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スーパーロボット大戦パーフェクト 第二次篇

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第百五十二話 ゼダンの門

  第百五十二話 ゼダンの門
ロンド=ベルがゼダンの門に迫る中シュウは誰も知らない場所で一人ノートパソコンを前にしていた。横にはチカがいるだけである。
「ねえねえ御主人様」
「何です、チカ」
シュウは彼女に顔を向けて応える。
「もうすぐロンド=ベルがティターンズと決戦ですけれど」
「大して興味はありませんね」
しかし彼の返事は素っ気無いものであった。
「興味ないんですか」
「既に勝負の結果は見えています」
これがシュウの言葉であった。
「ですから何も思うところはありませんね」
「そうなんですか」
「ええ。それよりも」
彼は言う。
「問題は幾つかあります」
「何ですか、それって」
「一つは異世界です」
彼は言う。
「異世界!?」
「この世界の異変が他の世界にも影響を与えていますので」
「というとバイストンウェルですか?」
「いえ、あそこは今は比較的安定しています」
そこではないと言う。
「むしろそれよりも」
「何処なんでしょうか」
「セフィーロです」
「セフィーロ!?」
「はい、そこです」
彼は答える。
「そこへの門が開こうとしています」
「何かよくわからないんですが」
「まずはそれです。そして」
「そして?」
「木星です」
彼が次に言うのが木星についてであった。
「木星に今彼等が集まっています」
「ティターンズがいなくなってですか」
「そうです。彼等とも最後の戦いの時が迫っていますね」
ここでふと楽しげに述べてきた。
「いよいよといった感じで。あとは」
「あとは?」
「感じませんか、チカ」
急に思わせぶりな言葉になった。
「私の分身である貴女もまた」
「私がですか」
チカはその言葉を聞いて何かと首を傾げさせた。
「別に何も」
「本当ですか?何か私達を常に見る存在を」
「存在・・・・・・そういえば」
そう言われてようやく気付いた。
「最近変にちくちくした感じがしたりしますね。それですかね」
「そうですね。それです」
シュウは言ってきた。
「それこそが私の言いたいことです。今私達を見ている何かが」
「何かが」
「動き出そうとしています」
そう述べる。
「まるで待っていたかのようにね」
「また変なことになってるんですかね。そういえば」
「はい、今もですね」
シュウはまた述べる。
「見られていますよ」
「消えましたね」
しかしそれはすぐに消えた。チカもそれを感じた。
「すぐにも。これは一体」
「セフィーロと木星」
シュウは深い声で言う。
「その二つが終わった時に全てがわかりますよ」
「全てがですか」
「はい、地球を司る存在がね」
シュウはそこで全てを探していた。その中において何かを見ていたのであった。だがそれが何かは彼にしかわからない。しかし確かに見ていたのであった。
ロンド=ベルはゼダンの門のすぐ前まで迫っていた。既に戦闘態勢に入っている。
「マシンを全て発進させろ」
「了解」
トーレスがブライトの言葉に応える。ブライトは艦長席に座り前を見据えている。
「もうすぐだ」
彼は言う。
「ティターンズとの決着もな。これで着く」
「そうですね」
それにサエグサが頷く。
「これで泣いても笑っても」
「それじゃあ笑っていたいものだな」
モニターにアムロが現われた。既にニューガンダムに乗り込んでいる。
「そうだな、ブライト」
「ああ、その通りだ」
ブライトは微笑んでそれに応える。
「私も笑っていたいが」
「俺も同じさ」
アムロも微笑んでみせてきた。
「敵もかなりの数で来るだろうがな」
「既にゼダンの門全域に展開しています」
サエグサがそれに答える。
「数は・・・・・・ええと」
「モビルスーツとかもビルアーマーだけで一万は優に超えていますね」
トーレスが言う。
「そうか。まだいるかもな」
アムロはそれを聞いても冷静であった。
「ティターンズの力を考えると」
「だがここで引いても何にもならない」
ブライトの言葉は強いものだった。
「行くぞ。総員出撃」
「了解、総員出撃」
それを受けてマシンに乗る者は皆出撃した。彼等の前に夥しい数のティターンズの大軍が展開していた。
「来た・・・・・・!」
まずカミーユが何かと感じた。
「シロッコ・・・・・・ジェリド。それにヤザンか」
「サラ、君もいるね」
カツもカミーユと同じものを感じていた。
「やっぱり僕達は」
「カテジナさん、前に会ったよりも」
ウッソも言う。
「どんどん憎しみのオーラが増していってる」
「いいか」
アムロが彼等に対して声をかける。
「心に飲み込まれるな。飲み込まれたらそれで終わりだ」
「はい」
ウッソがアムロの今の言葉に頷く。
「わかってます。だからこそ」
「そうか」
「カミーユ」
カミーユにはフォウが声をかける。
「来ているけれど」
「ああ、わかってるさ」
そのフォウの言葉に頷く。既に彼も気構えはできていた。
「シロッコ、ここで」
「ティターンズ、動きだしました」
ルリが総員に告げる。
「こちらに殺到しています」
「よし、メール=シュトローム作戦の最終段階だ」
ブライトがそれを受けて言った。
「総員攻撃用意。ゼダンの門を攻略し彼等を撃つ!」
「了解!」
こうしてロンド=ベルとティターンズの最後の戦いの幕が切って落とされた。双方共前に進み激突したのであった。
「おらおらぁっ!」
最初に攻撃を仕掛けたのはオルガだった。前に向けてありったけの火力をぶち込む。
「御前等、まとめて始末してやるぜ!」
「そのままドカドカ撃ってろ!」
クロトが彼を後ろにして叫ぶ。
「僕のやりやすいようにね!」
「御前のことなんか知るかよ!」
「何だと!」
早速喧嘩に入る。
「御前は御前で派手にやってろ!俺は俺でやらせてもらうぜ!」
「そう!じゃあ僕だってね!」
ミョッルニルを遮二無二振り回す。それで手当たり次第に目の前のモビルスーツを叩き潰していく。
