八条学園騒動記
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第百十七話 アナコンダその三
「それだけですので。誰でもできます」
「っていうかそれに目覚めるにはどうすればいいのかな」
「さあ」
そんなことがわかる筈もなかった。
「修行じゃないかな、やっぱり」
トムがとりあえず言ってみた。
「そうなるにはさ。よくわからないけれど」
「よくわからないの」
「とりあえず座禅?」
またとりあえず言うトムだった。
「それやってたらできるかな」
「それ、仏教じゃない」
ルビーが今のトムの言葉に突っ込みを入れる。
「禅宗でしょ?つまりは」
「けれど仏教ってマウリア発祥じゃない」
「それはそうだけれど」
一応この時代にも仏教はマウリアにおいても存在している。ただしヒンズー教の一派と考えられている。これこそマウリアなのである。
「だから。座禅したらできるんじゃないかな」
「そうかしら」
それを聞いても納得できないルビーであった。そもそも納得できる方がおかしなことであるのだが、要するにセーラ以外は誰も納得していないのだ。
「あと荒行するとか?」
「それでもできるようになるかしら」
「どうかな」
言っている本人があまりそうは思っていないトムであった。
「多分。できるかも知れないし」
「多分って」
「やっぱりよくわからないや」
結局こうなるのであった。
「どうなるかは」
「そうよね。結局は」
「セブンセンシズが何かさえわからないし」
「そもそも本当にあるかどうかだけれど」
「セーラはあるって言うけれど」
皆それを殆ど信用していないのだった。無理もないことである。
「まあそれは置いておいて」
「そう、とにかくよ」
とりあえずセブンセンシズの話はここまでにするのであった。話をしてもどうにもならないものがあるからである。だからなのであった。
「問題はエリザベスだけれど」
「舌で窓を開けたの」
「うん」
話が戻ったところでにこやかに答える彰子だった。
「そうよ。とても器用にね」
「器用なのはわかるけれど」
「けれどねえ。何かそれって」
「ねえ」
皆眉を顰めさせたうえでそれぞれの顔を見合わせ言葉も交えさせるのであった。
「怖いわよね」
「ねえ」
「怖いって!?」
彰子だけがわかっていなかった。
「何か怖いところある?エリザベスに」
「だから。大蛇よ」
「それも二十メートル」
その迫力はまさに恐竜並である。人類がまだ地球にあった頃巨大なアナコンダはアマゾン川流域に住む人々にとって常に伝説の存在だったからだ。実際に様々な逸話が残っている。その全てが真実とは限らないにしろ相当のものが真実であると言われている。
「それってやっぱり凄いじゃない」
「迫力あるわよ」
「大人しいわよ」
しかし彰子はまだわかっていなかった。
「間違っても草以外口にしないし」
「だから。そういう問題じゃなくて」
「大きさがねえ」
「そうよね」
「何で皆エリザベス怖がるの?」
どうしてもわからず首を傾げてしまう彰子だった。
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