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スーパーロボット大戦パーフェクト 完結篇

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第五十四話 ギャラクシーへ

                第五十四話 ギャラクシーへ  
 フロンティアから離れたロンド=ベルはだ。今はあてもない旅をしていた。
「フロンティアから離れて三日かあ」
「早いね」
「そうだよな、あんなことがあっても時間は経つ」
「そうだよな、本当に」
「何かこれって」
「しかも」
 ここで言ったのはラウルである。
「俺達一応三連太陽に向かってるよな」
「ええ、そうよ」
 フィオナが双子の兄の問いに答える。
「そうしてるわよ」
「何かまだ実感が沸かねえな」
 ラウルは双子の妹の言葉にこんなことを言った。
「ちょっとな」
「そうね。何かまだ遥か先みたいよね」
「実際距離はどうなんだ?」 
 ラウルはその距離について尋ねた。
「あとどれだけあるんだ?」
「まだまだあるわよ」
 答えたのはミナキである。
「残念だけれど」
「ああ、やっぱりね」
「距離は随分とあるってのはわかってたけれど」
「それでもやっぱり」
「かなりの距離かあ」
「成程ね」
 皆その言葉に頷く。
「じゃあ当分航海は続くか」
「何時バジュラとかプロトデビルンが来るかわからないけれど」
「宇宙怪獣とかな」
「覚悟はしておくか」
 それはだというのである。
「それで何か見えました?」
「敵、いました?」
「何か」
「結構凄いの発見したぞ」
 ここでマサキが出て来て言ってきた。
「移民団だ」
「移民っていったらマクロスの?」
「その船団?」
「それがか」
「ああ、それだ」
 まさにそれだという。
「それに出会えたぜ」
「それまでが大変だったニャ」
「全くだニャ」
「全くマサキは」
「いつもいつも」
「何だってんだよ」 
 マサキは己のファミリア達に返した。
「今回は方向間違えなかったぞ」
「それはヒイロがいたからニャ」
「そのお陰だニャ」
 こう言うクロとシロだった。
「何度間違えそうになったか」
「もう呆れたニャ」
「何にもならなかったらいいだろうが」
 無理矢理そういうことにする彼だった。
「そうだろ?それはよ」
「ああ、わかったニャ」
「もうそれでいいニャ」
 匙を投げた感じの二匹だった。
「まあとにかくだニャ」
「その船団ニャが」
 二匹は皆に話をはじめた。
「何でもギャラクシーというニャ」
「かなり大きいニャぞ」
「えっ、ギャラクシー!?」
「それって」
 皆その名前を聞いてだ。すぐに声をあげた。
「あれだよな。シェリルのいた」
「ああ、あそこだよ」
「消息不明になったって聞いたけれど」
「大丈夫だ。生命反応は多い」
 ヒイロが出て来て話す。
「それはだ」
「全滅はしていないんだ」
「じゃあ安心?」
「それじゃあ」
「だが」
 ここでまた言うヒイロだった。
「かなり危うい状況の様だ」
「危ういって?」
「そんなに?」
「市街の損害も多いようだ」
 まずはそれだというのだ。
「そして」
「そして?」
「軍の数も少ない」
 それもだという。
「ほぼ残っていないような」
「えっ、それってまずいよな」
「ああ」
「すぐにギャラクシーに行かないと」
 皆それを聞いてすぐに口々に言った。
「さもないとギャラクシーが」
「全滅するわよ」
「そうなんだよ。だからな」
 ここで言うマサキだった。
「すぐに向かおうぜ、ギャラクシーにな」
「俺もそうするべきだと思う」
 ここでヒイロがまた言う。
「さもなければだ」
「よし、決まりだ」
「ギャラクシーに行こう」
「早く」
 皆こう言ってであった。ギャラクシーに向かうことにした。
 その時にだ。ふとラーダが言ったのである。
「ギャラクシーね」
「何かあったのですか」
「そこに」
「何かあるような気がするのよ」
 こうラトゥーニとシャインに言うのである。
「何かがね」
「そういえばギャラクシーの戦力って」
「何かありましたっけ」
「ギャラクシーといえば」
 ここで言ったのは慎悟だった。
「スコープドッグがあったような」
「スコープドッグ?」
「っていったら」
