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スーパーロボット大戦パーフェクト 完結篇

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第六十一話 神になろうとした男

         第六十一話 神になろうとした男
「いよいよだな」
「ああ」
 サンシローが一矢の言葉に頷いていた。
「シャピロの野郎をな」
「ここで遂にだな」
「おそらくだけれどな」
 今言ったのは竜馬である。
「あいつも総力で向かって来るな」
「そうだな。ただ」
 ここで言ったのはアランである。
「狙う敵は一人だ」
「シャピロだけか」
「あいつだけなんですね」
「そうだ、あいつだ」
 また言うアランだった。
「キーツだけを狙ってそれで倒せばそれで終わる」
「あいつとの戦いを」
「今度こそ」
「ああ、やってやるぜ」
 忍も言う。
「俺は絶対に生き残ってだ」
「勝つんだね」
「当たり前だろ?」
 こう沙羅にも答える。そしてだ。
 彼はまただ言った。
「あいつを真っ二つにしてそれで終わりにしてやるぜ」
「そうだな」
 アランはその彼の言葉を聞いて微笑んだ。そうしてだった。
「藤原らしい言葉だ」
「俺は俺だよ」
 こう返す忍だった。
「それ以外の誰にもなれねえさ」
「いや、なれるだろ」
 ここで言ったのはジュドーだった。
「違うか?それはよ」
「まあ御前にはなれるな」
 忍もこうジュドーに返す。
「それと竜にもな」
「二極神な」
「なれるな」
「そうだよな」
「何かこの二人もな」
 アランはそんな彼等を見ながらまた言った。
「縁が深いな」
「ああ、縁は前から感じてたぜ」
「しっかりとな」
「そうか。それでだが」
 アランはここで話を変えてきた。
「データはもう揃えてある」
「へっ、そんなのよりもな」
 ここでも忍であった。
「力だ。それで倒すぜ」
「まあ忍はね」
 沙羅が呆れた顔で彼を見て話した。
「どうせそのデータを活かせないだろうけれどね」
「まあそうだろうね」
「今までデータを使ったことはなかった」
 雅人と亮も話す。
「忍っていつも直感だけで戦うから」
「闘争心のままな」
「おい、何だよそれはよ」
 忍はその彼等の言葉に反論した。
「揃いも揃ってよ」
「いや、この場合は仕方ない」
 ナガレがこう返すのだった。
「今までの行動を見ていればな」
「ちっ、随分な言われようだな」
「藤原の場合はだ」
 ここでまた言うアランだった。
「戦いの先に明確なビジョンを持つことが必要だな」
「どういうことだよ、それってよ」
「つまりだ」
「ああ」
「戦いが終わった後を考えろということだ」
 彼が言うのはこのことだった。
「何かの目的がありそれを勝ち取る為にだ」
「それでかよ」
「そうだ。それで戦いは起こる」
 こう話すのだった。
「その勝ち取ったものをどう活かすかがだ」
「大事だってんだな」
「それが最も重要なのだ」
 そうだというのである。
「わかっているな」
「次の戦いの後か」
 話を聞くサンシローも難しい顔になる。
「俺もだな」
「やっぱり御前はあれか」
「復帰だな」
 ピートとリーが話す。
「プロ野球にか」
「肩も完治したからな」
「ああ、そのつもりだ」
 サンシローは真面目な顔で述べた。
「今度こそな」
「そうですね。僕も水泳に」
「俺はどうしたものか」
 ブンタとヤマガタケも話す。
「戻りますか」
「力士に戻るのもな」
「何か皆色々あるんだね」 
 沙羅は少し寂しい顔になって呟いた。
「そうなんだね」
「おい、沙羅」
 忍が沙羅に声をかけようとする。しかしだった。
 沙羅はだ。こう言うのだった。
「あたしは先に休んでる」
「先にかよ」
「ああ、クーガーの整備は終わってるからね」
 こう言ってだった。立ち去るのだった。それを見てだ。
 まずはだ。ヒイロが話した。
「おかしいな」
「ああ、無理もないな」
「そうだな」
 その彼にデュオとウーヒェイが応えた。
「決戦だからな」
「ムゲ帝国とな」
