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スーパーロボット大戦パーフェクト 第二次篇

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第百五十三話 宇宙の渦

                  第百五十三話 宇宙の渦
ティターンズはコロニー群に集結していた。そこで最後の補給と整備を行っていた。
「損害はどうだ」
ジャミトフ、バスクが死に今やティターンズの指導者となったシロッコはジュピトリスの艦橋で部下に問うてきていた。
「かなりのものですが今ようやく全てが終わりました」
「そうか、戦えるのだな」
「はい」
部下が答える。シロッコはそれを聞いて頷いてみせた。
「そうか。ならばよい」
「ロンド=ベルは既にこちらに向かってきています」
「そうだろうな」
それは彼も当然のこととして呼んでいた。表情を変えずに頷く。
「後どの位でここに来るか」
「三時間程かと」
「よし、では総員戦闘用意だ」
シロッコは全員に告げた。
「いいな」
「わかりました。それでは」
「私も出る」
そのうえでまた言う。
「ジ=オⅡでな」
彼もまた出撃準備にかかっていた。しかしパイロットスーツは着ない。あくまで私服のまま乗り込むつもりだった。これは彼の最後の意地なのであろうか。
ロンド=ベルもまた戦場に向かう。カミーユはラー=カイラムの中でゼータツーに乗ろうとしていた。
「カミーユ」
宙を飛ぶようにフォウが彼のところにやって来た。
「いよいよね」
「ああ」
カミーユは彼女に応えて述べてきた。
「遂に。これでティターンズとも」
「彼等ともね」
「シロッコ、あいつだけは許しちゃいけないんだ」
深刻な顔で述べてきた。
「何があっても」
「だから戦うのね」
「そうだ。俺はアムロさんみたいに強い信念はないかも知れない」
それは自覚している。しかしそれでも彼は戦う理由があった。彼なりに。
「けれど人を弄ぶような奴はいちゃいけない。だから」
「後ろは私に任せて」
フォウはまた彼に告げてきた。
「いいわね」
「頼むよ、何かあったら」
「今の貴方なら大丈夫だけれどね」
「大丈夫かな」
「そうよ。だって強くなったから」
ここでくすりと笑ってきた。
「だからね」
「そうね」
「ファ」
そこにファもやって来てカミーユに告げてきた。
「今のカミーユならシロッコに負けないわ。何があってもね」
「買い被りじゃないよな」
「何言ってんだか」
ジュドーはその言葉を笑い飛ばしてきた。
「カミーユさんならそれはないって」
「ないのか」
「だって。強くなったから」
フォウはくすりと笑ってまた述べる。
「何があってもね」
「わかった。じゃあ行く」
カミーユはそこまで聞いて頷いた。
「そしてシロッコを倒す」
カミーユは出撃した。ロンド=ベルも今総員戦場に出た。宇宙の渦の中心にはもうティターンズの全軍が集結していた。戦いは間近に迫っていた。
「遂に、だね」
ライラは目の前に現われたロンド=ベルを見据えて呟く。
「因縁深いロンド=ベルともこれで泣いても笑っても最後ってわけだ」
「そうだな」
その言葉にカクリコンが頷く。
「勝つにしろ負けるにしろだ」
「後がない戦いってのもいいものだぜ」
ヤザンは笑ってそれに応える。
「スリルがあってな」
「どっちにしろ後悔はなしってことだな」
ジェリドも言う。
「これでな」
「そうね」
マウアーはジェリドに続いて言う。
「生きるにしろ死ぬにしろ」
「ならばだ」
シロッコは彼等に告げてきた。
「生きて後悔しない方がいい。違うかな」
「珍しくまともなことを言うね」
ライラは彼の言葉に顔を向けてきた。
「どういう風の吹き回しだい?」
「ふふふ、さてね」
シロッコはまずは彼女の言葉に笑って返してきた。
「どちらにしろ最後なのは確かだ。君達の健闘を期待する」
「いいか」
ガディがジェリド達に告げる。
「後ろはこっちで全力でフォローするからな、いいな」
「恩に着るぜ」
ヤザンはその言葉を聞いて彼に笑みを向けた。
「思えばあんたとも長い付き合いだがな」
「そうだな。まさかお互いここまで生き残るとはな」
「我々もです」
「お互いよくここまで」
ラムサスとダンケルも述べる。アレクサンドリア級は他にもありそこにはブランやベンがいた。
「宇宙でも戦うとはな」
「流転と言うべきでしょうがこれもまた」
「あんた達とも長いな」
彼等にはジェリドが声をかけてきた。
「よく生きていたものだ」
「世話は焼かせられた」
ブランはシニカルな笑顔を作ってジェリドに言葉を返してきた。
「何かとな」
「それは済まなかったな」
「しかしだ。その分はここで返してもらうぞ」
「健闘を期待する」