「人が乗る小型のマシンよ」
 ここで華都美が話す。
「ギャラクシーはそれが戦力なのよ」
「小型のマシンっていったら」
「オーラバトラーみたいな感じかな」
「そうよね」
 皆まずはそれを連想した。
「何かよくわからないけれど」
「まずはギャラクシーに向かおうか」
「そうしないとはじまらないし」
 こう話をしながらギャラクシーに向かう。
 そしてだ。その時にだ。
「そういえばあいつの声ってな」
「ああ」
「ブリットにな」
「そっくりだよな」
 そのことに気付いたのである。
「前は蝙蝠かって思ってたんだけれどな」
「あいつにも似てるよな」
「確かに」
「そうだな」
 本人もここで頷く。
「それにグレイス=オコナーもね」
「アイナさんに似てるよね」
「テュッティさんにも」
「ええ、そうね」
「似てるわね」
 その二人もここで頷いたのだった。
「前から思っていたけれど」
「初対面だけれど」
「似ている人って色々な立場でいるのね」
 今言ったのはミレーヌである。
「私にはいないけれど」
「俺もだぞ」
 バサラもであった。
「ガムリンは何人でもいるのにな」
「金竜さんやフィジカさんもね」
「そういえば私は」
 サリーはここでレフィーナを見た。
「最初に会った時から他人とは思えませんでした」
「そうそう。私達もなのよね」
 そのレフィーナも応えて言う。
「何かが似ていてね」
「そうですよね」
「ううむ、似ている人間が多過ぎるな」
 今言ったのはナガレだった。
「一体何人いるんだ」
「私もです」
 ユリカも出て来た。
「ナタルさんといいフレイちゃんといいステラちゃんといい」
「本当に見分けられない時あるからな」
 今言ったのはシンだった。
「フレイとステラとおばさんはわかるんだよ」
「何でわかるのよ」
 フレイがそのシンに問う。
「私とステラちゃんの違いって」
「フレイは何かあれだよ」
「だからあれって何よ」
「もうな。猿みたいな獰猛さがあるからな」
「ちょっと待ちなさいよ」
 猿と言われてだった。すぐに言い返すフレイだった。
「誰が猿よ、誰が」
「御前に決まってるだろうがよ」
 臆することなく言うシンだった。
「だからわかるんだよ。ステラと赤毛の猿二号の違いはよ」
「ふうん、二号ねえ」
 今度はアスカだった。
「あたし茶髪だけれど一号はあたしよね」
「ったりめえだろ。猿は猿だ」
「よし、聞いたわ」
「確かにね」
 アスカとフレイが一列に並んだ。
 そのうえでだ。シンに襲い掛かる。
「一回死になさい!」
「容赦しないわよ!」
「おお、やってやらあ!」
 また喧嘩を買うシンだった。
「久し振りの喧嘩だ、やってやるぜ!」
「待て」
 しかしであった。ここで言う者がいた。
「今何と言った」
「何かも何もおばさんって言ったんだよ」
 シンは二人と取っ組み合いをしながらナタルに言い返した。
「だってよ。二十五の立派なおばさんじゃねえかよ」
「そうか」
「もう肌も曲がり角でな。後は婆さんになって歯も抜けてな」
「よし、全部聞いた」
 ナタルはその右手に何かを出してきた。 
 見ればそれは。携帯電話であった。
「携帯電話?」
「何、あれ」
「何でここで出たの?」
「どうして?」
「これは只の携帯電話ではない」
 ナタルはその携帯の他にベルトも出してきた。
「シン=アスカ、貴様にこのベルトを付けさせてやる」
「へっ、そのベルトはあれだろ」
 シンはそのベルトを見て悪びれずに言った。
「携帯番号555だろ」
「ああ、あれね」
「着けたら変身できるやつ」
「それなんだ」
「それを着けたら俺は変身できるんだよな」
「無理にでも着けさせてやろう」
 ナタルは凄みのある顔で言ってきた。
「さて、それではだ」
「へっ、それならだ」
 ナタルからそのベルトを受け取った。そうしてだった。
 着ける。ただし番号は。
「んっ、この番号って」
「何よ」
「何だってのよ」
「913じゃねえかよ」 
 こうアスカとフレイにも言う。
「555でも333でもねえんだな」
「いいから着けるのだ」
 ここでまた話すナタルだった。
「遠慮せずな」
「何だよ、おばさんって言われたのに随分温厚だよな」
「普段ならここから凄まじい総攻撃だけれどな」
「それが今回は贈りものって」
「何でかしら」