「抹殺!滅殺!」
過激な言葉を連発する。しかしそこに曲げられたビームが迫る。
「なっ、シャニ!」
「死にたくなければよけろ」
シャニはそうクロトに言ってきた。そのビームで複数のティターンズのモビルスーツが薙ぎ払われ光の中に消えた。
「俺はそこまで責任は持てん」
「殺す気かよ!」
「殺す気はない」
一応はそう返す。
「だが。流れ弾までは知らない」
「ちっ、何て奴だよ」
自分のことは棚にあげて言う。
「まあいいさ。御前も後ろは気をつけるんだね!」
「いいか、三人共」
一応指揮官の劾が彼等に声をかける。
「乱戦になる。いざとなれば母艦に戻って補給を受けるんだ、いいな」
「一応聞きはしたぜ」
オルガの返事は何かわかったようなわかっていないような感じであった。
「けれどな。忘れてたら悪いな」
「その時は補給カプセル使うのよ」
ファが言ってきた。
「わかってるのかしら」
「忘れるんだよね、ついつい」
クロトの言葉もオルガと大して変わりはしない。
「熱血していて」
「俺は気にしていない」
「気にしていないじゃなくてよ」
エマも注意する。
「そんなのだとね。大怪我じゃ済まないわよ」
「といってもなあ」
しかし劾はここでぼやいてきた。
「この連中生命力は凄いからな」
「確かに」
ファもこの言葉には頷く。
「そうですね。三機のガンダムも」
「だから俺達に関しては心配いらない」
シャニが答える。
「何があっても生き残る。多分」
「そうなの」
「とりあえずここは大丈夫だ」
劾がエマ達に告げる。
「あんた達は他の場所を頼む。いいな」
「わかりました」
エマはその言葉に頷いた。
「それじゃあ」
「エマさん、右です」
ファが告げてきた。
「パラス=アテネです」
「来たわね」
エマはそのパラス=アテネを見て呟いた。
「レコア、貴女ね」
「ええ、久し振りね」
エマの予想は当たっていた。そこにいたのはレコアであった。彼女はまた戦場に姿を現わしたのだ。
「貴女、まだわからないのね」
「いえ、わかっているわ」
レコアはそうエマに告げる。
「わかっていても」
「馬鹿ね」
エマはその言葉を聞いて残念そうに呟いた。
「わかっていても離れられないなんて」
「私も・・・・・・女だから」
「女だから離れられない」
「そうよ。中尉。いえ、今は大尉だったかしら」
「階級はどうでもいいわ。けれどその女としての因果は」
「どうするの?」
レコアはエマに問う。エマはそれに返す。
「ここで終わりにしましょう。いいわね」
「終わりなのね」
「そうよ」
こくりと頷いてみせてきた。
「これでね」
「わかったわ。貴女が勝っても私が勝っても」
「因果は終わりよ」
二人は戦いをはじめた。その横ではカツとサラが死闘に入っていた。
「サラ、君は!」
カツはファンネルを放ちながら叫ぶ。
「まだわからないのか!」
「いえ、わかってるわ」
サラは彼の言葉に応えながらそのファンネルの攻撃を恐るべき速さで細かく動きながらかわす。
「パプテマス様は人類の未来のことを」
「それは嘘だ!」
カツはサラのその言葉を否定する。
「これからの人類を導くのはニュータイプの女性なんかじゃない!」
「では誰だというの!?」
「皆だ!」
それが彼の答えであった。
「皆が導くものなんだ!他には誰もいないんだよ!」
「嘘よ!」
「嘘じゃない!」
今度は真実だと言った。
「ニュータイプもコーディネイターも聖戦士もないんだ!皆同じなんだよ!」
「ニュータイプは違うわ!」
「一緒だ!」
カツはまた叫んだ。
「皆一緒なんだ!人間だから!」
「パプテマス様は違うわ!」
「あいつこそが人間なんだ!」
カツはシロッコをこう評してきた。
「人間だからそうして詭弁を言うんだ!あいつが考えているのは自分のことだけなんだ!」
「どうしてそんなことが言えるのよ、カツ」
「僕は君と違う場所にいるから」
そうサラに告げる。
「見えるんだ、君とは別のものが」
「その見えるもので何をするの?」
「君をあの男の呪縛から解き放ってみせる」
それがカツの答えであった。
「腕づくでもね!」
「なら私は!」
ビームサーベルを抜きガンダムを突進させるとサラもビームサーベルを抜いた。
「意地でもパプテマス様のところで!」
互いの心をビームサーベルに移してぶつからせる。光の火花が宇宙の闇に散る。
ヤザンはラムサスとダンケルを連れて戦場を駆けていた。そこにライラ達も来た。
「ヤザン、あまり前に出てもあれだよ」
「ああ、わかってるさ」
ヤザンは笑って彼女に応える。彼女はカクリコン、マウアーと一緒である。
「ところでジェリドは何処だ?」
「あの坊やのところさ」
「今度で決着かね」
「どうかね」
ヤザンのその言葉にはあえてはっきりと答えなかった。
「どちらにしろあたし達はこれで後がないからね」
「いいねえ、その状況が」
ヤザンはそれを楽しんでいた。
「興奮するってもんだぜ」
「余裕か?」
「いや、違うな」
そうカクリコンに答える。
「楽しんでるのさ。それだけだ」
「そうかい。じゃあその楽しみの相手が来たよ」
「ああ」
ヤザンもそれに頷く。見れば目の前にジュドー達が現われた。
「ヤザンさんよ、年貢の納め時ってやつだぜ!」
ジュドーが彼に声をかけてきた。
「ここでさっさと撃墜されて捕虜になっちまいな!」
「俺には捕虜は似合わねえな!」
だがヤザンはジュドーにそう返した。
「坊主、おめえこそ捕虜にしてやるぜ!」
「捕虜にしてどうするつもりだ!」
「その頭丸刈りにしてやる!」
いきなり訳のわからないことを言い出した。
「バリカンでな!覚悟しやがれ!」
「俺の髪は俺だけのもんだ!」
ジュドーはそれに反論する。
「あんたなんかに渡すかよ!」
「そんなもん知るかよ!俺が決めたんだ!」
「勝手に決めるなよ!」
「そうなりたくなかったら生き残るんだな!」
実に率直な言葉だった。
「わかったか!」
「丁度六機ね」
ルーはジュドーの横で冷静に敵の数を見ていた。
「ビーチャはバウンド=ドッグの一機に向かってくれる?」
「ああ、わかった」
ビーチャはその言葉に頷く。
「あたしがもう一機やるから」
