ノルマ
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第三幕その四
第三幕その四
「殺せ!」
「生贄に!」
彼等は口々にそう叫ぶのであった。
「この森を汚した罪は重い!」
「ガリアの神々の怒りを受けるのだ!」
「いいだろう」
ポリオーネも覚悟を決めていた。毅然と胸を張って彼等に応えるのだった。
「喜んでその死を受けよう」
「やはりこの方が」
ノルマは何とか表情を保ちつつポリオーネの姿を見て呟く。
「どうすれば」
「ノルマ!」
その彼女にガリアの者達が声をかける。
「今こそここで!」
「生贄に!」
「わかっているわ」
ノルマは己の心を隠して彼等に応える。
「鎌を」
「はい」
それに応えて尼僧の一人があの黄金の鎌を彼女に手渡した。生贄を殺す神々の刃である。それが今ノルマに手渡されたのであった。
「さあ、今それで!」
「殺せ!」
「いえ、待つのです」
しかしここでノルマは言うのだった。
「待つ?」
「そうです」
ノルマは言う。
「この男に聞きたいことがあるのです」
ガリア人達に顔を向けての言葉であった。
「この男に」
「一体何を」
「ここに来ることはガリアの者達にしかできないこと」
ガリア人達の聖地だからだ。だからここに来る道も彼等しか知らないのだ。それでどうして知っているかということはやはり何かがあるということであるのだ。
「この男を招き入れたのは誰か。私は知らなければなりません」
「我等の裏切り者が誰か」
「それをですか」
「そうです」
彼女は言う。
「だからこそ。暫く二人でこの男に聞きます」
「わかった。それでは」
オロヴェーゾはそれを聞いて同胞達に声をかける。これには先程の蜂起の失敗に対する後ろめたさもあったのであろうか。
「いいな」
「はい、それでは」
「暫しの間」
こうして彼等は姿を消した。後にはノルマとポリオーネだけになる。ノルマは二人だけになるとポリオーネに向かい合った。そうして言うのであった。
「これで貴方は私の思いのままになったのよ」
じっと彼を見据えての言葉であった。
「わかるわね」
「わかってはいる」
ポリオーネもそれは認める。
「しかしだ」
「しかし?」
「君はそうはしない」
「いえ、するわ」
だがノルマはこうポリオーネに言葉を返すのであった。
「できるわ」
「それは何故だ」
「子供達にかけて」
二人の間にいる子供達を出してきた。
「誓うのです。アダルジーザを諦めることを」
「アダルジーザを」
「そうです」
ポリオーネの目を見据えての言葉であった。
「あの娘を神々の祭壇から引き離さないことを。そうすれば命を助けてあげるわ」
「僕の命をか」
「ええ。それに」
ここで一瞬だが俯いた。しかしすぐに顔を上げて言うのであった。
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