| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

スーパーロボット大戦パーフェクト 完結篇

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第五十話 グッバイ=シスター

           第五十話 グッバイ=シスター
 ミシェルはだ。今クランと会っていた。場所は屋外のレストランだった。
 そのクランがだ。むくれていた。
「一体何の用だ」
「何の用かって?」
「そうだ、何の用だ」
 こうミシェルに言うのである。
「私は忙しいのだぞ」
「忙しいって今日お互いに非番だろ」
 ミシェルは少しきょとんとした顔で言葉を返した。
「それでか?」
「それでもだ。私は忙しいのだ」
「ああ、そういえば」
 ここでクランは言った。
「あれだったな。大学に通ってるんだよな」
「シティ7のな」
「それで今はフロンティアのか」
「そうだ。それで何の用だ」
 また言うクランだった。
「何故ここに呼んだ」
「まあ大した用じゃないんだけれどな」
 ミシェルは普段の態度のままである。
「ちょっと気になることがあるんだよ」
「気になることか」
「御前の声ってあれだよな」
 声の話だった。
「ミリアリアちゃんと同じだよな」
「その話か」
「似てるなんてものじゃないだろ」
 また言うのであった。
「そう思うんだがどうなんだ?」
「そう言う御前は何だ」
 クランも真剣な顔で返す。
「御前の声もだ。ティエリアそっくりではないか」
「そうなんだよな。ルカもルカであれだしな」
「斗牙だな」
「そうだよな・・・・・・んっ!?」
「どうした?」
「おい、あれ」
 レストランの下を指し示すのだった。
「隠れるぞ」
「何かわからないがわかった」
 クランはミシェルのその言葉に頷いた。
「それではな」
「ああ。あれを見ろ」
 二人は隠れてミシェルのその指し示したものを見た。
「ルカが」
「あの車は」
 見れば政府の車だった。しかも多くの黒い服の男達も一緒にいる。一目見ただけで尋常な様子ではないのがわかる。ルカはその車に乗った。
「どういうことだ、これは」
「わからない。フロンティアの政府と接触しているのは間違いないが」
「それだけだな。一体何なんだ?」
 今はそれはわからなかった。だが二人はそれを見た。 
 そしてである。オズマはだ。キャスリンの部屋で彼女と話をしていた。彼はまずは自分が今食べているそのパインケーキのことを話した。
「久し振りだがな」
「どうだったかしら」
「いいものだな」
 こう言うのだった。
「料理の腕は落ちていないな」
「そう。それはよかったわ」
「俺が作るとどうもな」
 ここで苦笑いを浮かべるオズマだった。
「まずいと言われるからな」
「妹さんになのね」
「どうしたものかな」
 困った顔での言葉だった。
「これは」
「やっぱりあれじゃないかしら」
「あれか?」
「センスね」
 キャスリンはこの言葉を出してきたのである。
「それね」
「センスか」
「ええ、それよ」
 また言うキャスリンだった。
「それが必要なのよ。料理にもね」
「御前に教えられた通りしたのだがな」
「それでも駄目なのよ」
「駄目か」
「だから。オズマには料理のセンスがないのよ」
「元々料理はしなかったがな」
 このことを認めもした。
「そういうことか」
「そうよ。それで私のケーキだけれど」
「ああ」
「有り難う」
 微笑んでの言葉だった。
「全部食べてくれて」
「美味かったからな」
 また話すオズマだった。
「だからな」
「そういうことなのね」
「それでだがな」
 ここでオズマは話を変えてきた。
「いいか」
「ええ、あのことね」
「やはりあれか。レオン三島か」
「間違いないわ」
 キャスリンはこうオズマに返した。
「彼がね。関わっているわ」
「そうか。やはりな」
「まだ何を考えているかはわからないけれど」
