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国連宇宙軍奮闘記

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地球最後の艦隊出撃

 
前書き
3回目にして更新を忘れかけた。 

 
――2199年5月14日――
――地球 国連軍中央病院――


「ん、ここは?」
真田はその日普段とは違う場所で目を覚ました。
記憶を辿ると確か自分は第3ドックに停泊している『ゆきかぜ』の機関部で対消滅エンジンの補修作業をしていた記憶にたどり着く。
それが何故かベットの上に寝かされていた。
「おー、起きおったか。」
 誰かに声をかけられたため起きようとすると白衣を着た男性に制止させられる。
「あー、まだ起きちゃいかん。」
目の前に来た男性に聞いてみる。
「あの、ここは?」
「中央病院じゃよ、お前さん疲労でひっくり返ったんじゃよ。」
「そうだったんですか。」
 ふと目線を横に向けると時計が14日の5時30分を指していた。
 5時30分?
 何かが引っ掛かり大慌てで記憶を辿る。
 そして思い出す、親友の出撃の時を。

 一気に起き上がる。
「だ、駄目です! まだ起き上がってはいけません!」
看護士に止められる。
先ほどの医者も大急ぎで戻ってくる。
「な、なんじゃ!」
「先生、親友が6時に出撃します。」
「駄目じゃ!今日は安静にせんと、お前さん特別訓練の受け取るんじゃろ!」
 前線に比べ後方はまだ、人間に余裕はあった。
 そのためドック長には35歳を超えたものが普通であった。
 いくら優秀でも28歳でドック長というのは若すぎた。
 しかし、突然特別訓練であると言われ第3ドックを任されたのである。
「今回は見送りはあきらめるんじゃ。」
医者が自分をベットへ寝かそうとする。
「それに今からじゃ第3ドックには間に合いませんよ。」
看護師も医者を手伝う。

 だが!

「古代は・・・冥王星に行きます。」
「!!」
医者と看護師が驚く。

医者が時計を見ながらポツリと呟く。
「・・・あの時計少し遅れているようじゃな。」
「え、時間は正しいですよ、佐渡先生。」
看護師が不思議そうに言う。
「原田君。」
佐渡と呼ばれた医者が原田と呼ばれた看護師に声をかける。
「はい。」
「第3ドックで儂の見ている真田君が過労で倒れたらしいので見に行ってくれんか。」
「!」
「あ、有り難う御座います!」
「さて暇だし酒でも飲むかの。」
「忙しくても飲んでいるじゃないですか。」
原田看護師に導かれ真田はその場を後にした。

佐渡先生は棚から一升瓶を出すとその酒をカルテにかける。
「ああ、酒をカルテの上にこぼしてもうた、まあまだ何も書いてある訳じゃないがの。」
佐渡先生は酒を飲みながら呟いた。


――地球 日本上空 国連宇宙軍旗艦・戦艦『えいゆう』艦橋――


「後は『ゆきかぜ』だけです、沖田提督。」
「うむ。」
副官に言われつつ外を見る。
「まさか司令部がこれほどの航空隊を発進の援護に回してくれるとは思いませんでしたよ。」
「新型試作機までいますよ。」
 艦橋にいる人間が言う通りに各種航空機が艦隊の上空を回っていた。

――地球 日本上空 国連科学局所属 コスモゼロ――


『こちら加藤隊、異常無し!』
『こちら山本隊、こちらも異常無し!』
『こちら鶴見隊、異常ありません!』
『こちら篠原隊、異常なーし。』
『こちら山木隊、異常認めず!』
(各航空隊が異常が無いか神経を尖らせている。)
(発進中の艦隊ほど弱い物は無いから仕方は無いのだが。)
(まあこちらに接近中の敵艦など元からいないのだが、こんな時にこの艦隊が出撃する本当の理由を知っていると仕事に熱が入らないのな。)
(地球を逃げ出すための人柱の護衛か・・・。)
『試験隊! おい天野! 答えろ! おい!』
 どうやら俺の番だったらしい。
「こちら試験隊、長距離並び近距離レーダに異常無し、オクレ。」
『こちらも確認した、次回から早く応答するように。』
よりにもよって山南基地司令に直々に答えられた。
・・・後で怒られるな。



――地球 国連宇宙軍富士基地 第3ドック 『ゆきかぜ』艦橋――


「エネルギーケーブル、並び通信ケーブルカット!」
「エネルギーケーブル、並び通信ケーブルカットします!」
第3ドックでは発進準備が最終段階に来ていた。
「エンジン始動!」
「エンジン始動!」
古代の呼びかけに機関員が復唱する。
「機関部、異常は無いか?」
「ありません、ドック長に感謝したいですよ。」
 古代の問いに機関長が答える。
「残念だがドック長の真田は今病院だ。」
 親友は倒れるまで機関の調節をしたらしい。
 あいつらしいと言えばあいつらしいが。

「あれ?」
外を確認していた航海員が異変に気付く。
「どうした?」
古代が聞く。
「いえ、ドックに救急車が停車したんで。」
 外にいるドック員に何かあったのかハンドシグナルで尋ねる。
 するとすぐにドック員が何もないと返してきた。
「発進時の事故に対する備えでしょうか?」
 副官が意見を述べる。
 だが救急車から一人の男性が走ってきたのを見て納得した。
「あれ、真田技師長ですね。」
操舵主が言う。
「まったく、無茶をする。」
 だが嬉しそうに笑った。

――地球 国連宇宙軍富士基地 第3ドック 発進管制室――

「ドック長!」
「状況は!」
発進担当のドック員が驚きながら答える。
「はい、全ケーブルをカットしてあとは発進のみです。」
「遅かったか。」
もう話もできない状況になっていた。
「ドック長、艦橋を!」
真田が艦橋を見る。
古代がこっちを見て敬礼していた。
『ありがとう、行ってくる。』
そう言っている様な気がした。



――地球 日本上空 国連宇宙軍旗艦・戦艦『えいゆう』艦橋――


「『ゆきかぜ』の発進を確認!」
レーダ員が言う。
「全艦の発進を確認しました、沖田提督。」
副官が沖田提督に言う。
「うむ、冥王星攻略作戦を開始する。」
一度区切り再び言う。
「全艦、冥王星に向け出撃!」
すぐに近藤副長が復唱する。
「全艦、冥王星に向け出撃!」

2199年5月14日日本時間午前6時00分、地球最後の艦隊が出撃した。
 
 

 
後書き
沖田艦長の声優だった納谷悟朗がお亡くなりになりました。
心よりご冥福をお祈り致します。 
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