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スーパーロボット大戦パーフェクト 第二次篇

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第百五十六話 三国の問題

              第百五十六話 三国の問題
一時停戦となった三国だがそれぞれの事情があった。
「へえ、そういうわけか」
ジュドーはタータ達からチゼータの話を聞いていた。そこにはオートザムやファーレン、セフィーロの者達もいる。自然と四カ国の協議になっていた。
「じゃあかなり狭いんだな」
「そうや」
タータがそれに答える。
「チゼータの国民はその為狭い家で暮らしてる。それを何とかする為に」
「柱を必要だと思ってここに来たのです」
タトラも述べる。
「成程ねえ。大変だな」
ジュドーはまずはそれに頷く。
「けれどそれってあくまでチゼータの事情だよね」
エルが鋭い突込みを入れてきた。
「セフィーロにはセフィーロの事情があるんだし」
「それは」
タータの立場が悪くなった。
「それはやな」
「自分達で努力できる範囲はした方がいいと思うよ」
イーノも言ってきた。
「やっぱりね」
「うう・・・・・・」
「そうですわね」
タトラは彼等の言葉ににこりと笑ってきた。
「それができればそうしたいですわ」
「それでできるのかよ」
今度はビーチャが尋ねてきた。
「できないからこっちに来たんだろうけれどよ」
「だからうち等も困っとるんや」
タータはそう言い返した。
「どうすべきかな」
「この角の部分だよね」
「そこが問題なんや」
タータは困った顔のまま言葉を返す。
「どないすべきかな」
「どないするって言われてもな」
ジュドーも困った顔になった。彼もどうすればいいのか判断がつきかねていた。
「それは」
「ちょっと。何かいい考えがあれば」
「あっ、そうだ」
プルがふと気付いてきた。
「この角の部分に住めるかな」
「角の部分に?」
「うん、それで」
タトラに答える。
「できたら」
「それはなあ」
タータはプルの顔に困った顔をして返す。やはり表情は変わらない。
「できたらそうしたいんやろが」
「しかし侵略はよくないぞ」
プルツーもタータ達に言ってきた。
「セフィーロの皆に迷惑がかかる」
「それよね、やっぱり」
ルーもプルツーの言葉に頷く。
「どうすればいいのかしらね、本当に」
「突起の部分はあれなんや」
タータが答えてきた。
「普通の大地で水もあるけど」
「開発が容易ではないのです」
タトラも言う。
「私達の技術では」
「どういうことなんですか、それって」
ファが二人に問うた。
「技術がないって」
「惑星開発の技術はまた特別なんや」
タータの顔は困ったものから弱ったものになった。
「チゼータにはそれがないねん」
「それでこちらに、ということになったのです」
「セフィーロとしてはそれは認められん」
クレフは憮然とした顔で返してきた。
「そんなことを許せば」
「それはこっちもわかっとるわ」
タータは形勢が不利になったのを感じながらまた答えた。
「そやけどこっちにも事情があるねん」
「事情が」
「そやからチゼータの民は狭いところで苦しんでる。それを何とかせなあかんねんや」
「それでしたら」
イーグルが口を開いてきた。
「オートザムが技術援助をしましょうか」
「オートザムが」
「はい」
にこりと笑って述べる。
「惑星開発の技術では我が国はかなりのものがありますので」
「それを使えばあの突起の部分はどうにでもなる」
ジェオも名乗り出て来た。
「それでどうかな」
「戦争をするよりましだしね」
ザムも賛同する。これで話はおおよそ決まっていた。
「丁度僕は外交権も与えられていまして」
「何や、都合がええな」
「ええ、確かに」
イーグルはタータの言葉ににこりと笑う。本当にその通りであった。
「ではそういうことで」
「じゃあオートザムとチゼータは講和ですね」
タトラは優雅に笑って述べた。
「これで戦争が一つ減りました」
「惑星開発ならこちらも援助ができる」
クレフがここで出て来た。
「互いに争うよりは手を携え合う方がいい。それでどうだ」
「ええんか?うち等はあんた等のとこへ攻め込んだんやで」
「それはもう昔のことってことさ」
ジュドーがタータに述べる。
「幸い誰も死んでないしな。それでいいじゃねえか」
「済まんな、そう言ってもらうと助かるわ」
「それではセフィーロの皆さん」
「うむ」
セフィーロとチゼータも講和した。また一つ対立が消えた。
続いてはファーレンである。こちらは事情が少し違っていた。
「お菓子が欲しいのじゃ」
アスカは言う。
「お菓子がたっぷり食べられるようにしたいのじゃ」
「お菓子かよ」
「そうじゃ」
ケーンに答える。
「それが欲しくて仕方がないのじゃ。わらわは甘いものが何より好きじゃからな」
「虫歯になるぜ、それだと」
タップがそう突っ込みを入れる。