「間違いなくそのせいだ」
 また言うヒイロだった。
「それでだ」
「シャピロ=キーツ」
「彼ですね」
 トロワとカトルも話す。
「当然だな」
「そうですね、複雑な心境になられるのも」
「ここは私が行こうか」
 ノインが気を利かして言った。
「今からな」
「いや、それはいい」
 止めたのはアランだった。
「適役がいる」
「そうだな」
 ノインは彼の言葉にすぐに察しをつけた。
「それではな」
「藤原、任せた」
「俺かよ」
「そうだ、獣戦機隊のリーダーは御前だ」
 これを話すのだった。
「隊員の精神的ケアも大事な任務だぞ」
「あ、ああ。わかった」
 忍も彼のその言葉に頷いた。
「だったらな」
「ねえ忍」
「早くしてくれるか」
 雅人と亮が真剣な顔で話してきた。
「沙羅があのままじゃね」
「俺達全員の士気に関わる」
「ああ、わかってるさ」
 こう返す忍だった。
「リーダーとして気合を入れて来るぜ」
「あれっ?」
「何かおかしい?」
 皆ここでふと不思議に思った。
「普段リーダー風なんて吹かせないのに」
「それでも何で?」
「おかしいよな」
「そういえば」
「成程ね」
 しかしここでミサトがくすりと笑った。
「そういうことね」
「ええ、そうね」
 リツコも同じ顔で笑っている。
「そういうことね」
「あの子もわかってきたのね」
「野暮だとばかり思っていたけれど」
「何だ?おばさん連中が騒ぎだしたぞ」
 また言うシンだった。
「歳食っててそれでぼけたか?」
 数分後。シンは残骸になっていた。 
 二人はその残骸を踏みつけながらだ。言うのであった。
「じゃあこれからはね」
「見所よ」
 こう言うのであった。
「じゃあ皆、今からね」
「決戦に備えてね」
 こう言うのであった。そして沙羅は。
 一人になっていた。そして考えるのだった。
「シャピロ」
 この男のことをだ。
「あたしにとってあんたとの戦いが全てだった」
 こう呟くのだった。
「でもそれももうすぐに終わる。そしてあたしは」
「おい」
 そしてだ。ここでだった。
「沙羅」
「何だ、あんたなの」
「何だはねえだろ」
 まずはこう返す彼だった。
「心配して来てやったってのによ」
「心配?」
「ああ、そうだよ」
 ここから口ごもる彼だった。
「あのな、それでな」
「それで?」
「俺はリーダーとしてな。その、な」
「有り難うね」
「ああ、それでもな」
「それでも?」
「やっとって感じだな」
 こう言うのであった。
「本当にな」
「やっとなのね」
「ああ、確かに経験は積めた」
 忍はここでこう言った。
「戦い、そして人間としてのな」
「そうね。それはね」
「しかしな」
 そしてであった。
「代わりに色々なものも失っちまったな」
「そうね。けれどそれでもね」
「それでもかよ」
「ええ、あたしにとっては必要な時間だったわ」
 沙羅の言葉である。
「充分ね」
「時間が全てを忘れさせてくれるってのか」
「アランが言ってたじゃない」
「あいつがか」
「ええ。それでね」
 そしてだ。沙羅は言った。
「あたしもね」
「ああ」
「戦いの後のことを考えることにしたのよ」
「けれどな」
「何?」
「それでもどうするんだ?」
 沙羅への今度の問いはこれであった。
「その時もう奴はいねえぜ」
「そうね」
 沙羅もそのことは認めた。
「それはね」
「それでもかよ」
「その時あんたはいるじゃない」
「!?まさか御前」
「若しこの戦いで生き残ったら」
 驚いた顔になった忍にだ。笑顔でまた言った。
「パーーーッとやりましょう」
「皆で?」
「そう、皆でよ」
 手を上に大きく振っての言葉だった。
「楽しくやりましょうよ」
「あ、ああ」
 ここで忍も頷いた。そしてだ。
「それじゃあな」
「それでいいわよね」
「ああ、派手にやってやるぜ!」
 沙羅も忍も吹っ切れた。その時だった。
 ロッサがだ。シャピロに告げていた。
「シャピロ様」
「ロンド=ベルか」
「はい、彼等です」
「今どうしている」
「アステロイドベルトに入ろうとしています」
 そうだというのだった。
「そうか、わかった」
「では、だ」
