八条学園騒動記
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第三百話 ナンはいなくてもその六
「カーストによってはお家の中で住まずにね」
「外で住んでいるのか」
「ホームレスもカーストの一つとしてあるらしいから」
古い言葉では物乞いだ。彼等もカーストとして存在しているというのだ。
「だから住む場所もね」
「何とかなるのか」
「そうみたいだね」
「カースト制度は知っているつもりだが」
それでもだとだ。アルフレドは首を捻りながら言った。
「しかし住む場所にも影響しているのか」
「あと食べる場所とかにもね」
「そうだったのか」
「まあ。あの人達がどうして連合に来たのかはわからないけれど」
この辺りはジミーも知らなかった。そのホームレスのカーストの人達が何故連合まで来られたのかはだ。このことは謎ではあった。それもかなりの。
「まあそれでもね」
「住む場所はそうしてか」
「何とかなってるみたいだよ。何万人もいても」
実質的にはそれだけいるのだった。インド人街に。
「あそこはね」
「そうなのか」
「で、そのマウリアのムスリム集団は」
彼等はだ。どうかというのだ。
「対立組織があってね」
「マウリア人の組織は」
「そう。サッグっていうらしいんだ」
このサッグという組織の名前を聞いてだ。すぐにだった。」
ロザリーが驚いた顔で驚いた声でこう言った。
「おい、サッグかよ」
「あれっ、ロザリーは知ってるの?サッグって」
「あれまだあったのかよ」
「まだ?」
「そうだよ。サッグって滅んだ筈だろ」
こう言うのだった。ここで。
「イギリスの統治時代に壊滅させられただろ」
「それって十九世紀の頃?」
「そうだよ。イギリスの総督府に壊滅させられたんだよ」
その筈だったというのだ。サッグは。
「あんまりにもやばい組織でな」
「やばいってどんな感じで?」
「カーリー神を崇拝しててな」
ヒンズー教における破壊と殺戮の女神だ。漆黒の身体に長い舌を持つ女で四本、若しくは十本の腕にそれぞれ武器を持っている。半裸で髑髏のアクセサリーと人の腕を集めて造った腰巻を巻いている。
尚破壊と殺戮とはいってもそれは悪に対することだ。善神なのだ。
「それでカーリーに生贄を捧げる為にな」
「人を殺すとか?」
「ああ、そうだよ」
そうした組織だというのだ。サッグは。
「人を後ろから襲って首を締めて殺してな」
「カーリーへの生贄にするんだ」
「それがサッグなんだよ」
完全に犯罪組織だった。カルト教団と言っていい。
「それがまだ存在していたのかよ」
「話だけ聞いてとんでもない組織だってわかるよ」
ジミーにしてもそうだった。このことは。
「そんな組織がまだあって」
「しかもこの街に来てるのかよ」
「ううん、大変なことだね」
「というか洒落になってねえよ」
ロザリーは言い続ける。
「どうしたものだろうな」
「それでそのサッグと馬族がね」
「喧嘩をしているんだな」
「そうなんだ。ジハード対生贄だね」
しかもどちらも一方的だ。
「その対決だね」
「というか世の中碌でもない連中が結構いるな」
ロザリーはぼやきになっていた。
「しかもマウリア系が多いよな」
「クリシュナとか?」
「ああ、あの兄ちゃんにしてもな」
おかしな人間だったというのだ。実に。
「とにかく。どうしたものだろうな」
「僕達の手を離れてるよな」
「もうな。そんな無茶苦茶な連中がぶつかったらな」
最早それではだというのだ。
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