「それか太るか」
「そもそもあれだ」
ライトも言う。
「お菓子なら好きなだけ手に入るんだろ?お姫様なんだから」
「うっ」
この言葉には反論できなかった。
「それはそうじゃが」
「我儘?ひょっとして」
リンダがアスカにふと問うてきた。
「それはあまりよくないと思うけれど」
「そうですよね」
サンユンがその言葉に頷く。
「アスカ様はその」
「我儘ってわけかい。困ったもんだね」
「お姫様、それはいけねえぜ」
姫とかそうしたこととは全く無縁のミンとゴルが言ってきた。
「お菓子なんてすぐに手に入れられるんじゃないのか?お姫様なら」
「お、おでもそう思う」144
ジンとゴルも言う。彼等は確かに無頼だがそれがわかるだけの頭脳があったのだ。
「食べたいなら食べたいだけ食べればいいけれどな」
ケーンはアスカに対して述べる。
「けれど我儘はな」
「じゃあどうせよというのだ」
「だからお菓子なんて何時でも好きなだけ食べられるだろ」
「うう・・・・・・」
「だからな。ここは」
「我慢せよというのか」
「いや、そうじゃなくてだよ」
タップが言ってきた。
「お菓子なら普通に買えるだろってことだよ」
「買えるのか」
「作るのだって楽しいしな」
ライトはこっそりと話をそちらにも向ける。
「セフィーロをまんまお菓子だけにすることはないさ」
「そうなのか」
「そうそう」
タップはまた言う。
「だからここは発想を転換して」
「それならば戦争をする意味がないのか」
「そうだな」
マイヨがその言葉に頷く。
「講和すればいい。セフィーロ側としてはどうだ」
「別にいいぜ」
フェリオが答えてきた。
「こっちも争う理由はないしな」
「それでは決まりですね」
「セフィーロとファーレンの講和です」
ダンとウェルナーが述べてきた。
「これで」
カールも言う。彼等との講和は成ろうとしていた。
「お菓子ですか」
タトラがここでにこやかに笑ってきた。
「それでしたらチゼータはお菓子ではかなりの素晴らしい職人がいますが」
「そうなのか」
「はい。よければ国交を結びませんか」
そう提案してきた。
「そちらさえよければ」
「わかった」
アスカはそれに頷いてきた。
「それではな。チゼータと国交を結ぶ」
「はい」
シャンアンがにこやかにそれに応えてきた。
「わかりました」
「そしてセフィーロとも講和じゃ」
同時にそれも決められた。
「それでよいのだな」
「はい」
「後はお姫様の我儘をなおすだけだな」
「それはゆっくりと」
「ちょっと待て爺」
アスカがそれに抗議する。
「わらわは別に」
「それが我儘だぜ、お姫様」
タップが笑いながらアスカに言う。
「気をつけないとな」
「うう・・・・・・」
「まあそれは時間をかけてだな」
ライトもにこやかに笑っていた。
「お姫様への教育か」
「まことに」
シャンアンは今度はライトに答える。和気藹々とした雰囲気でファーレンとの関係もできたのであった。
最後はオートザムだった。ここが一番の問題であった。
「実はですね」
イーグルが口を開いてきた。
「我が国は困ったことになっていまして」
「困ったこととは」
「はい、実ですね」
「おい、イーグル」
ジェオがここでクレフに応えようとして口を開いたイーグルに対して言ってきた。
「それは」
「いえ、言わなければなりません」
しかしイーグルは言おうとする。それが彼の考えであった。
「我が国の状況を」
「言うんだな?」
「はい、何があっても」
彼は言うことを決意していた。覚悟をしている顔であった。
「言わせて下さい」
「わかった。じゃあ」
「言って、イーグル」
ザズもイーグルが言うことに頷いてきた。イーグルは彼の言葉も受けて言うのであった。
「オートザムは滅びようとしています」
「そうだろうな、これは」
雅人はそれを聞いて述べてきた。同時にオートザムの映像を見ていた。
「やばくない?これは」
「確かにな」
亮も雅人の言葉に頷く。球状の岩から大きなトゲが無数に突き出しているオートザムはそれだけで崩壊間近なのがわかるものであった。
「環境破壊か」
「だとしたらこれはかなりのものだね」
沙羅は顔を顰めさせていた。そのうえでの言葉である。
「今にも壊れようって感じじゃないか」
「それもありますが実は精神エネルギーが枯渇していまして」
イーグルは彼等にそう説明してきた。
「その為に我がオートザムは崩壊しようとしています」
「成程な」
忍はそれを聞いて納得したように頷いてきた。
「だからか。あんた達がセフィーロに来たのは」
「そうだ。俺達が生き残る為にな」
「セフィーロの柱システムを解析してその力を使うつもりなんだ」
ジェオとザズは忍の言葉に応える。それが彼等の考えだったのだ。
「いいか悪いかは別にしてな」
「俺達だって生きないといけないんだ」
「何じゃ、精神エネルギーか」
アスカがそれを聞いて声をあげてきた。
「そんなものは幾らでもどうにもなるぞ、環境も」
「どういうことですか、それは」