 それはだというのであった。
「それに」
「それにか」
「彼は危険なのかも知れないわ」
 ふとキャスリンの顔が曇った。
「それもかなり」
「婚約者じゃないのか」
 オズマはこのことを指摘した。
「それでもか」
「ええ。野心家だから」
 言葉は現在形だった。
「それが魅力だと思えたのよ」
「そうか」
「けれど。調べれば調べる程ね」
「危うい男だな」
「それがわかってきたわ。どうもね」
 こう言ってだ。キャスリンはその整った顔をさらに曇らせた。
「このままでは何をするかわからないわ」
「中将との関係も気になるな」
「美知島中将ね」
「オニクスと一緒にな。何を考えている」
「オニクスには今全てのギガンディックの性能を集めているわ」
「何っ?」
 それを聞いて声をあげたオズマだった。
「全てのか」
「そうよ。これまでギガンティックは互いの性能を互換してきたわね」
「ああ」
「それがあのシリーズの強さだったけれど」
「それを全てか」
「何を考えているのかしら」
 また言うキャスリンだった。
「彼も中将も」
「俺も動く」
 ここでオズマは言った。
「今から言って来る」
「めぼしい場所があるのね」
「それを見つけた」
 こうキャスリンに話す。
「すぐに行って来る」
「気をつけてね」
 キャスリンの言葉は真剣なものだった。
「それは御願いね」
「わかっている。それじゃあな」
「ええ。それじゃあね」
 こうしてだった。オズマは何処かに向かった。その時拳銃を忘れなかった。
「ランカ・・・・・・」
 妹の名前を車の中で呟く。
「御前は俺が守る」
 こう決意してだった。そのうえで向かうのであった。
 アルトは壁と壁の間をよじ登ってそうして。ランカの部屋に入った。その彼をランカが出迎えるが彼の顔は浮かないものであった。
「ったくよお」
「どうしたの?アルト君」
「これじゃあ間男だよな」
「そうかしら」
「そうだよ。変な感じだよ」
 こうランカに言うのだった。
「全くな」
「けれどブレラさん達がいるから」
「それとオニクスのあの二人か」
「そうなの。ずっとボディーガードをしてくれていて」
「ちょっとやり過ぎじゃないのか?」
 こうも言うアルトだった。
「ここまでしないと会えないなんてな」
「やっぱりそう思うのね」
「ちょっとな。それでだけれどな」
「うん」
「話って何だ?」
 こうランカに問うのだった。
「携帯じゃ話せないことって何だ?」
「ちょっと待って」
 ここでランカは言った。
「アルト君はコーヒーだったわよね」
「ああ」
「それ持って来るから」
 こうしてだった。コーヒーとチョコレート菓子が持って来られた。そのうえでテーブルに座って二人で話す。そこであの緑色のペットが来た。
「この子だけれど」
「おい、それは」
「うん、ずっと飼ってるの」
 こうアルトに言うのだった。アルトはそれまで部屋の中のランカがオズマと一緒にいる写真を見ていたがそちらに視線を集中させた。
「この前から」
「見つかったらやばいぞ」
「わかってるけれどそれでも」
「それでこの子のことをっていうんだな」
「私が面倒見れない時は御願いできる?」
 アルトに対して申し出る。
「その時は」
「ああ、いいさ」
 二つ返事で答えるアルトだった。
「御前にとって大事なものだよな」
「ええ」
「じゃあそうさせてもらうさ」
「有り難う、アルト君」
「いいさ。それじゃあこのコーヒー飲んだらな」
「どうするの?」
「帰る」
 返答は一言だった。
「そうさせてもらう」
「そうなの。帰るの」
「ああ。ところでランカ」
「何?」
「バジュラのことだけれどな」
 今度は自分が話したいことを言うのであった。
「あれでいいのか?」
「歌うこと?」
「ああ。御前はあれでいいんだな」
 ランカの目を見て問うのだった。
「兵器になることで」
「うん」
 ランカはアルトのその言葉にこくりと頷いた。
「いいよ、私は」
「そうか、いいのか」
「だって。それで皆助かるよね」