ビーチャがカクリコン、ルーがライラに向かうことになった。
「モンドとイーノでハンブラビ二機」
「わかったよ」
「ウミヘビだけは出させないよ」
二人も答える。
「それでエルはガブスレイね」
「やっぱりね」
予想していた相手だったのねエルも驚きはしなかった。
「それじゃあ」
「ジュドーはそのままね」
「ああ、やってやるぜ」
ルーに応えて言う。
「プル、プルツー」
それから二人に通信を入れる。
「ミネバの方宜しくな」
「わかってるよ、ジュドー」
「グワダンは任せろ」
二人はそこにマシュマー達と共にいた。グワダン周辺もかなり激しい戦闘になっていた。
「くっ、まだ来るのか!」
マシュマーはかつてブルーコスモスのものだったモビルスーツを相手にしながら叫ぶ。
「何という数だ!」
「マシュマー様、また来ました!」
「うろたえるなゴットン!」
ズサに乗っているゴットンを一喝する。
「この程度の敵で!」
「そうだよ、こんな楽しい戦いをね!」
キャラはキャラでかなり問題があった。
「楽しまないと損だよ!あっははははははははは!」
「・・・・・・イリア」
ミネバはマシュマー達の戦いを見て不安な顔で側に控えるイリアに声をかけてきた。
「大丈夫なのかしら。あれで」
「御安心下さい」
だがイリアの返事は微動だにしないものであった。
「あれで腕は立ちますから」
「そう」
「左様です。彼等を信じられるといいです」
「わかったわ。それじゃあ」
とりあえずイリアの言葉を受けることにした。だがそのすぐ側ではウッソとカテジナ、クロノクルの死闘が展開されていた。
「さあウッソ、祈りは済ませたかしら」
カテジナが殺気をみなぎらせてウッソに襲い掛かる。
「ここで終わりにしてあげるわ!」
「僕だって!」
ウッソもそのカテジナに言い返す。
「カテジナさん、貴女を!」
「白いの、私もいるぞ!」
クロノクルもビームライフルを放つ。それでウッソを倒さんとする。
「御前との因縁、ここで!」
「クロノクルさん、貴方もですか!」
「私は御前を倒し!そして!」
さらに攻撃を続ける。続けながら前に出て来た。
「私は壁を越えるんだ!」
「貴方は何もわかっていないんですか!」
その激しい攻撃をかわしながらウッソは言う。
「この戦いには何も意味はないんです!」
「そんなことはどうでもいい!」
最早クロノクルにとってはそうであった。
「私は御前さえたおせればな!」
「くっ!」
ビームサーベルが迫る。しかしそこにオデロが来た。
クロノクルのビームサーベルを受け止める。オデロのⅤダッシュはリグ=コンティオの前に立ちはだかっていた。
「ウッソ、御前はカテジナさんにだけ集中しろ」
「オデロ」
「あんたの相手は俺がしてやる!ウッソには行かせないぜ!」
「どけ、御前には用はない!」
「俺にはあるんだよ!」
しかし彼は言う。
「だからだ・・・・・・うわっ!」
「さかしいのよ」
そこにカテジナの半ば無差別の攻撃が来た。オデロはそれをすんでのところで左にかわした。
「オデロ、大丈夫!?」
「ああ、何とかな」
そうウッソに答えるが声は動揺を隠せないものだった。
「カテジナさんは僕が相手をするよ」
「それで頼むぜ」
「うん。カテジナさん!」
「さあ、ウッソ!」
カテジナがウッソに狂気で血走った目を向けてきていた。
「ここで殺してあげるわ!来なさい!」
「貴女は何処まで!」
カテジナに対して叫ぶ。
「憎しみと狂気に心を支配されれば気が済むんですか!」
「何処までもよ!」
その返答自体が狂気に取り憑かれたものであった。
「私はもう戦えればいい!貴方を殺してね!」
「カテジナさん!」
「さあ来るのよ!その血で私を染めなさい!」
「その狂気、僕が・・・・・・!?」
そこに巨大な光の柱が来た。あやうくウッソを貫くところだった。
チリーーーーン・・・・・・
不気味な鈴の音が聞こえる。それは。
「かわしたのね。面白くなってきたわね」
「ファラさん、貴女もまた」
そこにたのはザンネックだった。ファラもまた狂気に支配されてそこにいた。
「戦いが」
「その首、もらうわ」
ウッソの問いに答えずにこう言ってきた。
「いいわね」
「貴女もわからないんですか」
「ウッソ、そっちには私が行くわ!」
「だから貴方はカテジナに専念して!」
ジュンコとマーベットがウッソに言ってきた。
「いいんですか!?」
「いいのよ」
「困った時は、よ」
二人はにこりと笑ってウッソに言うのだった。
「だからね、任せて」
「他にも色々と来ているけれどね」
「俺もいるぞ」
トマーシュも来ていた。
「トマーシュ、君も」
「オリファーさんもいる。俺達もここが正念場だからな」
「皆・・・・・・」
「ウッソ、話は後だ」
オリファーはウッソに言った。
「色々来ているからな」
見ればブロッホやルペ、ドゥカー達もいた。彼等もティターンズにいたのだ。
「俺達は連中の相手をする。だから御前は」
「わかりました」
オリファーの言葉に頷く。そのうえであらためてカテジナを見やる。
「貴女の因果はここで!」
「断ち切ってあげるわ!」
ウッソとカテジナはそれぞれ違うオーラを出しながら激突した。二人の戦いも今最後の舞台になろうとしていた。それは先の戦いの因果の終わりのはじまりでもあった。
ティターンズはここぞとばかりに戦力を出してきていた。その中にはサイコガンダムやラフレシアまであった。
「おいおい、幾ら何でもやり過ぎだろうがよ!」
ケーンが光子バズーカでサイコガンダムを撃ちながら叫ぶ。当然ながら一撃では倒れない。
「何だってこんなに化け物ばかりいるんだよ!」
「安心しろ、ケーン」
叫ぶケーンにタップが声をかける。
「何でだ?」
「デストロイガンダムもいる。奴等だけじゃない」
「余計悪いじゃねえか!」
思わずそう言い返した。
「何なんだよ、滅茶苦茶な状況じゃねえか!」
「しかしデストロイにサイコか」
ライトはそれを見てケーンとは違う危惧を見ていた。
「どうした、ライト」
「いや、フォウやステラ達がな」
彼女達への悪影響を懸念していたのだ。
「大丈夫かって思ってな」
「私は大丈夫よ」
フォウがそれに答えてきた。