 ここでだ。シャピロは言った。
「神の子はだ」
「あの娘は」
「誰にも渡さん」
 このことをまた言った。
「例え相手が誰であろうともだ」
「しかしです」
 ここでだ。ロッサの顔が曇った。
 そうしてだ。こう言うのだった。
「その娘はまだ幼く」
「黙れ!」
「うっ・・・・・・!」
 ロッサの頬を叩いてだ。傲然として問うのだった。
「ロッサよ」
「は、はい」
「貴様は私に仕えているのだ」
「仕えて・・・・・・」
「そうだ」
 完全に見下ろした目だった。
「それ以外の何者でもない」
 そしてこう言った。
「神に意見するな」
「・・・・・・貴方は」
「何だ、まだ言うのか」
「参謀は不要なのですね」
 彼女もようやくわかった。
「愛を必要としないように」
「何?」
「つまり貴方は」
 シャピロを見据えていた。それまでの目ではなかった。
「誰も必要とされていない。そうですね」
「女だな」
 やはりわからないシャピロだった。
「所詮な」
「そう言われますか」
「感情の先に強引に相手の考えを引き出そうとする」
「それが悪いと言われるのですね」
「愚かだ」
 一言だった。
「神にそれ以上の口出しは許さん」
「・・・・・・・・・」
 ロッサは無言で立ち去った。しかしだ。
 シャピロはイルイを見てだ。傲然としたまま言う。
「神の子を手に入れた今」
「貴方は」
「私は神となるのだ」
 イルイの言葉も聞いてはいない。
「あの日あの場所で聞いたハーモニーは」
「それは」
「この私を導く銀河からの啓示」
「違うわ」
「私は選ばれるべくしてだ」
 イルイの言葉は何も耳に入っていない。そもそも彼女が言葉を出しているということすらだ。今の彼には気付かないものであった。
「神となるのだ」
「神とは」
「さあ来いロンド=ベル」
 己だけであった。
「御前達は神の記憶の中に残された数少ない汚点だ」
「それは貴方の」
「アステロイドベルトで御前達を葬りだ」
「思い上がり」
「バルマー帝国へ飛び」
 既に己の中だけでできていた。
「もう一人の神を殺しそして」
「無理、貴方には」
「そして私が銀河の意志と一つになるのだ!」
「何もわかっていない・・・・・・」
 ただシャピロだけがわかっていなかった。何もかも。
 そしてそのアステロイドベルトに三将軍を擁して決戦を挑むのだった。
「やっぱり出て来たな」
「そうだな」
「予想通りね」
「全くね」
 ロンド=ベルの面々は冷静そのものだった。
「まあここでね」
「あいつを倒して」
「清々しましょうよ」
「本当にね」
「ロンド=ベルよ」
 だがシャピロだけは違っていた。
「この星屑が御前達の墓場だ」
「はい、言った」
「もう聞き飽きたこの手の言葉」
「陳腐ね、全く」
 自信に満ちたシャピロと違いだ。彼等は冷めていた。
 そしてそれはだ。彼等も同じだった。
「ではだ、三将軍よ」
「・・・・・・・・・」
「御前達の働きに期待する」
 彼等はだ。この言葉と共に戦場を離脱しはじめたのだった。
 それを見てだ。シャピロは眉を顰めさせて彼等に問い返したのだった。
「何のつもりだ」
「ふん、誰が貴様なぞにだ」
「その通りだ」
「戦うつもりはない」
 これが彼等の言葉だった。
「貴様の為に戦う心も命もない」
「貴様の下らぬ復讐劇なぞだ」
「貴様だけでしておくのだ」
 三将軍はシャピロに冷たく言い放った。
「ではな。勝手に戦うがいい」
「地球人は地球人同士血を流し合え」
「健闘は祈ってやろう」
 こう言い捨てて自分達の軍と共に戦場を去った。残ったのはシャピロと彼の周りにいる百万近い無人操縦の軍だけであった。他には何もなかった。
「まあそうなるよな」
「そうよね」
「所詮はな」
 また言うロンド=ベルの面々であった。
「所詮裏切り者だし」
「しかも私利私欲で裏切ってね」
「故郷を売ったような奴だし」
「つまり売国奴だな」
 シャピロをだ。容赦なく評する。
「そんな奴の末路なんてな」
「まあこんなものね」
「無様って言えば無様だけれど」
「自業自得ね」
「全くもってね」
「おのれ・・・・・・」
