スーパーロボット大戦パーフェクト 完結篇
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第五十八話 見つかりし巫女
第五十八話 見つかりし巫女
銀河を進むロンド=ベルの中でだ。またあの話が起こっていた。
「えっ、また?」
「またシティ7にいたの」
「その二人」
「ああ、間違いないぜ」
トウマがこう皆に話すのだった。
「実際に見たからな」
「それでなの」
「それでいたっていうの」
「その二人」
「やっぱりあの屋敷にいたぜ」
トウマは皆に話す。
「シティ7の外れにあるあそこにな」
「おかしいですね」
それを聞いたエキセドルが話す。
「シティ7の市民は完全に把握されています」
「そうよね」
「もうそれはね」
「把握しやすいし」
皆この事情もわかっていた。
「何しろ宇宙の外には出られないしね」
「シティっていっても島に似てる感じだし」
「それだからね」
「やっぱりね」
こうした事情からだった。シティ7の人口統計や誰がいるかの把握は非常に容易なのである。
それでだ。それがあらためてわからないのだった。
「それで何でかしら」
「あそこに二人がいるって」
「有り得ないよね」
「そうだよな」
「元々はです」
ここでさらに話すエキセドルだった。
「あの屋敷は市長の官邸になる筈でした」
「シティ7のですよね」
「そうですよね」
「その通りです。しかしです」
エキセドルはここでまた言った。
「今シティ7に市長はいませんので」
「そういえばエキセドルさんが?」
「エキセドルの兼任?」
「実はそうなっています」
そうだというのである。
「私は軍属なので市長にはなれないのですが」
「それでもですか」
「今は」
「出航の時からそうした余裕がなく」
シティ7の複雑な事情も話される。
「そうしてです」
「ううん、シティ7も大変ですね」
「全くですね」
「それで官邸は空いたままだったのです」
話が屋敷のそれに戻る。
「そうした事情だったのです」
「成程ね」
「そうだったんですね」
「じゃあそこに今いるのって」
「一体誰かな」
「浮浪者とか?」
こう言ったのはルナマリアだった。
「そうした人?」
「いえ、ですからそれはありません」
エキセドルがそれを否定した。
「浮浪者ということはです」
「シティ7の人のことは全てわかっているからですか」
「そうです。シティ7には今のところ浮浪者はいません」
その通りだというのである。
「ですからそれは」
「じゃあ誰かな」
「不良が居場所にしてるとか?」
「あっ、それ有り得るよな」
「確かにね」
皆次に考えたのはこのケースだった。
「それって問題だよな」
「そこで何やってるかわからないし」
「殺人とかあったらやばいぜ」
「そうよね」
皆こう考えてだした。そうしてだ。
皆で話してだ。あることを決めた。
「お屋敷の中に入るか」
「そうだよな。それで誰かいるか確かめて」
「若し不良とかがいて悪さをしていたら」
「その時は」
話が物騒な方向にも向かう。
「容赦なく懲らしめてやらないとな」
「そうだよな」
こう話してだった。彼等は人選から屋敷に向かった。その選ばれたメンバーはだ。
「俺か」
「私なのね」
まずはトウマとミナキだった。
「何かそんな予感はしてたけれどな」
「私は全然だったけれど」
二人の予感はここでは全く違っていた。
「それでもな」
「そうよね」
「決まったからにはな」
「やらせてもらいましょう、トウマ」
ミナキから言ってだった。その他にはだ。
「行くか」
「ああ、そうだな」
「いざな」
ヒイロにデュオ、ウーヒェイが揃って話す。
「何がいるかわからない」
「用心しねえとな」
「その通りだ」
そしてだ。この三人の他にはだ。
トロワとカトルもいる。トロワがそのカトルに対して問う。
「ところでだ」
「何かあるの?」
「今回はマグアナック隊は来ないのだな」
トロワが問うのはこのことだった。128
「今は」
「ああ、来てくれるよ」
ところがカトルはにこりと笑って言うのであった。
