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デュエル準備1 魔導師は死んでしまいました。
前書き
どうも、自称二次創作作家(笑)のラドゥと申します。
今回は最近の遊戯王GXの二次小説ではリリなのクロスやISクロスが多いのでこの二つを合わせたらどうなるかなぁと考え我慢できなくなり書いてみました。
暇つぶしにでもなれば幸いです。
第二十七管理外世界【クラリス】。全てが雪に覆われた白銀の世界。
本来人を寄せ付けない未開の地であるはずのこの世界にその少女たちの姿はあった。
☆
☆
「悠斗君!悠斗君しっかりして!!」
『マスター!?』
雪に包まれた大地に血まみれで倒れている少年に、泣きながらも必死で呼びかけるこの少女の名は『高町なのは』。後に時空管理局最高の魔導師の称号である『エースオブエース』の名を得ることとなる管理局に所属する魔法少女である。
そして彼女が必死で助けようとしているこの血まみれの少年の名は『更識悠斗』。高町なのはの幼なじみの一人にして同期でもある、これまた管理局所属の魔導師である。
なぜ彼がこのような事態に陥ってしまったのか。それはハッキリと言えば彼女、高町なのはに原因があると言えた。
高町なのはと更識悠斗。彼らの出身世界である管理外世界【地球】は、本来なら魔法などというものとはえんもゆかりもない世界だったのだが、ある日その世界で起こってしまったある事件に協力したことがキッカケで彼ら二人は魔法の力に目覚めその才能を生かすために紆余曲折を経て、幼くして管理局に入ることを決意する。
管理局に入った二人はその類い希なる才能を開花させ様々な事件を解決に導いていくことになるのだが、幼い頃に父親の入院がキッカケで家庭内で一人孤独に陥り、いつも『自分はいい子でいなきゃいけない』『いい子でいなければいらない子になってしまう』と思うようになっていたなのはは、魔法という特別な才能が自分にあり、多くの人々から多大な期待を寄せられていくようになるとしだいに『魔法がないとせっかくできた友達や、仲間。自分によくしてくれている人たちに見捨てられてしまう』という強迫観念に狩られるようになり、その不安を振り払うために無理を重ねていく。そしてその無理はなのはの体に痛みや疲労として蓄積されていった。
そして今回の任務。今回の任務は、本来人が立ち入ることが許されていないこの管理世界で不振な魔力反応を関知したのでその調査をせよという内容で、本来なら彼女たちなら無難にこなせる戦闘もない簡単な任務のはずだったのだが、突如謎の機械兵器の群に囲まれ戦うことを余儀なくされることとなる。
その戦闘自体は相手が意志もない機械ということもあり、彼女たちの圧勝で終わるはずだったのだが、一体の機械兵器を相手にしているときに、そこで今までなのはの体に蓄積されていた疲労が表にでてきてしまい、彼女の体が一瞬硬直してしまう。
――――――悲劇はその時起こった。
『なのはーーーーーー!!』
『え!?』
幼なじみの必死な叫び声が聞こえたかと思うと、いつの間にか何かに体を突き飛ばされるのを感じたなのは。何が起こったかわからず痛む体を無理やり動かして振り向いた彼女が見たものは、
『………ガハっ!?』
口から血を垂れ流し胸から刃を生やした悠斗の姿だった。
彼は機械兵器の奇襲から幼なじみを体を、いや命を張って庇ったのだ。
『悠斗君!?』
『悠斗!?クソっ!!』
それを目撃したなのは体が痛んでいたかなど嘘のように、彼らと同じくこの任務に同行していた夜天の騎士の一人である『ヴィータ』と協力して機械兵器の群を瞬時に吹き飛ばし彼を救出するが、ときすでに遅し。彼は既にその身に後戻りができないほどの重傷を負ってしまっていた。
歴戦の騎士であるヴィータは彼の傷を一目見てその事実に気づいたが、それを受け入れられず念話で必死に医療班に救援を求め、なのはは冒頭のように彼のデバイスである『ブレイブソウル』と共に彼の意識をつなぎ止めようと必死で呼びかける。
しかしその声を遠くなる意識の中聞いていたとうの本人は、体からどんどん力が抜けていくのを感じながら確信していた。
