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デュエル準備2 魔導師は神様と邂逅しました。
前書き
連投です。とりあえず書いておいた三話分だけ投稿したいと思います。
それではどうぞ。
「マジすまんかった」
俺の名前は更識悠斗。時空管理局に所属している魔導師の一人だ。突然だが今俺は突然の状況に困惑している。
それも仕方ないだろう、幼馴染を庇って死んでしまったはずの俺がこうして意識があること自体おかしいのに見たこともないあたり一面真っ白な世界で目覚め、見知らぬ老人に土下座されながら誤られているのだから。
(……いったい何なんだこの状況は?)
思わず俺は首を傾げるが、とりあえず目の前の老人から話を聞こうと口を開いた。
「と、とりあえず顔を上げてくれないか爺さん?突然土下座なんてされてもなんで謝られてるのかわからんし、なにより俺は今の状況をまったく把握できてないんだが?」
俺のその言葉に老人はしばし無言でいたがやがてため息をひとつ吐くとゆっくりと立ち上がった。
「そうじゃな。ならばまずは自己紹介をさせてもらうとするかの」
そう言うと老人は本当に申し訳なさそうな顔のまま衝撃の言葉を口にする。
「ワシの名はオーディーン。君たち人間が言うところの
『神様』じゃよ」
………は?
☆
☆
『オーディーン』。
北欧神話に登場する主神のことで、ユグドラシルの根元にあるミーミルの泉を飲むことにより魔術を身につけた知識の神。
「それがあんただと?」
「うむ。……まあ信じられんのも無理はないかもしれんがの」
「ああ、まあそりゃあな……」
いきなり神様なんて名乗られて信じろなんて言われても困る。まあただ者じゃないことくらいはなんとなくわかるが。
「まあこの際ワシが本物の神様かどうかなんてどうでもよい。ようはお主たち人間とは別の存在だと理解してくれればの」
「はぁ…。とりあえず了解したが……。そんな人外殿がどういう経緯で土下座なんてしてきたんだ?それにここはいったい……?」
俺の言葉に自称“神様”であるオーディーンの爺さんはしばし考えを整理するように黙り込んでいたが、やがて口を開いた。
「ふむ。それを話す前に一度確認しておきたいのじゃが、とりあえずお主自分が死んでしまったことは覚えているかね?」
「あ、ああ。というかやはり俺はもう死んでいるんだな?」
「ああ、誠に申し訳ないことにな」
「…申し訳ない?それはいったいどういうことだ?」
その言い方だとまるで俺が死んだことに対してこの爺さんに責任があるように聞こえるのだが?
そう言うと、オーディーンの爺さんは再びその顔を申し訳なそうに歪めた。
「実はその通りなのじゃよ。お主が死んでしまったのはワシのせいなのじゃ」
「………なに?」
その予想外の言葉に俺は思わず眉間に皺が寄るのがわかる。
「つまりあれか?あの屑鉄どもはあんたの差し金と?」
「いやそれは違う。お主たちがあの機械兵器に襲われることは初めから運命で決められておった。ワシがお主が死んでしまったのはワシのせいだと言ったのは『更識悠斗の死亡』という運命が実はワシのミスで運命が歪んで起こってしまったことだったからじゃ」
「は?運命を歪めた?」
「うむ」
オーディーンの爺さんが言うには、俺が生きていた世界はあらかじめ何が起こるか運命で決められており、あの機械兵器の襲撃でも本来死ぬのは俺ではなく別の人間だったのだとか。
オーディーンはその人々の運命を管理する役目を担っており、人が死ぬときは死ぬ運命である人間の書類を人間の魂を連れてくる部下である別の神に渡して魂を現世から運ばせるらしいのだがこの爺さんは本来死ぬ予定である人間の書類ではなく間違えて俺の書類を渡してしまったということらしい。
「本当に申し訳なかった」
「別にいいぞ」
「謝ってすむことではないことはわかっとる。しかしワシにはこうすることくらいしかできぬ」
「いやだからいいって……」
「……そうじゃよな。そう簡単に自分を殺した相手を許すことなどできぬよな、ってなにいいいいいいいい!?!?」
「反応遅いなあんた!?」
なんなんだこいつ、ボケてんのか!?