 皆も何故かわからない。しかしであった。
 シンはその番号を入れてみる。そしてだ。
「変身!」
 右手に携帯を持ちそれを顔の前でみせてだ。そうしてベルトに着けた。
 するとだ。すぐに激しい衝撃に襲われた。
「ぐ、ぐわああああああああっ!!」
「あれっ、苦しみだしたし」
「何でよ」
「何があったんだ?」
「そのベルトはだ」
 ここで言うナタルであった。
「特定の者でないと身に着ければ死ぬ」
「死ぬって」
「それってつまり」
「そう、呪いのベルトだ」
 それであるというのだ。
「さて、それを着ければどうなるかな」
「死ぬんじゃないの?」
「流石にね」
 アスカとフレイは実に冷めている。
「まあ今までのことを考えれば」
「自業自得だし」
「私をおばさん呼ばわりした罪は重い」
 ひとえにそこに理由があった。
「たっぷりと苦しんでもらうぞ」
「ぐ、ぐわあああああ・・・・・・」
 その衝撃が終わった。だがシンは何とか生きていた。ナタルはそれを見てまた言った。
「流石にコーディネイターの中でもトップクラスか、しぶといな」
「何か凄いベルトがあるな」
 アスランがそのベルトを手に取って呟く。
「これを身に着けられる人間はどういう人間なんだ?」
「あれじゃないの?」
 ルナマリアもそのベルトと携帯を見ながら話す。
「性格がいっちゃってる人とかなんじゃ」
「そうだな。どうもそんな気がするな」
「だからこれどっちにしてもとんでもないベルトよ」
 それは間違いないのだという。
「あまり触らない方がいいかもね」
「それもそうだな」
「けれど携帯って結構あるわね」
 カーラはその携帯の一つを手に取っていた。
「これは何が出来る携帯かしら」
「ああ、それは」
 その携帯を見て話したのはキラだった。
「マシンワールドと関係がある携帯だね」
「それなの」
「うん、それでこっちはマジトピアでこっちは百獣の世界で」
「多いわね、本当に」
「そうだよね。僕もマシンワールドには縁があるから」
「私はあれなのよね」
 カーラも話すのだった。
「ミラーワールドだけれど」
「歌だったっけ」
「そう、それでね」
 こうキラに述べるのだった。
「わかるのよ」
「それも縁だよね」
「縁って大事よね」
 ここでこうも言うカーラだった。
「そっちの世界との縁もね」
「本当にね」
「それでシン」
 ルナマリアが呆れながらシンに対して言う。
「生きてる?」
「当たり前だろうがよ」
 こう返して起き上がるシンだった。
「これ位で死んでたまるかよ」
「普通死んでるよな」
「ああ」
「灰になってな」
 皆そんな彼を見て言う。
「それでも五体満足か」
「コーディネイターってだけじゃねえな」
「元々の生命力が高いんだな」
「そうなのね」
「おい、待てよ」
 ここでクレームをつけるそのシンだった。
「俺への心配の言葉が今まで一つもねえぞ」
「ああ、そうか」
「そういえばそうだよな」
「今気付いたけれど」
 皆の言葉は実に素っ気無い。
「それで大丈夫か?」
「何ともない?」
「それで」
「ああ、何ともねえよ」
 赤い軍服があちこち焦げていて顔もそうなっているがそれでもだった。
「幸いな」
「じゃあいいじゃないか」
「無事なんだし」
「それじゃあそういうことでね」
「よかったよかった」
「ちっ、何か全然心配されてねえな」
 肌でそれを察するシンだった。
「何でなんだよ」
「だってあんたいつも自業自得だから」
 今彼に言ったのはルナだった。
「どうしてもね。そうなるわよ」
「それでかよ」
「そう、そういうこと」
 こう話すのだった。
「毎回毎回本当に口悪いわね」
「それが俺なんだよ」
 全然悪びれていないシンだった。
「俺はな」
「それでまた墓穴掘るのね」
 今度は小鳥が言う。
「懲りないわね」
「糞っ、何か俺ボロクソだな」
「だからあんたは自業自得なの」
 また言う小鳥だった。
「それでなんだけれど」
「ああ、それで何なんだよ」
「そろそろギャラクシーよ」
 話がそこに戻った。
「用意はいいわよね」
「ああ、わかった」
 シンが最初に頷いた。
「じゃあ合流の準備だな」
「そういう時に出て来るからな」
 今言ったのはオデロだった。
「どの敵もな」
「そうだな。まず出て来るな」
 トマーシュもそう見ていた。
「敵がな」
