八条学園騒動記
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第百二十五話 鏡の間その一
鏡の間
アンとギルバートによりクラスの皆は再び集められた。しかしその集められた場所はいつもの教室でも屋上でもなかった。無論喫茶店でもなかった。
皆が集められたのは何とミラーハウスだった。学園にある施設の一つで迷路にもなっている。大きいだけでなく何層にもなった非常に複雑な迷宮である。
皆はその前に集められた。当然そこにはアンとギルバートもいた。
「ミラーハウスじゃないか」
「どうしてここに」
「ここよ」
アンはいぶかしむ皆に対して告げた。もう夜になろうとしていて辺りは暗くなりつつあった。アスファルトが紫になりそこから急激に黒くなとうともしている。
「ここに謎があるのよ」
「今回の事件のってわけね」
「そうよ」
アンジェレッタの問いにも答える。
「ここにね。謎があるのよ」
「謎がね」
アンジェレッタはそれを聞いて考える目になった。
「あるのね」
「そうよ。ここにね」
「鏡っていったら」
今度はルビーが言った。
「あれ?やっぱり」
「わかったわね」
「有名だからね」
ルビーはわかっているといった顔でアンに言葉を返した。
「合わせ鏡の話は」
「それだけじゃないわ」
だがここでアンはさらに言うのだった。
「鏡はね。それだけじゃないわ」
「それだけじゃないって」
「どういうことなんだ?」
皆あらためてアンの言葉に顔に目を顰めさせた。
「合わせ鏡だけじゃないって」
「それって」
「合わせ鏡は十二時に悪魔が出て来るって話よね」
アンは今度は合わせ鏡の話を皆に対して話した。
「二時って話もあるけれど」
「十三日の金曜日だったな」
今度はタムタムがそれに応えた。
「その話はな」
「ユダヤ教にはそんな話はないけれどね」
アンはここではユダヤ教徒の顔になる。イスラエル人ならばユダヤ人でありユダヤ人である根拠はユダヤ教徒である。これは必然である。
「そういうのはね」
「ないの?」
「聞いたことないわ」
こうルビーにも返すのだった。
「ユダヤ教の世界ではね」
「そういえばユダヤ教ってそういう伝説とか嫌ったっけ」
「だからね。そういうのはないのよ」
そういう理由であった。だがそれでもアンは言うのだった。
「けれどね。それでもよ」
「可能性としては否定しないのね」
「ええ。科学で何でも説明できるわけじゃないから」
科学は決して万能ではない、この時代ではこれはかなり定着した考えになっている。とりわけマウリアにおいては魔術や錬金術といったものがかなりポピュラーにさえなっている。そしてその証拠としてセーラがいる。彼女はこの学園で一番の魔術や呪術の使い手でもあるのだ。
「その辺りはね」
「オカルトというわけか」
タムタムはミラーハウスの入り口を見た。
「今回の話は」
「けれどこれで説明がつくな」
ギルバートは腕を組んでそのミラーハウスの入り口を見ていた。
「白ドードーの動機はな」
「つまりあれ?」
ルビーは考える顔になってそのギルバートに問うた。
「鏡から白ドードーの分身が出て来て」
「そう、それよ」
アンもまたそこを指摘する。
ページ上へ戻る