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TREMOLO(仮)  針滴×鳴門(ハリー憑依)

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大体の経緯

 
前書き
鳴門世界に転生した主人公。今度はトリップ。
その過程。

自分の作品の再構成するとか、 

 


僕には、赤児としての記憶が無い。
既に、まるごと一人分の記憶を詰め込んでいたから。

      僕は、17歳だった。死ぬ時、そばに誰も居なかった。

あのとき僕は、死んだばかりで、黄泉路を彷徨う魂になったのだと思っていた。

           昔話を、よく読み聞かされた。祖母贔屓な子どもだった。






気がついたら、水で満たされた通路に立たされていた。

                  三途の川?  というより、水路だな。

天井と壁に、赤いパイプが張り巡らされ、後ろか前か、他に行く場所は無い。

  赤、紅、丹。暗いのに鮮明に見えるアカ。
   いっそ、闇だと思っていたものが黒なのか。

迷う必要も無かった。

             一本道だった。そして、

どうせ行かなきゃならないと、分かっていた。

          その先に、                    

この先に閻魔様とか、居るんだろうな、となんとなくだが確信も持てた。

                とても大きな生き物の気配がしたから。

これから、地獄行きか極楽行きか、篩に掛けられるのだろう。

           もしかしたら、食べられるかもしれない。

行いは、良くも悪くも。成績はムラのある方だった。

      おいしくない、おいしくない、おいしくない............         

歩いて行ったその先に、開けた空間。

               途切れた端に、大きな鳥居。

ああ、神さま。

            潜るとそこには、

貴方は、

               大きな格子と

狐様だったんですか。

          その中で、イビキをたてる大きな狐、1匹。








「何じゃ、主は...........。」

声を発したのは、大きな狐。
やっと目を醒ましたのか。あれからだいぶ時間は過ぎていた。


「あ、シチュー作ったんで食べません?」


お玉でかき回し、クリーミーなホワイトシチューを器によそう。
あの大きさなら、この鍋全部分でも足りやしなさそう。



僕はもう馴染みきっていた。

僕が創り出した生活臭さ。
あらゆる家具、畳の座敷にちゃぶ台一つ。茶菓子は必須で、急須とポット、湯のみまで。カレンダーと時計は望んでも出てくることは無く。グランドピアノが出て来たとき、ずっと触ってなかった感触に懐かしさを覚えた。

欲しいな、と思ったとたん出てくるそれらに、止まらなくなってやり過ぎた感が否めない。





狐の居る格子の前に立ち、鍋掴みでもって掲げた大きな鍋一杯の出来立てシチュー。


そのとき僕は、ここが死後の世界なのかどうか、分からなくなっていた。





「要らん。  ――――お主、ずっとここに居る気か?」

「ん? ま、他に行くとこ無いし。」
そもそも行き方が分からない。


狐はくつくつと、大きな口を器用に吊り上げ、やがてそれは大笑いとなる。
笑いながら、ばさりと下ろしていた尾を立ち上げた。


「ーーーー九尾.......?」
伝承にあった。九つの尾を持つ存在。九尾の狐。

「知っておったか。まあいい。小僧、折角だから教えておいてやる。ーーーーーお主は死ぬ。」




「もう、死んでるよ。」
ここで生きているとも言えなくもないけど。確かにあれで僕は死んだ。

グアァアハハハハハハーーーーー
「こいつは傑作だな。喜べ、小僧。主は死んでおらん。」

「どういうこと?」

「ふん、さっさとここから去れ。」

ふう、っと浮き上がる感覚。今までに無かった。
「?!!」

「二度と来るな。」

決別の言葉を口にした狐。持ち上げた尻尾を下ろし、興味が失せたと言わんばかりに、瞼を下ろす。

「?! ーーーーいやだ!!」

叫んでいた。
「また来ます! 気に入ったもん、ここ!!」

眉間に皺のよった狐を最後に、意識は浮上した。





「ーーーおお、おお。起きたか、ナルトや。さ、ミルクを与えようの。」
「ほ、火影様!! 我々に任せて執務にお戻り下さい!」



なんだか、転生しちゃったようで?




