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八条学園騒動記

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第五十四話 門が開いてその二


 宮殿の門まで来る。宮殿の門もまた巨大である。一同がそこまで来ると門が自然に開いた。それはまるで門自体が生き物であるかのようであった。
「門も機会なのね」
 アンは自然に開いた門を見て言った。
「何事かと思ったけれど」
「てっきり妖術かと思ったよ」
 これはロザリーの言葉である。
「セーラだしさ」
「御安心下さい」
 ここでそのセーラの声がした。
「セーラちゃん!?」
 まず彰子が声をあげた。
「何処に」
「はい、こちらです」
 また声がする。しかしそれでも姿は見えない。
「姿は見えない」
「一体何処に」
「私はここです」
 また声がした。声は上の方から聞こえてくる。
「上!?」
「じゃあ一体何処に」
「ここです」
「そこは」
 見ればそこはあの巨人の頭の方であった。何とそこに空飛ぶ絨毯に乗って宙に浮かんでいたのである。まるでアラビアンナイトのように。
「空飛ぶ絨毯」
「まさかあれは」
「はい、魔法です」
 セーラは上からにこりと笑って一同に答える。マウリアの民族衣装を着ている。
「私の魔法です。如何でしょうか」
「如何でしょうって」
 皆何を言っていいかわからない。ナンも言葉もない。
「魔法、使えたの」
「ごく初歩ですけれど」
 セーラはにこりと笑って告げる。何気ないといった顔であった。
「使えます」
「そうか。それはまずは置いておいてだな」
 ダンは自分の言いたいこと、聞きたいことをまずは引っ込めて上に浮かんでいるセーラに尋ねた。見れば顔がいささか強張っていた。
「パーティーをするんだよな」
「ええ」
 また上からにこりと笑って答える。
「ようこそいらっしゃいました」
「それで場所は何処なんだ?」
 フックが問うた。彼も魔法というものにかなり戸惑っている。それは彼が今まで見たことのないものだったからだ。連合には魔法はない。
「中か。外か?」
「中です」
 宮殿の中で宴をするというのだ。答えは簡潔であった。
「どうぞ。お入り下さい」
 下に降りながら告げる。
「私の家の中に。さあ」
「ああ、家だったな」
 ジミーはそのことをやっと思い出した。ふと気付いたような顔と声である。
「そういえば」
「はい。では皆さん」
 絨毯から降りて一同のところに来た。そうして彼等に声をかける。
「どうぞ。中に」
「お邪魔します」
 皆にこりと笑う。ようやく宮殿の中に入ることになったのであった。
 宮殿の中もまた広大であった。廊下は一同が全員横に並んでも充分余る程広くしかも何処までも続いている感じであった。
「何処まであるんだろうな」
 ジミーは赤絨毯の上を歩きながら言った。
「この廊下は」
「何かねえ」
 ナンが彼に答えて言う。
「先が見えないんだけれど。この廊下」
「見えないって御前がか」
「ええ。こんな広い宮殿なんて聞いたことないわよ」
「だよなあ」
 ジミーはナンのその言葉に納得したように頷く。
「一体どうなってるんだよ、ここ」
「マウリアだからなあ」
 フックの言葉は実に的を得ていた。
「マジでこりゃ何があるかわからないぜ」
「事件もか」
 何があるかわからないと聞いて不思議な化学反応を示したのはいつものテンボとジャッキーであった。この二人も来ていたのである。
「それは楽しみよね」
「ああ、宮殿殺人事件」
 勝手に事件まででっちあげる。完全に何か勘違いをしていた。
「それを解決する美男美女の名探偵二人」
「絵になるわよね」
「何か暫く見なかったけれど相変わらずね」
 アンは勝手に盛り上がっている二人を横目で見ながら皆に言った。
「どうしたものかしら、全く」
「ってどうしようもないじゃない」
 それに対するコゼットのコメントはこれまた醒めたクールなものだった。
「今更。つける薬もないし」
「何気に酷いこと言うわね、あんた」
 意外ときついコゼットにアンの方がいささか驚いていた。
「だって。いつもこうだし」
「まあそうだけれど。それにしてもね」
 コゼットの言葉は続く。
「また騒ぎ起こしそうだし。このままだと」
「ああ。それなら心配なさそうだぞ」
 コゼットにダンがクールに言葉を入れてきた。 
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