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八条学園騒動記

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第六話 赤い髪の漫画家さんその二


「話はこれでいこうと思ってるんだけれど」
「いいんじゃない?」
「待て!話はまだ終わってはいない!」
「私はもう話すことはないわよ」
 アンはしれっとして返す。
「それじゃ」
「うぬぬ!何か凄く馬鹿にされた気がする!」
「じゃなくてしてるわよね」
「まあそれは言わないでおこうよ」
 トムにスターリングが言う。
「余計に話がこじれるからさ」
「それもそうか」
「まあいい。とにかくだ」
 ギルバートは何の脈絡もなく立ち直った。
「マクレーン君」
「何?」
 スターリングは急に話を振られてきょとんとした顔になった。
「前の日直日誌だが」
「何かミスがあった?」
「いや、流石だ」
 ギルバートは人のいいところは素直に認められる男であった。単に暑苦しいだけで。
「細かいところまで丁寧に書いていたな。感心したよ」
「どうも有り難う」
「これがバリケシール君だったなら大変なことになっているのだ」
「あいつだったらアンネットのことばかり書いてるだろ」
「その通りだ。最早日誌ではない」
 トムの言葉に応える。
「書き直してもらってもこれがまた」
「アンネットのことばかりなんだろうな」
「困ったことだ」
「それでギルバート」
「何だ?」
 スターリングの言葉に顔を向けてきた。
「とりあえずさ、今日は日直はフックだし」
「彼か」
「まともに仕事しないと思うから。宜しく」
「全く。困った奴だ」
「おっ、アンちゃん」
 丁度いいところにフックがやって来た。ふらふらとアンに近寄ってきた。
「漫画書いてるんだね」
「ネームよ」
 フックが来ても微動だにしない。ネームに顔を向け続けている。
「まだペン入れとかはしていないわ」
「そうなんだ」
「そうよ」
 味気ない返事であった。
「出来たら見せてあげるわ」
「頼むよ。じゃあさルビー」
「私なの?」
「そうさ。よかったら今日の放課後」
「わ、私はちょっと」
 クラスきってのプレイボーイに声をかけられ焦っている。
「今日は」
「今日は今日はでいつもじゃない。今日こそは、だよ」
「け、けど」
「けどもこれもないからさ。どうかな」
「それは・・・・・・」
 陥落しそうであった。だがその前にギルバートが動こうとしてきた。
「これは捨ててはおけない」
 フックの方へ足を向けていた。当然彼を止めるつもりである。
「そもそも日直であることを忘れて。遊んでいるとは言語道断」
「つってもたかが日直だしな」
「ギルバートはそうは考えていないみたいだけれどね」
 トムとスターリングが言い合う。
「ここは僕が」
 だがそれより前に。アンが動いていた。
「今日は駄目」
「ルビーが?」
「私のネームを手伝ってくれるから」
 感情のない機械的な声のままだったがそれでも充分だった。
「だから駄目なの」
「そうなの。じゃあいいよ」
 フックはそれを聞いてすんなりと引き下がった。
「ルビーちゃんまたね」
「う、うん」
「それじゃあ他の娘を。よそのクラスにでも行くかな」
 そう言ってあっさりと教室を去る。後には言いそびれたギルバートだけが残される結果となった。彼だけが呆然としてしまっていた。
 
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