「ああ、バジュラの動きが止まっただろ」
「ええ」
「それに何か向こうの攻撃や守りまで弱まったしな」
 アルトはランカにこのことも話した。
「皆助かったって言ってるさ」
「なら私はそれでいいから」
「それでか」
「皆が喜んでくれるならそれでいいから」
 微笑んでの言葉だった。
「それでね」
「そうか。御前はいいんだな」
「うん、だったら」
「そうか、わかった」
「アルト君はどう考えてるの?」
 ランカもまたアルトに問うてきた。
「それで」
「俺か」
「バジュラについて。やっぱり考えてるよね」
「ああ、俺はな」
「アルト君は?」
「どっちかが滅びるまで戦うんだと思っている」
 こう真剣な顔で言うのである。
「俺はな」
「そうなの」
「二つの種族が互いに生きよう、栄えようと思ったら」
「うん」
「そこで争いが起きる。そして生き残るのは」
 ここからさらに真剣な顔で言うのだった。
「どちらかだ。共存はないんだ」
「そう思うのね」
「違うか、それは」
「それは私にもわからないけれど」
 ランカもまた難しい顔になっていた。
「けれど。ゾヴォークの人達とは和解できたじゃない」
「同じ人間だからな」
「バジュラとは無理なのかな」
「無理だな」
 やはりこう言うアルトだった。
「奴等には知性自体がないからな」
「難しいのね」
「宇宙怪獣と同じだ」
 彼等の話も出した。
「あの連中とも。どちらが滅びるまでな」
「それと同じなのね」
「そう思う、俺はな」
 こんな話をしていた。そしてルカはレオンと話をしていた。その中でレオンに言われていた。
「これがあればだ」
「バジュラに対抗できるんですね」
「そうだ。協力してくれて有り難う」
 レオンは口元だけで笑って述べた。
「これで我々は戦える」
「いえ、僕は」
「当然のことをしたまでだというのか」
「フロンティアの人達の為にも」
 その為だというのである。
「だからです」
「そうか。それでか」
「僕はそれだけです」
 また言うルカだった。
「それじゃあ」
「ならいい。それでだが」
「それで?」
「君にはこれからも協力してもらいたいがいいか」
「フロンティアの為なら」
 こう限定しての返答だった。
「させてもらいます」
「よし。ではな」
 こんな話をしていた。レオンはその後スーツの男と会った。それは。
 髪を外すとだ。すぐにグレイスになった。その彼女とも話した。
 そしてだ。オズマはだ。ある場所に忍び込もうとしていた。 
 拳銃が手にある。それを手に入ろうとするとだ。
「待て」
「!?貴様は」
 ブレラだった。彼もいたのである。
「何故ここにいる」
「ここには大切なものがあるからだ」
「ランカのだな」
「知っているんだな」
「だからこそここにいる」
 こう答えるブレラだった。
「そしてだ。ここから先には行かせない」
「いいのか、俺も今度はだ」
 拳銃を出しながら言う。
「意地でも通らせてもらう」
「ランカの為にか」
「そうだ、ランカは俺の妹だ」
 このことを言うのだった。
「だからだ。何があっても守る」
「妹だからか」
「それならだ」
 ここでだ。ブレラも前に出た。二人は対峙しはじめた。
 その中でだ。ブレラも言うのであった。
「俺もランカを守る」
「何ッ、それは何故だ」
「御前と同じだ」
 こう言うのである。
「だからだ」
「同じ、まさか」
「ランカは俺が守る」
 その時ブレラの胸で何かが光った。それはペンダントだった。
 そのペンダントを見てだ。オズマは気付いた。
「まさかそれは」
「そのまさかだとしたらどうする」
「何があった」
 オズマはそのブレラに問うた。
「ランカに、そして御前に」
「話すことはない」
 それは言おうとしなかった。
「去れ。俺が言うことはそれだけだ」
「去るつもりもない」
 オズマも退かなかった。
「絶対にだ」
「そうか。それならだ」
「やるか」
 二人は戦おうとした。しかしそこで、だった。 
 二人の携帯がそれぞれ鳴った。二人同時に出るとだった。