「我がファーレンでは精神エネルギーは無限に操り増やすことができるのじゃ」
平気な顔をしてイーグル達に述べる。
「無論個人差があるがな」
「ファーレンの技術でか」
「技術というよりは術じゃ」
アスカはジェオに答える。
「環境も風水ですぐに変えられる。こちらはちょっと手間がかかるがな」」
「まさか」
「わらわは嘘は言わん」
小さな胸を張って言う。彼女もファーレンの主としての誇りがあった。だからこそ言うのであった。
「むざむざ滅ぶのはそなた等も本意ではあるまい。それではな」
「いいのですか?本当に」
「うむ。いいぞ」
「ではセフィーロとしても術のことを伝授しよう」
クレフがまた申し出てきた。
「オートザムの民が困っているのは見過ごせぬ。喜んでな」
「申し訳ありません、我々に対して」
「構わぬ」
「よいことじゃ」
クレフとアスカがそれぞれ述べてきた。
「気にすることはない」
「これでオートザムは救われるのか」
「柱をセフィーロの人達から奪わなくても」
ジェオもザズもそのことに光を見ていた。顔が見る見るうちに明るくなっていく。
「それではアスカ皇女、導師クレフ」
イーグルは二人に声をかけてきた。
「ファーレン、セフィーロとそれぞれ講和したいのですが」
「うむ」
「それではな」
こうしてオートザムも講和した。セフィーロと三国の戦いはそれぞれ終わったのであった。
「これで一件落着ってわけだな」
「いえ」
シーラが忍に言ってきた。
「まだセフィーロでの戦いは残っています」
「そうです」
エレも言う。
「エルデ=ミッテ博士とあのデボネアという影」
「あれは一体」
「それについては一つ鍵があるの」
「鍵!?」
ロンド=ベルの面々は鍵という言葉を出してきたプレセアに顔を向けた。
「まこちゃん、何なのそれって」
「ええうさぎちゃん・・・・・・って」
ミサトとプレセアはついつい出た言葉をすぐに引っ込めた。
「それはなしね」
「ええ、言い出すときりがないから」
「そうよ、二人共」
タータが急に雰囲気を知的でいて可愛らしいものに変えてきた。
「それは言わない方がいいわ」
「いいわってちょっと」
タトラが相変わらず大物の穏やかな笑みを浮かべて言う。
「タータったら。誰になったのかしら」
「何か凄いことになってきたよね」
「そうだね」
カトルがシンジの言葉に頷く。
「何か」
「僕も結構イーグルさんに親近感あるけれど」
「それわかります」
カトルとしても心当たりがないわけではない。何故か大人の女に。
「何かミサトさん達のそれって」
「凄い因縁があるみたいですね、月で」
「そう、月だ」
アムロがそれに応える。
「俺はブライトやコウにコスモを感じるしな」
「俺はあれか?レイ」
シンがふと言ってきた。
「銃を持って御前が」
「剣か。誰かに憑依して」
誰もが何かを持っているようであった。しかし何はともあれ彼等の戦いと問題は終わり解決の方に向かっていた。戦いは続くにしろ。
「さてと、だ」
ケルナグールが立ち上がってきた。
「それではあの女共を倒してセフィーロに平和をもたらそうぞ!」
「うむ、そうだな」
カットナルもそれに頷く。
「そして我が社の薬をだな、買ってもらおう」
「ケルナグール=フライドチキンは異世界にも!」
「かつてのセフィーロの姿」
ブンドルはブンドルで自分の世界に入っている。
「全くもって」
何処からかグラスを取り出して。そこに赤ワインをたたえて。
「美しい・・・・・・」
「話がまとまったのはいいけれど」
海はこの三人を見ながら少し驚いた顔で風に声をかけてきていた。
「ロンド=ベルって個性強い人多いのね」
「そうでしょうか」
しかし風の返事は海が期待したものではなかった。
「魅力的な方々とは思いますが」
「確かに見ていて飽きないわね」
「こらそこのロングの小娘!」
「それはどういう意味だ!」
カットナルとケルナグールはすぐに反応を見せてきた。
「わし等が見ていて飽きないだと!」
「人を珍獣みたいに言うか!」
「いえ、そこまでは言ってないけれど」
異様なまでの地獄耳に引きながら海は答える。
「ただ・・・・・・あれ、貴方確か連邦政府上院議員のカットナルさんよね」
「うむ」
カットナルに気付いた。
「気付いたか」
「そりゃ肩にカラスいて眼帯じゃ誰だって」
「これがわしのトレードマークだ。わしは義によてロンド=ベルに参加しているのだ」
「義、ね」
その言葉にはかなり疑わしげな目を向けている海であった。
「本当かしら」
「わしを疑うというのか!?」
「別にそれは」
「いや、無理もないだろ」
「全くだ」
キリーと真吾がここで突っ込みを入れる。
「その格好じゃあな」
「疑ってくれと言ってるようなものだ」
「ううむ」
「ブンちゃんも相変わらずだしね」
「マドモアゼルレミー、私はあくまで自分のスタイルを守っているだけだ」
「ポリシーなんですね」
風がその彼に問う。
「それは」
「その通り、マドモアゼル風」
優雅に風に応える。
