八条学園騒動記
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第二百七十四話 ミルクダブルデートその一
ミルクダブルデート
その日だ。蝉玉は二人でだった。校門に待っていた。もう一人はというと。
アンだった。その赤毛をおさげにして白い奇麗なドレスを着ている。そのアンを見てだ。
蝉玉は少し戸惑いながらだ。こう彼女に尋ねた。
「あの、アンって」
「どうしたの?」
「デートの時いつもそういう格好なの」
「そうだけれど」
「そうだけれどって。アンってドレス派だったの」
「ええ。私ドレス好きだから」
それでだとだ。アンはにこりと笑って蝉玉に答える。
「それにイスラエルってお堅い国でね」
「露出の多い服は駄目なのね」
「子供の頃からそう言われて教えられてて」
アンはこう話していく。
「それでこの格好なの」
「成程ね。それでなの」
「そう。どうかしら」
「悪くはないけれど」
蝉玉は地際に特に悪いと思わなかった。しかしだ。
自分の青いジーンズと白のパーカーのラフな格好を見てからだ。彼女に言ったのである。
「何か全然違うから」
「中国じゃラフなのね」
「ええ。特に今回牧場行くじゃない」
それも理由だった。今のラフな格好のだ。
「だからこの格好なんだけれど」
「牧場だったら馬に乗らない限りドレスでもいいと思うけれど」
「えっ、何で!?」
アンの今の言葉にはだ。蝉玉は驚きの声をあげた。
そしてだ。こう彼女に問い返したのである。
「牧場にドレスって。駄目でしょそれは」
「駄目じゃないでしょ。だって落ち着いた雰囲気の場所だから」
「それでドレスなの」
「私はいつもそうだけれど」
つまり牧場ではドレスを通しているというのだ。
「駄目かしら。それは」
「駄目っていうか。ちょっと」
「やっぱり似合わないとか?」
「場違いじゃない?牛とか羊とか相手にするんだし」
「それは働く場合でしょ?」
「いや、働かなくてもよ」
それでもだとだ。蝉玉は異文化を相手にする顔で話していく。
「舐められたりとか毛とかつくし」
「そういうことないし」
「イギリスの貴族じゃないんだから」
「イギリスっていうのは」
その国の名を聞いてだ。アンは少しむっとした顔になった。
そうしてだ。こう蝉玉に言い返したのである。
「ちょっと酷いんじゃないの?あんな国と一緒っていうのは」
「しかもイギリス貴族っていうのは?」
「私イギリスもイギリス人も大嫌いだから」
それでだというのだ。
「そうした趣味はないのよ」
「ええと。じゃあその服って何なの?」
「あれよ。ケベック王室」
連合の王室の一つである。ブルボン家の流れでありケベック独立の際に招かれ王位に就いたのだ。言うまでもなくルーツはエウロパである。
そのケベック王室、今は連合の名家の一つの感じだとだ。アンは話す。
「それなのだけれど」
「ケベックだったの」
「そう。あの王室ってこういうファッション多いじゃない」
「そういえばそうね」
言われるとだ。蝉玉も頷けた。
そうしてだ。こうアンに話した。
「あの王家ってイメージカラー白だしね」
「しかもいつもドレスでしょ」
「落ち着いた感じのね」
それがケベック王家の流儀なのだ。かつてのブルボン家の様に派手一辺倒ではないのだ。そうした落ち着いた雰囲気も備えていたのだ。
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