「問題は何が出て来るかだな」
 オデロはこのことを考えていた。
「バジュラか?それとも宇宙怪獣か?」
「それかプロトデビルンか」
 敵はかなり多い。
「どれかだな」
「幾つも出て来ることもざらだしな」
 オデロはこのケースも考えていた。
「これはまた洒落にならない戦いになるかもな」
「そうだね。敵は多いね」
 今言ったのはウッソだった。
「出て来そうな敵だけでも」
「バッフ=クラン軍の心配もあるわね」
 ジュンコは彼等のことを述べた。
「彼等も何処にでも出て来るから」
「その心配がないのはバルマーだけか」
 オリファーは考える顔で述べた。
「あの連中だけか」
「バルマーは今五個方面軍のうち二つなくなったからな」
 今話したのはバーニィである。
「その分力を失ってるのが大きいよな」
「そうよね。ハザル=ゴッツォは気になるけれど」
 今度はクリスである。
「それでもバルマーは今はね」
「特に気にすることないよな」
「後は」 
 さらに話すバーニィだった。
「ムゲ=ゾルバトス帝国はどうなんだろうな」
「ああ、あの連中もいたよな」
「最近静かだけれどな」
「どうなんだろうな」
 彼等のこともここで考えられる。
「とりあえず今は出て来ないな」
「けれど何時かはね」
「あの連中と」
 決着をつけなければならないというのは彼等もわかっていたのだ。
「シャピロは絶対に来る」
「そうね」
 忍と沙羅がまず話す。
「あいつはね。絶対に来るよ」
「そしてその時はな」
 忍はその右手を拳にして強い顔で言った。
「あいつを倒す、俺がだ」
「うん、それは俺達の仕事だよね」
「やはりな」
 雅人と亮も話す。
「あの連中の相手はね」
「その時はやらせてもらう」
 こう話してであった。
 そのうえでだ。彼等は敵と戦う用意もしていた。
 そしてだ。遂にギャラクシーに来たのであった。
「あれっ、思ったよりもな」
「ああ、荒れてないよな」
「市街地は無事?」
「とりあえずは」
「それじゃあ」
 皆まずはギャラクシーの市街のエリアを見て話す。そこはフロンティアと同じ構造で中が見えるものだった。だがフロンティアより大きい。
「けれど端々は荒れてるよな」
「ああ」
「結構」
「戦闘は激しかったみたいね」
「しかしそれだと」
 今言ったのはロザリーだった。
「そうして守ってるのかしら」
「ああ、ギャラクシーの戦力って」
「そのスコープドッグはあるけれど」
「その他にはね」
「これといってなかったし」
「そうだよな」
 このことも話すのであった。 
 そしてだ。そのギャラクシーにさらに接近するとだった。
「レーダーに反応!」
「やはりな」
 それを聞いて静かに頷くジノだった。
「来たか」
「宇宙怪獣です」
 ザッシュが言った。
「それが来ました」
「そうか、奴等か」
 ファングはそれを聞いて鋭い顔になった。
「奴等が出て来たか」
「ライディーンの反応が凄い」
 洸は今そのライディーンに乗って話した。
「やっぱり。宇宙怪獣か」
「あの連中とも決着をつけないといけないけれどね」
「ああ、その通りだ」
 ハッターは珍しくフェイの言葉に同意していた。
「それならだ、行くぞ!」
「さて、ギャラクシー防衛ね」
 こう言ってフェイも動く。そしてだ。
 全軍でギャラクシーに向かう。しかしだった。
「!?」
「まだ戦力が出ない」
「どういうことなんだ、一体」
「そのスコープドッグは?」
 皆それを見ていぶかしむのだった。
「まさかと思うがもうやられたのか?」
「けれどそれだとギャラクシーは」
「今は」
「大丈夫だ」
 しかしだった。ここでそのギャラクシーから通信が来た。
「ギャラクシーは無事だ」
「男の声」
「そうだよな」
「間違いない」
「誰なんだ、それで」
「キリコ=キューピー」
 彼は名乗った。
「それが俺の名前だ」
「キリコ=キューピー!?」
 今言ったのはアムロだった。
「あの一年戦争のか」
「ああ、間違いないな」
「あの伝説の」
 カイとハヤトも話す。
「まさかこんな場所にいるなんてな」
「移民船団に入ったとは聞いていたけれど」
「ええと、キリコ=キューピーって?」
「誰ですか、それ」
「聞いたことないですけれど」
 殆どの面々がこう言うのだった。
「一年戦争の時って」
「そんな人いたんですか?」