その後、寝ている時にこの空間に来れるということが分かり、すっかりちゃっかり居座っている。
勿論。狐の機嫌は急降下していった。



「帰れ! 来るな!!」

下げていた顔を上げ、狐を見据える。

「無理。寝たらこっち来るんだもん。仕方ない、仕方ない!」

檻の中に居ることを良いことに、結構好き勝手にしている。


ぎゃーぎゃー、檻から騒ぐのも飽き飽きして、不貞寝コースはいつものこと。



《 ポーーーーーーーーーーー・・・ン 》

響くのはピアノの音。


あれから、前居た世界で好きだった曲を練習しているのだ。
忘れたくなかったのもある。けれど、一番の理由は、僕はピアニストに憧れていたから。

大好きだったジャズ。
初めてそれに会った時、僕は、キラキラを幻視した。

それから、聞きにいったコンサート。やはり、生の音が一番いいと思う。生セッションはドキドキが止まらなかった。
CDを借りたり、買ったり。好きな弾き手もだんだん固定していった。

巧い、とかよりも、ものすごく楽しそうな音が好きなんだと、自分を一つ知った。





《 ターン ターン ターン 》
       《 ターン ターン ターン 》

  《 ターン ターン タン タタターーーーーン .....》



音を、紡いでいくように、聴覚を研ぎすまして集中していく。

この曲は、アニメの挿入曲だった。タイトルと内容がクールで、その中に出て来た優しい音。
地獄の沙汰に強制連行するあの少女の、救われない魂を寂しく思う。


この曲は初心者の僕にも弾き易いし、今のささくれ立った感情を逆撫でなくてちょうど良かった。






こちらに生まれて7日経った。

今まで、寝ている時はこちらで過ごした。狐をからかいつつ、ピアノを弾くのが日課となった。

この前、名前を教えてくれない狐に業を煮やした僕は、『お隣さん』と呼び始めた。
狐の棲む格子の隣に、僕は住んでいるから。

菓子折持って、宜しくと声をかけた時、尻尾が容赦なく襲って来たが。




だが、今日は違う。

あのちゃぶ台に座る者がいた。


金髪の笑顔の眩しいイケメンだった。





ちゃぶ台に並ぶ、茶菓子と、2つの湯のみ。
ずずっと音を立てて啜る。気まずい。

てか、この人誰ですか?

〈はっ〉
そこで一つの可能性に行き着いた。

「大家さん、ですか?」
「違うよ?! 君の『お父さん』だ。」

家賃払えと言われるのと、どちらが良かっただろう。


「はぁあああ??!!!」

「だから、君のお父さんだって!」

にっこり笑顔で宣った金髪美形。今まで具現しなかった手鏡を探した。


「なぁ!!??」

そこに映るのは、目の前の男と瓜二つの少年の顔。ぺたぺたと顔を触る、否定出来る材料は、残念ながら無かった。
そんな僕の様子に、青年は八の字に眉を下げる。

「そんなに、僕の息子になるの嫌?」

捨てられた子犬のようにシュンと項垂れる。成人したいい男。

「兄、とかでも厭だけど、父はね..........。」

別に思い入れがあるわけではないけど、いきなりはきついものが在った。

「大体、年近いからそんな感じしないよ。大家さん、いくつなの?」
「ん。それは秘密だよ!」

ウインク付きで答えた。この人、うざっ。


「というか、『大家さん』って何?」
「ここで家主を待たずにくつろげる、そんなでかい態度で居られる許容範囲がそれだった。」

無論、家族も在るが、候補にすら上がらなかった。

「うっ。ま、まあ家族なんだし、ネ!! 笑〜って許して♪?」
「うざっ」
好きだからすぐに分かった。これはネタだと。.....何か、変なところで気が合いそう。

この日、この時をもって、僕の中の今生の父、波風ミナトのイメージは、『大家さん』『うざい人』となっていった。





それから、赤い髪の美人が現れて、その人は母だと名乗り、
狐の居る経緯を聞いて、ちょっと納得した。


ここは、平和とはほど遠い世界なのだと。




忍が居た。忍術を使っていた。壁に、天井に立って、有り得ない形の火を噴いた。

何度か、襲われることも在った。

その度に、誰も手を差し伸べてくれはしない。
そういう時、決まって、帰り着く頃にはすっかり治ってしまっているのだから、『ちょっと遊んで汚しちゃった』で済んでしまうのも物悲しかった。