 だがシャピロは見えていない。
「この私を裏切るとは身の程知らずだ」
「おやおや、熱くなってるし」
「まだわかっていねえな」
「ああいうのを本当の馬鹿っていうんでしょうね」
「そうね」
「いいだろう・・・・・・」
 シャピロは一人になってもまだ言っていた。
「ロンド=ベルとバルマーを倒した後はだ」
「何するって?」
「それで」
「何をかしら」
「ムゲ=ゾルバトス帝国よ」
 彼等にもその怒りの矛先を向けていた。
「御前達も神の力で滅ぼしてやる!」
「あっ、そう」
「じゃあ精々頑張れば?」
「精々ね」
 ロンド=ベルの言葉は今の彼には聞こえていない。そしてであった。
 ロッサもだ。
「三将軍が動いたわね。それなら」
 己の行動に移った。シャピロに気付かれないようにして。
 そしてだった。シャピロはロンド=ベルに対しても言うのであった。
「来たな」
「ずっと見てたぜ」
「そうよ、ずっとね」
 まずはこう返す彼等であった。
「じゃあ本当にね」
「ここで終わりにしてあげるわよ」
「シャピロ!」
 忍も彼に言う。
「逃げ出さなかったことは褒めてやる!」
「藤原か」
「バルマー戦役から続いた俺達の戦いの決着」
 そのシャピロを見据えて告げる。
「今日ここでつけてやる!」
「いいだろう」
 シャピロは彼の言葉を受けて言った。
「御前達に神が生まれる瞬間を見せてやる」
「相変わらずだね」
 沙羅の言葉も冷めていた。
「あんたはね」
「あのな」
「一つ言っておくわよ」
「何をだ」
「もうあんたには何もないのよ」
 こう彼に言うのだった。
「そう、何もね」
「何を言うかと思えばだ」
 シャピロは沙羅の今の言葉に冷笑で返した。
「戯言を」
「いや、今の沙羅の言葉は戯言じゃねえ」
 甲児であった。
「手前のことを神だと思ってる奴にな」
「何だというのだ?」
「碌な奴はいねえんだよ」
「神様を気取るんならな!」
 サンシローも言う。
「ちっとはいいことをしてみやがれ!」
「ふん」
 だがシャピロは彼等にも返した。
「御前達は神に突いて根本的にはき違えている」
「何っ!?」
「どういうこと、それは」
 鉄也とジュンがいぶかしむ。するとであった。
 シャピロはだ。こう言うのだった。
「神の存在とはだ」
「何だ?」
「何だってんだ?」
「あらゆる者の干渉を受けない存在であり」
 そしてであった。
「同時にあらゆる者の運命を握る絶対者なのだ」
「ああ、そうなんだ」
「ふうん」
「はい、駄目」
「零点というかマイナス一億点」
 殆どの人間は話を聞いてこう言い捨てた。
「勝手にそう思っていたら?」
「自分一人でね」
「神の行為に善意はない」
 だがシャピロはまだ言うのだった。
「何故なら神の存在こそが全てを超越した絶対の真理だからだ」
「あ、あのボス」
「今の言葉って」
「あ、ああそうだよな」
 ヌケにムチャ、ボスは彼の言葉の意味が言葉ではわからなかった。
「つまりでやんすよ」
「それって」
「あいつ自分が馬鹿だって言ったんだよな」
 三人はこう考えたのだった。
「そういうことだよな」
「え、ええ。そう思うでやんすよ」
「あっしも」
「何かそれはわかったぜ」
「ああ、その通りだボス」
 忍も彼等に言う。
「そんなことを言い出す野郎はな」
「物凄い馬鹿でやんすね」
「しかもおまけに」
「とんでもない奴だよな」
 こう言う三人であった。
「色々こういう奴は見てきたでやんすが」
「どいつもこいつも」
「最低だったよな」
「こいつはとんでもねえ悪党だ」
 忍はそのシャピロを嫌悪に満ちた目で見据えていた。
「その存在が許せねえ!」
「己の存在と絶対とするエゴ」
 亮もだった。
「見過ごすわけにはいかんな」
「そしてそのエゴによりだ」
 アランも言う。
「どれだけの人間が傷つき、死んでいったことか」
「それがわからないっていうんなら!」
 雅人も激昂している。
「俺達が教えてやる!」
「その通りさ!」
 沙羅も同じだった。
「あんたの存在は許されないってね!」
「これ以上は為しても時間の無駄だ」
 シャピロの耳にはだ。既にそんな言葉は入らなくなっていた。