「全然知らないですけれど」
「存在は極秘だったからな」
 アムロがこう皆に話す。
「俺達も星一号作戦の時にその存在を聞いただけだったんだ」
「けれど今ここでな」
「名前を聞いたんだ」
「本当にな」
 カイとハヤトだけでなくリュウも話す。
「レッドショルダーか」
「ああ、ここで会うなんてな」
 スレッガーも言う。いつもの余裕は今はあまりない。
「全く。出会いってのはわからないね」
「それでだが」
 またそのキリコの声が来た。
「協力してくれるというのか」
「はい」
 セイラが答えた。
「その為に来ました」
「そうか、それならだ」
 また言うキリコだった。
「宜しく頼む」
「わかった」
 ブライトが頷いて応えた。
「では全軍ギャラクシーの軍と合流する」
「了解です」
「わかりました」
 トーレスとサエグサも頷いた。そうしてだった。
 彼等は向かおうとする。しかしここでだ。
「軍か」
「そうですか」
「そちらの軍と合流させてもらいます」
「軍はない」  
 こう返すキリコだった。
「最早な」
「えっ、軍はないって」
「本当!?」
「まさか」
「俺以外は全て死んでしまった」
 こう話すのであった。
「誰もがだ」
「まさか一人で戦ってるんですか!?今」
「まさかと思いますけれど」
「御一人で」
「そうだ」
 驚くべき返答だった。
「今はそうしている」
「嘘・・・・・・」
「御一人でギャラクシーをですか」
「守っておられるんですか」
「噂通りだな」
 ここでまた言うアムロだった。
「異能力者キリコ=キューピー」
「それが仇名なんですね」
「キリコさんの」
「その通り名が」
「ああ、そうなんだ」
「物凄い通り名ですね」
 こんな言葉も出た。
「それって」
「そうだよな」
「しかしそんな人が出て来るって」
「またとんでもないことになってる?」
「確かに」
 そしてであった。そのギャラクシーにだ。
 スコープドッグが出て来た。周りにはかつてマシンだったと思われるものの残骸が転がっていた。
 その中からだ。またあの声がした。
「キリコ=キューピーだ」
 一同のモニターにだ。白い髪の痩せた顔の男が出て来た。
「君達は」
「ロンド=ベルだ」
 アムロが彼に答える。
「貴方がキリコ=キューピーだな」
「そうだ。そして貴官は」
「アムロ=レイだ」
 アムロもまたここで名乗る。
「ギャラクシーに来たが頼めるか」
「いいだろう」
 まずはこう返すキリコだった。
「それではだ。宜しく頼む」
「ギャラクシー政府の代表者は」
「大統領がおられる」
 こうクワトロにも述べるキリコだった。
「だが軍で戦えるのは今では俺一人だ」
「一人で戦ってるって」
「嘘だろ?」
「宇宙怪獣とか相手に」 
 皆まだこのことが信じられなかった。
「相手はした」
「一人で、ですか?」
「やっぱり」
「いや」
 しかしキリコは言った。
「前の戦いで俺以外は全て戦死してしまった。前の戦いでだ」
「そういうことだったんですか」
「それで一人で」
「そういうことだ。宇宙怪獣が相手だった」
 そのことも話すキリコだった。
「それでだ」
「バジュラは」
「バジュラもだ。来た」
 それについても答える。
「それは後で話す」
「そうですか。それじゃあ」
「詳しい話は後で」
「まずはですね」
「目の前の敵を」
 こうしてだった。彼等はキリコと共にその敵と戦うことにした。その敵は。
「プロトデビルンか」
「奴等が来たのか」
「あの連中も知っているのだな」
 またギャラクシーからキリコが言ってきた。
「そうか」
「他にもバルマー帝国とも戦いました」
「とにかく色々な連中と」
「とにかく話は後で」
 話はここまでにした。そしてだった。
 そのままプロトデビルンの軍に向かう。その数はだ。
「五十万か」
「本格的な軍じゃない?」
「そうだよな」
 皆このことを本能的に悟った。そうしてだった。
 彼等はそのまま敵に向かう。プロトデビルンの軍勢に向かう。当然キリコのスコープドッグもだ。
「えっ、速い!?」
「敵の動きを完璧に見切ってる!?」
「それに敵を一撃で」
 倒していくのだった。見事なまでの動きと攻撃だ。
 五十万のプロトデビルン達はすぐに倒された。それで終わりだった。
 ロンド=ベルはそのうえでギャラクシーに入った。そこはだ。