10月10日。僕の誕生日。その日だけは、絶対に里を一人で歩かない。
人の視線が、あんなに恐いなんて、知りたくなかった。
でも、慰霊祭に行かないと。苦肉の策で、その日の前日、こっそり慰霊碑の前で手を合わせ、それから森でしばらく過ごすようになった。これが、今生の誕生日。いけね、涙が出てくらぁ。



それも、学校に通うようになって、少しずつ変わっていった。

友達が出来た。
シカマル、チョウジ、2人を通してイノと仲良くなるのは早かった。
キバとはよく喧嘩したり、悪戯したり、仲が良いのか悪いのか。
寡黙なシノとは、演習の時、特技を見せてもらえた。本当に鈴虫そっくりに鳴いた。
サクラは、誤解が解けて仲良くなって、サスケには実力を見せてしまった。


信頼出来る先生に会えたのも、この場所で。
弟みたいな存在が出来たのもこの時だ。

アスマ兄とは元々知り合いだったけど、ガイ兄に木の葉小旋風でぐるんぐるんと回してもらう遊びは楽しかった。
血相変えて止めに入ったアスマ兄と、笑って全然懲りていないガイ兄。僕は血が昇ってくらくらしていた。

血は繋がってないけど、三代目の家族の中に居れてもらえて、本当に嬉しかった。


そのことを、夢の中で2人に話した。
全部見ることも出来るけど、話すようになってから、知らない方が面白い、と聞いてくるようになった。


ピアノは今でも続けている。
だいぶ思うように指を動かせるまでになった。印の練習が功を奏したのだろう。

片手印を覚えたら、同時に違う技を発動出来るかもしれない。




そんな感じで、16年の月日はあっという間に過ぎ去った。
怒濤ともいえるような事件ばかり続いていたけれど、それでも、僕はこうして生きている。
何とか生き延びている。




でも、これはないだろう。






長期任務明けだった僕に、五代目火影の綱手のばあちゃんから頼まれた『おつかい』。

波の国に、巻物を届けてくるというとてもシンプルなもので、快く、了承した。
たった1日しか予備日をくれなくて、おもいっきり休みたかった僕は、日帰りで事を済ませようとしたんだ。

そう、いつもよりかなり早く寝て、いつもより早く起きる。

それだけのことのはずだったんだ。




目が覚めると、そこは、ほこりっぽい物置のような部屋でした。


あれ、おかしいな。寝ぼけてるのかな?
昨夜から朝にかけての記憶が曖昧だ。そういえば、夢も見ずにぐっすり寝てたっけ?


で、やっぱりここどこ?





外に出よう。余りに狭く、ものがごたごたと置いてあったため、這って出て来た。
内鍵を外し、扉を開ける。


「What?」

目の前には廊下。但し、西洋風。思わず、英語が出てしまったよ。

気配がする。上に3人。寝ているので放置。
廊下に出て、今まで居たのはやはり物置で、外に立派な鍵が一つ。

〈攫われた? 素人に? 有り得ん。〉


だが、有り得ないことはまだ続く。
廊下を進むと、洗面所が右手に。通り過ぎようとしたその時、気がついた。

見知らぬ顔が、自分と同じ行動をしているな、なんて。



寝癖なのかくせ毛なのか分かりようも無いが、もじゃもじゃの黒髪、緑色の眼。
視界が歪んでいるのは、眼が悪いせいか。ちょっと集中力を上げると、僅かに視界は鮮明に変わる。

何より、視界が低すぎる。
〈それとも、巨人の家に来てしまったのか。いや、ないな。西洋人とはいえ、これは子どもの顔だ。〉

あーー、誰でしょう。僕ですね、分かります。

解印を結んでも、変化の無い姿。


やっと諦めがついた頃、上から人が下りてくる。上で寝ていた人物だ。一般人っぽいので、警戒しつつも観察することにした。




「ーーーー!! そこでなにしてるの! 無駄に早起きするなら、さっさと朝食の準備しなさい!」

ヒステリー? いや素だろうか?
縦に長い夫人が言った言葉を反芻した。


あれ、朝食僕が作るの?




前途多難は始まったばかり。
 
 

 
後書き
如何でしたでしょう?
死の秘宝まで行くのにどのくらい掛かるのか。

最終回から書こうか。 
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