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スーパーロボット大戦パーフェクト 完結篇

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第六十二話 シャピロの末路

             第六十二話 シャピロの末路
 基地に入るとだ。敵がもういた。
「また無人機か」
「そうね」
「やっぱり人は残ってないんだな」
「あいつの周りには」
「シャピロ・・・・・・」
 沙羅はダンクーガの中で呟いていた。
「決着をつけるのに誰の手も借りないよ」
 こう呟くのだった。
「あたし自身でケジメをつけるよ」
「!?危ねえ!」
 先頭を行くダンクーガに攻撃が来た。忍はdナンクーガをすぐに動かしてそれをかわした。
 そしてだ。攻撃がした方を見るとだ。デザイアーがそこにいた。
「藤原、よくかわしたな」
「シャピロ、そこか!」
「流石は野獣の本能を宿した獣戦機隊の者だ」
 こう言うシャピロだった。
「それは褒めてやろう」
「手前に褒められても嬉しくとも何ともないぜ」
「そしてだ」
 また言うシャピロだった。
「貴様等には罰を与える」
「またかよ」
「だから何度言えば気が済むんだよ」
「全く」
 ロンド=ベルの面々もいい加減突っ込み疲れてきていた。
「そればっかりだし」
「他には言葉ないのかな」
「神様って言う割にはボキャブラリーがね」
「ないっていうか」
「この私を認めず、この私の意に沿わなかった貴様等には絶望を味あわせてやろう」
「この状況でかよ」
 シンが言った。
「どうやってだよ」
「残ってるのはあんただけじゃない」
 ルナマリアも言う。
「無人機も。残り十万ってところね」
「へっ、十万なんかな!」
「僕達なら!」
「一瞬で終わる」
 オルガ、クロト、シャニも言う。
「おっさん、あんた馬鹿にも程があるな!」
「っていうか自分のことわかってないしね!」
「馬鹿の極み!」
「おのれ、人間共が」
 シャピロはその三人にも怒りの目を向けた。
「貴様等も私を」
「やっぱりあんたは変わってないよ」
 沙羅がその彼にいった。
「そうやって自分の力を過信するところはね」
「私がバルマー帝国軍にその身を寄せた時」
 その沙羅を見据えての言葉だった。
「御前はそれについてこられなかった」
「ああ、あの時かい」
「そうだ、あの時だ」
「あの時のあたしはどうかしていたのさ」
 今はこう言う沙羅だった。
「地球を異星人に売り渡そうとするなんてね」
「あの時にだ」
 だがシャピロはまだ言う。
「御前と私を結ぶ赤い糸は断ち切られたのだ」
「いい加減にしなよ!」
 沙羅は言い捨てた。
「そんなものは最初からないんだよ!」
「何っ!?」
「あんたは神なんかじゃない!あたし等と同じ人間だよ!」
「では教えてやろう」
「何をだよ」
「私が神に選ばれた者である理由をだ」
 それを言うというのである。
「今からだ」
「へえ、何だいそれって」
 沙羅も一応聞く素振りは見せァ。
「ただね」
「ただ。何だ」
「生きるか死ぬかはこのあたしに選ばせてもらうけれどね」
「私は地球にいた頃だ」
 シャピロは話をはじめた。
「ある場所で神の音」
「神の音?」
「何それ」
 ロンド=ベルの者達もこれにはいぶかしんだ。
「何か気になるな」
「そうね。やっぱりね」
「様々な音色を持った宇宙音を聴いたのだ」
「それがか」
「神の」
「その調べは宇宙の平和のハーモニーと言ってもいい」
 シャピロは言うのだった。
「そして私は知った」
「何をなんだ?」
「それで」
「この銀河を司る絶対的な存在」
 こう話すシャピロだった。
「言い換えれば運命というものをだ」
「絶対的な存在」
 沙羅もそれを聞いて呟く。
「運命・・・・・・」
「その調べはだ」
「ああ」
