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最期の祈り(Fate/Zero)

作者:歪んだ光
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空から女の子が降ってくるのはロマンスとか言った奴、ふざけるな出て来い!!by一夏

 
前書き
すみません。遅れました。 

 
「遅いぞ。授業開始の五分前には待機しておけ」
ホームルームが終わり、一時間目の授業に際し切嗣達が急いで着替えてグラウンドに集合したときには、後三十秒程で授業が始まるところだった。
「「「はい」」」
三人の声が被さる。言い訳をするなら切嗣達に咎は無い。ただここに来るまでに思わぬ妨害が入っただけだ。ここは女子校。そこに三人目の男性が入ったという状況を考えて貰いたい。しかも美少年ときた。恋愛至上主義者でなくとも興味は湧くだろう。結果、それは人海戦術的な防波堤になり、彼等の行く手を阻む事になった。但し、予測可能なこの事態に衛宮切嗣が対処をしなかった訳では無い。他クラスに様々な誤情報を流し、情報網をズタズタにしたうえで遠回りとなる道をーー普通、更衣室に向かうなら誰も通らない道――通り、可能な限り障害を減らして比較的短時間でグラウンドにたどり着いていた。逆説的に言うなら、これでほぼ最短なのだ。
(網が予想外に広かったのもあるが、情報の立て直しが異常に早い……)
仮にもここは世界最高峰の女子校、優秀な人材が多い。……その才能が無駄に使われて可笑しな(注.切嗣には笑えません)方向性にハイスペックさが突出していた。
(……正直敵に回したくないな)
魔術師殺しがこの世界で初めて、辛酸を舐めさせられた瞬間だった。
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「全員揃ったな。此方を向け」
五月中旬の青空に千冬の声が響く。
「これよりISの実技訓練を行う」
今回の授業は隣の組、詰まり鈴音のクラスと共同で行う手筈だ。事実、二クラス分の人でグラウンドの一画が埋められていた。しかし、どうも全員の意識が集中していない。箒やセシリアのみならず、一夏やシャルロットまで視線が時折千冬から切嗣に向いていた。
「……お前達、話を聴いているのか?」
それがいけなかった。一瞬にして、千冬の声が低くなる。と、同時に全員の意識も千冬に向く……勿論、恐怖的な意味合いを多分に含むが。
動じていないのが、我関せずと言わんばかりに真面目に千冬の話を聞いていたラウラと切嗣くらいだ。四捨五入してしまえば100人に届く生徒全員(-2)が一斉に千冬の出席簿に震え上がる。……そんなに怖いか?
しかし、千冬は大きく溜め息をつくと少し声音を戻すだけにとどめた。
「仕方ない。一つだけ授業に関係の無い質問を許す」
そして意外にも、割と堅物な彼女からしたらあり得そうに無い発言をした。まぁ、千冬も彼女達の戸惑いも分からないでもなかったからだ。ちらりと一瞥する。
すると、後ろの方から恐る恐る手が上がった。
「どうして切嗣君はそんな格好何ですか?」
一斉に視線が切嗣に集中する。
(まぁ、普通気になるか……)
思わず、切嗣は心の中でぼやいた。そう、切嗣の格好は彼女達と違って、黒いビジネススーツにダークコートだ。周りから完全に浮いている。
千冬の方に目をやると、彼女は額を押さえながらも顎をしゃくってきた。お前が説明しろと。
了解の意を込め溜め息をつくと、切嗣は少し集団の中から抜け出た。
「ちょっと見てもらった方が早いかな」
少し声を大きくし、告げる。
「IS、シルバームーン起動」
衆目の中で彼がISを使うのは二度目だ。セシリア救出の際に一回使ったきり。しかも、見ていた人間は限られていた。彼のISを間近で見たのは実際に闘った事のある真耶とそれを見ていた千冬だけだろう。
光が切嗣を刹那の間隠匿する。
現れたのは、さっきと同様の黒い服に身を包み、体の要所にのみ機器をつけた切嗣だった。目を覆うバイザー、両肘、両膝を保護する為の防具、腰回りにぴったり付く加速機。色は全て黒。誰が見てもISを装着しているとは判別出来ない姿だった。
「見ての通り、僕のISは普通とは大分異なっている」
全員が事態に追い付いたのを見届けると、切嗣は語り始めた。
「原理は解らないが、これはISスーツを来ていてもある筈のメリットが一切無いんだ」
そこで一旦句切る。ここまでで何か質問が無いか見渡してみる。特に何を言われることも無く、先を促された。
「続けるよ。更にこのISの衣服に関する基本情報が、何故かこの格好になっているんだ。ISを起動させる度に、強制的にこのコートとスーツを着ることになってね。一応、この服ならある程度の恩恵もあるから構わないけど」
言いながら、軽く手を千冬に向けてふる。
「終わったか。他に気になることがあるなら後で聞け」
やっと授業が始められると、指示を飛ばす。
「ISを展開しているなら丁度いい。衛宮、お前には模擬戦をして貰う。一度、こいつらにも生の戦闘を見せておく必要がある」
これが、実技授業の醍醐味だろう。デスクでは決して体験出来ないモノをやってこそだ。しかし……
「急ですね……分かりました。しかし、宜しいのですか?このISじゃ普通の戦いは見せられませんよ」