ブランとベンは彼等にこう告げる。見ればクロスボーンやザンスカール、ブルーコスモスのモビルスーツもまだかなり残っていた。
「ザビーネ」
ドレルがその中でザビーネに声をかけてきた。
「この戦いが終わればどうする?」
「さて」
ザビーネはその問いにはまずは少し時間を置いてきた。
「わかりませんな。どちらにしろ少し考えたいものです」
「休みたいというのだな」
「はい」
その問いにはこくりと頷いてきた。
「何分多くのことがありましたので。考えることも多いですから」
「そうだな。しかしだ」
ドレルはここで言った。
「父も倒れかなり経った」
「ええ」
「その間私達が見てきたものについて考えるべきだな」
「ただ一つだけわかったことがあります」
「何だ、それは」
また彼に問う。
「貴族主義についてです」
「貴族主義か」
「はい、コスモ貴族主義」
それを今ドレルに語る。
「今まで絶対と思っていましたが。どうやら些細なことだったようです」
「些細なことか」
「ええ。それはこの果てしない銀河の塵の一つに過ぎないもの」
彼は述べる。
「それだけのことだったのです。それだけはわかったような気がします」
「より大きなものがあるというのだな」
「そうです」
はっきりと答えることができた。彼も戦場で多くのことを知ってきたのだ。
「それについて考える時間が欲しいですね」
「そうだな」
ドレルもそれに同意して頷く。
「もっと大きなものについてな」
「はい」
彼等は何かを見つけようとしていた。無論そうではなく唯一つのことに執着している者達もいた。
「ここでだね」
ファラであった。相変わらず狂気を含んだ笑みを見せていた。
「ここで首を落としてやるよ」
「ウッソ」
カテジナも憎悪に顔を歪ませていた。
「ここで遂にね」
「白いの。これで」
クロノクルもまた。彼等には憎悪しかなかった。
様々な感情が入り混じり宇宙の渦は形成されていた。ロンド=ベルはそこに向かうのであった。
「よし」
ブライトは戦場に到着したところで総員に指示を出してきた。
「メール=シュトローム作戦もこれで最後だ」
「はい」
皆それに頷く。
「いいか、ここで彼等を倒す」
「わかりました」
「メール=シュトローム作戦の最終段階だ」
ブライトはまた告げる。
「全軍攻撃開始だ」
「了解」
彼の言葉と共にロンド=ベルは渦の中心に向かった。今最後の戦いがはじまったのだった。
ロンド=ベルが攻めティターンズが守る。ロンド=ベルは強引に正面から攻め込んできた。
「何機いようが同じこと」
ハマーンはその先頭にいる。既にファンネルをその周りに舞わせていた。
「行けっ、ファンネル!」
そのファンネルを一斉に放つ。それでまずは数機まとめて倒してきた。
これが開戦の合図となった。ロンド=ベルはそのまま勢いを止めず突っ込んだ。
ティターンズはそれを正面から受け止める。両軍は激戦に入った。
「カミーユ!」
ジェリドはすぐにカミーユに向かう。他の敵には目もくれずカミーユに突き進んでいた。
「そこか!そこにいるな!」
脳裏に彼が何処にいるのかを教える何かがあった。それに従い一直線にカミーユに向かっていた。彼はその先にいた。
「ジェリドか!」
「そうだ!これで最後になる!」
ビームライフルで攻撃を浴びせながら突進する。
「それならここで!」
「なら俺もだ!」
カミーユもそこから逃げるつもりはなかった。
「ここで御前を!」
二人はそのまま一騎打ちに入った。ヤザンもジュドーと戦っていた。
「やっぱり御前とはまた会ったな!」
「何でいつもあんたなんだよ!」
「それが縁ってやつさ!」
ヤザンはウミヘビを放ちながら言った。
「俺と御前とのな!」
「どうせなら可愛い女の子ならいいのにな!」
「ははは、残念だったな」
その言葉を一笑に伏してきた。
「それも俺のものだぜ」
「ってあんた結婚でもしたのか?」
「いや、猫だ」
ヤザンはここで一見突拍子もないことを言ってきた。
「猫!?」
「そうさ、俺の新しい家族だ」
驚くジュドーにニヤリと笑みを返してきた。モニターからその顔が見える。
「あんたが猫かよ」
「おかしいかよ。まあそうだな」
「ああ」
「そこで否定しろ。何だよ、それは」
「だってよ。ガラじゃねえからよ」
「まあそれもそうだ」
自分でもそれは認める。
「しかしだ。俺にも家族はいるんだよ」
それをまた言う。
「だから死ぬわけにはいかねえ。覚悟しやがれ!」
「それでどんな猫なんだ?」
ヤザンのウミヘビをかわしながら問う。
「あんたのその家族ってよ」
「黒猫さ」
ジブリールが飼っていた猫を引き取ったからだ。案外ヤザンになついていたりする。
「それがどうしたんだ?」
「いや、聞いただけさ」
別にこれといったことはなかった。
「そうなのか。成程な」
「わかったらよ、死にやがれ!」
「だから俺だって死ぬわけにはいかないんだよ!」
