八条学園騒動記
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第六十四話 円卓会議その二
「これで一つ」
「さて。それじゃあ次は」
蝉玉はまた言う。
「セッティングね」
「そうそう、それそれ」
マルコがそこに突っ込みを入れる。
「それでどうするんだ?やっぱりムードだよな」
「ムードねえ」
アンがそれを聞いて言う。腕を組みながら。
「それならいい場所があるわよ」
「いい場所?」
「そう、歌劇場」
ここでさりげなくでもなく彼女の思い出の場所が紹介された。
「あそこならどうかしら」
「それはちょっと」
「駄目かしら」
スターリングの言葉に目を少しいぶかしめさせる。
「ムードは最高じゃない。演出も」
「それは前やったじゃない」
スターリングが言うのはそこであった。
「アンとギルバートの時にさ」
「だからよ」
アンはそこをあえて指摘するのであった。
「だから。ほら、やっぱり私達みたいにね」
「なればいいって?」
「そうよ。そう思わない?」
鬼の様に鈍感なギルバートと何処までも素直ではないアンが一緒になれた場所だ。だから彼女がそこを推すのは理由があった。しかしそれはあくまで彼女だけのことであった。
「だからね。やっぱり」
「僕もそれはちょっと」
もう一方のギルバートが言ってきた。
「ギルバート」
「恥ずかしいな」
「恥ずかしいの?」
「あの時のことを思い出してな」
それを語るギルバートの顔は少し赤くなっていた。
「だから。止めて欲しい」
「そうなの」
「だからだ。他の場所でどうかな」
ギルバートはアンにそう話したうえで皆に提案してきた。
「歌劇場以外で」
「そうだとすると」
「何処がいいかな」
皆それを言い合う。しかし最初はどうにも答えが出ないのであった。
「オーソドックスでもいいんじゃないの?」
ダイアナがその中で言ってきた。
「ムードは何処にでも出せるし」
「まあそうだな」
マルコがそれに頷く。
「それはそうだな」
「それだよね」
ピーターはマルコのその言葉に突っ込みを入れた。
「場所も大事だけれどやっぱりムードが」
「そうそう、それそれ」
マルコはムード重視であるらしい。やけにそこにこだわるのであった。
「まずはそこだよ。ムードがないとね」
「けれどそれってさ」
ダイアナはそこに注釈を入れるのであった。
「場所選ぶわよ、やっぱり」
「ムードもか?」
「そうよ。例えば秋の木の葉が落ちる道とか」
「あっ、それもいいね」
ピーターはダイアナのその言葉に賛同した。
「そういう場所も」
「でしょ?そうした場所って歌にもなるし」
ダイアナは歌手である自分のことを参考にしていたのであった。目が少しうっとりとなっているところを見ると彼女もまんざらではないようだ。
「いいのよ、やっぱり」
「じゃあそこが候補だね」
ピーターはメモを取っていた。そうして書き留めておくのであった。
「まずはそこ、と」
「けれどまだよ」
しかしビアンカはそれで終わりにはさせないのであった。
「そこだけじゃあれだし」
「他の場所もか」
「何処があるかしら」
皆また考えに入る。その中でまたマルコが言うのであった。
「ラテン系のカフェなんかどうかな」
「カフェ?」
「うん。夜のカフェでね」
彼はそこを提案してきたのだった。
「そこだとムードあるじゃない。いい店知ってるしさ」
「カフェねえ」
「悪くないかも」
皆それに賛同しだした。まんざらではないといった顔であった。
「けれど。ここで問題があるわ」
「問題?」
皆ウェンディの言葉に顔を向けた。ウェンディはそれを受けながら話を出してきたマルコに対して顔を向けるのであった。
「そうよ。ラテンよね」
「ああ」
マルコも彼女の言葉に頷く。
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