「どのような場所においても己のスタイルを守る。そのことこそ」
薔薇を掲げる。
「美しい・・・・・・」
「素晴らしいですわ」
風はそれを聞いてにこやかに述べる。
「ポリシーを守ることは」
「それでだ」
ケルナグールは光に対して語っていた。
「わしはな、そこでかみさんと知り合ったのだ」
「そうか、凄いな」
光はケルナグールの妻との馴れ初めの話に感動していた。感動しながら話を聞いている。
「奥さんとケルナグールさんの絆は強いんだな」
「そうじゃ、見よ」
ここであの結婚式の写真を出してきた。
「わしのかみさんじゃ。美人じゃろう」
「うわあ、凄いよ!」
ケルナグール夫妻のその写真を見て飛び跳ねる。
「ケルナグールさんって幸せなんだな」
「うむ、その通りじゃ」
青い顔を崩して光に応える。
「じゃから御主もケルナグール=フライドチキンを食べるのだ」
「ケルナグール=フライドチキンか」
「美味いじゃろう、あれは」
「アイスが好きだ」
光はケルナグールにそう答えてきた。
「ケルナグール=フライドチキンのアイス美味しいから」
「そうかそうか、可愛いことを言う」
それを聞いてさらに顔を崩す。光が小さい為完全に親娘に見える。
「わしは気分がよくなった。では皆に大盤振る舞いじゃ!」
「というと」
「フライドチキンか」
「フライドチキンばかりではないぞ!」
ケルナグールは豪語してきた。
「アイスも何でも食うのじゃ!よいな!」
「よし!折角講和したんだしな!」
フィリオがそれに応えて言う。
「皆で騒ぐか!」
「お酒出してお酒!」
ミサトも言う。
「ナタルも一杯どう?」
「い、いえ私は」
ナタルは話を振られて戸惑いを見せる。
「私はその、できれば甘いものを」
「あら、相変わらずなのね」
「はあ」
酒に弱く甘党のラクスらしい言葉であった。実際に彼女は既にセフィーロの果物を食べていた。
「申し訳ありません」
「まあいいけれどね。飲む人はもういるし」
「そうね」
プレセアとマリューがそれに頷く。
「それじゃあ」
「戦いまでは」
「はい」
ナタルはこの時助かったと思って胸を撫で下ろした。しかしそれは甘かった。
「ナタルさん」
「それじゃあさ」
「な、何だ?」
ジュドー達に声をかけられて思わず身構える。
「お菓子食べようよお菓子」
「ああ、いいなそれ」
ケーン達もそれに頷く。
「それじゃあ皆で」
「よしっ」
「い、いや私は」
ここでまたしても下手な演技をしてしまった。
「別に一人でいい」
「あれ、またキースさん?」
「ちょっとな・・・・・・あっ、いや」
ミレーヌの言葉にうっかり言ってしまった。
「何でもない、何でも」
「ってこの人はまた」
「自分で言ってるし」
「言ってはいない、ただ私は二人で・・・・・・うう」
また言ってしまう。やはりナタルは嘘がつけなかった。
「わかった。皆で食べよう」
「そうですね。それじゃあ」
「ナタルさんも」
「しかし君達」
懸命に何とか取り繕おうとしてまた言う。
「そもそもだな、大人をからかうのは」
「だってナタルさんなあ」
「何か可愛いし」
「可愛い!?私が」
それを言われて顔を赤らめさせる。
「馬鹿を言うな、私がそんな」
「やっぱり可愛いよな」
「見ていて飽きないし」
皆顔を真っ赤にさせて両手をぶんぶん振って否定しようとするナタルを見て言う。
「ともかくだ」
ナタルはそれでも述べる。
「私はそもそも」
「そもそも?」
「キース・・・・・・いや大尉とはまだキスも」
「していないんだ」
「二十五で」
「歳は関係ないっ」
ムキになって言う。
「そんなことは全然ない。そもそも結婚するまでは」
「こんなに純情な人いないわよね」
「今時なあ」
「うう・・・・・・」
自分で自分を追い込んでしまった。やはりナタルはこうしたことになると他の誰よりもまずいものがあった。こればかりはどうしようもなかった。
「しっかしあれだよな」
またシンが言いだした。
「二十五でキスもなしってどういうことなんだよ」
「そういうあんたはどうなのよ」
ルナマリアに突っ込まれる。
「ステラちゃんとは」
「ああ、順調だぜ」
笑って彼女に言葉を返す。
「安心しな」
「それで何処までいったの?」
メイリンが彼に問う。
「上手くいってるんだったらもう最後まで?」
「ああ、それないから」
「こいつこれで奥手なんだよ」
スティングとアウルがここで言ってきた。
「キスもまだなんだよ」
「やっと手をつないでな」
「何だ、一緒じゃない」
「期待させといて何よ」
ルナマリアとメイリンはそれを聞いてガッカリとする。
「順調って」
「順調だぞ」
しかしシンはそれに反論する。
「一緒に喫茶店で紅茶を飲んだり交換日記したりしてな」
「全然大したことじゃないな」
「ああ」
皆それを聞いて囁き合う。
「ナタルさんとどう違うんだ?」
「なあ」
「あんなおばさんと一緒にするなよ」
また言わなくていいことを言う。
「俺はステラとの純愛に生きてるんだ。歳相応にな」
「歳相応ねえ」
