八条学園騒動記
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第百十七話 アナコンダその五
「私達はね」
「だから起こしてもくれるのね」
「そうよ。皆だってそうでしょう?」
今度は皆に尋ね返す彰子だった。
「やっぱり。家族に起こしてもらうわよね」
「まあ僕もね」
それに最初に応えたのはスターリングだった。
「ラスカルに起こしてもらうよ、いつも」
「あらいぐまだったっけ」
「そうだよ」
皆の問いに答える。
「可愛いんだよ。甘えた声を出して」
「うわ、おのろけ」
「スターリングものろけるの」
「っていうかさ、本当のことだから」
おのろけと言われて顔を赤らめさせるがそれでもこう返すのだった。
「可愛いじゃない、あらいぐまって」
「まあそうだけれどね」
「けれどね。あらいぐまによっては」
だが皆ここで言うのであった。
「かなり凶暴だし」
「そうそう」
顔を顰めて言う面々もいる。
「爪は鋭いしね。下手な猫より強いし」
「ラスカルはそうじゃないの」
「確かに爪は鋭いよ」
スターリングもそれは認める。
「けれどさ。頭がいいし温厚だから」
「そういうことね」
「個体差があるんだ、性格って」
「人間だってそうじゃない」
彼氏を援護するようにして蝉玉が話に加わってきた。実は彼女もラスカルは好きなのだ。なお彼もまた自分のアパートにペットを飼っている。
「天本博士とかシャバキみたいな人もいれば」
「人!?」
「本当にそうかしら」
この二人がまともな人間とは誰も思わない。少なくとも連合においてこの二人を知らない人間はおらず誰もがまともだとは思ってはいないのである。
「神父やお坊様みたいな性格の人もいるしね」
「その神父さんやお坊様だってそれぞれだし」
「動物も違うのね」
「その通りですよ」
そしてまたセーラが出て来たのであった。
「それも。触れてみればわかりますので」
「ううん、そうなんだ」
「それもなの」
「そうです。心は嘘はつきません」
その穏やかな微笑みでの言葉である。
「ですから。そうしたことを見るのもいいものですよ」
「そういうものね」
「すぐにわかればいいんだけれどね」
「すぐにわかりますよ」
あくまでセーラ限定の話であるので皆参考にはしていない。
「全て。触れてみれば」
「じゃあエリザベスはどうなの?」
ふとエイミーがセーラに問うてみた。
「セーラもエリザベスには会っているわよね」
「はい」
にこやかに笑って彼女の問いに頷くセーラであった。
「何度か。小式さんのお宅にもお邪魔していますので」
「じゃあやっぱり触れたことあるわよね」
「ええ。素晴らしい心の方ですよ」
エリザベスのことである。
「前世は」
「前世って」
「そこまでわかるの」
あらためて知るセーラの凄さであった。
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