「もう過去のことだから」
「そうか」
「俺達も大丈夫だぜ」
スティングがライトに述べる。
「あの時とは違うからな」
「そういうこと」
アウルも言う。
「ただ、ステラはな」
「いけるか?」
「うん」
二人の問いにこくりと頷いてきた。
「だって今はシンが側にいるから」
「王子様が側にいるから安心ってわけか」
「そういうことだな」
「じゃあライトさんよ」
スティングとアウルは今度は自分達からライトに声をかけてきた。
「どうした?」
「あんた達はそこを頼むな」
「俺達はデストロイをやる」
「待てよ」
それにケーンが突っ込みを入れてきた。
「おめえ等んとこデストロイ一機だよな」
「ああ」
「それが?」
「こっちはサイコ三機だぞ!全然違うじゃねえか!」
「洒落になってねえんじゃねえのか?」
タップも突っ込みを入れる。
「何だよ、この差は」
「一人でサイコ一機か。ちょっと辛いな」
「こっちはそれにラフレシアも二機だぜ」
「大して違わないんじゃないのか?」
「おっと、そうか」
「こっちは俺達で何とかする」
ロウがケーン達に言ってきた。
「御前等はとにかくそこのサイコ三機を頼むぞ」
「お互い辛いってわけだな」
ライトはそれで納得した。
「やれやれってところだな」
「しかしよ、サイコ三機となるとよ」
タップが言葉を入れる。
「洒落ならねえぜ」
「どうするんだよ、ライト」
「ここは各個撃破だ」
彼はすぐに作戦を決めてきた。
「一機ずつ俺達三人で仕留めるぞ」
「そうか。それじゃあよ」
「お決まりのフォーメーションで行きますか」
「頼むぜ、マギーちゃん」
いつもの調子で攻撃態勢に入る。
「一点集中だ!いっけええええええええええ!」
ケーンが中心になり光子バズーカを放つ。それで一気にまずは一機屠ったのであった。
彼等もステラ達も必死に戦っていた。シーブックとセシリーもザビーネ、ドレルと戦っていた。
「べラ、遂にここまで来たな」
ドレルがセシリーと刃を交えながら声をかけてきた。
「私と御前はやはり分かり合えないようだな」
「少なくとも今は」
セシリーは兄にそう答える。
「刃を交えているうちは」
「この戦いは何としても終わらせる」
ドレルはビームサーベルを振りながら言葉を続ける。
「そして御前を」
シーブックはシーブックでザビーネと戦っている。ザビーネは表情を消している。
「どういうつもりだ、ザビーネ=シャル」
そのザビーネに問う。
「御前は何を考えているのだ」
「貴族についてだ」
それがザビーネの返事であった。
「貴族!?」
「そうだ。コスモ貴族主義」
かつて彼が理想としていたものだ。
「それについてな。どうやらそれは」
「何だったと言うつもりだ?」
「幻想だ。所詮は人は同じだ」
「同じか」
「そうだ。同じくして貴く、そして卑しい」
彼は言う。
「そういうものだ。私も同じだ」
「それで御前はどうするつもりだ」
ビームサーベルを交えながら問う。
「その貴く卑しい人間の中で。御前はどうするんだ」
「さてな」
その問いへの答えはなかった。
「答えはまだ出ない。しかし」
「しかし!?」
「この戦いは生き延びる。何としてもな」
その為に彼は今戦っていた。彼等の戦いも続いていた。
二隻のドゴス=ギアも戦場にいた。ジャミトフとバスクがそれぞれ乗艦していた。
「怯むな!撃て!」
バスクが艦橋で指示を出す。
「敵の数、多くはない!よいな!」
「ふむ」
ジャミトフは隣で奮戦するバスクを見て声をあげた。
「バスクも。やっておるわ」
「閣下、敵が次々と来ております」
「当然だ」
ジャミトフを気遣う部下達に述べる。
「これは戦争なのだからな。そして今私は戦場にいるのだ」
「はあ」
「ならば当然のことだ。では言うことはない」
「それでは」
「引くな」
彼は言った。
「迫る敵は何があろうとも撃墜しろ。いいな」
「はっ」
「全艦艇を前に出せ」
そのうえで指示を下す。
「モビルスーツ及びモビルアーマーと密接な連携を取れ。火力で押し切れと伝えよ」
「了解!」
ジャミトフの言葉に従い全軍陣形を変えてきた。ティターンズはここで重厚な陣を組みロンド=ベルにあたってきたのであった。
その中には当然ながらサイコガンダム等のモビルアーマーも多数存在している。ニコルはその中の一機を両断して一旦離脱した。
「まさかこんなものまで用意しているなんて」
「おいおい、まだいるぜ」
ディアッカが彼に言う。
「モビルスーツもわんさか来るしよ。こりゃまた丁重なお出迎えだぜ!」
「面白い!ティターンズ共!」
イザークはその中でデュエルを駆り戦場を駆け巡る。
「この程度で俺を止められるものかあっ!」
「イザークあまり熱くなるな」
そんな彼をミゲルが制止する。
「むっ」
「戦いはまだ続くぞ。それに」
「それに?」
シホが彼に問う。
「援軍だ。敵のな」
「またか」
ジャックは目の前に現われたハイザックやバーザムを見て溜息をつく。
「次から次に」
「けれどこれは敵もそれだけ危機にあるってことですね」
フィリスはその中で比較的冷静であった。
「そうね」
エルフィがそれに同意して頷く。
「これだけの数を出してきたということは」
「そうだな。だからこそ正念場だ」
ハイネもそれに対して述べる。
「もっともそれをお構い無しに戦っているのもいるが」
「あいつね」
ルナマリアにはそれが誰かすぐにわかった。
「シンはね。それに」
「キラもか」
レイも言ってきた。
「この戦いではな。脇目も振らない」
「俺達もそうしないとまずいぜ、おい」
ディアッカが仲間達に述べる。
「また来てるしな」
「やるしかありませんね」
ニコルがそれに応える。
「ここが正念場ですから」
「ああ、そっちはそっちで頼む」
バルトフェルドが彼等に告げてきた。
「こっちも今手が空いていない。アスランに守ってもらっているような有様だからね」
「何処も大変ですね、本当に」
シホがそれを聞いて述べる。
「今は」
「とにかく生き残るんだ」
バルトフェルドの言葉だ。
「今は。いいな」
「了解」
「何はともあれ」
「そうです」
ラクスも彼等に告げる。
「ここで踏み止まればまた先が見えます。ですから」