「ちゃんとね」
「どうしてだ」
「僕が呼べばそれでね」
来るというのである。
「ちゃんと皆来てくれるよ」
「そうか」
「いや、そうかって問題じゃないだろ」
「そうよ、何よそれ」
ラウルとフィオナもいた。
「前から不思議に思ってたけれどな」
「マグアナック隊っていつもいきなり出て来るからね」
「あれいつも何処にいるんだ?」
「そうそう。いきなりだし」
「あれっ、いつもダイダロスにいますけれど」
その二人にも穏やかに返すカトルだった。
「それはもう御存知ですよね」
「いや、あれもかなり妙だけれどな」
「カトルが呼べばすぐに全機出て来るし」
これも謎であった。
「だからそれってさ」
「どういう理屈なのよ」
「それに今も皆出て来るんだろ?」
「それもわからないし」
「まあそれを言えばな」
「あんたもね」
二人は今度はティスに顔を向けた。彼女とラリアー、デスピニスも一緒だった。
「御前のあの巨大なマシンもいきなり出て来るよな」
「呼べばね」
「あれは別の世界から来てるのよ」
こう説明するティスだった。
「これでわかるでしょ」
「ああ、それでか」
「それでなのね」
ラウルとフィオナもそれに頷くのだった。
「あのでかいマシンはそれか」
「成程ね」
「あたしの場合はそれで説明がつくでしょ」
「そうだね」
「私もわかったわ」
ラリアーとデスピニスも彼女のその説明に頷くのだった。
しかしだ。ティスもまた言うのだった。
「それでカトルだけれど」
「ですから皆待機してくれているから」
「それで説明がつかないのよ」
こうカトルに返す。
「どう考えてもね」
「そうなのかな」
「一人や二人じゃないじゃない」
ティスはこのことを指摘した。
「四十人よね」
「うん、そうだよ」
「男四十匹マグアナック隊って自称してるけれど」
マグアナック隊からの言葉だ。
「それでも。多いわよね」
「うん、一個小隊だね」
「そうよね」
ラリアーとデスピニスも話す。
「それを考えたらね」
「やっぱり。無理があるわ」
「世の中ってのは色々あるけれど」
「それでもね」
また話すラウルとフィオナだった。
「この話は謎だよな」
「それにマグアナック隊の人達って」
彼等の謎はまだあった。
「撃墜されないよな」
「絶対にね」
「弾にも当たらないだろ」
「常に戦場にいてもね」
それもあった。
「あれ、どういう現象なんだよ」
「凄い不思議なんだけれど」
「それはですね」
このことについても説明するカトルだった。
「皆腕がいいから」
「だからそういう問題じゃねえだろ」
「攻撃されてないような気もするし」
フィオナはこんな疑念も抱いていた。
「どうしてもな。あの人達はな」
「おかしなことだらけよ」
「マイクの兄弟もそうだよな」
「そういえばそうよね」
トウマとミナキはマイクの兄弟達のことも話す。
「戦場にいてもな」
「攻撃受けないけれど」
「どうしてだろ」
「そうよね」
「一体どうしてかしら」
こう話していた。不思議なこともあるのだった。
しかしだ。ここでだった。敵が来たのであった。
「宇宙怪獣か」
「奴等か」
「何か久し振りね」
宇宙怪獣の反応を見ての言葉だ。
「しかし。あの連中ここにまで出て来るなんて」
「何処にでも出て来るんだな」
「この銀河のあちこちに」
「そういえば」
ここでタシロが言った。
「前から思っていたのだがな」
「どうかしましたか?」
「いや、宇宙怪獣はいきなり出て来たな」
それを言うのだった。
「何の前触れもなくだ」
「そういえばそうですね」
ここで副長も気付いたのだった。
「どんな生物にも進化のルーツはありますが」
「そうだな」
「しかし宇宙怪獣は」
「急に出て来た。しかもだ」
タシロの宇宙怪獣への指摘は続く。
「数が爆発的に増えているな」
「その生態も異様ですし」
「惑星に巣食いそして餌食としていく」
その宇宙怪獣の不気味な習性だった。
「こんな生物は他にはいない」
「その通りです」
「そんな奇怪な生物が果たして存在し得るか。いや」
タシロは言った。