「仕方ないな」
「今日はこれで終わりだな」
 言葉もそれぞれだった。
「まずはバジュラだ」
「行くとしよう」
 こうしてだった。彼等はそのままそこから離れて出撃する。バジュラの一軍が再びロンド=ベルに対して突き進んできたのである。
 それを見てだ。ジェフリーは言った。
「総攻撃だな」
「はい」
「わかったわ」
 その言葉にキャスリンとボビーが応える。
「では全軍」
「やるわよ!」
 こうしてロンド=ベルはいきなり総攻撃を仕掛けた。しかしであった。
「!?思ったより減ってないな」
「ああ、確かに」
「どういうことなんだ!?」
「これは」
「まさか。やっぱり」
 ここでルカが言った。
「バジュラはこちらの攻撃に耐性を持つんです」
「何っ、それだとだ」
 クランがそれを聞いて言う。
「我々が倒せば倒す程バジュラは強くなるのか!?」
「はい、そうなります」
 こう言うのだった。
「ですから。今も」
「そうか、だからレオンさんはそれを察して」
「それで」
 ここで一同も気付いた。
「ランカちゃんの歌を」
「それでか」
「けれど」
 しかしだった。今ランカはいなかった。
「ランカちゃんは!?」
「一体何処に」
「いや、わからない」
 オズマが言う。
「何処にいるかはだ」
「じゃあ一体どうすれば?」
「バジュラは迫っているのに」
「どうすれば」
 ロンド=ベルは少なからず困惑していた。そしてだ。レオンはそんな彼等を見ながらそのうえでグレイスと話をするのであった。
「飴と鞭ですが」
「今は飴よ」
「飴ですか」
「あの娘へのね」
 悠然と笑っての今のグレイスの言葉だった。
「それなのよ」
「ではロンド=ベルにとっては」
「鞭になるわね」
 笑みはそのままである。
「そうなるわね」
「やれやれ、それでもいいのですね」
「ええ、いいわ」
 また言うグレイスだった。
「ロンド=ベルはね」
「相変わらず恐ろしい人だ」
 こう言うレオンも笑っている。
「敵に回したくはないものだ」
「どういたしまして」
 そんな話をしながら戦局を見ていた。戦局はロンド=ベルの面々が当初考えていたよりもさらに苦戦していた。その原因もわかっていた。
「ちっ、ランカちゃんがいないとな」
「それにバジュラの耐性があがってる」
「何てこった」
「反応弾とか受けてもまだ生きてる奴いるぜ」
 皆少なからず焦りを感じはじめていた。
「数も多いしな」
「援軍も来たわよ」
 ここで言ったのはルナマリアだった。既にビームライフルを壊れんばかりに放っている。
「二倍になったわね、数が」
「ここで一気に潰すつもりか」
 レイがその援軍を見て呟いた。
「それがバジュラの考えか」
「冗談じゃないわよ」
 今言ったのはメイリンである。
「ちょっと、そう簡単にやられるつもり!?」
「まさか」
 彼女に応えたのはアズラエルである。
「何故僕達がここで死ななくちゃいけないんですか」
「だったらここは」
「踏ん張りどころですね」
 アズラエルも何時になく真剣な面持ちだった。
「まあ常になのですが」
「じゃあアズラエルさん」
 ここで同じクサナギに乗っているユウナが彼に言ってきた。
「ここはですね」
「はい、ここは」
「防火活動手伝って下さい」
 彼が言うのはこのことだった。
「今大変なんで」
「そんなに大変ですか」
「もう猫の手が借りたい位なんですよ」
「トダカさんやキサカさんはどうしたんですか?」
 クサナギを実際に動かしている軍人二人である。
「そういえば姿が見えませんが」
「とっくに出払ってますよ」
 ユウナは困り果てた顔で言った。
「あちこち被弾してもうそっちに行って」
「それで僕もですか」
「とりあえず僕は艦橋にいないといけないんで」
 一応彼が指揮官であるのだ。
「それでなのですが」
「今クサナギはそんなに危ないんですか?」
「沈みたいですか?」
 ユウナの返答は実に切実であった。
「それならいいですけれど」
