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八条学園騒動記

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第九十一話 鼻が頼りその二


「作戦が失敗して次の作戦は」
「ああ」
「アンジェレッタは間違いなく警戒しているわ」
「それは確実だな」
 もう言うまでもないことだった。一度受ければそれに身構える。動物の本能でもある。
「だからその時の為にね」
「随分と考えてるんだな」
「二段構えは基本よ」
 またここでにこりと笑ってみせるレミだった。
「作戦はね」
「剃刀みたいなものか」
「また随分と変な例えね」
「いや、だってそうだろ」
 マチアは突っ込みを入れられてもまだ言う。
「二段だったらそれこそ」
「何なら三段にしてみる?」
「棒みたいだな、それだと」
 今度は中国拳法だった。
「俺は七つの方が好きなんだが」
「ああ、七節棍ね」
 これはレミも知っていた。連合の格闘技で使われるものだ。
「あれは凄く扱いが難しいわよ」
「そうらしいな。俺は武道とか格闘技はやらないからよくわからないけれどな」
「その分威力は凄いけれど」
「そうなのか」
「それでね」
 レミはまた言う。
「悪いけれど七段構えまでは考えていないわよ」
「そこまでは、か」
「一度にそんなに考えられないから」
 また実に率直な言葉だった。覆い隠そうともしない。
「とてもじゃないけれどね」
「それもそうだな。三つはともかく七つまではな」
「それにそんなことしたら作戦の一つ一つが雑になっちゃうじゃない」
 レミはそうしたことにも気を払っていたのだった。一見するとあまり考えていないようで細かいところまでよく考えているのだった。それがよくわかる言葉だった。
「それだと何の意味もないわよ」
「最初の作戦で決めるつもりってことね」
「そういうこと」
 ジョンに対してもにこりと笑って答える。
「そのつもりじゃないと成功するものもしないわよ」
「そうだな。その通りだ」
 マチアもレミのその言葉に頷く。
「じゃあ俺は」
「音楽の方頼んだわよ」
「ああ、任せておけ」
 彼はもう心の中ではスタンバイができていた。楽しそうに笑っているその顔がその証だった。
「とびきりの曲を奏でてやるからな」
「バイオリンだったらあんただからね」
「バイオリンなら任せておいてくれよ」
 自信に満ちた言葉だった。これに関しては絶対の自信があるのだった。
「奏でるのも作るのもいけるからな」
「バイオリンも作ることができるのね」
「まあな。演奏しているうちに中身も気になってな」
 真顔になってレミとジョンに述べる。
「それで作る方もはじめたんだよ」
「そうだったんだ」
「作るのも楽しいぜ」  
 心からその楽しみを出す顔でジョンに語る。
「一度やったらそのまま病み付きになる程な」
「何かバイオリン馬鹿になってきたわね」
「いいだろ、それでも」
「別に。ギャンブルとかお酒にのめり込むわけじゃないし」
「ギャンブルにのめり込むのは馬鹿だよ」
 それは軽く、すぐに否定する。
「あんなのにのめり込んで破滅するのはな。馬鹿なんだよ」
「まああまり賢くはないわね」
「それでだ」
 今度はマチアが話を戻してきた。
「それで行くか」
「ええ、最初で決めるわよ」
「わかったよ。じゃあラッシー」
「ワン」
 ラッシーもジョンの声に応えて鳴く。
「頑張ってくれよ」
「ワン」
「何かラッシーってワンってしか鳴かないわよね」
「そういえばそうだな」
 レミとマチアは今そのことに気付くのだった。 
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