「ここはでかいの狙うか?」
ディアッカはラクスの言葉を受けてふと呟いた。
「ドゴスギアなんてよ」
「やります?」
エルフィがそれに乗ってきた。
「敵の旗艦を」
「そういきたいけれど今は無理だよ」
ジャックの声は現実的なものであった。
「これだけ敵が前にいたら」
「まずは彼等です」
フィリスの言葉は現実的であった。
「彼等を何とかしてから」
「その間にえらいのが出て来たみたいだぞ」
「えらいのだと!?」
イザークがミゲルの言葉に顔を向けた。
「誰だ、一体」
「ジ=オだ」
「もういるぜ」
ディアッカがそれに突っ込みを入れる。
「ジェリド=メサだろ。今カミーユと戦ってるぜ」
「いや、違う」
だがミゲルはそれを否定する。
「ジュピトリスを見ろ」
前線に出てその巨体を誇示するジュピトリスを指し示してきた。
「出て来たぞ、別のジ=オがな」
「あれは」
ニコルが最初にそれに気付いた。彼が見たのはそれまでのジ=オよりもさらに重厚で大型のモビルスーツであった。
「ジ=オですが何か」
「改造されているな」
イザークがそれを見て言った。
「あの大きさは」
「そうだな。しかも何だありゃ」
ディアッカがその動きを見て声をあげる。
「速いぞ。しかも尋常じゃねえ」
「エターナルに向かっている」
レイがそれを見て言った。
「アスランは今手が一杯だ。このままでは」
「おい、レイ」
ディアッカが彼に声をかける。
「御前が行け。ここは俺達だけで何とかする」
「大丈夫か!?」
「援軍が来てくれたさ」
後ろからエメラルドグリーンのメビウスが迫ってきていた。
「有り難いことにな。だからさ」
「そうか」
「僕達は何とかいけます」
ニコルがまたレイに告げる。
「ですから」
「わかった。ではあのジ=オを止めてくる」
レイはすぐにシロッコのところに向かう。シロッコは今ジュピトリスを離れ自ら前線に出てきていた。
「さて、まずは小手調べだが」
「その相手は俺がさせてもらう」
レジェンドがジ=オⅡの前に出た。レイは彼に告げてきた。
「いいな」
「そうか、君が私の相手になるのだな」
「駄目というのか?」
「いや」
しかしシロッコはいつもの上から見下ろすような笑みでそれに応えた。
「レイ=ザ=バレル。君ならば丁度いい」
「俺の名前を知っているのか」
「ラウ=ル=クルーゼ・・・・・・だったな。かつては」
「ああ」
シロッコのその言葉に頷く。
「だが今はレイ=ザ=バレルだ」
「伝説の天使を駆り戦うか」
「貴方を止める為に今ここに来た」
「では見せてもらおう」
シロッコはまた彼に告げる。
「その力。そしてこの新たなジ=オの力を試させてもらおう」
「ならば・・・・・・」
レイはドラグーンを放ってきた。
「容赦はしない!貴方はカミーユが言っているように危険だからだ!」
「私が危険か。しかし」
シロッコはそれに応える形で言う。
「世界が私を必要としているからこそ私は存在する。そう言っておこう」
そう言ってレイとの戦いに入った。ドラグーンを避け逆に高出力のビームライフルを放つ。
レイもそれを常人離れした能力でかわす。戦いはここでも激しくなっていた。
その中でマサキ達はゼダン、及びルナツーに密かに接近していた。ティターンズは正面の主力に目を奪われ彼等には気付いていなかったのだ。
「来たね」
「ああ」
マサキはリューネに対して答えた。
「仕掛けるぜ、いいな」
彼等はゼダンにいる。ヤンロンも一緒だ。
「いいか、二人共」
ヤンロンは二人に告げてきた。
「サイフラッシュとサイコブラスター、そして僕のメギドフレイムでゼダンのミサイル砲座、及びビーム砲座を破壊する」
「予定通りね」
「そうだ。わかったな、マサキ」
「わかってるぜ。ここにはマサトも来ているしな」
「うん」
ゼオライマーもいた。彼もまたそこで作戦に参加していたのだ。
「けれど離れていてね」
「メイオウ攻撃か」
「君達を巻き込むわけにはいかないからね」
そうマサキに告げる。
「だから」
「わかってるぜ。それでヤンロン」
マサキは今度はヤンロンに言葉を告げてきた。
「何だ?」
「ルナツーの方はどうなんだ?」
「テュッティとミオが向かっている。もう二人もそろそろだ」
「そうか。ミオか」
そこに一抹の不安を感じていた。
「大丈夫かね、何か」
「大丈夫よ。ミオだってやる時はやるし」
「だけれどな」
それでも彼の不安は完全には消えない。
「それでも任せるしかないな、やっぱり」
「とりあえずあたし達はあたし達でね」
「内部の施設も破壊していく」
ヤンロンはまた告げる。
「それでいいな」
「わかったぜ」
「それじゃあ」
二人は攻撃に入る。今四つの光がゼダンから、二つの光がルナツーから起こったのであった。
「どうしたのだ!?」
バスクはその光を見て部下達に問うた。
「ゼダンとルナツーで何が起こっているか!」
「敵の奇襲です!」
そこに参謀の一人が慌てて駆け込んできた。
「ゼダンとルナツーが壊滅しました!」
「何だと!」
「サイバスター達の攻撃です!最早あの二つの基地は使い物になりません!」
「馬鹿な!それでは我々は継戦能力を失ったということか!」
「残念ながら」
「ぬうう」
「待て、バスク」
ここでジャミトフがバスクに声をかけてきた。
「閣下」
「あの二つ以外にもまだコロニーがある。安心しろ」
「ですが閣下」
「落ち着け。まずは目の前の敵を全て倒す。既に戦力は全て出している」
それが彼等にとって不幸中の幸いであった。既に出せるだけの戦力は全て戦場に出していたのである。
「それで奴等を叩く。いいな」
「わかりました」
バスクはそれに頷いた。だがこれによりティターンズが動揺したのは事実であった。そしてそれを見逃すロンド=ベルではなかった。
「小賢しい」
ハマーンは敵の中でファンネルを縦横に操っていた。その嵐の如き攻撃でティターンズのマシンを次々に屠っていく。
その中でジャマイカンの乗るアドラステアに気付いた。そこにファンネルを集中させてきた。
「散れ!俗物があっ!」
忽ちのうちにアドラステアを取り囲み全ての方角から攻撃を浴びせる。それで瞬く間に屠ったのであった。