ジュドーも言い返す。
「あんたも俺もな!」
「じゃあ撃墜で勘弁してやるぜ!」
結局戦うということである。
「覚悟しやがれ!」
「そっちこそな!」
モンドとイーノがその横でそれぞれラムサス、ダンケルと戦いライラ、マウアーとはルー、エルが、そしてカクリコンとはビーチャが戦っている。他の戦いの顔触れもゼダンの時と同じであった。
その中でウッソとカテジナは相変わらず熾烈な戦いを繰り広げていた。ゴトラタンはその一見鈍重な外見からは思いも寄らない派手な動きを見せガンダムに襲い掛かる。ウッソは防戦に回っていた。
「ウッソ!これが最後なら!」
カテジナは気違いじみた攻撃を浴びせながらウッソに言う。
「今度こそこの手で!」
「カテジナさん、貴女は最後まで!」
「変わることはないって言いたいのかしら」
「そうです!どうして!」
「それが私だからよ!」
カテジナは言った。
「これが私!だから!」
「僕は貴女とは戦いたくはないんです!」
「私は違うわ」
狂気を漂わせた笑みをウッソに返してきた。
「私は!貴方を殺す!そして!」
「止めて下さい!」
ビームサーベルが打ち合った。
「この戦いには意味がない!貴女と僕の戦いも!」
「あるわ。これは私自身の問題なのよ!」
「カテジナさんの」
「目障りだということよ!」
「なっ・・・・・・」
「いつも私を心配顔で気遣って!それが迷惑だというのよ!」
「だってそうじゃないですか!」
ウッソは彼女に言い返す。
「貴女は昔は」
「昔は昔よ」
そう言い捨てた。
「今の私は違うのよ」
「違いません!」
ウッソはその言葉を否定する。
「カテジナさんはカテジナさんです!だから!」
「黙るのよ!」
「うっ!」
叫んでウッソを黙らせてきた。
「その言葉もこれで最後よ!」
「カテジナさん!」
宇宙の渦で果てしない戦いが続く。カミーユもまたジェリドと戦っていた。
「壁を越えるかどうかは」
ジェリドはカミーユと戦いながら一人呟いていた。
「ここでわかる!カミーユ!」
カミーユに対して叫ぶ。
「御前をここで越えてやる!何があってもな!」
「ジェリド!どうしても御前は!」
「そうだ!御前が壁なら!」
ジェリドは凄まじい形相で彼を睨み据えていた。
「俺はその壁を越える!何度でもな!」
「壁なんてないんだよ!」
カミーユはそうジェリドに言い返した。
「人間は壁じゃない!人間でしかないんだ!」
「黙れ!」
ジェリドはカミーユのその言葉を否定した。
「俺は御前に出会ってから先に進めなくなった!それが壁でなくて何なんだ!」
「それは御前が何も見えていないだけだ!」
「何っ」
ジェリドはその言葉に一瞬動きを止めた。
「どういうことだ、それは」
「人間は壁があっても前に進める!心さえ見えていれば!」
「心さえあれば」
「御前はそれがわかっていないんだ!だから!」
距離を開けてきた。その両手にメガランチャーを構えてきた。
「前に進めないんだよ!」
「俺が何も見えていないだと。この俺が」
ジェリドはカミーユの言葉に心を奪われたその時だった。
「周りを見ろ!ジェリドーーーーーーーーっ!」
メガランチャーをジェリドのジ=オに放つ。それで一気に吹き飛ばすつもりなのだ。
「うおおおおおおおおおっ!」
「チィッ!」
すぐ我に返りかわそうとする。だがかわしきれるものではなかった。
ジ=オは吹き飛ばされた。爆発こそはしなかったが大破した。戦闘不能なのは明らかだった。
「俺は・・・・・・何も見ていなかったというのか」
そのコクピットの中で一人呟く。カミーユはゼータツーを変形させて何処かへと向かった。それを見送りながら一人動かなくなったジ=オのコクピットに残ったのであった。
シーブック、セシリーとザビーネ、ドレルの戦いは熾烈だった。しかし次第にシーブック達の方が優勢になってきていた。
「ザビーネ、これで!」
シーブックはビームサーベルを大きく振り被ってきた。
「終わらせてやる!」
既にベルガ=ギロスの左腕はない。戦いの中で切り落とされていた。そのうえダメージが蓄積され動きも鈍くなっていた。それはドレルのベルガ=ダラスも同じであり二人の敗北は濃厚となっていたのだ。
しかしそれでも二人は戦っていた。ザビーネは振り被ったシーブックに対して問うてきた。
「一つ聞きたいことがある」
「何だ?」
「べラ様はそこではどうされている?」
「ベラじゃない。セシリーだ」
「ふ、そうだったな」
既にこの答えが全てを言い表していた。
「ベラ=ロナではなかったのだったな」
「そうだ。セシリーだ」
「わかった。ではセシリー=フェアチャイルド嬢を頼むぞ」
「セシリーはロンド=ベルで楽しくやっている」
「わかった」
ビームサーベルが振り下ろされる。致命傷は避けたが戦闘不能になった。ドレルもそれは同じで二人はそのまま捕虜となったのであった。
