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八条学園騒動記

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第百話 天本破天荒博士その五


 その頃。プリシラ達はまだロシュフォール先生について調べていた。調査の結果正体は完全にわかったのであった。
「スポーツ科で第十三野球部の顧問なんだ」
「ええ、そうよ」
 ローリーに対して答えるプリシラだった。今彼等は学校の視聴覚教室にいる。そこで四人集まって先生について話をしているのである。
「変装も何もしていなかったわ。結局ね」
「何よ、それだったら」
 ジュデイがそこまで話を聞いて言う。
「ここまで必死に調べる必要なかったんじゃないの?」
「白い影についてもわかったしな」
 タムタムも言う。同時に彼等についてもわかったのだ。
「奴等はスポーツ科の生徒だった」
「道理で素早い筈だね」
「しかも強いし」
 ローリーとジュデイはこれで納得したのだった。
「風紀部も率いていたんだ」
「科目は理科よ」
 プリシラは先生の科目についても述べた。
「それで趣味はドードーの飼育と音楽鑑賞」
「オーソドックスね」
「性別は男」
 これはもうわかっていた。
「後は。これといってないわね」
「そうなんだ」
「ええ。ただし」
 ローリーに応えながらまた言うプリシラだった。
「あの風紀部はどうやらメインの仕事は風紀ではないわね」
「風紀じゃない?」
「風紀部なのに?」
「よく考えてみて」
 プリシラのクールな言葉が続く。
「白い影は確かに尋常ではない機動力と戦闘力、そして隠密力があるわ」
「そうだね」
 ローリーは彼女の言葉に頷いた。
「学園の組織とは思えない程にね」
「けれど。思ったより動きがないのよ」
 プリシラが指摘するのはそこだった。
「学園全体でも知名度はかなり高いけれどその活動自体は少ないわよね」
「そういえばそうかしら」
「俺も殆ど見たことはないな」
 ジュデイとタムタムはここでまた気付いた。
「それは何故かしら」
「何故か、か」
 タムタムの灰色の頭脳が閃きはじめた。
「俺達生徒に対する組織じゃないのか」
「だとしたら一体」
「相手は何だ?」
「そう、それだ」
 タムタムはジュデイとローリーに応えた。
「あれだけの力を向ける必要があってしかも学園の近くにいる存在だ」
「一人候補がいるわね」
 プリシラの目がクールに光る。
「一人だけね」
「一人ってまさか」
「あの」
「そう、天本破天荒博士」
 ここでこの名前が出たのだった。
「あの博士に対してじゃないかしら」
「おい、あの博士は」
 冷静なタムタムでさえ天本博士の名前を聞くとその声をうわずらさせていた。このことからだけでも博士が尋常な人間ではないことがわかる。
「生半可な人間じゃないぞ」
「ええ、確かに」
 プリシラもこのことはよくわかっていることだった。日本どころか連合中においても悪い意味で知らぬ者はいない程の人物なのであるからだ。
「何千年生きているのかもわからないし」
「本当に人間なのかしら」
「さあ」
 ジュデイもローリーも確信を持ってはいなかった。無茶苦茶さという点であのシャバキをも凌駕しているのではないのかとさえ言われている奇人だからだ。 
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