「かなり荒れてるな」
「ああ、何とか残ってるって感じだよな」
「本当にな」
 市街地も荒れていた。そこがフロンティアとは違っていた。
 そしてだ。キリコがここで話した。
「それでだが」
「はい」
「それで」
「ギャラクシーは御覧の有様だ」
 まずはギャラクシーについての話だった。
「戦力は俺一人だ」
「危ないところだったんですね」
「本当に」
「その通りだ。バジュラから何度も攻撃を受けていた」
 そしてだ。こう話すのだった。
「第一一七船団と同じ運命を辿るところだった」
「第一一七船団ですか」
「あの船団のことは時々聞いていました」
「フロンティアで」
「聞いていたか」
 キリコはここで彼等の言葉に目をやった。
「そちらでもか」
「はい、そうなんです」
「それでバジュラとも戦いましたし」
「それも何度も」
「こちらも同じだ。奴等は急に出て来た」
 こう話すキリコだった。
「そう。考えればだ」
「考えれば!?」
「どうしたんですか」
「一体」
「グレイス=オコーナーか」
 この名前を出すのだった。
「あの女がシェリル=ノームと共にギャラクシーを去ってからだった」
「その時からですか」
「バジュラが出て来た」
「あれっ、そういえば」
「フロンティアも!?」
 ここで彼等も気付いた。
「あの人が来てから急に!?」
「バジュラが出て来た!?」
「そうよね」
「あの人がフロンティアに来てから」
「まさか」
 ここでだ。呟いたのはキャサリンだった。
「あの人はバジュラと関係があるんでしょうか」
「そうだな。確かに」
「考えてみれば」
「あの人が出てからバジュラが来ている」
「何故だ」
「まさか」
「その可能性はある」
 また話すキリコだった。
「あの女が関係がある」
「それを考えると何か辻褄が合う?」
「バジュラについては」
「前から不思議に思っていたのですが」
 ルリがここで言った。
「バジュラは脳がありませんね」
「そうですよね、脳がありません」
「それでも生きている」
「しかも考えている」
「どうして生きているのか」
「しかも群で生きている」
 考えれば考えれる程謎であった。まさにであった。
 そしてだ。今度はテッサが言った。
「若しかして」
「若しかして?」
「何かあるんですか、バジュラに」
「バジュラは細菌と似た存在なのではないでしょうか」
 こう話すのだった。
「それで群棲して攻めて来るのでしょうか」
「群棲ですか」
「ううん、そういえば」
「そうかも知れませんね」
「そういう感じですし」
 ロンド=ベルの面々はギャラクシーに入ってまた一つの謎にあたった。そしてそれについて深く考えることになった。
 ギャラクシーの大統領とも会った。ここで大河が提案した。
「よければここにいる間ですが」
「はい」
 中肉中背の黒人の大統領だった。穏やかそうな老人である。
「どうして頂けるのでしょうか」
「こちらの防衛を請け負いたいのですが」
 こう話すのだった。
「それは宜しいでしょうか」
「是非」
 大統領にとってはむべもない返答だった。
「ギャラクシーは御覧の通り危機的な状況です。是非」
「わかりました、それではです」
 大河はまずはこの申し出を受けてもらった。そうしてだった。
 ここで大河はさらに話すのだった。
「それでなのですが」
「はい、何でしょうか」
「フロンティアと合流して頂けないでしょうか」
 さりげなく提案した。
「これから」
「フロンティアとですか」
「今フロンティアも危機的な状況です」
 このことも話す。
「そしてギャラクシーもですね」
「その通りです」
「ではここは一つ一つ行動しては危険です」
 だからだというのだ。
「それでどうでしょうか」
「わかりました」
 大統領はこの提案にも頷いた。ギャラクシーにとっては今は藁をも掴みたいという気持ちだったのだ。それだけ危機であったのだ。
 それで頷く。大河にさらに言ってきた。
「それでなのですが」
「はい」
「フロンティアは何処にあるかおわかりですか」
「無論です」
 また答える大河だった。
「それは我々が案内させて頂きます」
「そうですか。それは何よりです」
「こちらには高性能のレーダーがありますので」
 これもロンド=ベルの技術である。
「ですから御安心下さい」