「これでコスモ貴族主義も終わりなのね」
「ああ」
シーブックはセシリーに応えた。
「もうそんなものは馬鹿馬鹿しくなったからな。君も」
「ええ、セシリーとして」
「俺の側にいて欲しいな」
「わかったわ」
その言葉にくすりと笑って応える。彼等の因果はここで終わった。
ジュドー達の戦いは続いていた。何時しか六対六の戦いになっていた。
「いい加減あんたもしぶといな!」
「しぶといのが俺のトレードマークなだよ!」
ヤザンはそうジュドーに返す。
「わかったなら覚悟しやがれ!」
「覚悟しないのが俺のポリシーなんだよ!」
「じゃあ無理にでも覚悟させてやるぜ!」
「ヤザン、仕掛けるよ」
ライラが彼に声をかけてきた。
「周りがやばくなってるしね。そろそろ坊ややお嬢ちゃん達との戦いは終わらせてね」
「ああ」
既にティターンズはかなり劣勢になっていた。やはりロンド=ベルの強さは圧倒的だということだった。モビルアーマーも戦艦もその数を大きく減らしジュピトリスでさえあちこちから火を噴いていた。
「わかったな、そろそろ決めるぜ」
「俺は坊やかよ」
「じゃあ何だっていうんだよ、ガキか?」
「同じ意味じゃねえか、おい」
「だから一緒なんだよ。運がよかったら死なねえから安心しやがれ!」
「それの何処が安心できるってんだよ!」
「やかましい!死にたくなかったらよけやがれ!」
滅茶苦茶な言葉を言って攻撃を仕掛けてきた。三機のハンブラビが蜘蛛の巣攻撃を仕掛け他の三人が遠くからビームで攻撃を浴びせる。その中にはガンダムチームがいた。
「おい、敵は周り全部だぜ!」
ビーチャが他のメンバーに声をかけてきた。
「後は派手にぶっ放していくか!」
「といってもそれしかないけれど」
イーノはその横で困った顔をしていた。
「囲まれてるし」
「それならそれでいいじゃない」
弱気な彼に対してエルは強気だった。
「やりがいがあるってやつよ」
「そういうことね」
それにルーが頷く。
「いっちょ派手にね」
「やるしかないね」
モンドは決めたくない覚悟を決めてきた。
「じゃあ」
「何処でもいいから撃ちまくるぜ!」
ジュドーはその皆に叫んだ。
「こうなったらよ!」
「了解!」
ガンダムチームも反撃に転じた。敵の一撃目をすばやくかわしてそれぞれありったけの攻撃を浴びせる。それでまずは囲みを抜けすぐにもう一撃を浴びせてきた。
「ヤザンさんよお!」
それぞれの相手に攻撃を浴びせる中ジュドーはヤザンに向かっていた。
「黒猫が大事なら上手くかわしな!」
ハイパービームサーベルを一閃させた。それでハンブラビを横薙ぎにかかった。ヤザンは何とかかわしたが胸を大きく切られた。こうなっては脱出するしかなかった。
「チィッ、こうなったら終わりかよ!」
「助かったんだから感謝しやがれ!」
「やかましい!御前にだけは負けたくなかったんだよ!」
彼は捕虜になってしまった。他の面々も同じである。ライラはルーに捕獲された脱出ポッドの中で一人呟くのだった。
「命があるだけでもいいかね」
「そうだな」
それにカクリコンが頷く。
「少なくともアメリアには会えるか」
彼等の処遇は決まっていないが少なくとも命は助かった。それだけでもまずは助かったのであった。
ファラはジュンコと、クロノクルはオデロと戦闘中だった。ファラの目は相変わらずだった。
「邪魔だね」
ジュンコを見て言う。
「あんたは」
「邪魔でも何でもいいわ」
そうジュンコは返す。
「どちらにしろウッソはやらせないわ」
その後ろではブロッホがトマーシュと、ルペがマーベットと、ピピニーデンがオリファーとそれぞれ戦っている。ジュンコもまたその中にいたのである。
「あんたはにはね」
「私はあの子に借りがあるんだよ」
血に濡れた目と声で言った。
「だからさ。その首を」
「それは妄執って言うんだよ」
ジュンコはそう彼女に告げてきた。
「その妄執、ここで」
「断ち切るっていうのかい?」
「そうさ、だから」
ブイダッシュガンダムを前に出してきた。
「これで。終わらせるわ!」
キャノンをかいくぐり攻撃をかわす。そのまま自身のビームライフルで攻撃を浴びせる。
巨大なキャノンを放った直後のザンネックにそれをかわす余裕はなかった。忽ちのうちに直撃を続けざまに浴び動きを止めた。ファラはまだ生きていたがそれでも最早戦闘は不可能だった。
「くっ、やってくれたね」
「少し頭を冷やすんだね」
ジュンコは彼女にそう告げた。
「今のあんたにはそれが一番さ」
そう言って彼女を捕虜にした。他のザンスカールの面々も既に降伏し後はウッソとカテジナだけとなっていた。
二人の戦いの後ろではジュピトリスが今にも沈もうとしていた。それを後ろに戦っていたのだ。
「ウッソ!これで!」
また攻撃を仕掛ける。しかしウッソはそれをかわす。
