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ゲームの世界に入った俺は伝説のサムライになりました。

作者:ユウスケ
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4話 コヴォルト退治 後編



襲われている女の子の後姿にどこか見覚えあると感じながら、女の子の前に飛び出し
近くのコヴォルトを三匹ほど切り裂く。
間に合った……。
つーか、俺って最近こんなんばっかじゃね?

「し、師匠!」

「イシュラ…お前、なんでここに……」

女の子に怪我が無いか確認しようとしたら、聞き覚えのある声と呼び名がした。
まさか……。
ありえないだろ、と思いながら振り返ると村にいるはずのイシュラが居た。
何でこんな所にいるのか?と聞こうとすると、彼女はギョッとした顔をして
俺の後ろを指差す。

「師匠、後ろ!!」

「ギギ!」

イシュラの声の後に聞こえるモンスターのダニ声。
俺は素早く振り返ると同時に横に刀を振るう

ズパン

「ギ!?」

すると、俺の背後を狙ってであろうコヴォルトの胴体は真っ二つとなり
瞬時にHPバーを真っ白にした後、Gを僅かに落として絶命した。
とりあえず俺は、イシュラの事は後回しにする事にして、目の前のコヴォルト達を
先に片付ける事にした。

「ギギ」

「ギギギッギッギ」

「ギギギ?」

仲間が何匹か殺された事で、慎重になっているコヴォルト達の数を数える。
ひぃ…ふぅ…み…。
大体20匹ぐらいか?
いちいち一匹一匹を相手にするのは面倒だし、アレを使うか。
正直残酷過ぎてあまり好きじゃないんだけどしょうがない。
俺は大太刀を水平に構え、刀身の付け根から切っ先まで二本の指を添えて滑らせる。

「無明神風流……殺人剣――」

指を滑らせた刃は左の示指と中指が触れた場所からうっすらと光を帯び、
静かに周囲から風が集まる。
俺はその風を気にすることなく刀を上段に構え……。

「みずち」

振り下ろした。
技名を口にすると同時に刀を振り下ろすと、辺り一面に吹き抜ける暖かい疾風。
それはまるで、命が芽吹く春の大気のよう。
『殺人剣』と呼ぶには相応しくない、優しく、暖かい大気。
それは包み込むようにコヴォルト達を通り抜けた。

「ギギ?」

「ギギー……」

「ギギギ???」

技を掛けられた、コヴォルト達は何したのコイツ?
と思われる疑問の声を上げる者や、気持ちーと言わんばかりに眼を細めて声を出す者。
彼等は、俺の技が不発だと思ったのだろう。

『ギギーー!!』

調子に乗った彼等は、威勢のいい雄叫びを上げて突っ込んでくる。

「ギギ!?」

「ギ…ギギ?」

しかし、一歩進むと彼等の雄叫びは驚愕の声と疑問の声に変わる。
なぜなら、彼等の無事であったはずの足や腕などがなくなって、地面に転がっているからだ。
俺は、疑問の声を上げる彼等に言ってやった。

「お前達も聞いただろう?」

俺はスルスルと刀を鞘に戻していき
パチンという音を立てて刀をしまって、囁いた。

神風(かぜ)清響(こえ)を』


ズバァァ!!!


俺が囁くとコヴォルト達は全員バラバラに解体され全滅した。

「す…すげー…」

「一撃で全部倒したぞ……」

「決め台詞がたまんねぇ!」

「師匠……カッコイイ」

コヴォルト達を全滅させた俺に対して、各々の感想を口に出す青年団の男達と
イシュラ。
やめてくれ!決め台詞がカッコイイとか言わないで!!
あれは技の仕様なんだ!俺の意思じゃないんだ!!
俺はもう中二病はとっくの昔に完治したんだよーーー!!



イシュラ視点

私のピンチをまたも救ってくれた師匠。
謙虚な師匠もいいけど、戦いになると男らしくなる師匠も大好き!
コヴォルトを倒した師匠は本当にかっこよかった。
そして、コヴォルト達を一撃で倒したのに自慢一つしないで

「別にたいしたことじゃないよ…うん」←恥ずかしさで精神がボロボロ

なんていうんだもの!!ほんと、惚れ直しちゃった!!
師匠と一緒に戦うことが出来なかったのは残念だけど、師匠のかっこいいところが見れた
からいいや!
コヴォルト達に囲まれた恐怖も師匠のお陰ですっかり忘れ、いい気分に浸っている
私だったのだけど……。

「さて……イシュラ。何で村で留守番しているはずのお前がここにいるんだ?」

山賊のような顔のジャッコーさんに、睨みつけられながら声を掛けられた。
あ……。
さっきの高揚感は何所へいったのか
今私の中にあるのは、コヴォルトに囲まれた時以上の恐怖だけだった。


☆☆☆


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

「キョウさん。本当にありがとうございました。
おかげで森で狩りやキノコの採取が安心して出来そうです」

「はは…は…そうですか」

コヴォルトを全滅させた後、俺達は村に帰ってきた。
村人達は歓声と賞賛の声で出迎えてくれたが、イシュラだけは
怖い顔をしたオランドゥさんとレヴィアに連行されてしまう。
たぶん俺の予想以上の説教を受けたのであろう。
眼がうつろでひたすらごめんなさいと呟いている。
なにがあったか気になるが聞かないほうがいい気がする。

「では…おれはそろそろ旅に………」

「まあ、待ってください。コヴォルトを退治していただいた上に娘の命まで
救っていただいたのです。ぜひ、お礼をさせてください」

「わたしからもお願いします。キョウさん」

「いや……これ以上お世話になるのはご迷惑だと思うので…」

「そんな!とんでもない!迷惑なんてありません!それに恩はちゃんと返さねばならぬ
とファドラの教えにもありますので、気にしなくていいのですよ」

「しかし……」

「キョウさん。私達に妹を救っていただいたお礼をさせてください。」

「………はい」

オランドゥさんの自宅に置いてあった薬箱を背に今度こそ旅に出ようと
する俺だったが、レヴィアとオランドゥさんにおし留められてしまう。

俺は何時になったらこの村を出て行けるのだろうか?








 
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