「何だってんだ?」
「私に教えてくれたのだ」
「教えた?」
「まさかそれが」
「その乱れがだ。銀河に終焉が迫っていることを」
「銀河の終焉!?」
「それこそが」
「俺達が目指している」
「その頃だった」
 シャピロは自分だけで話していく。
「帝国軍が地球にやって来た」
「その時だったのか」
 マーグがそれを聞いて言った。
「貴様が聴いたのは」
「地球の運命は動きだした」
 そうだったというシャピロだった。
「これが神の啓示でなくて何なのだ」
「さてな」
「手前のわかるものじゃないかもな」
「そして宇宙の神は私に言ったのだ」 
 シャピロはさらに話す。
「宇宙のハーモニーは破壊された」
「それでなのか」
「こいつがこうなったのは」
「成程ね」
「シャピロ、この私が神となり」
 そしていつもの言葉だった。
「この宇宙を取り押さえろとな」
「それでなのかい」
 沙羅が彼に言い返す。
「地球を捨てて今に至るのかい」
「奴等についたのはだ」
「どうしてなんだい?」
「この銀河の情報を集める為に過ぎない」
「利用するつもりだったのかい」
「そうだ」
 それだけだというのだ。
「所詮は捨て駒だ。私にとってはな」
「御前もな」
「そうだったけれどな」
 ここでも冷たいロンド=ベルの言葉だった。
「所詮こんな奴はな」
「誰も切り捨てるさ」
「そしてだ」
 だがシャピロはここでも彼等の言葉を聞かない。
「私はムゲ帝王と出会い地球にだ」
「地球に?」
「っていうと」
「宇宙の神に接触する為の鍵を見つけた」
 そうだったというのだ。
「それこそがだ」
「あの子だね」
 沙羅はすぐに察した。
「イルイだっていうんだね」
「そうだ、あの娘こそだ」
 シャピロはその通りだと返した。
「神の子だ。そして」
「そして?」
「それと共にある私はだ」
 言った。まただ。
「神の力を手にするのだ!」
「そんなことはさせないさ!」
「ああ、そうだ!」
 沙羅だけでなく忍も言う。
「シャピロ、あんたを知ってね」
「何だ、一体」
「一つだけ喜びを見つけたよ」
 こう彼に告げるのだった。
「それはね」
「何だというのだ」
「あたしが」
 沙羅自身がというのだった。
「あたしがあんたと殺すというね!」
「無駄だ!」
「何だって!?」
「ここに置いているマシンはだ」
 その少なくなったマシン達のことだ。
「私が選んだ最強のマシン達ばかりだ!」
「むっ!?」
「見ろ、このマシン達を!」
 見ればだ。サイコガンダムやデストロイガンダム、その他にはグレートマジンガーやゲッターのコピーまである。そうしたものばかりだった。
「このマシン達に貴様等は勝てはしないだろう」
「おい、そこの大馬鹿野郎」
 ディアッカが敵愾心を剥き出しにして彼に言う。
「手前何もわかってねえんだな、本当に」
「何っ!?」
「今時こんなのな!」 
 言いながら前にいるデストロイガンダムの一機に照準を合わせる。
 そしてだ。フリーダムの一斉攻撃を浴びせたのだった。
 七色の光が巨大なガンダムを狙いだ。そして。
 一気に貫いた。後に残ったのは爆発だけだった。
 一機いきなり撃墜してみせてから。またシャピロに返した。
「どうってことねえんだよ!」
「馬鹿な、そのガンダムは」
「俺達はな、数えきれない程の戦場を潜り抜けてきたんだよ」
「そうだ、それこそ貴様が経験したことのないような戦いをだ!」
 ここでイザークも言う。彼はサイコガンダムを真っ二つにしていた。
 その大爆発の前でだ。彼は言うのだった。
「その中で強くなってきた!」
「それでどうして今時こんな連中にやられるんだよ!」
「ましてよ!」
「そうだ!」
 プルとプルツーはグレートマジンガーの編隊を次々と撃墜している。そのファンネルで。
「中に鉄也さんや竜馬さん達がいるならともかく」
「誰もいないのではどうということはないんだよ!」