「まだ諦めないの!」
「諦めるも何も!」
カテジナに言い返す。
「カテジナさん!まだわからないんですか!」
彼は今戦場全体、いや人類全体を見て語っていた。
「この戦いは終わろうとしているんですよ!」
「それがどうかしたのかしら」
しかし彼女はそれを知ろうとはしない。
「私にとっては貴方さえ倒せればいいのよ」
「カテジナさん!」
「甘いことを言ってるとね」
カテジナの狂気が増してきた。
「死ぬっていうことよ!」
攻撃がさらに凄まじいものになっていく。ウッソはそれを超人的な勘と運動神経でかわしていく。カテジナの攻撃は確かに激しい。しかし彼女も人間であった。限界もあるのだ。
それは近付いていた。それ以上にゴトラタンがもたなかった。今の彼女の動きはそれだけのものがあった。そして今。それが遂にやって来たのだった。
急にゴトラタンの動きが鈍った。カテジナはそれに眉を顰めさせた。
「どういうこと、これは」
それは一瞬だった。しかしその一瞬の間にウッソは態勢を整えてしまっていた。
「これしかないのなら!」
彼は叫びながら突進する。
「僕は貴女を!ここで!」
「くっ!」
「カテジナさん、これで終わりです!」
光の翼を出してきた。
「貴女の悪夢は!終わるんです!」
そのまま突進しカテジナを貫いた。ゴトラタンはあちこちから炎を噴き出し動きを止めたのだった。
「あ・・・・・・こんな・・・・・・」
カテジナは火を噴くゴトラタンの中で呟いた。既に戦闘不能だった。
「私が・・・・・・こんな・・・・・・」
「脱出して下さい!」
ウッソは素早く前に来て声をかけてきた。
「もうそのモビルスーツは」
「脱出!?そんなことをしても」
しかし彼女はそれを聞こうとはしない。
「私は」
「何故最後まで話を聞かないんですか!」
「人の話なんか聞いてどうなるというの!」
カテジナは血走った目でそう叫ぶ。
「私はカテジナ=ルース!それ以外の何者でもないのよ!」
「その一生がここで終わってもですか!」
「負けたなら何が残るというの!」
彼女の言葉はかなり支離滅裂になっていた。
「それで何が」
「それは今から見つけることです!」
そう言うとⅤ2ガンダムも右手を前に伸ばしてきた。
「一体何を」
「貴女が自分で出られないというのなら」
ゴトラタンの中に手を入れてきた。破損箇所の中にだ。
「僕はこれで」
「ウッソ、まさか貴方は」
「せめて生きて下さい!」
彼は叫んだ。
「そうすれば見えなかったものも見えてくるようになります!」
カテジナを救い出した途端にゴトラタンが爆発した。その後ろでは遂にジュピトリスが轟沈した。しかし戦いはまだ続いていた。
エマとカツがレコア、サラと戦っていた。既にティターンズのパイロット達はその数をかなり減らしていたがこの二人はまだ健在だったのだ。
「レコア、もう終わりよ」
エマは目の前にいつレコアに対して言った。彼女のパラス=アテネもかなりのダメージを受けていた。
「それでも貴女はまだ」
「エマ大尉だったわね、今は」
「ええ」
「貴女はもうわかっている筈よ」
そう彼女に告げる。
「女には何が必要か」
「そう。だから貴女は」
「そうよ。だから私は」
傷だらけのパラス=アテネの中で言う。
「まだ戦う。まだ」
「そう。じゃあ終わらせてあげるわ」
エマはそれに応える形でビームサーベルを構えてきた。
「これでね。いいわね」
「そう簡単にやられるつもりはないわ」
レコアもビームサーベルを構えてきた。
「私だって」
「いいわね」
エマはそのレコアに対して問うた。
「これで終わりよ」
「そうかもね。けれど」
それも彼女は立っていた。そのまま前に出る。
「私も女だから。まだ!」
「女であること。それはいいわ」
エマはそれは認める。
「けれどそれに執着しては何も見えないのよ!」
レコアのビームサーベルを切り払った。返す刀で上から下に一閃させた。パラス=アテネはそのまま黄色い雷を放って動きを止めたのであった。
「ああ・・・・・・」
「爆発はしないわ」
エマはそうレコアに告げる。
「ゆっくり考えて、レコア」
「ゆっくりと」
「そうよ。何が見えるのかね」
「私には何が」
「それも考えるのよ」
またレコアに告げた。
「これから。いいわね」
「・・・・・・今はまだ無理ね」
エマの問いには少し苦笑いになった。
「残念だけれど」
「そう。じゃあ落ち着くといいわ」
エマは今度はこう述べてきた。
「時間はあるから」
レコアもまた戦いを終えた。そしてカツとサラの戦いも今クライマックスを迎えようとしていた。
素早い動きを見せるサラのボリノーク=サマーンだったがカツは遂に切り札を全て切ってきた。ファンネルを一斉に放ってきたのだ。
「これで駄目なら!」
カツはファンネルを放ちながら言う。
「どうなるかわからない!けれど!」
