八条学園騒動記
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第百八話 騒動が終わってその六
「どうしてもね」
「成程」
「それでよ」
アンはさらに言う。
「エラスモサウルスも水族館にいたわよね」
「あれですね」
セーラはアンのその言葉に応える。
「あれが何か」
「捕まえるの苦労したでしょ」
「いえ、別に」
「別にって」
エラスモサウルスは凶暴なことで有名な恐竜である。細長い首に鋭い牙を持っている。海においてはモササウルスと並ぶ猛獣とされている。
「子供の頃から飼っていますので」
「餌付けしてあるってこと?」
「はい」
ここでも微笑んでいるセーラであった。
「それは御安心下さい。いざという時はマインドコントロールもします」
「マインドコントロール・・・・・・」
「また無茶な」
これを本当にできるのがセーラの家の怖いところである。なおセーラ自身も相手の目を見ただけでマインドコントロールをかけることが可能である。
「ですから安全は万全です」
「まあ安全なのはいいけれど」
「それでも何か凄い話ね」
「恐竜がいる水族館もあるにはあるけれどね」
それはやはりある。動物園もだ。ただし当然ながら猛獣扱いである。ライオンや虎よりも遥かに巨大なのでその扱いは兵器に準ずるものがある。
「しかも家で持ってるなんて」
「スケールが違うわね」
「いえ、あれは私の家のものではありません」
ところがこれはセーラによって否定された。
「セーラのお家のものじゃないの?」
「はい、そうなのです」
微笑んで皆に答えてきた。
「あれは私のものになっています」
「セーラのものって」
「つまり所有物」
皆これを聞いて流石に唖然だった。
「あの恐竜や猛獣達が全部」
「あんたのものなのね」
「皆可愛い私のペットです」
しかも可愛いとまで言う。
「ですから御安心を」
「そのペットっていつも何を食べてるの?」
「連合じゃ時々あれだけれど」
ここで皆の顔が青くなる。
「死刑囚が餌になるけれどね」
「ええ」
これが連合の刑罰の恐ろしさだ。凶悪犯に対しては容赦なく惨たらしい刑罰を用意する。その中に猛獣や恐竜の餌にするというものもあるのだ。古代ローマと同じである。この処刑方法はカリギュラがキリスト教徒に対して行ったことであまりにも有名である。
「まさかと思うけれど」
「それはないわよね」
「御安心下さい、ちゃんとした普通のお肉やお魚です」
「だったらいいけれど」
「まあ動物園や水族館じゃね。それはないわよね」
「幾ら何でも」
なお連合では鮫のプールの中に死刑囚を蹴り込むこともある。鰐の場合もある。当然死刑囚は噛み付かれていきずたずたに引き千切られていく。当然生きたままだ。
「それを聞いて安心したわ」
「セーラでよかったわ」
「全くね」
「これが連合の処刑場だったら」
皆連合の人間なのでこのことはよくわかっていた。
「それこそ死刑囚がね」
「恐竜の御飯」
それが連合の犯罪者が辿り着く一つの道だ。生きながら食われる苦しみは想像を絶するものだ。凶悪犯には容赦しないのが連合の法、そして社会である。
ページ上へ戻る