八条学園騒動記
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第十三話 オフレコその五
「ジョルジュに撮影頼んでおいたのよ」
「考えたわね」
「任せて、そこんところは。それでね」
「オフレコね」
「そういうこと。今付き合ってる人とかいるの?」
「付き合ってる人?」
「そうよ。内緒でいいから教えて」
そっと囁く。
「誰が好きなの?今」
「本当にオフレコね」
カトリは念を押す。
「新聞部が裏で作っている八条スポーツとかに出ないわよね」
「八条スポーツ?何のことかしら」
それはとぼける。発行所不明の学園で出回っているスポーツ新聞である。でまかせとホラばかり書かれていると評判の新聞紙である。一番恐いのは凄く稀に真実が書かれているということである。一面に学園を狙う宇宙人の化石と言ってコンピューターグラフィックを出すことは平気でやる新聞である。これを出しているのが実は新聞部であるという噂が根強いのである。真意は定かではないが。
「知らないのね、その新聞のことは」
「さて」
彼女はあえて知らないふりをする。
「何のことかしら」
「そう。じゃあいいわ」
「話してくれるのね」
「まあね」
カトリはこくりと頷いた。意を決した顔になっていた。
「それでね」
「ええ」
言おうとする。だがここで異変が起こった。ジョルジュがやって来て伝えたのだ。
「時間だよ」
「なぬっ!?」
ナンシーはそれを聞いて思わず顔を顰めさせた。
「何ですって!?」
「だから時間だって」
「って今はじまったばかりよ」
「けれど時間は時間だから」
「何よそれ、いいところなのに」
「取材は終わったんだろ、そっちも」
「ま、まあね」
こほん、と態度をあらためて述べる。
「終わったわよ」
「じゃあいいじゃない」
「折角オフレコだったのに」
「どうせそのままは・・・・・・」
「そっから先は言わないっ!」
「うわっ!」
鉄拳が襲ってジョルジュを黙らせる。
「な、何するんだよ!」
「新聞部と写真部の絶対の秘密でしょうが!若し言ったらマウリアの奥地に放り捨てるわよ!」
「マ、マウリアの奥地だって!?」
連合では何があるかわからない場所の代名詞になっている。そこで撮影されたものがマウリア映画の訳のわからない探検映画に使われている程である。
「そ、それだけはご勘弁を」
「わかれば宜しい」
「ねえ、今の」
「そうよね、はっきりわかる位怪しいわよね」
そのあからさまに不自然な様子ははっきりとバレエ部の面々にも伝わっていた。
「やっぱり噂は」
「有り得るわよねえ」
「大体写真部にしろ新聞部にしろやけに取材費持ってない?」
「その出所がねえ」
「ねえ、まさか」
「あっ、これで取材終わりだから」
カトリにも慌てて返す。
「それじゃあね。お疲れ様」
「え、ええ」
「ほらジョルジュ帰るわよ」
ジョルジュの腕を掴んでせきたてる。
「早く記事書かないといけないからね。あんたも写真があるのでしょ」
「そういえばは・・・・・・」
「だから黙ってろって言うとるんじゃ!」
今度はどっからか出した巨大なペン先で頭を突き刺していた。ペンは剣よりも強しであった。八条学園新聞部は流石と言うべき強さを見せていた。
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