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スーパーロボット大戦パーフェクト 完結篇

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第五十五話 トゥルー=ビギン

                 第五十五話 トゥルー=ビギン
 グレイスはだ。一人ほくそ笑んでいた。
「これでよしね」
 何かを見ながら笑っていた。
「後はそちらに向かうだけね」
 こう言ってであった。そのうえでこれからのことを見据えていた。
 そしてだ。フロンティアではだ。
「酸素も水もない」
「全ては残り僅か」
「このままではだ」
「やがてどうしようもなくなる」
「もう後がない」
「どうするべきか」
 閣僚達がこう話していた。
「こうなれば地球政府に連絡するか」
「ギブアップするというのか?」
「ここで」
「それも一つの手だ」
 こう言う者もいた。
「どのみちこのままでは持たない」
「もう酸素マスクが必要になってきたしな」
「食料も。プラントのダメージが大きい」
「どれもこれも」
「戦力もなくなってきた」
「大丈夫だ」
 しかしここでレオンが言うのであった。
「もうすぐで辿り着けるのだからな」
「その新天地に!?」
「そう言われるのですか、閣下」
「そうだ。我々は順調に向かっている」
 レオンは余裕のある笑みでこう話す。
「案ずることはない」
「それは一体」
「何処なのですか?」
「すぐにわかることだ」
 今は言おうとはしなかった。誰にもだ。
「だが。新天地は間も無くだ」
「我等の約束の地」
「そこが」
「今順調に向かっている」
 レオンの余裕の笑みは変わらない。
「そこに行くとしようではないか」
「ではここはです」
「信じさせてもらいます」
 こう言う閣僚達だった。ここではレオンの弁舌が勝った。
 そしてである。アルトはだ。
 レオンに呼ばれてだ。彼の話を聞いていた。
「来てもらって悪いね」
「いえ」
 まずはこうしたやり取りからだった。
「それで話とは」
「うむ。他でもないのだが」
 まずはこう前置きしてだった。
「ランカ君のことだ」
「あいつの・・・・・・」
「そう、彼女だ」
 そのランカの名前を聞いてだ。アルトの顔が変わった。
「あいつがどうしたんですか?」
「バジュラについて調べているうちにだ」
「バジュラに?」
「面白いことがわかったのだ」
 こうアルトに話すのだった。
「そうだね、ルカ君」
「はい」
 ここでルカも来た。
「先輩、バジュラですが」
「ああ」
「まず脳がありませんよね」
 彼もまたこのことを話すのだった。
「そうですよね」
「ああ、確かにな」
「けれど生物です」
「そう、そこだ」
 レオンもこのことを指摘してきた。
「我々はどんな生物でも脳があれば意思を感じられる」
「ええ、そうですけれど」
「しかしバジュラにはない」
 またこのことを話す。
「しかし彼等は生物だ」
「そしてです」 
 ルカもさらに話す。
「コミュニケーションをバジュラ達の間で取っていますね」
「ああ、それは間違いない」
 アルトもそれはわかっていた。
「だからこそ強くなってな」
「互いに情報を伝え合っています」
「それはどうしてなんだ?」
「神経と同じなんです」
「神経とか」
「そう、こう考えてくれ」
 またレオンが言ってきた。
「細菌と同じだろ」
「細菌とですか」
「そうだ、バジュラは言うならば細菌なのだ」
 こう話すのである。
「バジュラのその因子に感染されればだ」
「シェリルさんです」
 ルカは彼女のことを話に出した。
「シェリルさんはその因子に感染されていまして」
「あいつの病気はそれだったのか」
「そうです。それが脳に達した時」
 その時だというのだ。
「つまりは」
「ああ、わかるさ」
 ここからはアルトも察した。嫌になる程だ。
「そういうことなんだな」
「そうです。そして」
「そして?」
「それが先天的に感染している場合はです」
「先天的に!?」
「バジュラと意思を共有できるのだ」
 レオンが言った。
「そうなるのだ」