「くっ、馬鹿な」
「馬鹿なじゃないよ」
 沙羅が苦い顔になるシャピロに対して言った。
「あんたがわかっていないだけなんだよ、何もかもね」
「おのれ・・・・・・」
「覚悟はいいかい?」
 冷たい言葉だった。
「これで終わるよ」
「おのれ、何時の間にここまで」
 ファイナルダンクーガはもうデザイアーの前まで来ていた。そうしてだった。
 デザイアーの攻撃をかわしそのうえで、だった。
「行くぞ皆!」
「ああ!」
「あれだね!」
「あの技でか」
「こいつの止めにはあれが一番だ」
 こう仲間達に返してだった。そして。
 その断空剣を抜き。そのうえで。
「愛の心にて」
「悪しき空間を断つ!」
「行け、藤原!」
「こいつで止めだ!」
 剣から赤い一条の光が放たれ。それを大きく振り被り。
 そしてだった。一気に振り下ろしたのだった。
「ファイナル断空光牙剣!」
「これは!」
 それでデザイアーを両断した。光が過ぎ去った。
 その一撃でだった。全ては終わった。
「お、おのれ・・・・・・」
「観念しな、シャピロ!」
「いや、まだだ」
 デザイアーが大破してもだ。彼は諦めようとしなかった。
 まだ動こうとする。執念だけは見事だった。
「私は、まだ・・・・・・」
「悪いけれどね」
 ここで一機のムゲ帝国のマシンが出て来た。
「それでは困るのよ」
「何っ!?」
「ふふふ、シャピロ」
 ロッサだった。彼に対して言うのだった。
「あの沙羅という娘と顔を合わせるのがそんなに嫌なのかしら」
「ロッサ、貴様か」
「神を名乗る男にしては」
 完全に見下した言葉だった。最早そうなっていた。
「無様な結末ね」
「貴様、何をしに来た」
「お別れを言いに来たの」
 そうだというのだった。
「貴方にね」
「何っ!?」
 ゼイ=ファーからのビームでだった。全ては終わった。
「ぐあっ!」
「愚かな男ね」
 今は笑っていた。馬鹿にした笑みだった。
「陛下は最初から貴方なぞ信用してはいなかったわ」
「お、おのれ・・・・・・」
「三将軍もね」
 彼等もだというのだ。
「信用していなかったわ」
「馬鹿な、私はあの連中を」
「騙せていた?それが甘いのよ」
「甘いというのか、この私が」
「貴方のその野心は誰が見てもすぐにわかるわ」
 ロッサのこの言葉には誰もが納得した。
「そうだよなあ」
「それにどういう奴かもな」
「すぐにわかるしな」
「見え見えだし」
「ちゅうかあいつあれでばれてないと思ってたんか?」
 ロドニーはここまで言う。
「アホやろ、そりゃ」
「愛を捨て去ってこそ神になり得る」
 シャピロの言葉をそのまま返していた。
「確かそう言ったわね」
「それがどうした」
「けれどそうかしら」
「私の言葉に誤りがあるというのか」
「愛を捨てることなく超えたところに」
 これはロッサの言葉だ。
「神がある。違うかしら」
「私の言葉を否定するか、女ごときが」
「捨てる捨てないというところにこだわったところに」
 ロッサの言葉はだ。まさに断罪であった。彼女は今それをしていた。
「貴方の支配者としての限界があったのよ」
「神に限界なぞ・・・・・・」
「貴方は神ではないし」
 口から血を流し苦悶の表情のシャピロへの言葉だ。
「所詮」
「所詮というか」
「貴方は陛下の偉大な力を超えられなかったのよ」
「うう・・・・・・」
「そして」
 さっと動いてだ。ある少女を捕らえた。それは。
「目的は神の子か」
「そう」
 まさにその通りだというのだった。
「陛下はこの娘を手に入れる為に」
「どうしたというのだ」
「地球に軍を送り込んだのよ」
「では私は最初から」
「そうよ、捨て駒だったのよ」
 それに過ぎないというのだった。
「残念だったわね」
「くっ・・・・・・」
「この娘は私が陛下の下に届けるわ」
「おのれ、それは」
「安心して死になさい」