「二十五歳のおばさんが何純愛なんてやってんだよ。さっさと結婚してよお」
「ほお、そうか」
「それが辞世の句だな」
「辞世の句!?」
皆の言葉にふと目を丸くさせる。
「何がだ?」
「いや、何がって」
「後ろを見てみろよ」
「後ろ!?」
後ろを見てみるとそこにはナタルがいた。鬼の形相で立っていた。
「覚悟はいいな」
こうしてシンはまたしてもボロ布になった。いつものパターンであった。
そんなやり取りをしていて暫くして敵襲の報が入った。皆一斉に立ち上がる。
「敵か!?」
「それなら」
「そうだ、そこの赤い服の人」
光はその中でシンに気付く。
「大丈夫か!?」
ナタルにボロ布にされて倒れている。その彼に目をやる。
「ああ、大丈夫だよ」
キラが彼女に答える。
「戦いには支障がないから」
「そうなのか」
「そうだよ。だから安心して」
「そうは思えないが」
「いや、本当に」
しかしキラは彼女に言う。
「だから安心していいよ」
「だったらいいけれど」
「何かこの人」
「ピクリとも動きませんわ」
海と風も動かなくなったシンを見て言う。二人は完全に動かなかった。
「シン」
しかしここでステラが彼に声をかけた。
「行こう、戦争」
「ああ、わかった!」
ステラの言葉を聞きすぐに起き上がってきた。
「それならな。出撃だ!」
「ほらね」
キラはにこりと笑って三人に対して述べる。
「大丈夫だったよね」
「凄いな、この人」
光は平気な顔で立ち上がるシンを見て驚きを隠せない。
「あれだけのダメージを受けていたのに」
「シンはコーディネイターでも特別なんだ」
キラはそう光に述べる。
「不死身って言われてるんだ」
「不死身・・・・・・」
「ああ、ひでえ目に遭った」
「自業自得だ」
「懲りねえなあ、全く」
スティングとアウルがまたシンに突っ込みを入れる。
「しかしあれだな」
スティングはふと言った。
「シンってナタルさんとは特に突っかかるな」
「そうだな」
アウルもそれに頷く。
「どうしてなんだか」
「声のせいじゃねえ?」
アウルはふと言った。
「ナタルさんとステラの声似てるから」
「そうか?」
スティングはその言葉に首を傾げる。
「そうは思わないけれどな」
「いや、意外と似てるぜ。あとミスマル艦長やフレイともな」
「へえ、じゃあ今度気をつけて聞いてみるか」
そんな話をしながら出撃する。そうして戦いに向かうのであった。
やはりミッテとノヴァがいた。彼女達は既に戦闘態勢に入っていた。
「やっぱり先生」
「アクア、また出て来たのね」
ミッテはアクアの姿を認めて悠然と笑う。
「御苦労様」
「やっぱり貴女は」
「さあ、私のAI1はいよいよ全力を発揮するわ」
そうアクアに告げる。
「貴女にもね」
「くっ・・・・・・」
「残念だけれどミッテ少尉」
ミサトがアクアに声をかけてきた。
「彼女はもう」
「はい・・・・・・」
アクアは苦い顔で彼女に応える。
「わかっています、けれど」
「けれど?」
「それでもまだ」
「わかるわ。じゃあ無理はしないで」
そう言ってアクアを気遣う。
「いいわね、それで」
「・・・・・・はい」
アクアはミサトの言葉を受けたそうして頷くのであった。
「光」
「光さん」
海と風が光に声をかける。
「私達がついてるわ」
「ですから」
「済まない」
光は二人の方を振り向いて礼を述べる。
「それじゃあ」
「ええ」
「頑張って下さいね」
三機の魔神も戦場にいた。戦いは前の戦いと変わりはしない。やはりメディクスからのマシンが敵の主力でありこれとミッテとアルベロ、そしてノヴァと戦うという構図であった。
ミサトが全体の参謀を務めていた。その中で彼女はトッドに問われた。
「なあミサトさん」
「何かしら」
「赤木博士は何処なんだい?」
そう彼女に問う、
「いつも横にいる筈なのにどうしてだい?」
「ええ、彼女は別の仕事なの」
「別の!?」
「そうなの、さっきプレセアと話してたじゃない」
「ああ、木星の人か」
トッドはそう返した。
「リツコは彼女と一緒にアルシオーネから話を聞きに行ったのよ」
「話を」
「そうなの。だから今はいないの」
そうトッドに答えた。
「けれどそれで何かわかるんですか?」
今度はショウが彼女に問うた。
「そのアルシオーネって人から」
「色々と事情があってね」
ミサトはそうショウに教える。
「アルシオーネはセフィーロに戻った時いきなり暴れだしたりしたらしいから」
「いきなり!?」
「ええ。そういうこともあって療養していたんだけれどね」
「あのデボネアについて何かを知っていると」
「ひょっとしたらね」
そうショウとトッドに答える。
「気配とかが似ているそうだし」
「オーラがか」
「似たものではあるわね」
またショウに述べる。
「セフィーロ自体がそうだし」
「そうなのか」
「ええ。だからちょっと時間が必要なのよ」
ミサトは言う。
「暫く待っててね」
「わかったぜ。じゃあ待ってな」
トッドが言ってきた。
「そういうことだったらな。時間を稼ぐのは得意だしな」
