滅んだ。また一つ敵を倒した」
「じゃあ勝ったんだね」
「そうだ、勝った」
 博士はこう沙羅に言うのだった。
「それが何よりの証拠だ」
「そう、なのかい」
「今は休むとしよう」
 博士の声が優しいものになった。
「是非な」
「そう。それじゃあ」
「シティ7が来た」
 そのシティ7がだ。来たのだった。
 皆その中に収納されてだ。今は休んだ。その後だった。
 アラドがだ。皆に問うていた。
「それでイルイちゃんは?」
「どうなったの?」
 ゼオラも一緒である。
「一体何処に」
「無事なの?それで」
「ああ、何とかな」
 彼等に話すのはユウキだった。
「無事だ」
「それにちゃんと私達と一緒にいるわよ」
 カーラはこのことを話した。
「安心してね」
「そうか、よかった」
「それを聞いてほっとしました」
 二人はこのことを聞いてまずは胸を撫で下ろした。そのうえでの話だった。
「で、今は」
「どうしてるの?」
「まだ寝てるよ」
「ずっとね」
 今度はリョウトとリオが話す。
「昏睡状態になっててね」
「起きるのはまだ先みたい」
「そうなんですか」
「今は」
「けれど命に別状はないからさ」
「また起きるわよ」
 タスクとレオナが話す。
「力を使い過ぎたせいらしいしな」
「それが回復したら」
「ということはだ」
「そうですよねえ」
 アーウィンとグリースがここで言った。
「俺達をここまで出してくれたのは」
「イルイちゃんですよねえ」
「ああ、そうだ」
「その通りだ」
 その二人にイルムとリンが話す。
「ムゲの宇宙からな」
「私達全員をね」
「またそりゃ凄いことしてくれたな」
「あの宇宙からなんて」
 ヘクトールとパットも驚きを隠せない。
「けれどあの娘がそうしなかったら」
「私達は今頃」
「そうだ、間違いない」
「あの宇宙で皇帝と一緒にね」
 ジェスとミーナが言う。
「死んでいた」
「本当に死なば諸共でね」
「何ていうか凄い力だな」
「ああ、そうだな」
 アークライトとエルリッヒが話す。
「それがこっちの世界の神様の力か」
「想像以上だ」
「けれどそれで」
「あの娘は」
 セレインとリッシュはそのイルイのことを心配していた。
「起きられなくなった」
「それが今か」
「この戦いなんですけれど」
「俺達はずっとだったんだ」
 クスハとブリットが話す。
「イルイちゃんに何度も助けられました」
「それはサイコドライバーの力とは関係なく」
「あの娘の優しさか」
「それによってだな」
 ブラッドとカーツがこのことを察して言った。
「助けてきたのか」
「そういうことか」
「じゃあやっぱり」
「あの娘は」
 マナミとアイシャが言う。
「私達の為にも」
「この銀河に」
「そういう娘だからね」
 アイビスが言った。
「他にも目的があるんだろうけれど」
「そうですね。その目的も問題ですけれど」
 ツグミが話す。
「まずはあの娘を守りましょう」
「今度は私達がだな」
 スレイがツグミの言葉に応える。
「イルイを」
「そうしよう、絶対に」
「ああ」
 スレイはアイビスの言葉にも応えた。
「必ずな」
「これからはね」
「それでなのですが」 
 ここでセラーナが出て来た。
「これからのことですが」
「うむ、それか」
 ハマーンは妹の言葉に応えた。
「やはりか」
「このまま三連惑星に向かいます」
 この予定は変わらなかった。
「ただ。その進路にです」
「今度は誰がいるのだ?」
 ククルが問う。
「バルマーなのか」148
「はい、そうです」
 まさにその彼等だった。
「行く先にその勢力圏があります」
「そうか、やはりな」
 それを聞いて頷くハマーンだった。
「そして今度はどの軍だ」
「近銀河方面軍だ」
 ヴィレッタが言った。
「ポセイダル家の軍だ」
「ポセイダルか」
 ダバがそれを聞いて強い顔になった。
「そういえばこの進路は」
「そうだ、ヤーマンに向かっている」
 こうダバに話すヴィレッタだった。
「いよいよだな」
「そうですね」
 ダバは意を決した顔になっていた。
「ポセイダルとも決着をですか」
「そうだな、遂にだな」
「ええ」
 レッシィとアムも言う。
「ポセイダルともだ」
「決着をつける時になったのね」
「思えば長い戦いだったな」
 ギャブレーはこれまでのことを振り返っていた。
「あの者達との戦いも」
「ってあんたはね」
「最初敵だったじゃない」
「そうそう」
「何感慨に耽ってるんだか」
 皆そのギャブレーに突っ込みを入れる。
「私達と何度戦ったか」
「それ忘れてるとは言わせないわよ」
「全く、この旦那は」
「何考えてんだか」
「随分な言われようだな」
 ギャブレーは皆の言葉に憮然となる。
「今ではこうしてロンド=ベルにいるというのに」
「まあ仕方ないな。それよりもな」
 キャオが出て来た。
「今度でポセイダルの奴等とも決着か」
「そうだよな」