「わかりました。じゃあ行ってきます」
「そういうことで。沈まない為にも」
 クサナギはこんな状況だった。だがそれはクサナギだけではなかった。バジュラの攻撃にどの者も必死であった。そして。
 マクロスクォーターにバジュラが一機来た。
「なっ!?」
「一機だけ!?」
「特攻!?」
「いかん!」
 それを見てジェフリーも言った。
「迎撃せよ!対空戦闘用意!」
「は、はい!」
「わかりました!」
 すぐにキム達が応える。しかしであった。
「間に合いません!」
「このままでは!」
「くっ、各員衝撃に備えよ!」
 こう命じたその時だった。
 そのバジュラの前にだ。オズマのバルキリーが来た。そして。
「させるか!」
「えっ、少佐!」
「まさか!」
「くうっ!」
 攻撃を受けた。しかしであった。
 返す刀でそのバジュラをダガーで切った。それでバジュラを倒したのだ。
「なっ、ビームダガーで!?」
「少佐、大丈夫ですか!?」
「まさか!」
「まさかもこうしたもない!」
 オズマは立っていた。そのうえでアルト達に言うのだった。
「攻撃がききにくくてもだ!」
「戦う」
「そういうんですね」
「反応弾が駄目ならミサイルだ!」
 まずはそれだというのだった。
「それが駄目ならガンポッド、それが駄目ならだ!」
「ダガー」
「そして」
「拳もある。全てを使って倒す!」
 オズマはそこに気迫を見せていた。
「それだけだ。何を使ってでも倒す!」
「何故そこまでして戦うのよ」
 キャスリンが思わずオズマに問うた。
「死ぬつもり!?貴方実際に」
「市民の為、仲間の為」
 そのオズマの言葉だ。
「そして惚れた女の為に戦う!それが男だ!」
「えっ・・・・・・」
 キャスリンはすぐにわかった。それが誰のことかをだ。
「オズマ、そんな・・・・・・」
「全軍いいか!」
 オズマは今度は仲間達に対して叫んだ。
「全力でバジュラを倒す!いいな!」
「そうだな。いいこと言うぜ」
 最初に笑って応えたのはフォッカーだった。
「そう来ないとな。じゃあ俺もだ!」
「どうするっていうのかしら」
「クローディア、御前の為に戦う!」
 こうそのクローディアに対して言うのである。
「いいな、それで!」
「ええ、いいわよ」
 クローディアも笑って返した。
「それならね」
「ああ、行くぜ!」
 こうして彼もバジュラに向かう。アルトとミシェルも。
 まずはミシェルが言った。
「ロックだねえ」
「演歌だろ、あれは」
 こうミシェルに返すのだった。
「だがな。それでもな」
「ああ、俺達にも火が点いたぜ」
 二人はモニターで顔を見合わせて笑っていた。
「行くか!」
「一気にな!」
 しかしだった。ルカだけが遅れていた。
「おい、ルカ」
「行くぞ」
「は、はい」
 今一つ浮かない顔で二人に応えるのだった。
「それじゃあ」
「行くぜ、それじゃあな」
「この戦い、決めるぜ」
 二人はそのままルカと共に戦場に向かった。戦いはオズマの気迫に触発されたロンド=ベルの炎の如き攻撃で決着がついた。そしてその後。
「さて、勝ったし」
「後はこれだな」
 全員でランカの歌を聴く。コンサートに来ているのだ。
 そこにはオズマもいる。隣にいるのはキャスリンだ。
「ねえオズマ」
 キャスリンはそのオズマに対して声をかけた。
「さっきの話だけれど」
 だが返事はない。そして彼を見ると。背中から血を流しその中で倒れ伏していた。
 病院でだ。ミシェルが言っていた。
「あのまま死んでたら最高だったんだがな」
「全くよ」 
 キャスリンがその彼に憮然とした顔で返す。
「本当に。何考えてるのよ」
「まあ生きていて何よりさ」
 今度は笑って言うミシェルだった。
「俺もそう簡単には死ねないな」
「誰も死んだら駄目よ」
「誰もですか」
「そうよ。ロンド=ベルは誰かが死ぬことが許されない場所みたいだから」
「そうみたいだな」 
 ここでモエラも出て来て言うのだった。
「俺だってあの時は死んだと思ったんだがな」