カツはそれでもあえて切った。そのうえで叫んでいた。
「サラ!君はまだ!」
そのままボリノーク=サマーンに攻撃を浴びせる。その動きはサラですら見切れず次々に攻撃を受けた。彼女も遂に戦うことができなくなったのだった。
「うう・・・・・・」
「サラ、もう終わりなんだ」
カツは動きを止めたサラにそう声をかける。
「この戦いは。だから」
「けれど私は」
しかし彼女は動かなくなったボリノーク=サマーンの中で言う。
「パプテマス様の為に」
「それもわかっている筈なんだ」
カツはまた彼女に言う。
「シロッコは君を」
「けれど私はそれでも」
「駄目だ、よく考えるんだ」
またサラに声をかける。
「君はもっと素晴らしい人達に会える。だから」
「だから?」
「生きるんだ。いいね」
「生きればいいのね」
カツのその言葉に顔を向けてきた。
「今の私は」
「そうさ、ティターンズはもう終わりだ」
その通りだった。既にジュピトリスはなくその艦艇やモビルスーツも次々に投降していた。戦いが終わりなのは誰の目にも明らかであった。
「だから君も」
「これからどうすればいいのかしら」
サラはその終わりゆく戦いの中で呟いた。
「私は」
「考えればいいと思うよ」
カツは項垂れるサラにそう述べた。
「前向きにね」
「前向きに」
「そうすればきっと何かが見えてくるから」
「わかったわ」
力のない言葉だがそれでも言った。
「それじゃあカツ」
「うん」
サラもモビルスーツから降りた。戦いはいよいよ最後の勝負だけとなった。
カミーユはシロッコの前にいた。二人は遂にまた対峙したのであった。
「シロッコ、諦めろ!」
カミーユは彼に対してこう叫んだ。
「御前の野望も何もかもここで終わりだ!もう御前には何もないんだ!」
「戯言を」
ティターンズもジュピトリスもなくなったが彼の表情は変わってはいなかった。
「私がいる限り終わらんさ。何時までもな」
「そしてまた誰かを犠牲にして上にあがろうというのか!」
「それの何が悪い」
傲然とカミーユに言い返す。
「それが人間なのだ。よ。全てを利用してね」
「貴様ァ!」
「よせ」
そこにハマーンのキュベレイがやって来た。
「ほう、ハマーン=カーンか」
シロッコはそのハマーンに顔を向けてきた。
「ロンド=ベルに加わったとは聞いていたがまさかここで会うとはな」
「シロッコ、御前は全てをわかっているつもりか」
「わかっているつもりではない」
ハマーンにも言葉を返す。
「私は全てをわかっているのだよ。何もかもな」
「違うな」
しかしハマーンは彼のその言葉を否定した。
「違うというのか」
「そうだ。人は人を利用するだけではない」
そう彼に告げる。
「誰かを信じて護ることもできる。御前はそれがわかってはいない」
「馬鹿なことを」
シロッコはハマーンの言葉も否定した。
「御前の言葉とは思えないな、ハマーン=カーン」
「人は変わるものだ」
ハマーンは冷笑するシロッコにそう返した。
「御前はそれもわかってはいないようだがな」
「戯言だ。何もかもな」
「戯言か」
「そうだ。人は愚かなものだ」
ここでは自分は入ってはいない。
「どうして変わるというのだ」
「確かに人は愚かだ」
それはハマーンも認める。
「だが愚かだからこそ何かを探し、見つけるもの」
「見つけるだと」
「そうして少しずつ先に進んでいくものだ。私が言うと不思議に思うだろうがな」
「愚かな話だ」
シロッコはそれも否定して冷笑した。
「人は誰かが導かなければならない。そしてそれは」
「少なくともそれは御前じゃない!」
カミーユはそうシロッコに叫んだ。
「御前は自分を高みに老いて他の人間を見下しているだけだ!それは導くとは言わないんだよ!」
「では何を言うのだ?」
シロッコはそのカミーユに問う。
「人を導くのは」
「確かに誰かがやらなくちゃいけない。しかしそれは」
彼はシロッコに応えて言う。
「皆だ!皆が変わらなくちゃいけないんだ!そして前に向かって歩くんだ!」
「戯言を」
シロッコはその言葉を一笑に伏してきた。
「そんなこと出来る筈がない。人とは愚かなものなのだからな」
「確かにそうさ」
シロッコのその主張は認める。
「人間は愚かだよ。けれど少しずつでも確実に前に進んでいる」
「前にだと」
「過ちを犯すこともある。けれど人間は変わっていっているんだ。変われるんだ」
「では人類全体が人類そのものを導けるというのか」
「そうだ!俺はそれがわかったんだ!」
最早それは彼にとっては確信であった。
「ニュータイプもコーディネイターも超能力者も聖戦士も皆!同じだってな!」
「面白い。では見せてもらおう」
シロッコは表情を変えずに彼に対して言った。
「それが本当なのか。君がどう変わったのかを見せてもらってな」
「じゃあ見ろ!」
カミーユはまた叫ぶ。
「俺の心!今!」