割と真剣にオーディンの爺さんの頭の中を心配する俺を、爺さんは信じられない者を見るような目で見てくる。
「そ、それはつまりワシのことをゆ、許してくれるということか!?」
「ん?ああ、もう起きちまったことはしょうがねえし。それにあんたが言った『本来死ぬ運命だった人間』って要するになのはのことだろ?」
「あ、ああそうだが」
「やっぱり」
ていうかあの状況で死ぬのはなのは意外にありえないからな。つまり俺はなのはの代わりに死んだことになる。
「だから別にいいよ、どうせ身内もいないし。むしろあいつが死ぬ運命を救うことができたんだ。礼をいいたいぐらいだよ」
まあこんなことあいつは望まないだろうし、怒るだろうがな。
爺さんは俺の言葉を聞きしばし呆然としていたが、やがてその瞳を潤ませたかと思うと滝のような涙を流しはじめた。……って!?
「ど、どうしたんだよ爺さん!?突然泣き出したりして!!」
「う、嬉しいのじゃよ。お前さんのようなやさしい人間に出会えてのぉ」
「はあ!?」
詳しく話を聞いてみるとこの爺さん。実は神様としての仕事が多忙すぎてその疲れからか何回か同じようにミスをやらかしてるらしい。
爺さんはミスが起こる度にこうしてその被害者の魂を応接室代わりにしているこの白い空間(趣味が悪いと思ったのは内緒)に呼び出し謝罪しているらしいのだが、その呼び出す人間たちはことごとく爺さんのことを罵り、中には自分たちの欲望のままに身勝手な要求をしてくるものまで出てきたのだとか。
自分が悪いので仕方ないと爺さんはそれらの罵詈雑言に黙って耐え、できる限りの要求も叶えたのだがそんなことがあったからか、人間に絶望し疲れ切っていたらしい。
そんな中俺が他人を思いやる言葉を吐き、自分を殺した爺さんを許すなどの慈悲を見せたことに今までの反動もあって感動してつい涙が出てきてしまったということらしい。……どんだけメンタル弱いんだよ爺さん(あんた)。
爺さんはしばしそのまま涙を流し続けていたがやがてそれを着ていた服(魔法使いのローブのようなもの)の袖でゴシゴシと拭き取ると、晴れ晴れとした笑顔を浮かべながらその顔を上げる。
「うむ決めた!お主にはお詫びとして特別に特典を与えて記憶を持たせたまま転生させよう!!」
「は?転生って生まれ変わりのことか?」
「うむ。お主はネット小説を読んだことはあるか?漫画の二次創作とかの」
「ネット小説?いや漫画は普通に読むがそれは読んだことはねえな」
最近は仕事が忙しくてその漫画も読んだことねえし。
「そのネット小説がどうかしたのか?」
「うむ。実は最近このネット小説で『神様転生物』というものが流行っておるようでの」
「神様転生物?」
聞くと神様転生物とは、簡単に言えばなんらかのアクシデントで死んでしまった主人公を神様がこれまたなんらかの理由で特別な能力を特典として与え、別の世界に転生させて主人公がその世界で無双するという話らしい。
これ自体は完全に俺たち人間の創作なのだが、実は爺さんたち神はこれと同じようなことを実際におこなっているのだとか(尤もそれは歴史上に名を残す偉人クラスの偉業を成し遂げたものに対象を限定しているらしいが)。
……つまりは、
「強くてコンテニューということか?」
「ま、まあ言い方は変わっとるがそれで間違ってはおらん」
「ふむ。なるほどねえ……」
