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八条学園騒動記

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第百二十六話 捕獲作戦その五


「あまり聞かないけれど」
「けれど飛ばないし人なつっこいし」
 少なくとも人を恐れはしない。
「嘴で突かれたら痛そうだけれど」
「鶏みたいなものかな」
 こんなふうにも考えるのだった。
「養殖用のドードーも何処かの国にいたような」
「今実験中じゃなかったかしら」
 皆この辺りの記憶は曖昧である。連合においては様々な生き物が家畜として養殖されている。草食恐竜、ブロントサウルスやステゴサウルスの牧場もあるしそのドードーも実際に養殖されようとしている。オオウミガラスやダチョウは実際に食用として養殖されている。
「卵を多量に産ませるように品種改良するって話もあったような」
「ドードーの卵って美味いの?」
「美味しいよ」
 話は食べることにも及んだがとりあえず捕まえたらどうするかという話にもなった。そう、食べることにも話が及んでいるのだった。
「ドードーって美味いしな」
 不意にマチアが言った。
「鳩の仲間だしな」
「食べるのかよ、捕まえたら」
「そこまで考えてないけれどな」
 ロザリーに一応はこう返す。
「けれどな。飼い主とかもいないしな」
「食べようと思えば食べられるってわけかよ」
「ドードーの親子丼か」
 ロザリーはこの料理のことも思い出した。
「ああ、そういえばそれで養殖されていたんだったな」
「そういえばそうだったな」
 ここで皆はやっとドードーが養殖されていることを思い出した。
「じゃあ食ってもいいか」
「あのドードー」
「カレーにしてもよさそうですね」
 セーラがにこりと笑って述べる。
「ドードーのカレー。マウリアでもあります」
「ドードーは食べていいの」
「はい」
 そのにこりとしていてかつ静かな微笑でアンの言葉に答える。
「ヒンドゥーで食べてはならないのは牛です」
「牛だけなの」
「他のものは大抵食べていいのです」
 どうやらそうであるらしい。セーラの言葉では。
「カーストが上なら牛も食べていいとされていますが」
「あんた牛食べないわよね」
「牛には多くの神々が宿っています」
 ヒンドゥー独特の考えである。
「ですから私は」
「そうなの」
「ドードーは食べたことがありますがカレーはまだ」
「ドードーのカレーねえ」
 アンはあらためてその料理のことを考えた。
「面白そうであるけれどね」
「だがそういった話は捕まえてからだ」
 ここでギルバートが現実的な意見を出してきた。
「全てはな。それからだ」
「そうだよな、やっぱりな」
 ロザリーがギルバートのその言葉に頷いた。
「まずはそれからだな」
「じゃあ罠用意しに行こう」
 セドリックが皆を誘う。
「後のことは捕まえてからゆっくり考えようよ」
「そうね。それじゃあ」
 議長役のアンがその言葉に頷いた。
「そうしましょう。それじゃあ」
「いざ動物園へ」
 こうしてその日の深夜に動物園のドードーのところにその眠り薬をかけた餌を混ぜておいた。セーラが魔術を使って柵を通り抜けそのうえで餌の中に入れたのである。皆それを見届けてから帰った。そして次の日。
「やったぞ」
「引っ掛かったわ」
 動物園から少し離れた茂みの中であった。そこで白ドードーが寝ていた。その白ドードーが何であるかはもうクラスの人間なら誰もがわかることだった。
「捕獲成功」
「これでよしね」
 早速そのドードーを籠に入れてしまう。これでまずは作戦成功であった。
「さて、と」
 話はそのうえでまた次の段階に移った。
「まずはこれでよしね」
「そうだな。後は」
「このドードーをどうするかよね」
 話はそこに至った。しかしこれはこれで議論になるのだった。皆ドードー一匹の前にかなり騒ぎ続けていた。


捕獲作戦   完


                  2009・3・2 
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