「けれどそんな奴は」
「いや、いる」
 レオンの言葉が鋭くなる。
「いるのだ」
「そう、ランカさんです」
 ルカも話してきた。
「ランカさんこそがその先天的にです。バジュラの」
「あいつが・・・・・・まさか」
「では聞こう」
 レオンは驚きを隠せないアルトに話す。
「何故彼女の歌がバジュラに効果があった」
「それなのか」
「そしてどうして彼女はバジュラに走ったか」 
このことも話す。
「それは何故かだ」
「考えれば考える程妙に思えまして」
 ルカも深刻な顔になっている。
「ランカさんの歌も調べた結果」
「それがわかってたのかよ」
「そうです。ランカさんと今のシェリルさんの歌の波長が同じでしたから」
「それでか」
「はい、わかりました」
 こう話すルカだった。
「それでなのです」
「そうだったのか。あいつが」
「それでだ」
 レオンがここでまた話す。
「ランカ君はバジュラと意思を共有できる。つまりは」
「バジュラの側に立って」
「そうだ、バジュラの尖兵となる」
 そうなるというのだ。
「そしてだ。我々の前に立ちはだかるのだ」
「ですから先輩」
 ルカの言葉が強いものになる。
「ここは」
「倒すしかないのか」
「我々は生きなければならない」
 これがレオンの意志だった。
「そう、何としてもだ」
「僕達が生きるかバジュラが生きるかなんです」
 ルカもレオンと同じ考えになっていた。
「ですからもう」
「ランカをか」
「時間はあまりない」
 レオンの言葉はアルトの逃げ道を塞いだ。
「決断してくれ給え」
「・・・・・・・・・」
 アルトはその言葉に沈黙してしまった。今の彼にはそうなるしかなかった。そうしてである。ロンド=ベルはその時には。
 フロンティアに向かっていた。しかしであった。
「あれっ、前方に」
「何かあります」
「あれは」
 ここでだった。レーダーに反応を見たのだ。
 マヤがだ。いぶかしみながら話す。
「フロンティアはまだ先なのに」
「何があったの?」
「まさかと思うけれどバルマー軍の基地かしら」
 ミサトとリツコが言う。
「それは覚悟していたけれど」
「ここでなのね」
「いえ、違います」
 マヤはそうではないと話す。
「これは」
「船団の残骸ですね」
 ケンジが話す。
「これは」
「船団のねえ」
「何かしら」
「一度調べてみるか」
 今言ったのはダグラスだった。
「時間はまだあるしな」
「そうですね」
 ベンもダグラスのその提案に頷いた。
「その船団がどうしたものかまずは見てからですね」
「はい、モニターに出します」
 リンダが言った。
「それでは」
「うむ、頼む」
「それでは」
 ダグラスとベンがリンダのその言葉に頷きだった。
 そのうえでモニターに映し出されたそれを見るとであった。それは。
「むっ、これは」
「マクロスの?」
 二人はすぐにそれを察したのであった。
「その船団のものではないのか?」
「そうですね、あの形状は」
 それがわかったのは二人だけではなかった。他の面々もだった。
「どうしてこんな場所に?」
「それにあれって」
「どの船団なんだ?」
 彼等が次に疑問を持ったのはこのことだった。
「ええと、あれは」
「番号が書いてあるな」
「ああ、あれは」
「一一七!?」
 この数字が見られたのだった。そしてだ。
「第一一七調査船団!?」
「まさかあれが」
「行方を絶ったっていう」
「あの船団が」
「長官」
 スワンがすぐに大河に問う。
「ここは」
「うむ、すぐに調査にあたろう」
 大河もすぐに決断を下した。
「それではな」
「よし、それではだ」
「すぐに中に入りましょう」
 オズマとキャサリンがここで話す。
「絶対に証拠がある筈だ」
「バジュラに関するね」
「そうだな。必ずある」
 ジェフリーも言う。
「それならだ」
「ならすぐに行きましょう」
 サコンも話す。
「バジュラに対して調べる為にも」
「そうね。ただ」
 ここでセニアが難しい顔になった。
「第一一七調査船団ってバジュラに関係あるのよね」
「それだったら」
「まさか」
「ええ、そのまさかよ」
 セニアは皆にも言う。