「こ、こんなところで死ぬわけにはいかんのだ!」
ジャマイカンは沈みゆく船の艦橋で叫んでいた。既に炎に包まれ撃沈は時間の問題であった。
「ティターンズが地球圏を再び・・・・・・うおおっ!」
炎に包まれ消えていく。アドラステアは中央で真っ二つに折れ炎の中に消えたのであった。
「アドラステア撃沈です!」
「くっ、ダニンガン少佐は!」
「戦死されました!」
「おのれ・・・・・・」
バスクはその報告を受けて歯噛みした。
「ここに来て・・・・・・」
「敵のモビルドールが迫っています」
しかしそうしている時間もなかった。そこにまた報告が入って来たのだ。
「迎撃に向かわせろ」
すぐに指示を出す。
「今ここにいる全てのモビルスーツをだ。いいな!」
「は、はい!」
バスクの剣幕に押されて慌てて頷く。そうして今残っている全てのモビルスーツが送られたのであった。
ドゴスギアに向かっているのはヒイロ達であった。彼等は一直線に二隻のドゴスギアを目指していた。
「敵が来たわよ」
ヒルデが他の者に伝える。
「どうするの?」
「案ずることはない」
それにミリアルドが答える。
「ヒイロ」
彼に顔を向けて通信を入れてきた。
「ここは私達に任せろ。いいな」
「いいのだな、それで」
「ああ」
ノインも答える。
「私達だけで充分だ。だからだ」
「わかった」
「僕達も残ります」
「三人でいけるな」
カトルとトロワも残ることになった。デュオはそんな彼等に対してまた声をかける。
「おいおい、三機でやれってかよ」
「充分過ぎるな」
しかしウーヒェイがここで言った。
「二隻の戦艦が相手ではな」
「おい、ウーヒェイ」
「ウーヒェイの言う通りだ」
ヒイロも彼に賛成してきた。
「ならばここは」
「ちぇっ、わかったよ」
二人に言われてはデュオも頷くしかなかった。
「じゃあ行くぜ」
「お任せします」
「そのかわり後ろは任せろ」
「せめてトロワだけでも来てくれねえかな」
デュオは先に向かいながらもそうぼやく。
「あれだけのデカブツなんだからよお」
「デカブツでも何でも倒す方法は幾らでもある」
ウーヒェイがそう告げる。
「俺は右だ」
「わかったよ。じゃあ俺は左だ」
すぐに左右に散る。ヒイロは二人を左右に置き今攻撃に入った。
「ティターンズとの長い戦いもこれで終わりだ」
ヒイロはその中で言う。
「ゼロの見せてくれた未来に御前達の姿はない。だから」
翼を舞わせ突進する。その両手にあるライフルをかざしながら。
「目標補足」
二隻のドゴスギアの間で述べる。
「・・・・・・破壊する」
ローリングバスターライフルだった。それを放ち一気にダメージを与える。二隻の巨艦がその攻撃を受けまるで嵐の中の小船の様に乱れ飛ぶ。
「うおおおおっ!」
バスクはドゴスギアの艦橋で呻いていた。今彼は死の中に入ろうとしていた。
攻撃はそれで終わりではなかった。そこにデュオとウーヒェイが来る。
「これでよおっ!」
「終わりだっ!」
ビームシザースとドラゴンハングが唸る。ヒイロの攻撃で致命的なダメージを受けていた二隻にはこれで止めとなるものであった。実際にこれで彼等の命運は決まった。
「閣下、最早これ以上は!」
「そんな馬鹿なことがあるか!」
バスクは炎に包まれる艦橋の中で部下に対して吼えていた。
「このドゴスギアがそう簡単に沈むなど!」
「しかし!」
「認めぬ!ティターンズの敗北も・・・・・・うおおおおおおっ!」
彼は炎に包まれた。同時に彼の乗るドゴスギアも炎の中に消えたのであった。
「バスクが死んだか」
「はい」
ジャミトフのドゴスギアはまだ沈んではいなかった。しかし撃沈は時間の問題であるのは誰の目から見ても明らかなことであった。彼は自身の艦の艦橋からバスクの最期を見届けたのであった。
「見事な最期だった」
「はい、それで閣下」
部下達が彼に声をかける。
「我々もまた」
「船を降りたい者は行け」
ジャミトフは言った。
「時間がない。艦長、いいな」
「わかりました」
「それで閣下は」
「私は残る」
こう言っただけであった。
「いえ、それは」
「最早助からぬ。だからだ」
見ればその胸に破片を受けていた。そこから赤い血が滴り落ちていた。しかしそれでも毅然とした態度は変わってはいなかった。
「わかったな」
「閣下・・・・・・」
「そうだな・・・・・・シロッコに伝えよ」
部下にさらに述べた。
「後は任せるとな。わかったな」
「はっ」
「大方最初からこうするつもりだったのだろう」
皆が船から降りる中で呟く。
「ならばくれてやる。それで満足ならばな」
ジャミトフのドゴスギアも沈んだ。脱出した者の中に彼の姿はなかった。彼は今野望の果てにその身を消した。しかし戦いはまだ終わらなかった。
「ふむ」
シロッコはジャミトフの最後の伝言をレイとの戦闘の中で聞いていた。
「そうか。閣下が」
「どうされますか?」
「謹んでお受けしよう」
そう報告してきた若い将校に答えた。モニターを通しての話であった。
「それでは今からは」
「そうだ、私がティターンズの指導者だ」
ジャミトフとバスクを失い、そのジャミトフから遺訓を受けたのならば充分であった。彼は今ティターンズをその手中に収めたのであった。
「わかりました。それでは」
「今の状況ではいずれ負ける」
彼は最初の指示を下してきた。
「一旦コロニー群まで下がりそこで戦力を再編成する。いいな」
「はい。では」
「総員撤退だ」
彼は言った。
「そしてその場所で最後の戦いを挑む。わかったな」
「はっ」
「さて、これで我々は本当に後がなくなったが」
それでもその顔には余裕があった。
「ロンド=ベル。そう簡単には負けてやるわけにはいかぬ」
口元に自信に満ちた笑みを浮かべて述べた。そうしてレイを振り切りにかかった。
「引くのか」
「そうだ」
すぐに彼に答える。
「また機会をあらためてとしよう」
「貴方はまだ戦うつもりなのか」
「それがどうしたというのだ?」
レイの問いへの返事はいささかうそぶく感じであった。
「命ある限り戦いはある。違うか」
「貴方の戦いは違う」
そう彼自身に対して告げる。