 それでだ。こう言うのであった。
「貴様達の存在をこの宇宙から抹消することでだ」
「あいつまだ言うんだな」
「本当だニャ」
「同じようなことばかりだニャ」
 マサキにクロとシロが言う。
「何か飽きてきたな」
「そうだニャ、いつもいつも同じことばかりニャ」
「あくびが出るニャ」
「というかあいつのやってることって」
「そやな」
「めっちゃ恥ずかしいことばかりやで」
 ジュンにチョーサク、ショージもミオの周りで話す。
「自分が神になりたいから地球裏切って」
「バルマーについてわい等に負けて」
「そんでムゲ帝国に拾われて」
 そこからまだ続いた。
「で、今度は利用していた相手に見捨てられて」
「今はほんま一人やで」
「わいああなったら恥ずかしゅうて死んでまうわ」
「そうよね。ああなったら人間終わりよね」
 ミオもシャピロには嫌悪の目を向けていた。
「完全にね」
「ほな師匠」
「あいつのことはここで」
「終わりにしましょ」
「勿論よ。全然面白くない相手だし」
 ミオもシャピロはそう見ていた。
「さっさと終わらせましょう」
「大言壮語は結構」
 レーツェルもシャピロをそう見ていた。
「実力が備わっているのならばな」
「貴様の底はわかっている」
 フォルカは見抜いていた。
「やれるものならやってみせるのだな」
「その神の力!」
 ブリットが気合を入れた。
「俺達が否定してやる!」
「そしてイルイちゃんを!」
 クスハは彼女のことを考えていた。
「返してもらいます!」
「行くよ雅人、亮!」
「ああ!」
「わかっている」
 二人は沙羅の言葉に頷く。そして。
 忍もだ。今叫んだ。
「これが御前との最後の戦いだ!」
 そしてこの言葉だった。
「やってやるぜ!」
「総員攻撃開始!」
「目標敵旗艦!」
 こうしてシャピロとの最後の戦いがはじまったのだった。
 戦いはいきなりロンド=ベルが敵を薙ぎ倒してはじまった。
「所詮無人機なんてな!」
「幾ら数が多くても!」
「どうってことないわよ!」
「その通りだね」
 万丈もダイターンの中で言った。
「この程度じゃね。百万いても一千万いてもね」
「どうってことはありませんね」
 綾人も言う。
「これが神の力ですか」
「どうだい、綾人君」
 万丈は彼に問うた。
「神の力は」
「空しいですね」
 彼はこう考えていた。
「あの時、僕もそうした存在になりましたけれど」
「力はね」
「けれど心は人のままでした」
 そうだったというのである。
「だから。遥さんのところに戻れました」
「そうだったね。君は神じゃなかった」
「はい」
「人間だった」
「そうですね。人を愛せる人なんですね」
「けれどあいつは違う」
 他ならぬシャピロのことである。ダイターンハンマーを振り回し周りの敵を薙ぎ倒しながら綾人と話している。
 綾人も弓矢を放ってだ。敵を倒しながら万丈と話していた。
「あいつは自分だけなんだ」
「エゴイストですね」
「このうえないね。最悪のエゴイストだよ」
「最低ですね」
「そうだね。人間としてね」
「確かに」
「さて、それじゃあ」
 シャピロの旗艦が見えてきた。そこでだった。
「行こう」
「はい、道を開けましょう」
 二人で突っ込んでだった。旗艦の周りの敵を倒してだ。そして。
「さあ、やるんだ!」
「今です!」
 二人でダンクーガに叫ぶ。ダンクーガはその剣で周りの敵を真っ二つにしていた。そのダンクーガに対して声をかけたのである。
「あいつは君達がだ!」
「決めて下さい!」
「よし、わかったぜ!」
 忍が応えてだった。そして。
「いっけええええええーーーーーーーーーっ!断空砲!!」
 それを放ちだった。旗艦を貫いたのだった。
 一撃だった。旗艦は動きを止めた。
「敵の旗艦が止まったわ!」
「やったか!?」
 美和と宙が言った。
「これで」
「あいつも」
「いや、まだです!」
 だがここで遥か言った。
「まだ何かが」
「来るぞ!」
 アランが言うとだった。爆発するその旗艦からだ。
 出て来た。青いマシンがだ。
「あれは」
「ああ、シャピロだね」
「そうだね」