そいつはいいや。特典はどんなものか知らんが前世で培ったスキルを持ち越せるなら、他人より大分有利な状況で第二の人生を送ることができるってことだからな。
……ただ問題が二つほどある。
「二つほど質問がある。その話に乗ったとして俺はどんな世界に転生してどんな特典を貰うことができるんだ?」
そう問題点とは『転生するであろう世界』と『貰える特典』についてだ。
もし転生する世界が危険な世界だったらせっかくの第二の人生もすぐ終了してしまうだろうし、それならば生き残るために、特典とやらもそれなりの物を貰わなきゃいけないしな。
俺のそんな心配を孕んだその問いに、しかし爺さんは安心させるような穏やかな笑みで答える。
「安心せい。特典は基本転生させる対象者の望み通りの物を与えるようになっておるし、お主を転生させる世界も普通に生きていれば基本命の危険を脅かすものは何もない。まあお主の転生先はちと特殊な世界と言えば特殊な世界じゃが」
「特殊?どういうことだ?」
首を傾げながら発した俺の問いに爺さんは答える。
「うむ。それを説明する前に一つ確認するが、お主の趣味は“デュエルモンスターズ”というカードゲームで間違いないかの?」
「あ、ああ。なんで知って…って、神様なんだからそれくらい知ってても不思議じゃないか」
『デュエルモンスターズ』。
それは俺が小学二年のころから流行りだし、今でもギネス記録として残るほど莫大な人気を誇るカードゲームのことだ。
俺は小学三年のころからこのカードゲームをやり始めたのだがすっかりハマってしまい、今では新しいパックが出る度に仕事で得た給料でとりあえず箱買いするほどのヘビーユーザーとなっている。
ちなみに自慢ではないが、大会でもそれなりの成績を残すくらいのプレイの腕はある。……最近は管理局の仕事が忙しくて参加できていなかったが。
「そのデュエルモンスターズがどうかしたのか?」
「うむ。お主を転生させる世界はこのデュエルモンスターズが中心となって社会が回る世界となっているんじゃよ」
「……は?どゆこと?」
詳しく話を聞くと、なんでも俺を転生させる世界は一般常識などは殆ど俺の出身世界である地球と同じものだが所々違っているらしく、一番違うのはデュエルモンスターズの腕前が社会的地位に大きく左右するほど流行している世界らしく、野球やサッカーみたいにデュエルモンスターズのプロリーグまであるほどなんだとか。
「へぇ~なるほど。それなら大した危険はなさそうだな」
「ああ、精々がお主のいた世界と同じようにチンピラに絡まれるとか犯罪に巻き込まれるとかぐらいじゃろうな。…と言ってもワシもあの世界の全てを完璧に把握しているわけではないので完全に断言できるわけではないが」
「は?神様なんだからそれくらい普通にできるんじゃないの?」
「ワシは基本人間の運命を管理する役目なのでな。世界のデータを全て覚えてるわけではないのじゃよ。それにお主が転生する世界にとってはお主は完全な不確定要素となり運命が決まるまでに時間もかかるからお主の未来はまだワシにもわからんし」
「……なるほど」
つまりは表立って危険なことはないが、俺に危険なことがないとは完全に言い切ることはできない世界ということか。
(なら念のために護身用の特典も貰っておくべきか。もし危険なことがなくてもあって困るもんでもないし。……よし!)
