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八条学園騒動記

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第百話 天本破天荒博士その二


「そもそもずっと昔から生きておるようだしのう」
「公の記録にはじめて登場した時はです」
 話はさらにとんでもない方向に向かう。
「千年以上も前ですし」
「千年か」
「はい、千年です」
 これだけで普通の話ではないことがわかる。
「千年前にはもう派手に暴れていました」
「しかも派手にか」
「そこいらの暴走族等を捕まえて改造実験を施したり」
 言うまでもなく犯罪行為どころの騒ぎではない。
「モンスターに改造したり生体実験の道具にしていたそうです」
「何処の悪の組織なのか」
 署長はそこまで聞いて首を傾げるのだった。人を実験の道具にするこのこと自体最早人間の行いではない。少なくとも真っ当な人間ではないと言える。
「千年も前から。連合を騒がせているとはな」
「しかも本拠地は日本です」
「尚且つこの街に」
 この二つの言葉に彼等の偽らざる本音が出ていた。
「どうして何処かの秘境にいないんでしょうか」
「研究するのならそちらの方がいいでしょうに」
「生体実験の道具が必要だからだろうな」
 署長はうんざりとした顔で述べた。
「だから。それで」
「この街にですか」
「かなり迷惑です」
「そしてそれだけではないな」
 署長はさらに言う。
「あの博士が改造していくのはその殆どが暴走族や街のチンピラだ」
「はい」
「街にはそんな人間が多い」
 いい人間と悪い人間はどの国にも存在している。当然ながらこの街でもだ。だから博士はこの街にいてそうした輩を片っ端から改造したり内臓を抜いたりしているのである。
「それを狙ってな」
「それ自体はまあ街にはいことですが」
「それでも」
 警官達にとっていい話ではない。
「違法な実験を繰り返していくというのはどうも」
「違法どころではないですし」
 それこそが最大の問題なのであった。この博士にとっては。
「しかも改造された犯罪者が怪人になって暴れますし」
「それへの対処も」
「しかもです」
 話はさらに続けられていく。彼等にとって実に忌まわしい話が。
「あの博士は劇薬の開発も行いますよね」
「そう、それだ」
 署長もそれを指摘した。
「その劇薬がな。これまた星を一個普通に壊すものだしな」
「だから洒落になりませんね」
「そう、それもある」
 博士は劇薬の開発も趣味なのだ。
「尚且つ危険な兵器を開発してそれを兵器で公の場で実験しますし」
「この前だってそれで」
「そうそう」
 また彼等にとって忌まわしい事件が思い出されるのだった。天本博士はトラブルを創造する人間なのだ。非常にはた迷惑な人間と言うしかない。
「ブラックホール粒子砲を暴力団の事務所に放って」
「事務所が暴力団員ごと完全に消えました」
「犠牲者約五十人」
 言うまでもなく大量虐殺だ。
「殺人罪及び危険物所持法違反で捕まえたいのですが」
「他にも余罪が無数にありますし」
 前科は普通に法律で考えるとそれこそ千やそこいらでは効かないのが博士である。
「この前は確かブラックホールのど真ん中に隔離したんですが」
「それでも戻って来ましたし」
 博士は脱獄も得意なのであった。
「それで今平気な顔であそこにいますし」
「困ったことです」
 困ったところではないのではあるが。
「とにかく。博士をどうするかですよね」
「それだ」
 署長の顔がまた強張る。 
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