「間違いない」
 獣戦機隊の面々がそれぞれ言う。
「ほら、見て」
「うん、沙羅」
「あの右肩だな」
 雅人と亮は彼女の言葉にそのマシンの右肩を見たするとだった。
 小刻みに震えていた。それを見てだった。忍が言った。
「あいつに飛行訓練を受けてた時だったな」
「思い出したね、忍」
「機嫌が悪いか興奮している時はな」
 その時はというのだ。
「ああして決まってな」
「あれがあいつの癖なんだよ」
 沙羅が言った。
「あいつは今」
「死ね・・・・・・」
 そのシャピロの怒りに満ちた声が来た。
「この私を完全に怒らせたな」
「御得意の神を気取った台詞かい、シャピロ」
「結城、貴様・・・・・・」
「生憎だね。今のあんたはね」
「何だというのだ」
「神というよりは悪魔さ」
 それだというのだ。
「それがいいところさ」
「自分で出て来た度胸は認めてやる!」
 忍も彼に言う。
「だがな!」
「何だというのだ」
「そいつが運の尽きだ!」
 忍は完全に燃え上がっていた。
「来やがれ!」
 そして叫ぶ。
「バルマー戦役の時の様に返り討ちにしてやるぜ!」
「そうです」
 エターナルの艦橋からラクスが言った。
 既にその目には表情がない。発動している。
 その顔でだ。彼女は言うのだった。
「人はあくまで人です」
「ああ、そうだよ」
「その通りだよ」
「神ではありません」
 ラクスは仲間達にもこう返した。
「そして神とはです」
「どういったものか」
「それは」
「あくまで人を愛し慈しむものです」
 そういったものだというのだ。
「その無限の愛情で」
「じゃあシャピロは」
「やっぱり」
「己が神でありたいと思っているだけです」
 まさに切り捨てた。言葉で。
「ただ。それだけです」
「だよな。神なんかじゃない」
「例えどんな力を持っても」
「あいつは神なんかじゃない」
「そうね」
 このことがだ。彼等にもよくわかった。そしてだ。
 ラクスはだ。シャピロをこう評した。
「小さい人です」
「確かに」
 バルトフェルドもラクスのその言葉に頷く。
「己の為だけに他人を犠牲にするような奴は」
「そうした人こそ。倒れるべきなのです」
 グラドス人に対するのと同じ言葉であった。
「ですから」
「ならここは」
「はい、増援が来ます」
 既にそれを察しているラクスだった。
「ですから」
「総員あらためて迎撃用意!」
 バルトフェルドが指示を出す。
「僕もあいつは嫌いでねえ」
「やはりそうですか」
「何か彼を思い出すというかね」
 こう笑いながらダコスタに返した。
「あの、ほら」
「ああ、あの人ですね」
「そう。変態仮面君ね」
 よりによってこの呼び名であった。
「あれだよね。彼だよな」
「ううん、やっぱりそうですか」
「そう、彼だよ」
 ラウ=ル=クルーゼであった。
「何処か似てないかい?」
「目指しているもの、目指していたものは違いますが」
「けれど似ているね」
「はい、確かに」
「だから嫌いなんだよ」
 バルトフェルドはまた言った。
「ああした上から目線の人間はね」
「それは私もです」
「所詮同じなんだよ」
 これがバルトフェルドの持論であった。
「人間っていうのはね」
「同じですね、本当に」
「コーディネイトが何かっていうとね」
「何でもありませんね」
「指の形が違うとか。髪の色が違うとか」
 例えは些細なものだった。
「そんなことに過ぎないからね」
「ええ、人は同じですから」
「生まれた星や世界が違っても同じなんだよ」
 この考えにも達している彼等だった。
「それがわかっていないのはね」
「小さなことですね」
「その通り。それじゃあ」
「はい」
「増援を叩き潰すとしよう」
 実に素っ気無い言葉だった。
「今からね」
「はい、それでは」
 こうしてだった。シャピロのそのデザイアーの周りで全軍構えた。するとだった。
「よし、ラクスの予想通り!」
「見え見えなんだよ!」
「もうお決まりだな!」
「ふむ」
 しかしそれを見てだった。シャピロは言うのだった。
「ロッサめ、所詮は私から離れることができんか」
「こいつまだ言うんだな」