それが気掛かりだ。切嗣のISの形状を考慮すれば普通の、悪く言えばテンプレ通りの戦いは見れないだろう。
「構わん。どうせ、画面の中で見ているだろう。今更、わざわざ集中して見るとは思えんからな」
ならば、今までとは違うモノを見せて多少は刺激を与えようと言うのだろう。
納得したのか切嗣達は頷いた。
「それで、相手は?」
「まぁ、待て。もうそろそろ……」
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話は変わるが、ドップラー効果を知っているだろうか?音源、若しくは観測者が移動しているときに音を観測すると波長と振動数に影響がでるというやつだ。救急車のサイレン何かが良い例だろう。ざっくばらんに説明するなら観測者に対して相対的に近づいて来る場合には音は高くなり、逆に遠退いているときは低くなるという現象だ。今、衛宮切嗣が観測者であるとしよう。彼は今まさしく女性の声を観測している。そこまではいい。しかし、問題はその先だ。音源の位置がxy平面では表現出来ず、z軸……つまるところ遥か高度に位置するようにしか思えないということと……振動数の変化がどうも尋常ではないことだ。
(音の変化が高すぎる……制御を誤ったのか!?)
しかも、聴こえてくる悲鳴の内容も限りなく不吉だ。
どーーいーーて――
ください、まで聞かずに切嗣と千冬及び、勘の鋭い生徒は叫ぶ。
『全員逃げろ(て)!!』
考えるより早く指示に従った者は幸いだ。彼等はその身に降りる鉄の突撃を免れたのだから。指示に従うより思考を優先してしまった者に災いあれ。より正確に言うなら、織斑一夏に災いあり。
「おぐあ!?」
空から女の子が降ってくるロマンスを味わいたいと願った男性は多かろう。しかし、実際はこうなります。
「はわわ!大丈夫ですか、織斑君!?」
鉄の鎧を纏って降りたった女の子、もといISの制御をミスって一夏に猛烈なアタックをかまし、気絶させてしまった真耶が慌てふためく。鎧を纏ったシータが無防備なパズーにダイブ!……したら普通死にます。
「落ち着いて下さい、山田先生」
「織斑先生……」
しかし、そんな真耶を落ち着かせるようにゆっくり千冬が話しかける。流石はブリュンヒルデといったところか。生徒に余計な動揺を与えぬように落ち着き払って
「まずは落ち着いてラピュタを探すんだ」
「織斑先生ー!?」
……いなかった 。
「だ、だって私の弟が……!」
言いながら、一夏の鳩尾の辺りをバコンバコンと音を鳴らしながら押さえている。あんたが落ち着け。
「弟が、弟が!」
「ガハッ!ちょ千冬ゴバッ!……ねぇ」
一瞬、大きく痙攣し一夏の体から力が抜け去った。……死んだか。
「ストップだ、千冬さん!本当に死にかねない!」
遅まきながら切嗣が千冬を宥める。因みに、残りの生徒は事態についていけず唖然としている。
「き、教官ェ……」
特にラウラの精神状態が可笑しな事になっている。そして、来日数日にしてドップリ日本の文化に染まっていた。
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閑話休題
「さて、本来なら模擬戦をやって貰う予定だったが時間の都合上、カットする」
するとあからさまに「え――」という声が上がった。気持ちは分かる。今日来たばかりのシャルルやラウラは兎も角、専用機持ちの中でその力を見せていないのは切嗣だけだ。気になるところである。
「ふふ。まぁ、また今度見せてあげるから」
苦笑しながら、切嗣も周りの女子を宥める。
「では改めて……これよりISに試乗して貰う。各々専用機持ちを軸に別れろ」
漸く予定より30分遅れた授業が始ま
「織斑君!私と……」
「一夏、私と……」
「あ、私も!」
「「「デュノア君!」」」
……らなかった。さっきから一夏とシャルロットに長蛇の列が並んでいた。では一方のクラスの皆から恐れられている切嗣はというと……
「切嗣君!」
「私達と!」
「ペアになって!」
「……。ああ、そう言えばそうだった」
彼が恐れられているのは自クラスの女子からだ。他クラスの生徒からは落ち着きのある渋い男子と、寧ろ好印象を持たれている。
「何時になったら授業が始まるんだ……?」
「は、はは……」
思わず呟く切嗣に、シャルロットの相づち返される。
五月十七日、今日も学園は平和です。……千冬さんの出席簿を除けば。 
 

 
後書き
以下、愚痴なので読みたくない人はスルー推奨
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さて、一つ困った事が……呟きで書いたのですが、諸事情ありてISの小説、失って(親に間違って売られた)しまいましたorz
今回、投稿が遅れたのは9割これが原因です。今回、ISの二次小説を読んで内容を思い出してから書くという綱渡りをやったのですが……正直辛い。手元に無いと書くのに苦労します。そして……ぶっちゃけ臨海編、今の状態で書ける気が一切しない。今や絶版同然なので古本屋で買うしか無いのですが……売ってない。という訳で臨海編以降は、該当する刊が入手され次第投稿するという形になってしまいます……本当にすみません。一応、VTシステムの件までは普通に投稿しますが…… 
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