「ここで出て来る可能性は考えた方がいいわね」
「それならだけれど」
 ここでテリウスが提案する。
「船団の周りは僕達で護衛してね」
「調査するメンバーは中で調査する」
「そういうことにしようか」
「ええ、それでいきましょう」
 皆もテリウスのその言葉に頷いた。そうしてであった。
 ロンド=ベルはギャラクシーと船団を囲む様にして布陣した。そうして船団の中にだ。調査にあたるメンバーが入った。
 そしてそのロンド=ベルの中でだ。
「ちぇっ、俺達は外かよ」
「中にいる方が面白そうなのに」
「残念だ」
 オルガとクロト、シャニが苦い顔で言っている。
「何かよ、調べるっていうのはよ」
「知的で面白そうなのにね」
「どうして俺達じゃない」
「だって君達あれじゃない」
 その三人に言ったのはサブロウタである。
「すぐ暴れるだろ?」
「それの何が悪いんだよ」
「戦争って暴れるものじゃない」
「その通りだ」
「だからそれが駄目なんだよ」 
 サブロウタは三人にこう話す。
「調べるのに暴れてどうするんだよ」
「ちぇっ、それでかよ」
「何か凄く面白くないね」
「全く」
「旦那もだけれどな」
 サブロウタはここでダイゴウジも見る。
「旦那も暴れるの好きだろ」
「それが戦争だ」
 やはりそうだというのである。
「この拳でやってやる!」
「だからなあ。まあ中に入ったメンバーは妥当だよな」
「というかインテリ系のメンバーばかりなんだけれどね」
 ハルカが言ってきた。
「インテリ系のね」
「そうそう、確かに」
「その通りね」
「あの顔触れで」
 皆も話す。そうしてであった。
 調査のメンバーが中に入ったところでだった。
「レーダーに反応です」
「よし、ドンピシャ」
「来るなっての」
 こんな言葉も出た。
「全くな」
「こういう予想は当たるからなあ」
「ほぼ確実に」
「そうみたいね」
 セニアも船団の中から話す。
「来たしね、実際に」
「そうね。ただ」
 ここで言ったのは未沙だった。
「タイミングがよ過ぎるわね」
「タイミングね」
 セニアもその言葉に反応を見せた。
「そういえばいつもそうよね」
「今回は特によね」
 キャサリンも言う。
「まるで見計らったようにね」
「やっぱり誰かが何かを見ている?」
「バジュラと関係がある?」
 皆それぞれ考えだした。
「そのうえで私達にバジュラを差し向けている」
「だとすれば誰が?」
「一体誰が」
「答えは出る」
 今言ったのはヒイロだった。
「それも一つしかない問題だ」
「そうだな。それはだ」
「彼女ね」
 ノインとヒルデも言う。
「彼女しかいないわね」
「一人。そうね」
「グレイス=オコーナー」
 今この名前を出したのは加持だった。
「もうそれしかないよな」
「そうね。もうこれで完全に決まりね」
 ミサトも真剣そのものの顔だ。
「彼女は間違いなくバジュラと密接な関わりがあるわ」
「そして第一一七調査船団を滅ぼして」
「ギャラクシーも襲い」
「フロンティアまでも」
「そうして」
 さらに話される。
「何かを手に入れようとしている?」
「その何かが問題だけれど」
「それが一体何か」
「それだよな」
 皆戦闘に入る直前の中で考えていた。その時だった。
 遂にバジュラ達が来た。そしてだった。
「よし!ここはだ!」
「全方位に攻撃開始!」
「バジュラを船団の残骸に近寄らせるな!」
「絶対にだ!」
 こうしてだった。彼等はそのまま攻撃を仕掛ける。それでバジュラを船団に近寄らせない。
 ギュネイはだ。ファンネルを放っていた。
「弱点をつけば幾らしぶとくてもな!」
 こう言ってであった。バジュラを次々と撃墜する。
「こうして撃墜できるんだよ!」
「やるねえ」
 加持がその彼を見て言う。
「さらに腕をあげたね」
「そう言ってくれるか」
「前から言おうと思ってたんだがな」
 加持はギュネイに飄々と話し続ける。
「あんたと俺って似てるよな」
「そうだな」
 ギュネイもそのことを否定しない。
「俺も思っていた」
「別人の気がしないね」
「それでだが」
 ここでこんなことも話すのだった。
「マサトとマシュマーと。そしてジェリドはな」
「ははは、そうだな」