「はい、それでは」
「しかし」
 ここでこの話をすることも忘れなかった。
「そのフロンティアの政権ですが」
「何かあったのですか」
「今の大統領レオン=三島は危険です」
「レオン=三島といいますと」
 大統領もその名前に反応を見せた。
「あれですね。大統領補佐官だったあの」
「はい、その彼です」
「その彼が大統領にですか」
「大統領を暗殺して政権に就いたのです」
 大河が話すのはこのことだった。
「それで今に至るのです」
「何っ、大統領をですか」
「はい」
 また答える大河だった。
「その通りです」
「まさかとは思いますが」
「そのまさかです。証拠もあります」
 ここでだ。その証拠を書類にしたものを出す。それを大統領に見せたのだ。
 大統領もそれを見てだ。政治家として察した。そのうえでの返答だった。
「わかりました」
「おわかりになって下さいましたか」
「はい、間違いありませんね」
 こう大河に述べた。
「これは」
「それではですが」
「我々は今のフロンティア政府を認めません」
 毅然とした言葉であった。
「例え何があろうともです」
「ではフロンティアとの合流は」
「現政権を何とかしたうえで、ですね」
 それでだというのである。
「そしてそのうえで」
「そうなりますね。何はともあれです」
「これからフロンティアに向かいましょう」
 今度は大統領からの言葉だった。
「そうしてそのうえで、です」
「新天地も目指しましょう」
 キリコの言葉だ。
「ここは」
「そうだな。それがいいな」
「はい、それでは」
「よしっ」
 大統領はあらためて決断を下した。
「それではだ。ギャラクシーに向かおう」
「有り難うございます」
「いや、当然のことだ」
 こう大河にも返す。
「フロンティアのその事態は見過ごしておけん」
「だからなのですか」
「レオン=三島、ここは事実を明らかにせねばな」
「はい、では」
「ギャラクシーはこれからフロンティアに向かう」
 また言うのであった。
「今からだ」
「わかりました」
「それでは」
 閣僚達も頷きそれでだった。彼等はそのフロンティアに向かうのだった。
 この時そのフロンティアではだ。アルトが部下達を連れて訓練を行っていた。
 ここでだ。部下の一人が楽しげな声で言ってきた。
「ねえ隊長」
「何だ?」
「話は聞きましたよ」
 こう言ってきたのである。
「隊長シェリル=ノームと付き合ってるんですって?」
「ば、馬鹿を言え」
 慌ててそれを否定するアルトだった。
「それはだな」
「嘘なんですか?」
「俺も聞きましたよ」
 別の部下も言ってきた。
「それでロンド=ベルに加わらなかったって」
「それで残ったって」
「そんなことはない」
 何とか事実を隠そうとする。事実はより複雑であるがだ。
「とにかくだ」
「とにかく?」
「今は訓練中ですか」
「それにバルキリー乗りのジンクスを知らないのか?」
 こう部下達に言うのだった。
「バルキリー乗りはな」
「ええ」
「それでそのジンクスっていうのは」
「女のことでからかうとだ」
「ええと、確か」
「柿崎さんですか」
 彼等もおぼろに思い出してきた。
「あの人ですよね」
「確か」
「そうだ。撃墜されるんだ」
 アルトが言うのはこのことだった。
「何処からともなくな」
「まさか・・・・・・あっ!?」
「どうした!?」
 部下の一人の今の言葉に嫌な予感がした。
「まさか撃墜されたのか!?」
「い、いえあれは」
「何だ。生きてるのか」
「あれ、シェリル=ノームですよ」
「何っ!?」
 見ればだ。カタパルトで手を振っていた。それも笑顔でだ。
「迎えに来てくれたんですね」
「じゃあ本当だったんですね」
「そ、それはだな」
 いよいよここでバツの悪い顔になるアルトだった。
「まああれだ」
「じゃあそういうことで」
「これ以上は言いませんから」
 部下達は笑ってこんなことを言ってきた。
「撃墜されたくはないですしね」
「そういうことで」
「全く。撃墜されても知らないぞ」
 憮然とした顔で言うアルトだった。だがシェリルのその迎えには笑顔になった。
 そして自分の部屋で二人で料理を作ってだ。彼女と話すのであった。
「今じゃ滅多に入らない新鮮な食材だからな」
「そうよね」
「しかしシェリル」
「どうしたの?」