「遂にな」
「じゃあ一気に決めようぜ」
 こう言うキャオだった。
「もうな」
「ああ、そうだな」
「これでね」
「今度で」
「オルドナ=ポセイダル」
 ダバはこの名前を呟いた。
「ここであいつを」
「そしてあいつを倒してそのうえでね」
 エリスが言う。
「三連惑星によね」
「そっちの方を先にしてもいいんじゃないですか?」
 ダバはこんなことも言った。
「ここは」
「いや、どちらにしろだ」
 リーがそのダバに話す。
「ポセイダルも倒さなければならない敵だ」
「そういうことですか」
「それにだ。ここで迂回すれば遠回りになる」
 リーはこのことも話した。
「合理的ではない」
「じゃあこのまま」
「どちらにしろバルマー軍は叩く必要がある」
 また言うリーだった。
「そういうことだ」
「有り難うございます」
「礼はいい。それではだ」
 リーは冷静なまま全員に述べた。
「このままポセイダル軍の勢力圏内に向かうとしよう」
「そういえばヘビーメタルと戦うってな」
「ああ、久し振りだよな」
「確かに」
 皆ここで気付いた。ポセイダル軍との戦闘は長い間なかった。このことを思い出したのである。
「ええと、ビームコーティングしてあるから」
「それは用心して」
「その他はモビルスーツと似てるよな」
「そうだったわね」
「まあそれでも」
 ここで言ったのはコウだった。
「ダバ達のエルガイムとか見てるからわかるけれどな」
「だよな。戦い方はな」
 キースもコウに応えて話す。
「もうわかってるしな」
「問題は敵の戦術だ」
 バニングはそれを問題にしていた。
「十三人衆がどう来るかだ」
「ううむ、それなのだが」
 ギャブレーが難しい顔になって話す。
「正直なところその十三人衆でもだ」
「十三人衆でも?」
「何かあるの?」
「オルドナ=ポセイダルに会えるのは僅かだった」
 そうだったというのである。
「高位の者達だけだったのだ」
「当然私なんかはね」
 かつて十三人衆だったレッシィの言葉だ。
「会うどころじゃなかったさ」
「十三人衆って言ってもそうだったんだ」
「色々とランクとかがあったんだ」
「あのギワザになるとだ」
「かなり違ったけれどね」
 二人はここでギワザの名前を出した。
「あの者はかなりの権限を持っているしな」
「十三人衆の実質的なリーダーでもあるしね」
「それとあの連中もいるよな」 
 今言ったのはタスクだった。
「ジュデッカ=ゴッツォの連中も」
「やっぱりあの連中はな」
「いるよな」
「ポセイダルの傍にな」
 もうこれは当然のことだった。
「じゃあ今度も」
「ヘルモーズとズフィルードもか」
「出て来るか」
「そうだよな」
「まあこれで三度目だからな」
 今言ったのはカチーナである。
「慣れてはきたな」
「それはそうだよな」
「ヘルモーズも何度も沈めてきたし」
「やり方はわかってるから」
「戦い方も」
「問題はポセイダルだけか」
 そのポセイダルのことも話す。
「あいつは一体何者なんだ?」
「バルマーの十二支族ってことは知ってるけれど」
「ダバ、それで知ってるか?」
「どんな奴か」
「俺も詳しくは知らないんだ」
 ダバは仲間の問いに申し訳ない顔で答えた。
「実は」
「えっ、知らないって」
「そうだったの」
「オッドアイの銀色の女」
 彼はまずこう話した。
「そして独裁者でもある」
「それでヘビーメタルに乗る?」
「いざという時は」
「多分。けれどヘビーメタルに乗っているのを見た者はいない」
 ダバの話ではこういうものだった。
「そうなっているんだ」
「一切が謎に包まれた独裁者か」
「何なんだろうな、本当に」
「何者なのか」
「敵を知り、というが」
 今言ったのはブライトだった。
「情報が少な過ぎる。問題だな」
「しかし行かなければならない」
 シナプスはこのことを指摘した。
「それはな」
「迂回したら異様に遠回りになるし」
「それしかない」
「結局のところは」
「まずは入りそのうえで一戦交えるか?」
 これはグン=ジェムの言葉だ。
「そうすればよくわかるぞ」
「乱暴だけれどそれしかないか」
「そうね、今は」
 皆彼のその乱暴な主張に頷くしかなかった。
「とにかく。ポセイダル軍の勢力圏に入って」
「そのうえで戦うか」
「それからよね」
「よし、全軍何はともあれ進撃することだ」
 リーがここでまたこう話した。
「いいな」
「ええ、それじゃあ」
「今から」
 こうして多くの謎を抱えているポセイダル軍との戦闘に入るのだった。彼等の戦いはまだ続くのだった。果てしない戦いであった。


第六十四話   完


                                      2010・10・6
     
 
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