「何故存在しているのだ」
「謎ですね、確かに」
「謎は多いな、宇宙怪獣にも」
「全くですね」
「しかし今は謎は置いておく」
それは後だというのだった。
「全軍出撃だ」
「了解」
「それでは」
タシロの言葉を受けてだ。ロンド=ベルは全軍を挙げて出撃したのだった。ライディーンが彼等を見て激しく反応を示すのだった。
「ライディーン、それならだ」
「いい、洸」
マリがライディーンに乗る洸に対して告げた。
「ゴッドボイスは」
「ああ。最近全然使っていないな」
「あれは使わない方がいいと思うわ」
「そうですね」
麗がマリの言葉に頷く。
「あの力は。洸さんの寿命を縮めます」
「そうだな。ここぞという時以外にはな」
神宮寺も言う。
「あれは使うな」
「その方がいいか」
「そうよ。御願いね」
マリの言葉はかなり切実なものだった。
「私悪い予感がするし」
「そうですね。それにです」
猿丸もここで話す。
「今はゴッドボイスを使わなくても充分戦えますね」
「それでなのか」
「洸さんも実際にこの長い戦いでゴッドバードはかなり使ってますね」
「ああ」
「しかしゴッドボイスはどうですか?」
「殆ど使っていないな」
自分でもこのことに気付いた。
「そういうことか」
「はい、そういうことです」
まさにその通りだというのだった。
「そこに答えがあります」
「しかしその時はか」
「必ず来ます。ですが」
「ですが?」
「おそらくその時はゴッドボイスを使うよりも重大な時です」
そうだというのである。
「その時になればライディーンが教えてくれるでしょう」
「わかったよ。それじゃあ」
「はい、そういうことで」
こう話してだった。洸達は敵を待つ。宇宙怪獣達はいつもの大軍でだ。ロンド=ベルに襲い掛かって来た。
「さて、それじゃあな」
「やるか」
「ええ」
「数は」
マヤがだ。ここで全員に話した。
「二百万です」
「何か相変わらず宇宙怪獣は」
「かなりの数だよな」
「全く」
完全に慣れた口調だった。そしてだった。
迫り来る宇宙怪獣達を引きつけてだ。総攻撃を浴びせたのだった。
それによってまずは勢いを止めた。しかしだった。
宇宙海獣達は次から次に来る。その勢いは止まらず幾ら倒されてもやって来る。二百万という数を使っての攻撃であった。
彼等はその宇宙怪獣達と戦う。それに専念していた。
「攻撃は単調ね」
「ええ、そうね」
カズミはユングのその言葉に頷いた。
「宇宙怪獣らしくね」
「本能だけの攻撃ね」
「そうね。だから楽だけれど」
ユングはここでこう言った。
それでだ。ガンバスターは攻撃を仕掛けるのだった。
「お姉様、あの敵ね」
「ええ、あれよ」
敵の中の合体型を見据えてだった。ノリコはカズミに対して言ったのだった。
「あの敵を倒しましょう」
「それじゃあ仕掛けるわ」
「ノリコ、何をするのかしら」
「これでどうかしら」
こう言ってだった。バットを出してだ。
「バスターホームランでどう?」
「ええ、そうね」
ノリコのその言葉に頷く。
「ここはね。それでいきましょう」
「わかったわ、じゃあ!」
そしてだ。二人で攻撃を放つのだった。
「バスターホームラン!」
「やるわよ!」
バットから打球を放ってだ。宇宙怪獣を撃つ。それは一撃で宇宙怪獣のその巨大な身体を貫いてだ。葬り去ったのであった。
「よし、やったわ!」
「いえ、まだよ」
カズミは喜ぶノリコの手綱を握り締めた。
「敵はまだ多いわよ」
「そうね。じゃあ」
「勝って兜の緒を締めろよ」
この辺りはやはりカズミだった。
「いいわね」
「わかったわ。お姉様」
ノリコはカズミの言葉を受けて気を引き締めなおす。そのうえで再び戦いに向かう。しかしだった。彼女達はあくまで宇宙怪獣に専念していた。
それでだ。後ろには気付いていなかった。彼等がいたことにだ。
「よし、いいな」
「はい」
ロッサがシャピロの言葉に頷く。
「今こそですね」
「奴等は宇宙怪獣に気を取られている」
「そこを衝けば一気に」
「そうだ、あの少女を奪える」
こう言うのだった。