「御前料理できたのか」
 包丁を持つ彼女を見ての言葉だ。
「ちゃんと」
「私だって女の子なのよ」
 少しむっとした顔で返すシェリルだった。
「それは少しはね」
「できるのか」
「そうよ、できるわ」
 こうアルトに話すのだった。
「一応は、だけれど」
「一応は、か」
「そうよ。それに悔しいじゃない」
 こんなことも言ってきた。
「私も何もできないと」
「それもあるか」
「あるわ。うっ」 
 しかしここでだ。その包丁で指を切ってしまった。
「あっちゃ~~~~、やっちゃった」
「だから言わないことじゃない」
 すぐに絆創膏を出すアルトだった。
「ほら、使え」
「え、ええ」
 二人はこうした中で料理を作ってだった。そのうえで二人で同じテーブルに座る。その料理は中々手の込んだものだった。
「よくできてるじゃない」
「そうか?」
「アルトの癖に生意気よ」 
 冗談めかしてこんなことを言う。
「男なのにこんなにできるなんて」
「一人暮らしをしているからな」
「それでなの」
「ああ、できるようになった」
 こう話すのであった。そのうえでだ。
「しかしシェリル」
「何?」
「確かにアルコールじゃないけれどな」
 シャンパンを飲むそのシェリルを見ての言葉だ。彼女はどんどん飲んでいた。
「それでもその飲み方は」
「いいのよ」
「いいって何がだ」
「ずっとこういうのに憧れてたの」
 ここでだった。幼いスラムの日々で上に見える窓から見た別の家の団欒の姿を思い出した。それは幼い彼女にとっては別の世界のことだった。
「ずっとね」
「憧れか」
「そうよ。誰かと一緒に楽しく御飯を食べることがね」
「今までなかったのか」
「なかったわ。温かい場なんてね」
 寂しい顔になっての言葉だった。
「なかったわ」
「今の事務所の社長さんはどうだ?」
「いい人よ。徳川さんもね」
「ああ、あのゼントラーディの演歌歌手の人か」
「とてもいい人よ。だから今は幸せよ」
「そうか。ならいいんだがな」
「じゃあどんどん食べましょう」
 シェリルの方から言ってきた。
「楽しくね」
「ああ、わかった」
 アルトはシェリルのその言葉に頷き彼もその温かい場を楽しんだ。それが終わってからであった。
 シェリルはソファーの上でまどろんでしまった。酔ってのせいだ。
 そのシェリルを見てだ。アルトは呟くのだった。
「らしくないぜ」
 苦笑いと共にであった。こう呟いたのだ。
 そしてクランはだ。ミシェルと病室で話していた。
「それでだが」
「ああ」
「あのグレイスの行方がわからなくなった」
「そうなのか」
「何処に行ったのかわかりはしない」
 こうミシェルに話す。
「フロンティアにいるのは間違いないのだが」
「消されたか?」
 ここでこう言うミシェルだった。
「大統領にな」
「そう思うか?」
「いや」
 ミシェルはここで己自身の言葉を否定した。
「それはないな」
「そうだな。あいつは生きている」
「そう簡単に死ぬ様な奴じゃないな」
「では何処にいる?」
 クランはこのことを考えていた。
「一体何処に」
「もうすぐ俺も退院できるしな」
「探すつもりか」
「ああ、そうする」
 こうクランに話す。
「一人より二人の方が楽だしな」
「済まない」
「そんな言葉はいいさ。ただ」
「ただ。何だ?」
「第一一七船団といいギャラクシーといい」
 ベッドの中のミシェルの顔は深刻なものだった。
「全部あいつがやってきたのか」
「そうかも知れないな」
「だとしたらとんでもないことだしな」
「そうだな、実にな」
「それを調べていくか」
「うむ。ただしだ」 
 クランは強い顔と声になっていた。
「このことはだ」
「まだ誰にもな」
「言ってはならないぞ」
「わかってるさ。俺達だけの秘密だ」
「そういうことだ」
「それじゃあさらに調べていくか」
「うむ、そうしよう」
 こうしたことを話していた。彼等も彼等で動いていた。
 運命の歯車は動き続けていた。そしてそれがだ。アルト達をその中に引き込んでいくのであった。彼等が気付かないうちに。


第五十四話   完


                       2010・9・2
        
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