八条学園騒動記
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第六十話 京風料理その一
京風料理
貫之が料理を運んで来た。見ればそれは三つあった。
「ええと」
「まずは」
皆まずその三つの料理を見る。最初は変わった紙のような料理であった。
「これは湯葉か」
ギルバートがそれを見て言う。
「確か。そうですね」
「はい、そうです」
貫之がそう彼に答えた。
「大豆を使った料理で。豆腐から作ります」
「そうなんだ」
「豆腐がこんなに」
これは皆にとっては意外なことであった。豆腐といえば四角いイメージがある。だがこの紙のような料理を見てその認識が大きく変わったのであった。
「何かそれでもね」
「ああ」
そのうえでそれぞれ話をする。
「美味しそう」
「あっさりしていて」
「はい、これはあっさりした料理です」
貫之は皆にまた告げた。
「お刺身のように召し上がられるといいでしょう」
「お刺身ねえ」
「成程ね」
皆それを聞いて納得して頷く。続いて見たのは鍋であった。
「あっ、これはわかるわ」
「湯豆腐ね」
「そうです」
また皆の質問に答えてきた。
「昆布でダシを取りました。京風のお豆腐です」
「お豆腐にも京風ってあるんだ」
七海はそれを聞いて意外といった顔になった。
「豆腐っていえば豆腐だけかと思ってたけれど」
「御前それはまた大雑把過ぎないか?」
ダンがそれを聞いて彼女に突っ込みを入れた。
「木綿豆腐とか絹ごし豆腐とか色々あるだろうに」
「そういえばそうだっけ」
七海の言葉は日本人としてどうかという言葉であった。少なくとも豆腐に関してはかなり無知であるのがこのことからわかる。どうにもこうにも。
「じゃあ京風のお豆腐も」
「絹ごし豆腐を使ってみました」
貫之はそう七海に説明してきた。
「そして中身は直接味わって下さい」
「中身なのね」
七海はそれを聞いて妙に納得した感じであった。
「要は」
「京風の豆腐はかなり違うらしい」
ダンはまた七海に告げる。
「それを食べられるとはな」
「ラッキーってことかしら」
「そう思う。そしてだ」
最後の一品だ。それは。
「鱧です」
これは予想通りであった。
「鱧のお吸い物です」
「やったわね」
七海はそれを聞いて笑顔になる。希望通りだったからだ。
「鱧よ、鱧」
「ああ、そうだな」
応えるダンの顔も心なしか笑っている感じであった。
「鱧か。さて」
「嬉しいんでしょ、これから食べられるのが」
「その通りだ」
その笑みのまま七海に答える。
「だがそれは最後だな」
「最後なの」
「酔い覚ましに飲みたい」
これはダンの好みだったがそれでも理に適っていた。
「鱧の味を最後にな」
「そうね。それじゃあ私もそうしようかしら」
七海もそれに賛成する。そうしてそのままテーブルで京風料理を食べはじめるのであった。まずは湯葉であった。皆山葵と醤油で食べはじめた。
食べてみると。豆腐とはまた全然違う味であった。
「あっ、これって」
「かなり」
皆食べてみてまずは驚きであった。
「あっさりしてるし」
「それに歯ざわりも」
「如何でしょうか」
貫之は舌鼓を打つ皆に尋ねてきた。
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