「貴方のそれは己の欲望の為の戦いだ。俺の戦いとは」
「君の戦いなぞどうでもいい」
それははっきりと言い捨てた。
「君には私のことはわからんさ。私の崇高な理想がな」
「いや、貴方には理想はない」
レイは見抜いていた。
「貴方にあるのは野心、それだけだ」
「それの何処が悪いのかね」
シロッコはその言葉を突き付けられてもまだ平然としていた。
「野心を追い求めるのもまた人間なのだよ。それを覚えておくのだな」
「その先にあるのは」
「理想の世界だ」
こううそぶく。
「それを実現してみせよう。君達を倒した後でな」
そう言い残して姿を消した。ジ=オⅡの機動力で瞬く間に振り切ったのであった。
「パプテマス=シロッコ」
一人残ったレイはその名を呟く。
「野望の果てに何があるのか・・・・・・知るといい」
そう言い残すと彼も戦場を後にした。まずは集結し次の行動に移る為であった。
ゼダンとルナツーは戦闘不能に陥りジャミトフとバスクも死んだ。だがそれで終わりではなかったのであった。
「しぶといね、そりゃまた」
ジュドーはタリア達から話を聞いてそう述べた。
「コロニー群に入ってまで戦うなんてね」
「けれどこれで後がなくなったってわけだ」
ビルギットがジュドーに言った。
「あそこがティターンズの最後の軍事拠点だからな」
「そうね。あそこを陥落させれば」
アンナマリーもそれに続いて言う。
「ティターンズとの戦いは完全に終わりよ」
「なら迷うことはないな」
「ああ」
ロベルトの言葉にアポリーが頷く。
「コロニー群へ」
「進撃だ」
「宇宙の渦だな」
クワトロは作戦が決まった中でふと言った。
「宇宙の渦!?」
「何だそりゃ、大尉」
カミーユとジュドーは彼のその言葉に顔を向けてきた。
「あのコロニー群はアステロイドの渦の中心にある」
クワトロはそれに応えて述べた。
「渦巻き型のな。その中心に向かっての作戦だからだ」
「そうですか。そういえば」
「この作戦もメール=シュトローム作戦だしな」
「面白い因果だと思ってな」
「それならそれで話が早いです」
カミーユは今にも飛び出さんばかりであった。
「今すぐにでも」
「まあ待てカミーユ」
そんな彼をアムロが一旦制止する。
「まずは補給と応急的な修理だ」
彼は現実的な意見を述べてきた。
「それが済んでからだ。いいな」
「はい。じゃあ最後の戦いは」
「それが済んでからだ。それまでは落ち着くんだ、いいな」
「わかりました」
アムロに言われては従うしかない。カミーユも頷くことにした。
「ゼダンとルナツーはこのまま連邦軍が管轄することになりました」
マリューがそう告げる。
「修復が必要ですけれどね」
「それが済んだならばここはソロモンに匹敵する一大軍事基地になりますね」
「そうね」
マリューはナタルの言葉に答えた。
「娯楽施設なんかも揃えて。随分大きくなるわね」
「娯楽施設」
それを聞いたナタルはふと思った。
「となるとテーマパーク等もできるかも」
「そうね。そういうのも人間には必要だから」
「ということは」
ふとここでキースと二人でいることを想像した。しかしその瞬間に。
「おやおや」
「あらあら」
ガンダムチームやドラグナーの面々がナタルの周りに湧いてきた。
「なっ、何時の間に」
「ナタルさんも隅に置けないねえ」
「いや、全く以って」
「どうしてどうして」
ケーンとタップ、ライトの三人がまず言ってきた。
「キースさんとデートだなんて」
「しかもテーマパークで」
「中々可愛い感じではありますな」
「馬鹿な、どうしてわかったんだ」
「えっ、マジだったのかよ」
ナタルの驚きの言葉を聞いてケーンも驚いた。
「冗談だったのによ」
「うっ、いや」
今の失言で本人が窮地に追い込まれた。
「わ、私は別に」
顔を真っ赤にさせて取り繕いに走る。
「キース、いやバゥアー少佐とは別にだな」
「またこの人は」
「言っちゃったね」
エルとルーがそれを聞いて呆れる。
「何か余計に墓穴掘ってるよな」
「そうだね」
ビーチャとモンドはそれでも何もしない。ただ見ているだけだ。
「何もない。昨日だって」
「昨日!?」
イーノだけでなく他の面々もその言葉に顔を向ける。
「昨日何が!?」
「一体」
「マクロスで食事をしただけで別には」
「言ったね」
「記録ものだよな、今の」
タップとライトも驚きを隠せない。今のは確実に問題発言であった。
「そ、それはつまり」
顔がさらに顔が赤くなる。段々言葉が出なくなっていた。
「私はその、キスにしろ」
「まだなんですか?」
「まだだ」
カナンがすかさず入れてきた簡単な誘導尋問に引っ掛かる。
「それは結婚してからだからな」
「録音したか?」
「うん」
サイは勇の言葉に頷く。
「はっきりと」
「何をしている、君は」
「えっ、別に」
「何もないよな」
「そうか。いや」
狼狽しきっているからこそ気付かない。サイは勇にこっそりと渡す。
「しかしだ。私はその、キース・・・・・・いやバゥアー少佐とは別にだ」
「とりあえずキスはまだ、と」
「あの、ナタルさん」
「むっ」
カズイもメモしてトールがナタルに声をかける。
「全部わかってますけれど」
「君達何時の間にそんなことを」
「今ナタルさん言いましたから」
「なっ」
ミリアリアの突っ込みに自分で目を丸くさせる。
「何故だ、催眠術でも」
「ナタルさんってまさか」
「ああ、そうだな」
ジュドーがキラの言葉に頷く。
「滅茶苦茶純情だよな」
「そういえばそんな感じですけれど」
「もうおばさんなのによ」
そしてシンがまたしても言わなくていいことを口にする。
「御苦労なことだぜ」
「・・・・・・少年、死ね」
ナタルはすぐにそう言ってシンに鉄拳制裁を浴びせてきた。
「今ここでだ」
「あががががががが・・・・・・」
眉間に拳を浴びて倒れる。倒れてそのまま気を失う。
「とにかくだ、私は」
ナタルもまた言わなくていいことを口にする。
「何もやましいことはない、誓ってだ」
「あの、大尉」
たまりかねたキースが彼女に声をかける。
「もうこれ以上は」
「少佐」
「言わない方がいいですが」
「えっ」
言われてやっと気付く。また顔が真っ赤になる。