「いいな」
「わかりました。それでは」
「行くぞ」
ロンド=ベルの後方にだ。僅かな数で向かうのだった。
「なっ、ムゲ=ゾルバトス帝国か!?」
「ここで出て来るのか!?」
「くっ、しまった!」
「シャピロ、手前か!」
忍はダンクーガから叫んだ。
「手前なんだな!」
「藤原か。相変わらずだな」
「手前、性懲りもなく!」
「話は後だ」
いつも通りの高みに立った言葉だった。
「まずは目的を果たさせてもらう」
「目的を!?」
「そうだ、私が神になる為のな」
「愚かな」
アランはシャピロのその言葉を一蹴した。
「まだそんなことを言っているのか」
「アラン=イゴールか」
シャピロは彼も見据えて言う。
「貴様も健在か」
「貴様はまだわかっていないようだな」
アランはそのシャピロの対して返す。
「自分というものが。いや」
「いや?」
「何もかもわかっていないな」
「戯言を言うものだな」
シャピロの傲慢はここでも変わらない。
「だが貴様等にはわからないことだ」
「わかりたくもないね」
今度は沙羅が言った。
「あんたの考えなんてね」
「そうだよ、どうせさ」
「御前は自分のことだけしか考えていない」
雅人も亮も彼のことはもうわかっていた。
「それしかないんだから」
「聞くまでもない」
「愚か者達にはわからないことだ」
また言うシャピロだった。
「だが、だ。ロッサよ」
「はい」
「やるのだ」
「わかりました」
「くっ、奴等シティ7に!」
「入ったわ!」
「誰か!」
何人かが実際に向かおうとする。
「誰かシティ7に!」
「奴等を入れるな!」
「急げ!」
「よし、俺が!」
最初に動いたのはだ。シンだった。
「俺が行く!いいな!」
「いや、待て」
しかしだった。ここでテムジンが彼を止めた。
「俺が行く」
「テムジンさん!?」
「俺が行きそのうえで奴等を止める」
こう言うのだった。
「中に入られるのは間に合わない」
「くっ、それでも中に入ったらな!」
「いや、シン待って」
キラがシンを止めた。
「君のインパルスデスティニーよりもバーチャロンのテムジンさんの方がいいよ」
「キラ、何でだよ」
「小さいからだよ」
ここでは大きさが問題だった。
「だからね。それに」
「それに?」
「君、シティの中でも派手に攻撃を仕掛けるよね」
シンの気性の激しさは戦闘にもはっきりと出ていた。
「そうするよね」
「悪いのかよ、それが」
「それ、シティに影響出るから」
「ちっ、だからかよ」
「僕もね」
それは自分もなのだった。
「ストライクフリーダムでもね」
「御前のもかよ」
「うん、止めておくよ」
そうだというのである。
「僕もいざとなったら頭に血が昇るしね」
「仕方ねえな」
「退路を断つべきだね」
キラはここで冷静に述べた。
「そうしよう」
「あの神様とか言うアホの退路をだな」
「そう。それにしても」
「何だよ、今度は」
「シンも嫌いなんだね」
こうそのシンに言うキラだった。
「あのシャピロ=キーツは」
「ああ、大嫌いさ」
その通りだと返すシンだった。
「ああいう自分だけ高みに立った奴はな」
「そういうところシンらしいね」
「ああ、まだカガリの方がましだ」
そしてこんなことも言った。
「馬鹿でもそういうところは全然ないからな」
「そうだね。ただ」
「ただ。何だよ」
「そのカガリもいるからね」
こう言うとだった。そのカガリのストライクルージュが暴れていた。
シンを狙ってだ。撃とうとしていたのだ。
「やっぱりあいつは一度殺す!誰が馬鹿だ!」
「ですからカガリ様!」
「味方撃ったら駄目ですよ」
「そうですよ」
アサギにマユラ、ジュリが必死にそのカガリを止めている。それを見てだった。
「いつもだな」
「シンもね」
キラは呆れた声でシンに返した。
「まあとにかく。退路を断ちに行こう」
「ああ、そうだな」
「僕達二人いればあれ位の数だったらね」
「いけるか」
「何とかね」
いけるというのだった。
「じゃあ行こうか」
「わかった。じゃあな」
「ちょっと待ってよ」