「期待してるわ」
「ああ、任せておきな」
ミサトにまた返す。
「そっちはな。けれど」
「けれど。何?」
「大丈夫なのかね、そのアルシオーネってのは」
「多分ね」
ミサトは一応は答えはする。歯切れが少し悪くなっていた。
「リツコ次第だけれど」
「そうなのか」
「ええ。それよりもよ」
ミサトはまた言ってきた。
「そっちは御願いね」
「ああ」
トッドはそれに頷く。
「さっきも言ったけれど任せておきな。いいな」
「わかった。じゃあな」
「ええ、御願い」
彼等は戦いに入った。その間にランティスはプリメーラと共に何処かへと向かっていた。
その後ろにクレフが来ていた。あらためて彼に問う。
「ランティスよ」
「導師クレフ」
「何処へ行くつもりだ」
「魔神を解放しに」
ランティスはそうクレフに答える。
「それが何か」
「何のつもりでだ」
クレフはまた彼に問う。
「まさか御主は」
「導師」
ランティスは彼の方を向いていた。そのうえで問う。
「俺が何故ここに戻って来たのか。それは」
「それは?」
「セフィーロの為だった」
彼は言った。
「しかしだ。今は違う」
「どういうことだ?それは」
「今はあの娘の為に戦いたいのだ」
それが今の考えだった。その為に行こうとしているのだ。
「だからこそ」
「嘘ではないのだな」
クレフはランティスに問う。
「それで」
「嘘ではない」
彼はそれをじかに述べてきた。
「俺は嘘は言わない」
「そうか、わかった」
クレフはその言葉を聞いて頷いた。
「では行くがいい」
そのうえでまた言った。
「御前の望む道をな」
「済まない」
「しかし。よいのだな」
あらためてランティスに問う。
「あの娘はザガードを」
「どうでもいいことだ」
ランティスはそれには構わなかった。
「あの娘にも言った。兄には兄の考えがあった。そして」
「あの娘にはあの娘の」
「一人の女を取るか世界を取るか」
ランティスは言う。
「それだけのことだ。兄は」
「そうか」
「そうだ。運命を受け入れたうえでな」
「運命を受け入れてか」
「ならぼ俺も」
ランティスは再び前を向いた。
「行くだけだ」
「わかった。ならば行くがいい」
クレフももう止めはしなかった。ランティスに言う。
「御前の道をな」
「必ず。助ける」
前を歩きながら言った。
「必ずな」
「うむ」
その頃光は海、風の援護を受けてノヴァと戦っていた。それは相変わらず激しい戦いであった。
「さあ、いいかしら」
ノヴァは狂気じみた笑みを以って光に言う。
「光、これで」
「ノヴァ、この強さは一体」
自分と似たものを感じていた。しかしそれがどうしてかはわからない。
「何処から来るものなんだ」
「それは貴女だからよ」
「私だから!?」
「ええ。だからね」
彼女は言う。
「ここで。殺してあげるの」
剣を一閃させる。間に合わない。
「光!」
「光さん!」
海と風も間に合わない。かに見えた。しかしここで思わぬ助っ人が姿を現わした。
それは漆黒の魔神であった。かつて光達が戦ったザガードの魔神であった。
「ザガード!?」
「まさか」
「いや、俺だ」
同じ声だった。同じ声が海と風に応える。
「その声は」
「ランティスさん」
「光」
ランティスは光に声をかけてきた。
「助けに来たぞ」
「ランティス、どうして」
「御前の力になりたいからだ」
そう光に答えてきた。
「だから。こうして」
「来てくれた」
「どうし、どうして」
ノヴァはそのランティスに抗議めいた声を出す。
「光は貴方のお兄さんを殺したのよ。それなのに」
「それでもだ」
ランティスの考えは変わらない。それを今はっきりとまた述べた。
「御前を護る。それだけだ」
「ランティス・・・・・・」
「行くぞ、光」
ランティスはそのまま前に出て来た。
「そして戦う、いいな」
「うん!」
光はランティスと力を合わせてノヴァに向かう。その力は彼女を圧倒していた。
「海さん」
そんな彼女を見て風が海に声をかけてきた。
「私達も」
「わかってるわ」
海もそれに頷く。二人もまたノヴァに向かう。
「あんたの事情はわからないけれどね」
「光さんを傷つけることは許しません!」
そう言ってノヴァに攻撃を仕掛ける。
「さっさと帰りなさいよ!」
「光さんは私達が!」
「海ちゃん、風ちゃん!」
「光、横は任せて」
「そこは私達が!」
二人は光とランティスの側に来て言う。
「任せてもらうから!」
「それで宜しいですね」
「うん!」
「よおおっっっっつし燃えてきたぜ!」
バサラはそれを見て一気にテンションをあげてきた。
「いいか!俺の歌だ!」
バルキリーの中でギターを持って叫ぶ。
「俺の歌を聴けーーーーーーーーーーーっ!」
皆に対して音楽を奏でる。全員一気にテンションをあげてきた。
「いい曲ですね」
ラクスはバサラのその曲を聴いて微笑んでいた。
「誰もを元気づける。そんな曲です」
「はい」
バルトフェルドがそれに頷く。
「ですからこそ」
「わかっています」
ラクスはそれに頷いた。