「俺なんか本当に天使が見えたよ」
 トールも出て来た。
「それでもここにいるからな」
「人間って中々死なないものだよなあ」
「確かに。僕も一回死ぬところでしたし」
 ニコルも言う。
「この部隊はとにかく死なない人ばかりですね」
「誰かが死んで嬉しい奴なんているかよ」
 今言ったのはジェリドだ。
「俺は撃墜はされても死なないようにしてるんだよ」
「そういえばジェリドさんって」
「確かに」
「ティターンズ時代何度も撃墜されて」
「それでも今ここにいるから」
「不死身?」
 こんな言葉まで出て来た。
「ひょっとして」
「機体も色々と乗り換えてるし」
「適応力も凄いのね」
「人間タフでないと生きられないんだよ」
 そのジェリドの言葉だ。
「これでもテキサス生まれだからな。タフさには自信があるぜ」
「そうだな。それはよくわかる」
 応えたのはグン=ジェムだった。
「わしもドラグナーの小僧達に何度も撃墜されてるしな」
「っていうかおっさんよくあれで生きてたよな」
「全くだよ」
「おっさんも不死身なんじゃないのかね」
 ケーンにタップ、ライトがそのグン=ジェムに突っ込みを入れる。
「まあ金竜大尉も生きてるしな」
「この部隊とにかく人が死なないのがいいのよ」
「本当にな」
「あの変態爺さんとか妖怪忍者はそれこそブラックホールの中に落ちても生きてそうだけれど」
 アスカはここで忌まわしげに言った。
「死んで欲しいんだけれどね」
「アスカってまだあの人達嫌いなんだね」
「っていうか常識ないのは嫌いよ」
 こうシンジにも言う。
「全く。流石にここまでは来ないでしょうけれど」
「来るんじゃないかな」
 だがシンジはこう見ていた。
「あの人達だと」
「げっ、来るの」
「他の世界でも普通に来たんだし」
 シンジはその時のことを話した。
「だからここにだって来るんじゃないかな」
「うっ、否定できないわね」
 アスカは顔を顰めさせて言葉を出した。
「あそこまでの変態や妖怪だと」
「けれどシュバルツさんってドイツの人なんだよね」
「ドイツに忍者はいないわよ」
「じゃああれは何なの?」
「知らないわよ。胡散臭い強さだし」
 強さは認めていた。
「変態爺さんに至っては使徒を素手で破壊してたし」
「あれはびっくりしたわね」
 ミサトもその時のことを思い出して苦笑いになっていた。
「最初見た時は我が目を疑ったわ」
「BF団以上だったし」
 リツコも言う。
「あの恐ろしい破壊力はね」
「まあ何はともあれよかったわね」
 ミサトは今度は優しい微笑みになっていた。
「少佐が無事でね」
「そうね、それはね」
「次の戦いは無理だけれど復帰は早いわよ」
 ミサトは微笑みのまま話す。
「安心してね」
「そう。それならね」
 そしてだった。オズマは病室でだ。泣いているランカに抱き締められていた。
「何やってるのよ、何かあったらどうするのよ」
「済まないな」
「済まないじゃないわよ、全く」
 こんなことを話していた。そうしてである。
 同じ病院でだ。シェリルがグレイスと会っていた。
「そういえばこの病院だったわね」
「ええ、そうよ」
 真剣な顔でグレイスに言葉を返している。
「知らないってことはないわよね」
「勿論よ。知っていたわ」
 こうシェリルに返す。
「それはね」
「私達、どうやら」
 シェリルはまた言ってきた。
「じっくりと話す必要があるみたいね」
「そうね」
 グレイスもシェリルのその言葉を受ける。
「私もそう思っていたわ」
「思っていたのね」
「ええ」
 悠然と返しすらする。
「そうよ。それじゃあ」
「ええ、それじゃあ」
 その場で向かい合い話をはじめる二人だった。シェリルの運命もまた動こうとしていた。


第五十話   完


                         2010・8・19    
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