「そうだな」
 盾人と弾児も呆れている。
「自分がここまでわからないのもな」
「本当に喜劇だな」
「小者だ」
 ガスコンも太鼓判を押すまでに。
「所詮はな」
「じゃあ今から」
「また倒しますか」
「無人機を」
 彼等は戦闘に入る。そしてだった。
 そのロッサはだ。離れた場所から冷たい目で彼を見ていた。
「精々頑張りなさい、シャピロ」
 もうそこには一片の愛情も残っていなかった。
「貴方が奴等を足止めしている間に私は」
「藤原、結城」
「何だ?」
「何だってのよ」
「そしてロンド=ベルよ」
 右肩を震わせたまま。憎悪に満ちた声を出していた。
「ここから手前は」
 今言ったのは。ヤザンだった。
「御前達の存在を抹消してやろうと言う」
「御前達の存在を抹消してやろう!」
 そのものずばりだった。
「この私がな!と言う」
「この私がな!・・・・・・なっ!?」
「ほれ、予想通りだったな」
 不敵に笑ってみせるヤザンだった。
「もう手前の言うことも考えることも丸わかりなんだよ」
「くっ・・・・・・」
「何もかもがな」
「つまりだ。御前さんはもうな」
 ジェリドも完全に馬鹿にした調子だった。
「終わりってことなんだよ」
「おのれ、まだ言うのか人間共が」
「俺は確かに人間さ」
 それを隠そうともしない今のジェリドだった。
「それはあんたもだ」
「何だと、神であるこの私をまだ」
「だからあんたは神じゃねえんだよ」
 やはり見下している。
「人間なんだよ、しかも下らない奴だな」
「おのれ、貴様もまた」
「ああ、悪いがあんたの相手は俺じゃねえ」
 シャピロに向かわず他の敵を倒しているのであった。
「おい、行けダンクーガの兄ちゃん達よ」
「ああ、わかってるぜ」
 忍がだ。また前に出てだ。
「行くぜ沙羅!」
「忍!」
「今こそ俺達の怒りの炎であいつの野望を焼き尽くす!」
「シャピロの奴を」
「そうだよ、沙羅!」
 雅人も沙羅に言ってきた。
「その為にここまで来たんだろ!」
「ああ、その通りさ」
「沙羅、心を澄ませろ」
 亮は彼女の心を見ていた。
「そして澄んだ心でだ」
「その通りだ」
 アランのブラックウィングが今合さった。ファイナルダンクーガになった。
 その力の中でだ。アランはさらに言ってきた。
「御前の中には全ての熱い想いが入っているのだ!」
「皆・・・・・・」
「用意はいいよな!」
 忍も当然いる。
「沙羅!」
「ああ!」
「奴をぶっ飛ばすぜ!」
「そうだね、やるよ忍!」
 沙羅にもう迷いはなかった。そしてだった。
 そのまま向かうのであった。シャピロは。
「愚かな、やはり神に歯向かうか」
「覚悟しやがれシャピロ!」
 忍が今突っ込む。仲間達、そしてダンクーガと共に。
「やあああああああってやるぜ!」
「ならばだ」
 シャピロも動いた。そして。
 その目が光りだ。攻撃を放った。
 光がダンクーガを襲う。しかしだった。
 それはだ。断空砲に一閃されて消されてしまった。
「何っ!?」
「残念だったな!」
「私の攻撃を無効化したというのか」
「手前の癖がな!」
 忍は目を怒らせる彼にまた返した。
「機体にまで出てるんだよ!」
「何っ!?」
「あんたはいつもそうさ」
 沙羅も彼に言う。
「他人を見下してばかりで」
「それがどうしたというのだ」
「自分の欠点には目をつぶる!」
 まさにシャピロである。
「気付きもしないんだ!」
「己を知れば百戦危うからず」
 亮もいる。
「その言葉、忘れたようだな」
「孫子か」
 今まさに思い出した。その通りだった。
「それか」
「所詮はあんたは」
 雅人はよりはっきりしていた。
「人間なんだよ!」
「シャピロ=キーツ!」
 アランも今彼を見据えている。
「貴様の野望はここで潰す!」
「だが、私はこれからだ」
「だから何度目だっての」
「その言葉」
 またロンド=ベルの面々の冷めた言葉だ。
 そしてだ。ゼンガーとレーツェルが告げた。
「御前は自分の欲望に勝てなかった」
「我々に傲慢な神なぞ必要ない」
 二人も言う。
「それこそが未熟である証拠!」
「そのこと理解してもらおう!」
