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IS《インフィニット・ストラトス》~星を見ぬ者~

作者:白さん
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第十八話『苦悩せし少女との邂逅』

IS学園のグラウンドに一年一組の生徒達が千冬の前に整列していた。


「ではこれよりISの基本的な飛行操縦を実践してもらう。織斑、カルバヤン、オルコット。試しに飛ん
でみせろ」

「はい」

「了解」

「分かりましたわ」


三人は千冬の指示により前に出て、スウェンはストライクを。セシリアはブルー・ティアーズをそれぞれ展開する。だが、一方の一夏は白式を展開できていないようだ。


「えっと……あれ?」

「遅いぞ。熟練した操縦者なら展開に一秒とも掛からないぞ」

千冬の言葉に一夏は焦りながらも、右手に装着された白式の待機状態であるガントレットに左手を添え


「来い、白式!」


白式の名を呼び、何とか展開する事に成功した。千冬は「よし」と頷き


「よし、飛べ!」


その合図と共に、セシリアが先に、スウェンはエールストライカーのバーニアを吹かしてから空へと飛ぶ。少し間をおいて一夏も危なげながら飛び、二人の下に到達する。

スウェンはその一夏の飛行を見て


(あのおぼつかない飛び方……ラウラを思い出すな)


まだISを動かし慣れていなかった頃のラウラと一夏の姿がスウェンにとって重なって見えていた。


『織斑、何をやっている。スペック上の出力は白式の方が高いはずだぞ』

「うぐ……」


通信で入る千冬の叱責に一夏は苦虫を噛み潰した表情をする。スウェンとセシリアは一夏と同じ所まで行く。


「確か教科書じゃ自分の前方に角錐を展開させるイメージ……だったけど、正直よくわかんねえ……」

「一夏さん、イメージは所詮イメージ。自分がやりやすい方法を模索する方が建設的でしてよ」

「そう言われてもなぁ……スウェンはどんな感じでやってるんだ?」

「オルコットの言うとおり、自分でやりやすい方法でやっている。そのやりやすい方法を見つけるまでが少し時間が掛かる。慣れるしかないな」


一夏は「成る程」と呟く。


『お前達、急降下と完全停止をやって見せろ。目標は地表から十センチだ』

「りょ、了解です。ではお二人とも、お先に」


セシリアは一気に加速、地面直前まで行き機動調整を行い完全停止を見事成功させた。


「上手いな……次は俺が行こう」


エールストライカーの全スラスターを吹かし地面が目の前まで迫ると、下部の独立したスラスターを下方に向け、勢いを殺し無事成功。


「お見事ですわ、スウェンさん」

「ああ……?」

「のわあああぁぁぁ!!」


直後すさまじい音とともに一夏は着地するどころか盛大に墜落、地面に大きなクレーターを作り上げていた。


「……ISでなければ即死だな」

「何を悠長な事を言ってるんですか! 一夏さん!」


セシリアは一夏の下へと駆けていき、スウェンは一夏の作ったクレーターの側による。近くにいる千冬は呆れ返った表情をしている。


「全く、グランドに穴を開けてどうする」

「ですが怪我が無くて良かったのでは?」

「……一度大きな怪我でもせねば怖さも解るまい」

「そういうものですか……ところで、あれはどうするおつもりで?」


スウェンの視線の先には、セシリアと箒が睨みあっている。


「放っておけ、直に終わるだろう」

「……了解」




そして千冬の出席簿で叩かれるまで二人の喧嘩はおさまらなかったそうだ。




「カルバヤン」


授業が終わり、教室へ戻るスウェンを呼び止める千冬。


「グレーデュント夫妻からお前宛に荷物が届いている。放課後第二格納庫に行け」

「義父さん達から荷物?……了解」


千冬はスウェンに伝えた後職員室に行った。一夏がやってきて


「千冬姉と何話してたんだ?」

「俺の所に義父さん達から荷物が届いたらしい。放課後に取りに行く」

「ということは、一夏さんの代表就任パーティーには出席なさらないのですのね」


側にいたセシリアの言葉にスウェンは頷く。他の生徒もそれを聞いており


「そっか~残念だな~……」

「すまないな、お前達で俺の分も楽しんでくれ」


他の生徒たちはガッカリとした表情になっていた。





/※/




そして放課後。第二格納庫へ来たスウェンは、目の前にある大き目のコンテナを見ていた。


「これか」


とりあえず、スウェンはコンテナに一つだけついているスイッチを押す。コンテナはゆっくりと開き、中にあるものを晒し出していく。姿が完全に露になったとき、スウェンは


「!?……これは」


ガトリングが搭載されたその機首に、X字型に広がっているポッド状の装備。そしてその橙色の配色。スウェンはこれが何なのか一目でわかった。


彼の目の前に存在するのは“ガンバレルストライカー”有名なのは連合軍の“月下の狂犬”と呼ばれた一人の兵士が105ダガーに装備していたストライカーだ。スウェンはまさかこのような所でこれを見るとは思わなかった。