「それじゃあ貰いたい特典が決まったけど今言って大丈夫か?」
「ああ構わんぞい。それでどんな特典が欲しいんじゃ?」
「うん。まずは『幸運』かな」
「ほう…」
俺の言葉を聞きなぜか面白そうに目を細める爺さんを不思議に思いながらも俺は話を続ける。
「具体的にはカードのパックを買ったらレアカードが当たりやすくなったり、大事なデュエル中、ピンチになったら逆転のカードが引きやすくなるくらいの幸運は欲しいな」
「その程度の幸運でよいのか?お主が望めば一生働かなくてもお金に困らなかったり、どんな危機が訪れても何もしなくても回避できるくらいの運はやれるが?」
「うーん、それは魅力的だけどいいよ。なんか駄目人間になっちゃいそうだし」
それにそんな生活送ってると生活は裕福でもあいつら(・・・)みたいに心から信頼できる人間とは出会えないかもしれないしな。
俺の言葉に爺さんは納得したように頷く。
「なるほど一理あるな。了解じゃ。それで他にはまだあるかの?」
「ああ。その前に俺が生きていた世界のデュエルモンスターズのカードは転生先で使えるか?使えるなら全部持っていきたいんだけど」
デッキとか愛着あるし。
「それはもちろんできるが……。しかしそれでよいのか?お主が望めばデュエルモンスターズのカードを全種類与えることもできるが」
「いやそんなに貰っても保管場所に困るから別にいいよ」
なにより全て把握するのが大変そうだ。なら手持ちのカードをやりくりしてデッキを作るほうがずっといい。
「ふむ、わかった。この持ち越すカードはお主がある程度年をとってから渡すということになるがそれでも構わんかの?」
「?別にいいけどなんで?」
「よく考えてみい。子供が産まれたと思ったら知らないカードが突然現れたとなれば家族に不自然に思われてしまうじゃろうが」
「あ、なるほどね」
そこまで考えてなかったわ。
「じゃあそれで頼む」
「うむ了解じゃ。お主が五歳ほどになったらワシの知り合いに届けさせるとしよう。後はもうないかの?」
「ああ後魔法を使えることってできるか?」
「魔法?それはお主が使ってた魔法のことか?」
「ああ。念のため、護身用に使えるようにしときたいんだ」
俺の言葉に爺さんは何か考え込むような仕草を見せる。
「ふむ…。それは可能じゃがデバイス無しでは大した魔法は使えんじゃろうしデバイスも用意したほうがよいかな?」
「いや、デバイスは無しにしてくれ。できればデバイス無しでデバイス使用時くらいの魔法が使えるようにしてくれると助かるんだけど」
デバイスがあれば確かに便利だが、いくらもう戻れないって言っても長年の相棒以外のデバイスはあまり使いたくないしな。
「ふむ、デバイス無しで使えるようにか。その理由はよくわからんが了解した。ならば前世のリンカーコアの他にデバイス並みの演算能力も追加しておこう。欲しい特典は以上でよろしいかの」
「ああサンキュー。でも今更だけどいいのか?俺特典一人で複数貰ってるけど」
ぶっちゃけ半分ダメ元デ言ったんだけどあっさり通ったんで少しびっくりした。
そんな俺の疑問に爺さんはなんでもないかのように答える。
「ああ構わんよ。お主の場合一つ一つはそう大した力は使わん願いじゃし。それにこれはお詫びなんじゃから被害者の希望はできるだけ通さなきゃ意味ないからね」
「なるほどね」
なら別に気にしなくても大丈夫か。
「ふむ……。それじゃあ特典の希望も聞いたしそろそろ転生してもらうかね」
「ん、ああわかった。ところで転生ってどうやるんだ?」
なんか扉的なもんでもくぐるのかな?
そんな俺の問いに対し爺さんはニタリと悪どい笑みを浮かべた。
それは昔友人の一人である豆狸が、自身の悪戯を成功させたときに見せた笑みにそっくりだった。
その笑みに、猛烈に嫌な予感がしたので俺は急いで爺さんに何をする気か問いかけようとしたのだが、その前に爺さんは俺の言葉に「こうやって」と返して指をパチンと鳴らす。
すると、俺の足元に突然大きな黒い穴が出現した。
「……へ?ってうああああああああああああああああああああ!?!?」
突然のことに反応できなかった俺は当然のごとく重量の法則に従いその穴の中へと落ちていく。
「達者でのーーーーーー!!」
こうして俺の第二の人生が始まった。
ま、精々楽しみますか!
後書き
次回はターン1…の前に主人公設定。
それでは感想や誤字脱字の報告などお待ちしております。
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