自分がもう助からないことを。自分の人生が今日ここで終わってしまうことを。
しかし死を目前にして彼の心は驚くほど穏やかだった。
(……まあいいか、幸い悲しむ家族もいないし)
彼は元々父と母の三人家族で暮らしていたが幼い頃に二人とも交通事故で他界。それからは海鳴市に住む母方の祖母に引き取られたのだが、その祖母も去年この世を去り、完全な天涯孤独の身となっていた(親戚はいたがどいつもこいつも両親の遺産目当てが見え見えだったので悠斗は一切連絡を取っていない)。
(なによりこいつを護って逝けるなら本望だ……)
そう思いながら、彼は未だに何かしら叫んでいるなのはに視線を向ける。
更識悠斗にとって高町なのはとは、幼なじみや親友という以前に、かげがえのない恩人でもあった。
小学生に入ったばかりの頃の彼は、両親を無くしたばかりということもあり暗い、悪く言えば根暗な性格となり人と関わりを持つのを拒絶するようになっていった。……まるで自分が関わる人間が再び消えてしまうのを恐れるかのように。
彼の心は両親の死と共に死んでしまったのだ。
そんな状態の彼を救ったのが彼の幼なじみである高町なのはだった。
父親が入院して孤独を感じていたときに彼の励ましでなんとか乗り越えることができたと考えていたなのはは、今こそ恩を返すときと積極的に彼に話しかけ、またときには二人の親友の手も借りて強引に彼を引っ張り回した。
初めこそ拒絶の意志を見せていた悠斗だったが、余りに強引な彼女の行動に渋々言うことを聞くようになり、やがて自らの心に光を取り戻し両親の死を乗り越えることに成功する。
彼は思う。あのときのなのはの行動がなければ自分の心は未だに死んだままであったと。
なので彼自身はこの死に方には満足していた。なにせやっと彼女に長年の恩を返すことができたのだから。
悠斗は自分の視界がどんどん霞んでいくのを気づく。体も熱を感じなくなり、瞼がどんどん重くなるのを感じた。
悠斗は気づく。もう終わりがすぐそこまで来ていることに。
そんな悠斗の様子に気づいたのかなのはたちは必死の形相で声をさらに張り上げる。
「悠斗君目を閉じちゃ駄目!!」
「しっかりしろ悠斗この野郎!今救護班を呼んだから助かるぞ!!」
『意識をしっかり持ってくださいマスター!!』
(やれやれ、最後くらいのんびりさせてくれないのかねこいつらは……)
かすれゆく意識の中に聞こえてきた声に、思わず心の中で苦笑する悠斗。
だが同時に嬉しくもあった。彼女たちの中で自分が必死になるほど大きな存在だと感じることができたからだ。
悠斗は口元に笑みを浮かべながら彼女たちがいるであろう場所に、その視線を向ける。
「わ…り……おま…ら…。おわか…れ……だ……」
「何馬鹿なこと言ってやがるんだ悠斗!」
「そうだよ!そんなこと言わないで!!」
悠斗の言葉を涙ながらに否定するなのはとヴィータ。それは彼が間違っているからではなく、自分たちがこれから起こることを信じたくないからこそ出てきた言葉だった。
二人の言葉に困ったような笑みを浮かべながらも二人の手を握りしめながら悠斗は言葉を続ける。
自身の感謝の言葉を伝えるために。
「い……まま…で……こ…んな…俺と……一緒にいて……くれ…て…あり……がと……」
「そんな……。そんなこと言わないでよ!?」
悲痛な声を上げるなのはを悠斗はその笑みを濃くして見ていたが、やがて重くなった瞼に逆らえなくなりその瞳を閉じた。
そして更識悠斗はその息を引き取った。
「悠斗君!?悠斗君!!そ、そんな。う、うそ………。いやああああああああああああああああああああああああああああああああ!?!?!!」
一人の少女の心に大きな傷を残して。
こうして更識悠斗の短い人生は幕を閉じることになる。
………はずだったのだが、
「マジすまんかった」
なぜか死んだはずの彼は気づいたら見知ら真っ白な空間に立っており、そんな彼の目の前には彼に向かって土下座する老人の姿があった。
「………え?誰?」
後書き
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