八条学園騒動記
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第百十四話 幼い日はその七
「七海ちゃん?」
「私もいいかしら」
これが本当のはじまりだったのだ。七海が彰子という女の子を知ることになる。本当のはじまりだったのであった。
「とまあそういうわけでね」
この時のこともまた皆に話す七海だった。
「私も一緒に行くことになったのよ」
「行くっていうかさ」
「ついて行くって感じ?」
「そうだよね」
それを聞いた皆の感想である。
「それって」
「私もそう思うけれど」
「言われてみればそうね」
言われた七海もそのことに今気付いたのだった。目線を上にした考える顔で述べたのであった。
「私はただ。ついて行って」
「うん、そう思うよ」
「話を聞く限りじゃね」
皆も彼女のその言葉に対して突っ込みを入れる。
「けれどそれでも」
「それでよかったんだよね」
「ええ」
今度の皆の問いには素直に頷くことができた。
「そうよ。だってね」
「だって?」
「それから?」
「彰子のことがよくわかるようになったから」
微笑んで皆に話すのであった。
「おかげでね」
「そういうことだよね」
「やっぱりね。そういう流れになると思ったわ」
皆も笑顔で納得する。ここは七海らしいと思ったからだ。
「あんたらしいっていうかね」
「そうよね」
「私らしいの」
七海としては自分のことに話がいって意外なようだった。話しながらその顔をきょとんとさせている。それは皆にも見られていた。
「って何でその顔なのよ」
「実際のことじゃない」
「ねえ」
「実際のことって」
こう言われても何か釈然としない七海だった。今度は首を傾げさせる。
「そうなの?」
「だからそうなのよ」
「自分では自覚ないみたいだけれどね」
皆そんな七海にさらに言うのであった。
「実際そうだよ」
「ううん、私は本当に彰子のことがわかっただけなんだけれど」
「だからそれなんだって」
「そうよ。それよ」
皆はそこを指摘するのだった。
「だから。彰子のころがわかったよね」
「そこがあんたらしいのよ」
「私らしいの」
こう言われてもまだ今一つわかっていない感じの七海だった。
「ううん、そうかしら」
「そうよ。彰子のことわかろうとしたんでしょ?」
「友達として」
「それはね」
今度の言葉には素直に納得することができた。
「その通りよ。やっぱりわかっていなくちゃってね」
「そのいいところをよね」
「悪いところなんてね。誰にでもあるし」
話はここでは少し逆説的になっていた。
「そういうのは片目を瞑って見て」
「じゃあいいところは?」
「両目をはっきりと開けて」
こう言うのである。
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