 加持はギュネイの今の言葉に顔を崩して笑った、
「仲間って意識があるな」
「それとカミーユにクリスもだな」
「思わぬ関係だな」
「ただフォルカは敵だな」
「ムウは味方って意識がしないな」
「待て」
 クリフがそんな二人を見て言ってきた。
「その世界は私はあまりいい思い出がないが」
「私はヒロインだったわね」
「そうそう」
 サラとエクセレンが言う。
「あの世界ではどうやら」
「蓬莱山でね」
「あの世界は鎧を着て戦っていたな」
「今となっては懐かしい思い出だな」
 こう話すギュネイと加持だった。
「面白い世界だったな」
「今となってはな」
「今度はその世界なのね」
 ノリコは二人の会話に少し呆れた様子だった。
「お姉様、ギュネイさんと加持さんって確か」
「ええ、そうよ」
 カズミはノリコの言葉にすぐに頷いたのだった。
「私が猫になる世界だったかしら」
「あたしは関係ないニャよ」
 何故かクロが言う。
「確かにカズミさんには親近感があるニャ。それでもニャ」
「何かお姉様に似てる人も多いのよね」
 ノリコはこのことも感じていた。
「それでギュネイさんと加持さんって」
「あれか?黒豚か?」
 加持が応えた。
「凄く感じているぞ」
「あたいが変態妹だったかい?」
 何故かミンが参戦する。
「それとフォウがな」
「私なのね」
「あたいとフォウも似てるしな」
「同一人物じゃないのかい?」
 万丈が彼女に突っ込みを入れる。
「僕の妹だったかな」
「あはは、何かそんな気がするね」
 ミンも万丈の今の言葉に笑う。
「それでマサトがあれだよな。近眼でさ」
「僕そっちの世界でもカズミさん達と縁があったんだ」
 マサトもここで何となく感じたのだった。
「前から思ってたけれどカズミさんと僕って因縁ない?」
「あるわね」
 何故かラーダが答える。
「間違いなく」
「ううん、人間の縁って不思議だな」
「というよりは声だな」
「そうね」
 カティとアイナが言う。
「私もノリコやハーリーとはだ」
「姉妹に感じるわ」
「私は」
「僕ですね」
 トビアがレイの言葉に頷いた。
「そうですよね。お湯を被れば」
「水を被れば」
「なりますよね」
「同じ人間になるわ」
「おい、これどうなってるんだ?」
 今言ったのはサンシローだった。
「俺も閉所恐怖症で暗所恐怖症だった気がするんだが」
「それはまた違う世界の筈よ」
 今言ったのはレミーだった。
「まあ言うとややこしくなるけれどね」
「俺はそっちの世界にも出ていたな」
「俺はどうだったかな」
 真吾とキリーも言う。
「よく出ていたものだよ」
「端役で出ていた気がするんだがな」
「まあ俺も出ていたな」
 宙までだった。
「虎のパンツの忍者だったな」
「何だよ、その設定」
 カイが突っ込みを入れる。
「いや、俺はまああれだけれどな」
「ああ、カイはそうだよね」
 ハヤトがそのカイの言葉に頷く。
「あっちの世界じゃね」
「女好きだったしな、かなりな」
「だからもうそれ言わないでおこうぜ」
 サンシローはいたたまれなくなっていた。
「俺達はもう無茶苦茶だったからな」
「全くだな」
「同感だ」
 竜馬と一矢が彼の言葉に頷く。見れば洸やフォッカーもいる。
「俺達もあの世界の記憶があるからな」
「世紀末救世主の世界といいな」
「ここで話を終わるか?」
 首を捻って言うスレッガーだった。
「俺も出てなかったかね」
「出てたんじゃないですか?」
 セイラはこの彼にこう返す。
「私は烏天狗でしたけれど」
「他の人間も知らないか?」
「知っています」
 心当たりがあった。
「充分に」
「何か話がややこしくなってきたな」
 アムロが首を捻る。
「さて、根性なしのボクサーの話で終わってだ」
「そうですね、中佐」
 キムが彼のその言葉に頷く。
「福音は勝利の後で」
「よし、そうするか」
 戦闘をしながらの会話だった。戦闘はかなり激しい。バジュラ達は次から次に出て来る。そしてそれと同時にであった。
 船団の中でだ。調べている面々が見つけたのだった。
「これって」
「ああ、出て来たな」
「グレイス=オコーナー」