「そ、そうですね。その」
「わかりました。それじゃあ」
「そうです。あのな、御前等」
キースは照れ臭そうな顔でジュドー達に言う。
「別に隠すつもりもなかったが俺と大尉は」
「少佐、それ以上は」
「今ナタルさんが全部言いましたし」
またジュドーが突っ込みを入れる。
「別にもう」
「うう・・・・・・」
ナタルは顔を真っ赤にさせて困った顔をしている。何も言えなくなっていた。
「私は別に、その」
「わかったから。もうこれ以上からかわないでくれよ」
キースはナタルをちらりと見ながら皆に言う。
「さもないと大尉が。まあ」
「わかりましたよ。それじゃあ」
「頼むぞ」
キースはまた言う。
「何分な。まあ」
「すいません、少佐」
キースの側で恥ずかしそうに述べる。
「私のせいで」
「それはいいけれどな。それでも」
困った顔で言葉を続ける。
「もう皆知ってるからな。どうしたものやら」
「それはそうとしてさ」
ケーンがキースに問う。
「何だ?」
「姉さん女房だよな、キースさんとナタルさんって」
「悪いのか!?」
何故かまたナタルがまたムキになって言う。
「確かに私は男の人と付き合うのははじめてだが」
「行かず後家ってやつかよ・・・・・・あがっ!?」
またシンがぶっ飛ばされる。今度は蹴りであった。
「い、今のも効いたぜ・・・・・・」
「御前もう喋らない方がいいぞ」
「全くだ」
スティングとアウルが彼を助け起こしながら言う。それでも生きてはいたが。
「言わんでいいこと言って殴られてりゃ世話ないぞ」
「マゾっていうんならいいけれどな」
「そもそも女は結婚するまでは誰とも付き合わず」
かなり珍しい考えの持ち主であった。
「結婚してからも夫に尽くすのがだな。やはり」
「何気にキースさんラッキー?」
ルナマリアはその話を聞いてレイに問う。
「そんな人と一緒になって」
「そうだな」
レイもそれに同意して頷く。
「ナタルさんはかなり」
「そうよね。良妻賢母になれるわ」
「有り難う」
その言葉に素直に礼を述べるのがナタルであった。
「そう言ってもらえると」
「少佐」
ルナマリアは今度はキースに声をかけてきた。
「ん!?」
「ナタルさん絶対離さない方がいいですよ」
「あ、ああ」
少し戸惑いながら彼女の言葉に頷く。
「それはな。俺だって」
「少佐・・・・・・」
今度はナタルの目が潤む。
「すいません。私なんかを」
「いや、それはさ」
キースは照れ臭そうに彼女に返す。
「俺だって少佐だからな」
「私だから、ですか」
「まあ後はどっか別の場所でな」
皆がいる。だから無理だった。
「話そう。いいな」
「わかりました」
こうして彼等はまずは頷き合う。かなりいい雰囲気でありそのまま二人だけの世界に入るのであった。
皆はそんな二人をとりあえずはそっとした。しかし話は続く。
「何はともあれ全部わかって何よりだ」
「そうだな。それにしても」
皆ここで倒れているシンを見る。見れば見事に気を失っている。
「シンってあれなんだろ?」
ジュドーがアスランに問う。
「コーディネイターの中でもかなり凄いんだよな」
「ああ」
アスランはジュドーの問いに答える。
「それもかなりな」
「それを一撃でかよ」
「前にはボロ布みたいになってたな」
ディアッカが横から言う。
「ナタルさんの手で」
「あれは死んだと思ったな」
「ああ」
ナンガの言葉にラッセが頷く。
「生きているだけでも不思議だった」
ヒギンズも言う。見れば今の彼も大して変わりはない。死んでいるようにも見える。
「シンは素直じゃないんだよ」
ヒメの言葉は見事に的を得ていた。
「だからついそんなことを言って」
「確かに素直じゃないな」
勇がそれに同意して応える。
「何をやるにしろ」
「ステラちゃんみたいな彼女もいるのにね」
「シン、生きる」
ステラはシンに対して声をかける。しかしシンはまだ意識を回復されない。
「生きていれば助かる」
「ああああああ・・・・・・」
だがシンは意識を取り戻そうとはしない。とりあえず彼はそのままだった。
「とりあえず生きてるよな」
ケーンがスティングに問う。
「まだよ」
「ああ、息はある」
「何とかな」
アウルも彼に答える。
「じゃあいいや。とりあえずはな」
「またすぐに戦いだしな」
「ケーンにも是非頑張ってもらわないと」
タップとライトはかなり冷たい言葉こそ言うが二人で彼を助け起こしていた。
「ほら、こっちだ」
「デスティニーに行くぞ」
しかしシンは答えはしない。まだ気を失っている。
「じゃあ俺達も行くか」
「ああ」
イザークはミゲルの言葉に頷いた。
「今度こそティターンズを」
「よし」
ハイネは前を見て言った。
「今度で最後になるな」
「攻撃目標は宇宙の渦です」
ニコルの顔が何時になく険しい。
「そこにティターンズの残り全てが集結しています」
「いよいよですね」
シホも言う。
「それでティターンズとも決着が」
「そうだね。けれど」
「彼等も必死ですね」
ジャックとエルフィの顔は険しい。
「最後だからこそ」
「ですがゼダンは陥落しました」
フィリスはそう指摘する。
「そのうえ数はかなり減っています。それを考えると戦力自体は」
「少ないことは少ない、か」
アスランがそれに応える。
「しかしそれでも」
「相手は必死。そういうことね」
「はい」
そう述べたうえでフォウに答えた。
「その通りよ」
「しかも数はまだまだ向こうが上ですしね」
「それだけではないですよ」
カントが告げてきた。
「エースパイロットも皆健在ですし」
「あの連中がか」
ナッキィはそれを聞いて顔を暗くさせた。
「まだいるのか」
「しかも全員」
「やれやれってやつだな」
ジュドーはそれを聞いてぼやく。
「しかしそれでもな」
「行くしかないな。これがティターンズと最後の戦いだからな」
カミーユが最後に言う。ロンド=ベルはすぐにティターンズとの最後の戦いに向かう。ティターンズとの長い戦いも終わろうとしていたのだった。

第百五十二話完

2007・3・22
 
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