先に攻撃を仕掛けたのはシロッコであった。ジ=オよりも素早く威力のある攻撃を浴びせる。
しかしそれはカミーユによって全てかわされる。彼は巧みな動きでそれを左右にかわしていく。
「見えるというのか?私の攻撃が」
「見える!」
それに応えるかのように言った。
「シロッコ!これで!」
ゼーターツーをウェイブライダーに変形させてきた。
「終わりだあああっ!うおおおおおおおーーーーーーっ!」
変形させたそのウェイブライダーをオーラが包む。それはシロッコを怯えさせるのに充分だった。
「なっ、これは!」
「これが今の俺だ!それを受けてみろ!」
「くっ!」
必死に冷静さを保ちながらビームライフルを浴びせる。しかしそれは全てオーラの前に弾かれてしまう。今までになりニュータイプとしての力だった。
「まさか・・・・・・これだけの力を一人で」
「俺だけの力じゃない!」
カミーユはまた言う。
「皆の!人間の力だ!」
その声と共にシロッコに体当たりを仕掛けた。その速さ、力は彼とて防げるものではなかった。
ジ=オⅡの巨体が貫かれた。シロッコはコクピットの中で血を吐いた。
「うぐっ・・・・・・」
「勝負ありだな」
それを見届けてたハマーンがシロッコに告げてきた。
「シロッコ、貴様の負けだ」
「馬鹿な、この私が」
シロッコは血を吐きながらハマーンに顔を向けてきた。
「こんなところで」
「貴様はここで死ぬ運命だった」
ハマーンは冷徹な声で彼にまた告げた。
「己のみを見ていた貴様はな」
「それは御前も同じではなかったのか」
シロッコはハマーンに対して問うた。
「ハマーン=カーン、御前も」
「さっきのカミーユの言葉だ」
ハマーンはその問いにこう返してきた。
「人は変われる。だから私も」
「馬鹿な・・・・・・貴様が」
「誰もが変われるのだ。それを見なかった貴様は所詮そこまでだった、それだけのことだ」
「ここで・・・・・・私がここで」
「シロッコ、まだ何かするつもりか」
「うう・・・・・・」
カミーユの精神を道連れにしようとする。だがそれを果たすには今の彼の心はあまりにも大きかった。それによっても彼は自らの卑小さを感じずにいられなかった。
「世界は・・・・・・私のものにならぬか」
「誰のものでもないんだよ!世界は!」
カミーユは断末魔の彼にそう告げた。
「それがわからなかったのが貴様の全てだ!」
「ふふふ、そうか」
カミーユのその言葉に笑みを浮かべてきた。
「むっ!?」
「そうかもな。では私は今からそれを確かめに行く」
死を浮かべながらも微笑んでいた。
「果たしてそうなのかをな。それではな」
ジ=オⅡはカミーユから離れた。そのままゆっくりと宇宙に落ちていく。遠く離れた場所で爆発が起こった。パプテマス=シロッコも遂に倒れたのであった。
「これで・・・・・・終わりなんだ」
「見事だ、少年」
ハマーンが彼に告げてきた。
「その心、見せてもらった」
「ハマーン、あんたも変わったんだな」
「私とて変わるさ」
微かであるが笑みを浮かべたように見えた。
「人なのだからな」
「そうか。そうだよな」
ハマーンのその言葉に頷く。
「人間は誰だって変われるんだ」
「それを御前達に教えられた」
ハマーンはこうも言う。
「誰もがな。そうなれると」
頑なだったハマーンの心もまた同じだった。彼女はその心でカミーユに語り掛けていたのだ。
「しかしだ。残念だ」
ここですっとほんの一瞬だが寂しげな微笑みになった。
「残念?」
「御前の側にはもう誰かがいる。あの坊やにもな」
「ハマーン、あんたはひょっとして」
「ふふふ、気にするな」
笑ってその言葉を打ち消した。
「何でもない。いいな」
「ああ。じゃあ戻るか」
ハマーンに帰還を促した。
「これで」
「そうだな。これで戦いは終わりだ」
ハマーンもそれに頷く。
「それではな」
「帰ったらミネバに料理を作るのか?」
ふとこう尋ねてきた。
「やっぱり」
「駄目か?私が料理を作ると」
「いや、別に」
彼はシンとは違う。言わなくていいことを言ったりはしない。
「いいと思うさ。何か女の子らしくてな」
「女の子か」
「といってもあんたには似合わない言葉だろうけれど」
「別にいい」
意外にもその言葉を受け入れてきた。
「いいのか」
「少なくとも悪い気はしない」
こう述べる。
「私もな。女なのだから」
「そうか。ならいんだな」
「もっともだ」
ここで一言付け加えてきた。
「あの赤服の坊やのような言葉は許さないがな」
そんなことを言いながら二人は帰還する。これでティターンズとの長い戦いは完全に終わったのであった。ロンド=ベルは遂に長年の宿敵を倒したのであった。
ティターンズの面々は捕虜になった。すぐにティターンズそのものは解体され彼等は連邦軍に編入されることになった。
「何だ?戦争犯罪には問われないのか」