 このうえなく冷たい言葉をだ。ロッサも出した。
「シャピロ、私が愛するには足りない男だったわ」
 この言葉をかけてから姿を消すのであった。そして。
 残ったシャピロはだ。息絶えようとする中で言うのだった。
「天よ砕けよ!宇宙よ、御前は再び」
「!?こいつ」
「まさか」
 彼の変化に誰もが気付いた。
「断末魔で」
「遂にか」
「暗黒の世界に姿を隠せ!神が今ここに誕生し」
「狂ったな」
「ああ、今完全に」
「終わった」
 最早だ。シャピロはそうなってしまっていた。
 その狂気の中でだ。さらに叫ぶのだった。
「神が自らの裁きでこの世界を無のものとする」
「いや、それは最早」
「できないよ、少なくともあんたにはね」
「よいか宇宙よ!」
 叫び続けるシャピロだった。
「今こそ神の足下にその永遠なる魂を委ねるのだ!」
 後は狂気の笑いだけだった。それを見てだ。
 沙羅はだ。忍に言った。
「消し飛ばしていいよ」
「ああ、わかった」
 ファイナル断空砲が放たれた。それで終わった。
「あんた、馬鹿だよ・・・・・・」
「沙羅・・・・・・」
「総員撤退だ」
 葉月博士が命じた。
「これでな」
「はい、それじゃあ」
「これで」
 総員基地を去る。基地は爆発しそのままシャピロの墓標となった。そしてであった。
「後は」
「そうよね」
「イルイちゃんが」
「どうしよう」
「話は簡単だぜ」
 今言ったのは宙だった。
「俺達が連中の城に殴りこんで叩き潰せばいいんだよ」
「そうするっていうのね」
「ああ、そうだ」
 こう美和にも返す。
「今からな」
「それはその通りにしても」
「それでも」
「それでも?」
 宙は周りの雰囲気の変化に気付いた。
「何があるんだ?」
「ムゲ帝国って何処にあるんだ?」
「一体」
「そうだったな」
 その言葉を聞いてだ。宙も顔を歪めさせた。
「それがわからなかったな」
「ああ、そうなんだよ」
「今まで向こうから来るだけで」
「こっちは全然わからなかったし」
「連中の本拠地が何処にあるのか」
 そうなのだった。ここでこのことがあらためてわかったのだった。
 しかしだ。ここで言ったのは。
 ヴィレッタだった。彼女が出て来てだ。
「それならだ」
「大尉、まさか」
「考えが」
「一応はな」
 あると言ってだ。話をはじめるのだった。
 沙羅はだ。この時医務室にいた。
 気付けばだ。ベッドの中だった。
「ここは」
「気付いたな」
 すぐに忍が声をかけてきた。仲間達もいる。
「よかったな」
「大空魔竜の医務室だよね」
「ああ、そうだ」
 忍が答える。
「そこさ」
「一体何が」
「御前はあの戦いの後だ」
 アランが話してきた。
「気を失いここに運び込まれたのだ」
「そうだったんだ」
「うん、そうなんだ」
 雅人も話してきた。
「俺達がここまで運んだんだよ」
「有り難う・・・・・・」
 そのことに素直に礼を言った。
「おかげで助かったよ」
「最後の戦いだったからな」
 亮がシャピロとのことを話した。
「張り詰めていたものが切れたんだろうな」
「そう、それでシャピロは」
「今度こそな」
 忍が話す。
「完全に消し飛んだぜ」
「・・・・・・そう」
「しかしな」
 ここでまた言う忍だった。
「センチな気分になっている時間はないぜ」
「えっ!?」
「そのムゲ帝国のことだ」
「連中のことが」
「ああ、あいつ等ともな。決着をつけねえとな」
 忍は強い表情になって話した。
「最後の戦いにな」
「そうだね、それがあったね」
「ああ、じゃあ行くか」
「そうだね。それじゃあ」
 こう話してだった。沙羅は再び起き上がりだ。戦いの場に向かうのだった。
 ヴィレッタは一同に話していた。
「まずはだ」
「ああ」
「それで一体」
「どうやってムゲ帝国のところまで」
「敵が出て来たその時にだ」
 ヴィレッタはそこから話す。
「まずは退ける」
「勝つってことかよ」