 残骸の中のコンピューターや資料室を調べていてだった。
「これだ」
「すぐに調べましょう」
「これで間違いないわ」
「そうね」
 そうしてだった。彼等は見つけ出した資料を全て持ってそのうえで船団を出たのだった。
 彼等がそれぞれの艦に戻ってもだ。戦闘はまだ続いていた。
「その資料を持って生かして帰すつもりはない」
「そういうことか」
「やっぱりな」
 ロンド=ベルの面々はここでまた確信した。
「あいつ、わかってるな」
「だからこそここで」
「攻めて潰すか」
「そのつもりか」
「しかしな!」
 ここで叫んだのはオズマだった。
「俺達もやらなければいけない。行かせてもらう!」
「ああ、数は二百万!」
「まだ来ます!」
「それでも!」
 彼等は戦うと決意した。そうしてだった。
 果てしなく攻め寄せるバジュラと戦っていくのであった。
 ランカはその時。やはりブレラと共に宇宙を旅していた。
 その中でだ。彼女は彼に話していた。
「あの」
「どうした」
「すいません」
 こうブレラに言うのである。
「巻き込んでしまって」
「いい」
 だがブレラはこう返すのだった。
「気にすることはない」
「そうなんですか」
「俺もこうするつもりだった」
「ブレラさんも」
「御前を守ると言ったな」
「はい」
「だからだ」
 それでだというのである。
「それにだ」
「それに?」
「俺も見てみたい」
「バジュラと。私達の」
「今はそう考えている」
 不思議と穏やかな言葉であった。
「考えが変わってきた」
「変わってきた?」
「俺はサイボーグだ」
 例えか現実かわからない言葉だった。
「戦うだけの存在だ」
「そうだったんですか」
「だからそれ以外の感情は持たなかった」
 こうランカに話すのだった。
「しかしだ。今はだ」
「変わられたんですね」
「ランカ、御前の歌を聴いて変わった」
 その変わった原因が何かも話す。
「だから今ここにいて。そして」
「そして?」
「御前を心から守りたくなった」
 それでだというのだった。
「それでいいか」
「はい、御願いします」
 ランカも優しい笑顔で彼の言葉に頷く。
「それじゃあ」
「行くぞ。もうすぐだ」
「もうすぐって?」
「母星だ、バジュラの」
 そこだというのだ。
「もうすぐそこに入る」
「そしてそこで」
「バジュラと話せるな」
「はい」
 ブレラの言葉にこくりと頷いて答える。
「できます、人間とバジュラは話し合えます」
「そうだな」
「本来は戦い合う存在じゃありません」
「そこが宇宙怪獣と違うな」
「宇宙怪獣は何か違うと思います」
 ランカも宇宙怪獣はこう見ていた。
「バジュラとは別に」
「別にか」
「何か得体の知れないものがあると思います」
 こう話すのであった。
「それが何かまでは。言葉では中々出せませんが」
「そうだな。宇宙怪獣はな」
「バジュラと違って最初から全てを破壊しようとしていますよね」
「そして生きて増えている」
「一体どんな存在なのでしょうか」
「俺もそれを知りたい」
 彼等と何度も戦ってきたからだ。それでブレラも言うのだった。
「宇宙怪獣についてはな」
「ええ、本当に」
「だがバジュラは違うか」
「宇宙怪獣とは何かが明らかに違います」
 またこのことを言うランカであった。
「ですから今から」
「ああ、行こう」
「はいっ」
 こうして二人はブレラのバルキリーである惑星に接近した。しかしであった。
 母星に近付くとであった。まずは、であった。
「来たな」
「バジュラがですか」
「そうだ、バジュラの迎撃隊だ」
 かなりの数のバジュラが二人の乗るバルキリーの前に来た。
「どうする?」
「歌わせて下さい」
「歌か」
「はい、歌です」
 まさにそれであった。
「歌えば。きっと」
「そうだな、バジュラはわかるな」
「だからカイ君」  
 バルキリーの傍にいるあの緑のバジュラを見ての言葉だ。
「そこにいて。そして聴いて」
「バジュラ、聴くといい」
 ブレラもここで呟く。
「ランカの歌をな」
「じゃあ」
 ランカはコクピットを開けて歌おうとする。しかしであった。
 突然その緑のバジュラが口の辺りにある一本の触手を伸ばしてきた。そうしてだった。