「私の運命も存在も否定する気か・・・・・・」
「小器!!」
 ゼンガーは一喝した。
「所詮はその程度!」
「おのれ・・・・・・」
「いっけえええええ!!」
 そしてだ。断空砲のフォーメーションが来た。
 それの直撃を受けた。デザイアーが大破する。
「やったか!?」
「これで!」
 しかしだった。シャピロは生きていた。そしてだった。
「まだだ!」
 気力を振り絞って立ちだ。また蘇ってきた。
 その彼を見てだ。誰もが目を瞠った。
「まだ戦う気なの!?」
「この意志と執念が」
「奴の力なのか」
「それなら!」
「話は簡単だぜ!」
「ああ、そうだ!」
 忍は仲間達に答えた。
「倒すだけだ!」
「そうだね、確かにね」
「それしかないよね」
「全くだ」
 沙羅達は彼のその言葉に頷いた。そうしてだった。
「じゃあ忍」
「今度でね」
「決めるぞ」
「ああ、シャピロ!」
 剣を構えながらの言葉だった。
「これで終わりだ!」
「まだだ・・・・・・!」
 しかしシャピロはまだ言う。
「私はまだ倒れる訳にはいかない!」
「はい、神だからだよな」
「それしかないからね、こいつ」
 ロンド=ベルの面々の言葉は冷たい。
「けれどそれもこれで」
「遂に」
「この私を認める全ての者にだ」
 これがシャピロの本音だった。
「鉄槌を下すまでは!」
「手前は自分が認められないことをひがんでるだけだ!」
 忍はその彼をこう言い捨てた。
「そんな下らねえ奴に負けてたまるか!」
「藤原、まだ私を愚弄するか!」
「愚弄!?真実を言ってるだけだ!」
 そう言いながらだった。剣を構えてだった。
「シャピロ、これで終わりだ!」
「むっ!?」
「俺達の怒りを」
 こう言ってだった。
「俺達の本当の力をここで!」
「よし!」
「あれだね!」
「あの技を!」
「ああ、アグレッシブモードチェンジ!」
 五機に分かれた。そしてだ。
 それぞれの機体でだ。デザイアーに攻撃をかけた。 
 五つの方向からの体当たりはだ。シャピロもかわせなかった。
「ぐっ!?」
「これが俺達の獣の力だ!」
 忍はその鷲で体当たりを仕掛けていた。それが止めだった。
「どうだ、シャピロ!」
「おのれ・・・・・・」
 しかしだった。彼はまだ言うのであった。
「私はまだ・・・・・・」
「観念しな!」
 その彼に沙羅が言う。
「あんたの野望はこれで終わりだよ!」
「まだだ!」
 シャピロはまだ諦めていなかった。そしてだ。
「くっ!」
「!?逃げた!」
「この期に及んでかよ!」
「何て往生際の悪い奴だ!」
 皆これには呆れた。しかしだった。
 すぐに冷静になってだ。その逃げ先を探した。
 それがアステロイドベルトにある。廃棄された基地だった。
「バルマー帝国の基地だな」
「そうね、あれはね」
「かつてはそうだった場所か」
「あいつはあそこに」
「それではだ」
 葉月博士が言った。
「皆、いいな」
「ええ、じゃあ」
「あそこに入って」
「それで」
「幸い大きな基地だ」
 博士はこのことも確かめていた。
「このまま中に入りだ」
「そしてですね」
「そのうえで」
「今度こそあの男を倒す」
 そうするというのだった。
「それでいいな」
「ええ、それしかありませんしね」
「それなら」
「総員突入だ」
 博士は指示を出した。
「いいな」
「よし、覚悟しやがれ!」
 忍がまた叫んだ。
「手前のその往生際が悪いのもうんざりだぜ!」
「全くだよ」 
 沙羅も言う。
「いい加減終わりにしたいけれどね」
「ああ、けれど今度こそ本当に終わりだ」
 忍はその辛そうな顔の沙羅に告げた。
「いいな、だからな」
「わかってるさ、それはね」
 こう言葉を交えさせてだった。彼等は基地の中に入った。そしてそこがだ。遂に神になろうとした男の墓標になるのであった。


第六十一話   完


                                        2010・9・26
       
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