しかしだった。ここでアカツキに乗るフレイが言ってきた。
「そうしてもらいたいのは山々だけれどね」
「そうはいかないって?」
「こっちも大変なのよ」
こう二人に言うのだった。
「宇宙怪獣の相手が。わかるでしょ」
「仕方ないね」
「ちっ、じゃあそっちで暴れるか」
「ここはテムジンさんに任せるしかないわ」
これがフレイの判断だった。
「カガリ、あんたもよ」
「くっ、仕方ないか」
「ええ、じゃあ戻って」
「わかった、それならだ」
こうしてだった。彼等は前線に向かうのだった。
そしてだった。そのシティ7の中でだった。
テムジンはシャピロの戦闘機を追っていた。だが向こうの方が先に行っていた。
「遅いな」
「くっ、間に合わなかったか」
「さて、それではだ」
ここでだ。シャピロはその戦闘機を止めた。
そしてだ。その少女を見つけたのだった。
「いたな」
「はい、確かに」
隣の機体にいるロッサが述べた。
「あの少女ですね」
「そうだ、あれだ」
見ればだ。そこにいたのは。
「あれがガンエデンの巫女だ」
「貴女は」
「シャピロ=キーツ」
シャピロはその少女イルイに対して名乗ってみせた。
「神の名だ」
「神の・・・・・・」
「さて、私と共に来るのだ」
こう言ってだった。戦闘機から波状のビームを放ってだ。イルイを捉えたのだった。
「民間人、いやあれは」
「覚えているな、マシンよ」
「ガンエデンの巫女か」
テムジンもだ。イルイのことは覚えていた。
「まさかシティ7にいたのか」
「そうだ。御前達はどうやら気付いていなかったようだな」
「地球にいると思っていた」
「だがそれは違っていたのだ」
そうだというのである。
「そして今私の手にある」
「そうはさせん」
テムジンは前に出ようとする。しかしだった。
その前にだ。ムゲ帝国軍の戦闘機達が来たのだった。
「むっ!?これは」
「この者達と戦うのだな」
シャピロはこう言ってロッサと共にフロンティアを立ち去ろうとする。
「わかったな」
「逃げるつもりか。部下を盾にして」
「人が神を守るのは当然のことだ」
シャピロは臆面もなくこう返した。
「だからだ」
「神か」
テムジンはシャピロのその言葉に対して反応を見せた。
「神だというのか。貴様が」
「その通りだ。私は神だ」
テムジンに対しても言うのだった。
「この私がだ」
「貴様は神ではない」
テムジンもまた同じ考えだった。
「所詮は人だ。それに過ぎない」
「何度も言うが愚か者にはわからんことだ」
やはりわかっていないのだった。
「所詮はな」
「そう言うと思っていた。それではだ」
「むっ!?」
「この程度の数で止められるとは思わないことだ」
戦闘機達を倒していく。それでシャピロを追おうとする。
しかしだ。テムジン一人で相手をするには数が多過ぎた。倒すのには問題はないがそれでもだ。時間がかかってしまっていたのだ。
それでだ。シャピロとロッサはその間に撤退を終えたのだった。
「これでよし」
「ではシャピロ様」
「うむ、去るとしよう」
「わかりました」
シャピロは悠然としてロンド=ベルから離れたのであった。
そしてだ。その頃にはだ。
ロンド=ベルと宇宙怪獣との戦いも終わっていた。ロンド=ベルの勝利に終わっていた。
しかしであった。彼等はテムジンからだ。その話を聞いたのだった。
「えっ、イルイちゃんが!?」
「シティ7にいたって?」
「何か見たって人はいたけれど」
「本当に」
「そうだ、いた」
テムジンはこう彼等に述べた。
「そしてだ。俺は」
「いや、それは違うだろ」
「そうよ。イルイちゃんはいるなんてね」
「あくまで見間違いだって思ったし」
「だから」
皆こう言ってテムジンは責めなかった。それよりもだった。
問題はだ。イルイのことだった。
「どうする?それで」
「シャピロの野郎にさらわれるなんてな」
「ああ、これはまずいよな」
「確かに」
このことを危惧せずにはいられなかった。そしてだった。
「よし、こうなればだ」
「はい」
「救出ですね」
皆葉月博士の言葉に応える。
「それならこれから」