「何っ!?」
「えっ、カイ君!?」
 ブレラだけでなくランカも驚きを隠せなかった。
「どうしてなの?」
「一体どういうつもりだ!?」
 ブレラはその緑のバジュラに捕らえられたランカを救い出そうとする。
「何故ランカを」
「決まっているわ」
 そしてここで、であった。
「これからの為よ」
「何っ、大佐!?」
「ええ、そうよ」
 謎のバルキリーが来ていた。そうしてだった。
 グレイスの言葉がだ。聞こえてきたのである。
「どう?楽しかったかしら」
「楽しかった。何がだというのだ」
「兄弟での逃避行は」
 グレイスは笑って彼に告げた。
「どうだったかしら」
「何っ、兄弟!?」
「そうよ、意識では忘れてしまっていたみたいね」
「そんな馬鹿な・・・・・・」
「馬鹿なじゃないわ。本当のことよ」
 グレイスの声は悠然として笑ってさえいた。
「全てね」
「くっ、じゃあ俺は」
「そうよ。今まで泳がせていたのよ」
 まさにそうしていたというのだった。
「あの忌々しい虫達の本星に辿り着くまでね」
「それでどうするつもりだ」
「どうする、ね」
「そうだ、どうするつもりだ」
 こうグレイスに問うのである。
「ランカを。一体」
「彼女は切り札よ」
 完膳に兵器を見ている言葉だった。
「私達のね」
「私達だというのか」
「そうよ。母星にフロンティアを引き付けてそのうえで倒して」
 それからであった。
「そしてね」
「まだあるというのか」
「私は女王になるのよ」
 こう悠然と話すのであった。
「バジュラの、そして銀河を操る兄弟にね」
「そんなことをさせるかっ」
 ブレラがはじめて激昂した。
「ランカは俺が」
「俺が?」
「俺が守ると言った」
 こう返してであった。
「だから。俺は」
「何かしら」
 グレイスの言葉は今も冷たいものだった。
「私と戦えないのは忘れたのかしら」
「くっ・・・・・・」
「諦めなさい」
 上からだ。完全に見下した言葉だった。
「もうね」
「そしてランカもか」
「彼女は頂いていくわ」
 こう彼に告げた。
「それじゃあね」
「くっ、俺は・・・・・・」
「好きにしなさい。今までランカを護ってくれた御礼にね」
「そんなものはいらんっ」
「いいえ、あげるわ」
 有無を言わさない、その口調でだった。
「何処にでも行きなさい。好きな場所にね」
「余裕か」
「そうよ。まずはロンド=ベルでも連れて来るのね」
 あからさまな挑発だった。
「すぐ近くにいるし」
「ロンド=ベルを倒すつもりか」
「銀河に支配者は一人で充分よ」
 かつてレオンに代理人を通して言われた言葉をそのまま出してみせた。
「私一人でね」
「ロンド=ベルは貴様と違う」
「ええ、違うわ」 
 酷薄な笑みと共の言葉であった。
「だから私は彼等を排除するのよ」
「果たしてそれができるか」
「それも見せて御覧なさい」
 ここでも挑発する言葉であった。
「できるのならね」
「くっ・・・・・・」
「さあ行きなさい」
 ブレラに行くように急かしせしてみせた。
「早いうちにね」
「必ず戻って来る」
 こう言ってであった。ブレラは己のバルキリーを反転させた。
「そう、必ずだ」
「ええ、待っているわ」
 こうしてであった。ブレラはロンド=ベルのところに向かった。そうしてあった。
 グレイスは密かにフロンティアに情報を流した。するとだ。
 すぐにレオンがそれを聞いてであった。
「そうか、遂にか」
「はい、遂にです」
「わかりました」
 彼の腹心達が次々に告げる。
「バジュラの母星が」
「先程先遣の無人偵察機からの情報です」
「よし、わかった」
「行かれますか」
「それで」
「当然だ」
 レオンの返答は決まっていた。
「そしてその母星だが」
「はい」
「その星ですね」
「緑はあるか」
 まずはこれを問うた。
「そして水は」
「どちらも豊富です」
「まさに地球と同じです」
「そこまでです」
「そうか、それならばだ」
 腹心達の言葉にだ。レオンはさらに意を決した。
 そうしてであった。彼は指示を出した。
「すぐにその星に向かう」
「わかりました」
「それでは」
「そしてだ」
 彼はさらに言った。
