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IS《インフィニット・ストラトス》~星を見ぬ者~

作者:白さん
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第十九話『凰鈴音』

「おはよう、織斑君!」


朝、席に着いた一夏とクラスメイトが挨拶を交わす。直ぐ後にスウェンも教室に入ってくる。


「おはよう、スウェン」

「ああ、おはよう」


スウェンはそう言うと、自分の席である一夏の後ろの席に座る。


「そう言えば二人とも聞いた? 二組のクラス代表が変更になったって聞いてる?」

「代表を変更?」


スウェンは少し興味有り気に反応する。


「うん、名前は忘れたけど、中国から来た転校生に変わったの」

「ほう……この時期に、ましてや中国からか……だが二組の話だ、騒ぐ事でも無い。それよりも織斑、お前は来月のクラス代表戦に向けて備えるべきだ」

「そうですわ! 是非勝っていただかないと!」

「が、頑張る……」

「けど、今のところ専用機持ってる代表は一組と四組だけだから余裕だよね」

「その情報、古いよ!」


一人のクラスメイトがそう言った瞬間教室の入口のほうから声が聞こえた。その声に反応してか、一夏は誰よりも先にそちらを見る。髪を左右に結い、肩を露出するように改造された制服を身に纏う生徒だ。


「二組も専用機持ちが代表になったの、そう簡単に勝つ事なんて出来ないから」


腰に手を当て、自信満々に言うその少女。小柄だがどこか堂々とした気迫のある雰囲気を醸し出している。


「!? 鈴……? お前、鈴か!」

「そうよ。中国代表候補生『凰鈴音』。今日は宣戦布告に来たってわけ!」


ビシィ!という効果音が鳴りそうな位に一夏の事を指差す鈴音。


「知り合いか?」

「ああ、あいつも幼馴染なんだけど……鈴、お前何恰好つけてるんだ? すげえ似合わないぞ」

「んなっ……!? なんてこと言うのよ、アンタは!」


先程の気迫は何処へやら、一瞬にして消え去る。するとゴツッと鈍い音が鈴音の頭から鳴る。鈴音は振り返り


「何すんのよ!?」

「もうSHRの時間だ。教室に戻れ」

「ち、千冬さん……」

「織斑先生と呼べ。さっさと戻れ、邪魔だ」

「す、すみません……」


千冬の言葉に顔色を変え、一夏の方を向き


「またあとで来るからね! 逃げないでよ、一夏!」


そう言い残していった鈴音であった。


「ふっ……」

「何だよ、スウェン」

「いや、お前もつくづく。と思ってな」

「何だよそりゃ……」





/※/





そして昼休み。一夏はスウェンを誘い、食堂へ向かった。スウェンだけではなく、箒やセシリア、他のクラスメイトも一緒についてきた。


「さて、座る場所、座る場所っと……」

「待ってたわよ、一夏!」


一夏は座る場所を探していると、長テーブルに座っていた鈴音が声を掛けてきた。丁度周りには空席が幾つかあるので



「おお、鈴。席いいか?」

「え? ま、まあ好きにすれば?」

「じゃあ座ろうぜ」


そうして一夏を含めたクラスメイト達は席に着く。スウェンは一夏から離れた端の席に座る。


「それにしても久しぶりだな。ちょうど丸一年になるのか。元気にしてたか?」

「げ、元気にしてたわよ。アンタこそ、たまには怪我病気しなさいよ」

「どういう希望だよ、そりゃ……」

「で、いつ日本に帰ってきたんだ? おばさん元気か? いつ代表候補生になったんだ?」

「質問ばっかしないでよ。アンタこそ、なにIS使ってるのよ。ニュースで見たときびっくりしたじゃな
い」


久しぶりの再会に会話が弾む二人であったが、箒とセシリアが席を立ち二人の前に行き


「一夏、そろそろどういう関係か説明してほしいのだが」

「そうですわ! もしかして一夏……この方とつ、付き合ってらっしゃるんじゃ……」

「べ、べべ、別に私は付き合ってる訳じゃ……」

「そうだぞ。なんでそんな話になるんだ。ただの幼馴染だよ」

「……」

「? 何睨んでるんだ?」

「別に!」

そっぽを向いて明らかに不機嫌そうに堪える鈴音




「織斑君の幼馴染かぁ~。まさか二人もいたなんて」

「びっくりだよね~」


鈴音と一夏のやり取りを見て、少し遠目の席に座っているクラスメイトが言う。スウェンはそんな二人には視線を送らず、ただ昼食をとっていた。今日の彼の昼食はカレー。IS学園の料理はどれも絶品であるが、スウェンはいかんせん部隊でカレーばかり食べていたせいか、他のメニューには目もくれずカレーばかりを頼んでいるらしい。

そうこうしているうちにスウェンは既に食べ終えていた。


「スウェン君食べるの早い!?」

「おお~スッチー早食いだねー」

「……食事は迅速に、だ」


スウェンはトレーを持ち席を立つ。


「スウェンもう行くのか?」

「少しやる事がある」

「そっか、じゃあ後でな」

「……ああ」


止めていた足を再び動かして行くスウェン。鈴音は一夏の方を向き


「あれがもう一人の男のIS使用者?」

「ああ、スウェン・カル・バヤンっていってドイツの代表候補生なんだ」

「へぇ~……なんかくらそーなヤツ」

「でもないぞ、実際話せば結構良いやつだし」

「そうなんだ。まあ、強そうに見えるのは確かだけどね……」





/※/




「っくし……風邪でも引いたか? 健康管理はきちんとしている筈だが……」


スウェンは廊下を歩いていると、一人の生徒とすれ違う。


「君がスウェン・カル・バヤン君ね」

「……?」


立ち止まり振り向くと、その生徒は扇子を右手に持ちスウェンの方を向き


「私はIS学園生徒会長『更識 楯無』よろしくね」


楯無と名乗る生徒の胸元のリボンは黄、つまり二年生だ。スウェンは一つの言葉に注目した


「更識?……まさかだと思うが、簪の……」

「そう、あの子の姉よ」


扇子を開き、そこには“姉”と書かれている。


「それで、俺に何の用だ?」

「そんなに警戒しなくてもいいのに。ただ挨拶をしようと思ってだけ、織斑 一夏君ともう一人の男性IS搭乗者の君にね」

「……そうか」

「スウェン君はこれから時間ある? もしよければちょっと一緒に――」

「断る」

「……理由を聞いてもいいかしら?」

「お前の言葉には何か裏が有るように聞こえる。俺は聊かそれが不愉快だ、次に会う時はそれを無くしてから来てもらおう」


スウェンはそう言い残し、楯無は一切見ず歩いていった。


「……一筋縄ではいかないという事ね。面白い人……」


 
 

 
後書き
今回は大してストーリーに進展はありませんでしたが、楯無との邂逅ということで、今後これが関与していきます。

 
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