「俺達やガディ艦長は別にお咎めはないらしい」
月に一時収容されることになった彼等であったがその途中の船でカクリコンがジェリドにそう答えた。
「毒ガスにしろ責任者はジャマイカン=ダニンガン少佐だ。それに俺達はあの作戦に反対していた。それが大きかったようだ」
「あんな作戦好きになれる方がおかしいがな」
ヤザンが言ってきた。彼等にしても一般市民を狙う作戦は好ましいものではなかったのだ。
「まあそれが幸いしたってことか」
「そうだ。責任を問われるべき立場の人間は全て戦死した」
このことも大きかった。
「俺達はこのまま連邦軍に編入されて終わりだ」
「結構なことなのかね」
ライラはその言葉に今一つ懐疑的であった。
「命が助かってしかもお咎めなしっていうのは」
「その通りだと思うが」
ドゥカーが述べてきた。
「違うのか」
「俺達は別にそれでいい」
カクリコンはこう返す。
「しかしそうではない者もいるだろうな」
「俺は別にいいな」
ジェリドはそうであった。意外とサバサバしていた。
「少し考える時間が欲しいがな。俺自身について」
「軍を辞めるの?」
「いや」
マウアーの問いに首を横に振ってきた。
「そのつもりもない。ただな、あいつとの話でな」
カミーユとの話である。
「こっちも思うところができたのさ。それでな」
「そう」
「時間はありそうだしな。じっくり考えてみるさ」
「悪くはねえな、それも」
ヤザンはそれに頷いてきた。
「あんたはどうするんだ?」
カクリコンは彼にも問うてきた。
「これからは」
「俺はあの猫と一緒にやるさ」
ニヤリと笑って言葉を返してきた。
「暫く骨休めも悪くはねえ」
「そうか。では俺はアメリアと結婚しよう」
カクリコンはカクリコンでやりたいことがあった。
「今まで放っておいたままだったからな。せめてもの罪滅ぼしに」
「あんた達はどうするんだい?」
ライラはザビーネやドレルに問うた。ラムサスやダンケル、ブラン達は連邦軍への編入が決定していて基本的には彼女達と同じだったのだ。
「これからは」
「私も連邦軍にいさせてもらう」
「私もだ」
二人はこう答えてきた。
「そこで色々と見させてもらう」
「貴族主義以外のものもな」
「そうかい、悪くはないね」
ライラはそんな彼等の考えも認めた。
「考えながらね。見たらいいさ」
「うむ」
「何かと見たいものもあるしな」
「ファラはどうなるんだ?」
ヤザンが彼女の名前を出してきた。
「姿を見ねえが」
「恋人のところに行った」
クロノクルが答えた。
「これからは一人の女として生きるそうだ」
「そうか。案外似合いそうだな」
「私は地球に行ってみたい」
クロノクルの考えはこうだった。
「あちこちを旅してな。私もそうして考えたい」
「あんたもか」
ジェリドはそれを聞いて言った。
「皆同じだな」
「そりゃそうさ。誰だって今はそうさ」
ライラが彼に述べる。
「あれこれとね。自分自身にだって」
「彼女もそうね」
マウアーがふと口に誰かを出してきた。
「彼女も私達と同じで」
「ああ、あいつはどうなるんだ?」
ヤザンがそれに応えて言う。
「軍にも入らないみたいだけれどよ」
「故郷に帰ると言っている」
クロノクルが彼の言葉に答えた。
「もう二度と軍には戻らないそうだ」
「それもいいかもね」
ライラは何故かそのことに妙に安心していた。
「あの娘は本当は戦場に出るべきじゃなかったんだよ」
「そうなのか」
「そうさ。かえってね」
カテジナを評してこう言った。
「その方がね。だからそれから戻って」
「よかったってわけか」
「ああ。まあ元に戻ってよくはなるね」
「だといいがな」
「あたしは戦場にいる方がいいがね」
「御前はそうかも知れないな」
ヤザンがそれに頷く。
「俺もそうだがな」
「猫と一緒にか」
「家族もできたってのがな。嬉しくもあるがな」
ジェリドに応える。
「まあそれは戦場に出てからさ。今はのんびりさせてもらうか」
「そうだな。暫くはな」
「考える時間も必要ってわけだ」
彼等はとりあえずは急速に入った。カテジナは彼等とは別に故郷に戻っていた。
「お客様」
宇宙船の中にいると船員が彼女に声をかけてきた。
「はい」
「もうすぐですが宜しいですね」
「はい」
その言葉にこくりと頷く。
「それではこのまま」
「わかりました。それでは」
そのまま降りる準備に入る。その時ふと宇宙を見た。
「戦いが終われば。元に戻れるかしら」
戦いを終えた彼女はもう軍人ではなかった。その心は戦場にはなかった。元のカテジナ=ルースに戻ろうとしていたのであった。カテジナも戦場から去った。一つの戦いがまた終わったのであった。

第百五十三話完

2007・3・26  
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