「あいつを引き摺り出してですね」
「そうして」
「いや、引き摺りだすことはない」
博士はそれはいいというのだった。
「向こうから来るからだ」
「あっ、確かに」
「あいつはプライド高いですからね」
「いつも自分から出向いてきますし」
「それなら」
彼等はこれまでの幾度の戦いでだ。シャピロのことをわかっていた。そのプライドに凝り固まった性格のことをよくわかっていたのである。
それならばだ。彼等は言った。
「よし、それならここは」
「待ちますか」
「ちょっとの間だけ」
「そしてその時だな」
忍がここで言った。
「あの野郎、今度こそ叩き潰してやるぜ」
「そうだ、藤原」
博士はその忍を見て述べた。
「あの男は君が倒すのだ」
「博士、それでいいんだな」
「君しかいない」
忍しかというのである。
「それはだ」
「当たり前だ、あいつだけはな」
忍の敵愾心が極限まであがっていた。
「このダンクーガの、俺達の力で叩き潰してやるぜ!」
「そろそろあいつとも決着を付けるべきだしな」
カイがここで言った。
「あれだろ?バルマー戦役の頃からの因縁だったよな」
「ええ、そうなんですよ」
「実は」
カミーユとカツがそうだと述べる。
「何度か死んだと思ったんですが」
「その都度ああして」
「懲りない野郎だな。しかしな」
それでもだと。カイは話した。
「あいつもそろそろいいだろ」
「年貢の納め時ってことだね」
「もういいだろ」
カイはハヤトにも言葉を返した。
「あいつの話をこれ以上聞くのもな」
「そうだね。もう聞き飽きたしね」
「神だのそんなのどうでもいいんだよ」
カイの口調は忌々しげなものだった。
「もうな」
「その通りだな」
リュウもカイのその話に頷いた。
「ああした奴が成功した試しはないからな」
「今まで何度もそういう奴が失敗してきたのは見てきたしな」
スレッガーも言う。
「あいつもそのパターンを辿ってもらうか」
「それならですね」
セイラはここでも真面目だった。
「今から行きましょう」
「ふむ。アルティシアもやる気だな」
クワトロはそんな妹を見てぽつりと呟いた。
「戦うべき時だとわかっているからだな」
「そうだな」
アムロがクワトロのその言葉に頷いてみせた。
「そしてそれはだ」
「私も同じか」
「そういうことだと思うが?」
悪戯っぽく笑って彼に問い返した。
「違うか?それは」
「いや」
「いや、か」
「おそらくはその通りだ」
口元とサングラスの奥の目を笑わせての言葉だった。
「やはり私もそうだ」
「ならこれから行くか」
「あの少女を救いにだな」
「イルイちゃんをな」
「人間は。全ての人類はだが」
「ああ」
「やはり狭い中に生きているのだ」
こう言うクワトロだった。
「だから己が神だ、万能だと思い違いもする」
「そのシャピロ=キーツのようにな」
「しかし違うのだ」
「人は人だな」
「そして神は絶対者でもない」
それも否定するのだった。
「それは全く違うものだ」
「しかしあいつはそれがわかっていないな」
「ああ、全くな」
そうだというのだ。
「わかっていないからこそだ」
「ならだ。シャア」
「うむ」
その呼び名にも笑顔で応えた。
「あの男にそれを見せることとしよう」
「教えるとは言わないんだな」
「上から目線はもう卒業した」
これが今のクワトロだった。
「己だけ高みに立ってもだ」
「どうにもならないか」
「所詮それは自己満足でしかない」
そうだというのである。
「何の進歩もないものだ」
「しかし今はか」
「そうだ。私もまた同じだ」
こう言うのであった。
「同じ人間なのだからな」
「では同じ人間としてだ」
「戦おう、これからもな」
こう話してであった。彼等は戦場に向かうのであった。
銀河は今は穏やかではなかった。そしてさらなる戦乱がその銀河を覆おうとしていた。戦いは何時終わるともなく続いていくのだった。
第五十八話 完
2010・9・17
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