コンテナの中を見るとブック型の端末機器が置いてあり、スウェンはそれを手に取り操作する。


「装備は俺の知っている物と変わらないか……ん? AIを搭載しているのか」


端末を操作し、ガンバレルのデータを見ていく。驚く事にこのガンバレルはスウェンの言ってるいる通り、AIを搭載しておりそれを起動する事でこのストライカー最大の武装“有線式ガンバレル”の操作を手助けするというものだ。操縦者の脳波とAIによる操作で、スウェンが扱えるように設定されている。


「凄いな……義父さんと義母さんは良くここまで技術を……」


データに目を通していくと、ストライクとの接続、認識はスウェン自身でやるしかないみたいだ。ロイからはIS等の整備などを、スウェンはある程度教えられていたので何とかなる。幸い接続の仕方などは端末にある。


「始めるとするか」





そしてそんなスウェンの様子を機材の後ろから見ている、眼鏡を付けた少女『更識 簪』。彼女は作業をしていたが、スウェンが格納庫へやってきた事により条件反射で身を隠してしまっていた。


「あの人が……本音と同じクラスの……」


簪はスウェンからスタンドポジションのストライクとガンバレルストライカーに視線を移す。どちらも見た事がないタイプのISと装備で、彼女の好奇心を突き動かすには十分のものであった。


「変な……見た目だけど……どういう装備なんだろう……!?」


ガンバレルストライカーの機首が後部に折れ曲がり、プラグのような物が露出、ストライクの背部に接続された。ふとスウェンの表情を見ると、さっきと変わらないように見えるが心なしか喜んでいるようにも見えた。





コンソールを打ち、作業をしていたスウェン。接続は完了し、残すはストライクとストライカーの認識だが途中まで順調だったが、最終段階で詰まってしまった。何度操作しても、上手くいかない。スウェンは深くため息を吐き、再度作業を再開しようとすると


ガチャ


「!?」

「誰だ」


簪はもう少し近くで見たいと動いたが、足下のスパナに足が当たりスウェンに気づかれてしまった。無言で機材の後ろから出て、スウェンの近くまで行く。


「君は?」

「四組の……更識……簪」

「俺はスウェンだ。ところで更識、君は――」

「苗字で呼ばないで」

「……わかった、なら簪。君は何をしていた?」

「これを見てた……」


簪が横を向く。勿論その先にあるのはガンバレルストライカーを装備したストライクだ。


「これに興味があるのか?」

「……うん」

「そうか……動くところでも見せてやりたい所だが、最後に詰まってしまってな」

「見せて……」

「?」


スウェンは言われたとおりに端末を簪に手渡す。端末を数秒見た後、簪はコンソールを打ち始めた。すると認識が成功し、ガンバレルストライカーとストライクは完全に接続された。


「!? どうやって……」

「簡単だったよ……?」

「……感謝する」


そう言い、スウェンはそのままはゆっくりと背を預け、ストライクを身に纏う。格納庫の少し広いところに行くと集中力を高め


「……行け」


四基のガンバレルは本体から離れ、有線誘導により動き出す。スウェンはAIによる恩威を受け自由自在に操作でき、有線のため範囲に限界があるが、自分の周りや簪の頭上に移動させたりし動作テストは難なく終えた。ガンバレルは本体に戻り、スウェンはストライクを待機状態にする。


「動作に問題は無し……ありがとう、簪。お陰で難を乗り越えた」

「……別にお礼は……良い。面白いものも見れたし」


簪はそう言い、踵を返し何処かへ行った。


「……さて、そろそろ寮に戻るか」


そうして作業を終えたが、コンテナや機材の片付け、コードが絡まったりしてしまい時間が掛かってしまったスウェンであった。


 
 

 
後書き
はい、まさかのガンバレル登場です。

やはりガンバレルは良いです、有線遠隔操作とかもはや私のツボですね。 
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