「全軍総攻撃を」
席から立って指示を出す。
「エターナルも前へ。この戦いは輝きを掴む為の戦いです」
「その通りです。エターナル前へ!」
バルトフェルドはそれを受けてエターナルを前に出した。
「総攻撃を仕掛ける。撃てーーーーーーーーっ!」
彼等はミッテの方に攻撃を集中させる。メディクスはその中でエターナルの主砲を浴びた。
「くっ!?」
「アクアさん、惑ってはなりません」
アクアにラクスの声が入る。
「貴女の側には皆がいます。だから」
「だから?」
「鎖を断ち切るのです」
それがアクアに対する言葉であった。
「今こそ」
「今こそ」
「そうです。さあ」
「アクア、動きを合わせろ!」
ヒューゴがここでアクアに声をかけてきた。
「ヒューゴ!?」
「二人同時に攻撃を仕掛けるぞ、いいな!」
「え、ええ」
「後ろは私達に任せてね」
その後ろから声がした。そこには馴染みの二機のマシンがあった。
「エクセレンさん、キョウスケさん」
「私は後方からがメインになってるし」
「近寄る敵は俺が全て引き受ける」
二人はそれぞれ言ってきた。
「いいな」
「御礼はボトルでいいわよ」
エクセレンはさりげなく注文を出してきた。
「シャンパンね」
「わかりました」
アクアはにこりと笑ってそれに応える・
「この戦いの後で、ですよね」
「そういうこと」
「けれど。飲み過ぎないで下さいよ」
くすりと笑ってまた言う。
「エクセレンさん酒癖が悪いから」
「あらら、藪蛇」
その言葉には苦笑いになる。
「そう来たの」
「ふふふ、それでもですよね」
しかしアクアはここで言葉を少し変えてきた。
「シャンパンはいい酔い方をするから」
「そういうこと」
普通の笑顔に変えてアクアに応える。
「それじゃあ御願いね」
「わかりました。それじゃあ」
アクアは前に出る。そのままヒューゴと動きを合わせて攻撃に入る。
「何っ、これは」
「まさか」
アルベロとミッテは二人の動きを見て思わず動きを止めた。
「速い・・・・・・今までよりも」
「追えない・・・・・・どういうこと!?」
「隊長、これで終わらせる!」
「先生、これで!」10
二人はそのまま果敢に攻撃に入る。その速さはアルベロもミッテも追えない程だった。
「ヒューゴ、ターミナル=スマッシャーを仕掛けるわ!」
「わかった!」
アクアはヒューゴに頷いたうえで攻撃に入る。ヒューゴも攻撃に入る。
「俺は突っ込む!」
ヒューゴは自分から突っ込んだ。
「バーニング=ブレイカーだ!」
二人は動きを合わせてメディクスを撃った。青い光と赤い光が撃ち貫きメディクスを完全に粉砕したのであった。会心の一撃であった。
「馬鹿な、そんな」
ミッテは破壊されたコクピットの中で呟く。
「メディクスがこうも簡単に」
「先生、これで最後です」
アクアがそのミッテに告げる。
「貴女は何もわかっていなかった。だから」
「負けたというの!?嘘よ」
ミッテはそれを否定する。
「私が敗れるなんて。そんな」
「いや、事実だ」
ヒューゴが戸惑う彼女に言い放つ。
「御前は敗れた。隊長、あんたもまた」
「ふん、そのようだな」
「何っ、あんたは」
アルベロは平然としたものであった。ヒューゴはそれを見て驚きを隠せなかった。
「まさか」
「最後まで戦う、それが俺の考えだ」
「だからか」
「そうだ。特に驚くことはない」
そう述べる。
「俺は負けた。それだけだ」
「それだけ、か」
「ヒューゴ、見事だった」
最後にこう述べてきた。
「そのまま最後まで進め、いいな」
「隊長、あんたはどうするんだ?」
「俺はこのまま去る」
彼は死ぬつもりだった。それを今述べたのだった。
「息子にはよろしく言っておいてくれ。今何処にいたかな」
「ジャブローにいたと思う」
「そうか、ではジャブローに頼むぞ」
「ああ」
「そんな、こんなことは」
潔いアルベロに対してミッテは執念深い顔を見せてきていた。
「認めない、私のAIはそんな」
「そうか」
その声に何者かが反応してきた。
「そなたはまだ戦うというのだな」
「戦うのじゃないわ」
そう声に返す。
「私はAI1を見守るだけ、我が子の成長を」
「左様か」
「ええ」
また声に頷く。
「その為に今死ぬわけには」
「その願い、聞き入れたぞ」
邪悪な力が辺りに満ちてきた。ロンド=ベルの者達もそれを感じる。
「この気配は」
「はい・・・・・・」
シーラとエレは同時にそれを感じた。それは前に感じたものであった。
「デボネア・・・・・・!」
「間違いありません!」
「ふふふ、わかっているようだな」
その言葉に対して声が応えてきた。
「地上の者達、いやバイストンウェルの者達も鋭いものだな」
「今度は何を考えている」
ニーが彼女に問う。
「その邪悪な心で」
「セフィーロを滅ぼす」
「セフィーロを!?」
この時プレセアはリツコと共にアルシオーネに対して何かを聞き出そうとしていた。その中で今のデボネアの言葉を聞いたのであった。
「アルシオーネ、今の言葉は」