「そここそが我等のフロンティアだ」
「そして約束の地ですね」
「遂に見つけましたね」
「見つけた。長い旅だった」
 まずは感慨を述べた。
「しかしそれもこれで終わる」
「バジュラとの戦いも」
「これで」
「全てを終わらせる。これでだ」
 こうしてであった。フロンティアはその母星に向かうことになった。そしてそれはだ。
 アルト達にも伝えられた。ミシェルとルカ、そしてクランにもだ。フロンティアの軍全てにだ。非常事態が告げられたのであった。
「いよいよだな」
「そうですね」
 ルカはミシェルのその言葉に頷いた。
「先輩は退院してすぐですね」
「ああ、それは構わないさ」
「いいんですか」
「身体の方は問題ない」
 微笑んでルカに話す。
「やってやるさ」
「そうですか。それじゃあ」
「ミシェル、それでも無理はするな」
 クランがその彼に言ってきた。
「それはいいな」
「やれやれ、心配性だな」
「御前は無茶をする」
 あの時の話だった。
「だから余計に言っておく」
「安心しな。俺は絶対に死なないさ」
 ミシェルは真面目な顔でクランに話した。
「それは言っておくからな」
「ああ、そうしてくれ」
「それでだ」
 クランはここでアルトに顔をやってきた。そのうえでだった。
「アルト」
「ああ」
「御前はどうして戦うのだ?」
 問うのはこのことだった。
「それは何故だ」
「俺か。俺は空に憧れていた」
「空にか」
「役者の家に生まれた」
 このことも話すのだった。
「けれどな。空に憧れてだ」
「地球に残ってか」
「それでパイロットになった」
 それでだというのだ。
「それで戦っている」
「そうだったのか」
「中尉、貴女は」
「私か」
「そうだ。中尉は何故戦っているんだ?」
 こうクランに問い返すのだった。
「それはどうしてなんだ?」
「私は軍人の家に生まれた」
 クランはここから話した、
「それが当然だと思っていた」
「それでなのか」
「だが御前は」
「空に憧れて。そして」
 アルトはここでさらに話した。
「あるものを見た」
「あるものをか」
「多くのものを。ロンド=ベルにいてな」
「そしてあの二人もか」
「シェリルもランカも」
 あの二人を思い出しながらさらに話す。
「あの二人を見てな。それでだ」
「変わったのだな」
「変わった。そしてだ」
「そしてか」
「そうだ、ランカは」
 ランカのことも話した。
「あいつは今バジュラと共にいる」
「はい」
 ルカが彼のその言葉に頷いた。
「そして今」
「若しだ」
 アルトはルカに応える形でさらに話した。
「若しあいつがバジュラに利用されるのなら」
「その時は一体」
「どうするんですか?」
 ミシェルとルカが彼に問う。
「御前は」
「まさかと思いますけれど」
「いや、そのまさかだ」
 アルトは毅然として言った。
「俺はランカを殺す」
「しかしそれは」
「先輩にとって」
「それでもだ」
 アルトの言葉は変わらない。
「その時はだ」
「そうなのか」
 クランは俯いて彼の話を聞いた。そうしてだった。
「それがなのだな」
「ああ」
「それが御前の愛なのだな」
「そうかもな」
 アルトはこのことを否定しなかった。
「それでも俺は戦う」
「俺は」
「僕は」
 ミシェルとルカはそれぞれの愛とここで見合った。
「その為にな」
「戦うんですね」
「そうだな。だからこそ残ったのだからな」
 そしてクランもだった。
「このフロンティアに」
「生きるか死ぬかの戦いなのはいつもだけれどな」
 アルトはまた言った。
「けれど今度の戦いは」
「そうだな」
「本当に」
 そんな話をする四人だった。そして。
 シェリルはその話を陰で聞いていた。そうしてだった。
「わかっていたけれどね」
 こう呟いてサングラスをかけてだった。その場を後にしたのであった。
 全てがまたはじまろうとしていた。それは決して終わりではなかった。


第五十五話   完


                       2010・9・6
  
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