「そうだ、そしてだ」
 マサキに応えながら話していく。
「それを追撃してそのうえでだ」
「ムゲ帝国に入る」
「そうするんですね」
「そうだ、敵が入るその瞬間に我々も入る」
 まさにそうするというのである。
「これでどうだ」
「ううん、それしかないですよね」
「そうだよな、向こうの場所がわからないし」
「危険だけれどそれしかない」
「一か八かだけれど」
「危険は承知だ」
 ヴィレッタは既にそれは考えていた。
「だが。それでもだ」
「ムゲ帝国を倒さないといけない」
「そしてイルイちゃんを救い出す」
「絶対に」
「その通りだ。ではいいな」
「はい」
「それなら」
 皆それでいこうと覚悟を決めた。しかしその時だった。
 不意にだ。彼等の前にだった。巨大な黒い穴が出て来た。
「!?穴!?」
「まさか」
「これは」
「うっ・・・・・・」
 そしてだった。ここでだ。クスハが頭を両手で抑えだ。苦しい顔を見せた。
「イルイちゃん!?」
「間違いない・・・・・・」
 ブリットもだった。クスハと同じことになっていた。
「イルイ、そうなのか」
「ムゲ帝国の世界へ」
「俺達を導いているのか」
「だから」
「どうする?」
 ここで言ったのは凱だった。
「この穴に入るか?皆で」
「はい、その通りです」
 そしてだ。新たな者が出て来たのだった。
「ここはそうしなければなりません」
「出て来やがったな」 
 マサキが彼のその姿を見て言った。
「シュウ、相変わらずいいところで出て来るな」
「ふふふ、私は時を見る男ですから」
 シュウはいつもの笑みでマサキに返した。
「だからですよ、マサキ」
「あの穴のことはよくわかってるんだな」
「はい」
 まさにそうだというのだった。
「存じているつもりです」
「あの穴の向こう側にか」
「ムゲ帝国の宇宙、そしてムゲ=ゾルバトス皇帝がいます」
 シュウはこう一同に話す。
「あの中にこそです」
「そう、それだったら」
 ミサトが言った。
「迷う必要はないわね」
「そうね」
 カナンもその言葉に頷く。
「それなら。やっぱりここは」
「全軍突入だ」
 タシロが言った。
「いいな、それで」
「はい、それなら」
「今から」
「待ってろよムゲ野郎!」
 忍はここでも叫んだ。
「今度はこっちが手前の家に乗り込んで暴れてやるぜ!」
(シャピロ)
 沙羅は心の中でシャピロの名前を出していた。
(ムゲを倒せばあんたとは本当にさよならだよ)
 こう呟いていた。
(それまではあんたのこと)
 そしてだ。次の心の中の言葉は。
(覚えておいてやるよ)
 こう呟いてだった。戦場に向かうのだった。
 雅人と亮はだ。二人で話をしていた。
「シャピロも馬鹿だったね」
「ああ、力だけではな」
「何にもなりはしない」
「人の心はどうすることもできん」
 二人でこう話すのだった。
「それだけじゃね」
「何にもなりはしない」
「では皆さん」
 シュウは一同に促した。
「行きましょう」
「はい、シュウ様」
「いざ」
 モニカとサフィーネが彼の言葉に応える。
「参らないわけではないですがいざ参りましょう」
「ムゲ帝国との決戦の場に」
 このこと自体はよかった。しかしであった。
 モニカの今の言葉にはだ。さしものシュウも突っ込まずにはいられなかった。
「あの、モニカ」
「はい?」
「また文法がおかしいのですが」
「あら、そうであるのではないのではありませんか?」
「何が言いたいんだ?」
「さあ」
「最早何が何だか」
 皆もモニカの今の言葉には唖然だった。しかしとにかくだった。
 今その中に入るのだった。ムゲの宇宙に。


第六十二話   完


                                   2010・9・28   
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