「どういうことなの!?教えて」
「セフィーロは」
アルシオーネは俯いたまま呟きだした。
「光と影があるの」
「光と影が」
「ええ」
プレセアの言葉にこくりと頷く。
「私達は光、そしてデボネアは」
「闇というわけね」
「ええ。その闇でセフィーロを覆わんとしている者、それが」
「デボネア・・・・・・」
「それ以上話す必要はないぞ」
デボネアの声がした。
「用は済んだ、休め」
黒い波動をセフィーロに放つ。それはアルシオーネを狙っていた。
「ショウ!」
「わかってる!」
ショウはチャムに頷く。そうしてその黒い波動の前に出た。
「はあああああああああああっ!」
ビルバインのオーラソードを一閃させその波動を打ち消した。ショウならではの凄まじい力であった。
「何っ、わらわの波動を」
「俺は正しき力の為に剣を振るう!」
ショウはデボネアに対して言った。
「だからだ!この悪しき力も断ち切ってみせる!」
「くっ!」
「さあ来いデボネア!」
ショウはデボネアに対して叫ぶ。
「今こそこの手で!」
「止むを得ん、ここは下がるか」
デボネアは形勢不利と見て撤退を決意した。その際ミッテに目をやる。
「そなたは助けよう」
そうミッテに告げる。
「来るがいい」
「お母様、それじゃあ」
「ふん」
だがノヴァには冷たい声を返すだけであった。
「そなたは不要じゃ」
「えっ!?」
「聞こえなかったか、不要じゃ」
また告げるのだった。
「最早そなたはな」
「そんな・・・・・・それじゃあ」
「使えぬ駒はいらぬ」
こうも言い捨てた。
「何処へなりと行くがいい」
そう言って気配を消した。ノヴァだけを残して。
「そんな・・・・・・私はじゃあ今まで」
「どういうことなんだ、これは」
光は今の流れがわからずに思わず呟いた。
「どうしてノヴァが」
「私は・・・・・・貴女だって言ったわね」
ノヴァは俯いた声でこう述べてきた。
「あ、ああ」
「だからなの。私は貴女エメロード姫を失った悲しみから生まれたの」
「じゃあ本当に私の」
「ええ」
光のその言葉にこくりと頷く。
「だから。私は」
「わかった」
光はその言葉にこくりと頷いてきた。
「だからか。全部わかった」
「えっ!?」
「ノヴァ、来て」
優しい声でノヴァに声をかける。
「私のところに。また一緒になろう」
「いいの?私が光のところに来て」
「いい、だから一緒に行こう」
「私が光の中に入って」
「私がノヴァを受け入れて」
二人は互いに見詰め合って言い合う。既にそこには歪んだ愛情はなかった。
「そうして二人で」
「ずっと一緒に」
ノヴァはゆっくりと目を閉じる。そうして光に近付きその中に入っていく。彼女はこうして完全に光の中に入ったのであった。再び一人になったのだった。
「光、それでいいのね」
「光さん、貴女は」
海と風が光に声をかける。
「ノヴァを受け入れて」
「そうして」
「うん」
光は二人に対して頷いてきた。
「ノヴァは寂しかったんだ、だから」
そのうえで言う。
「私はノヴァを受け入れて」
「強いのだな」
ランティスが彼女に声をかける。光は今ノヴァに勝たずに彼女を受け入れたのだった。
「御前は」
「強くない。ただ」
「ただ?」
「ノヴァを助けたかった。だからなんだ」
「それが強さだ」
ランティスはそれでも彼女に告げる。
「御前の心の強さだ」
「心の・・・・・・強さ」
「そうだ、心の強さだ」
ランティスはまた光に告げた。
「御前自身のな」
「私は・・・・・・強いのか」
「そうね」
海がその言葉に笑顔で頷いてきた。
「光、貴女本当に強いわよ」
「海ちゃん」
「そうですわ」
今度は風が言ってきた。
「ノヴァさんの寂しさを受け入れられた貴女は本当の意味で」
「風ちゃん」
「強い娘よ」
「だからその強さをずっと持って」
「わかった」
光は二人の言葉に頷いた。
「それじゃあこの戦いを」
「ええ」
「終わらせましょう」
三人は言葉を交あわせる。そうして最後の戦いに向かう決意を固めたのであった。
戦いは終わり光達もロンド=ベルもセフィーロへ戻った。三国も一緒である。
「そうですか、ではそこに」
「うむ」
クレフはラファーガに対して答えていた。
「アルシオーネが全て教えてくれた、そこにデボネアがいる」
「じゃあこれで決まりや」
カルディナは言う。
「そこに殴り込みかけて終わりや、このセフィーロの戦いはな」
「けれど柱はどうするの?」
ここでアスコットが言ってきた。
「そっちは何も解決していないけれど」
「うっ、それは」
「だがまずはそれだ」
クレフは先にデボネアを何とかすることを決めてきた。
「柱を害する存在を取り除く。よいな」
「わかったよ、それじゃあ」
「うむ、頼むぞ魔法騎士達よ」
セフィーロでの戦いも正念場を迎えようとしていた。しかし戦士達の戦いはまだ続くのだった。

第百五十六話完

2007・4・14  
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