インフィニット・ストラトス~黒き守護者~
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敵だから……
「待たせたな」
寝ている簪を復帰した楯無に渡し、ディアンルグを纏ってアリーナに出た。
「……祐人、だよな?」
「ああ。俺が偽者に見えるのか?」
「……いや、雰囲気が違うと思って……」
どうしてそこは鋭いのに恋愛面で鈍いのか謎だ。すべての女性のために解剖とまではいかないが調べたほうがいいと思う。いや、マジでそう思う。
「何言っているのよ一夏。そんなわけないじゃない」
「相変わらず楽観的だな、凰。実際は一夏の言うとおりなんだが」
それに気付かないようではまだまだ、か。
「……ああ。いつもとは違う。お前に何があったんだ、風宮」
「さあな。ただ―――以前の俺に戻っただけだ」
篠ノ之の言葉に簡単に返す。
「以前の……風宮だと?」
「それはどういうことなの?」
「言ったとおりだ。それがどういうことなのか、戦ったらわかる」
ボーデヴィッヒ、デュノアの疑問にも素っ気なく返した。
『では、試合開始!』
スピーカーから織斑千冬の声が聞こえ、一夏、篠ノ之の順に出てくる。―――が、俺はそれを無視して陣形の中に飛び込む。
「そんなッ!」
「嘘でしょ!?」
あまりにも予想外だったのか、デュノアと凰が声を上げる。さらにそれを無視して砲戦パッケージ『パンツァー・カノニーア』を搭載したシュバルツェア・レーゲンを駆るボーデヴィッヒに荷電粒子砲《迅雷》を浴びせる。
「くっ……! 一撃で、使用不可だと!?」
「そういうことだ。死ね」
「―――させませんわ!」
上からレーザーが降り、それが曲がって俺の所飛んでくる―――が、
「そんな!?」
すべてをビット《キロプテル》で迎撃し、大型ビーム砲《メテオ》を即座に展開してオルコットがいる方向に撃つ。
「逃げろ、セシリア!」
一夏はそう言うが、
「安心しろ。間に合わない」
何かと何かがぶつかる音がし、しばらくするとボロボロの装甲を纏った状態のオルコットが落ちてきた。
「ボーデヴィッヒ、お前が二人目だ」
ビームライフル《迅光》でシュバルツェア・レーゲンのシールドエネルギーを空にすると同時に遠慮なく殴る。
「ラウラ!」
「アンタねぇ!!」
機能増幅パッケージ『崩山』を搭載した甲龍の衝撃砲《龍砲》から炎の弾丸が発射される―――が、
「無駄だ。このIPSの前ではな」
IPS。それは俺が誘拐されたクラスメイトたちを助けるために使ったAICの発展形だ。まぁ、正しくはドイツがこれを参考にAICを作ったんだが。正式名称IPS。
「何でアンタのISにそんな物が―――」
「お前には関係ない」
それが本音だった。そう、関係ない。
「邪魔だ。消えろ」
《メテオ》と《迅雷》で凰を襲い、流れ弾がデュノアの『ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ』にも被弾して装甲が吹き飛ぶ。
「これで四人だな」
「……何で……何でこんなことができるんだよ!」
一夏が俺に叫ぶ。―――が、
「当たり前だろ。こいつらは敵なんだから」
さも当然のように俺は答えた。
■■■
管制室。そこでは楯無、簪、虚、本音の生徒四人に千冬と真耶が祐人の無双ぶりを見ていた。
「………もう四人。ですが、あの大型ビーム砲はおそらく違法物かと」
「ああ。だが、あれを出したことにより現実を教えているのだろう」
真耶と千冬は冷静に分析しているが、内心では焦っていた。
『もう仮面が剥がれて来ているのね』
「……どういうことだ?」
一瞬驚くも、千冬は冷静に対処する。
『おそらく今まで溜めていた怨念。それが漏れているのよ』
「怨念……それは何のかしら?」
『人間への、かしら。今まで耐えていたけど、それも限界のようね』
シヴァはそう言うと真耶が驚く。
『先に言っておくけど、聞かない方がいいわよ。それほど彼は幼い時から辛いことを味わっているんだから。むしろ、今までグレずにそのままでいたほうが驚きよ』
「……ゆーゆー」
「祐人は……そんなに……」
シヴァはモニターに映っている惨状を一瞥してから言った。
『でも、まだこの程度なのね』
「この程度……だと……」
『ええ、この程度よ。むしろ私からすればあなたの弟がどうしてその程度のことで怒るのか疑問が生じるわ』
「貴様……」
シヴァと千冬の間で火花が散り、真耶が近くでオロオロする。
『それに、まだあまり被害が出てないじゃない』
「あの……織斑君と篠ノ之さん以外の全員のIS、ダメージレベルがDなんですけど……」
『だから、その程度じゃない』
ダメージレベルD。それはISを動かすには危険がある状態だ。だがシヴァはその程度だと言った。
「何が言いたい」
『少しは自分で考えたら? それに―――そんなに知りたいなら直接祐人に聞けばいいじゃない。まぁ、信頼なんてされていなかったようだけど』
「……………」
『まぁ、生徒のコントロールはちゃんとしておきなさいよ。各国がうるさいなら、黙らせておきなさい。戦争を起こしたくないのならね』
そう言ってシヴァは消えた。
「………」
彼女たちはただその虚空を見つめるだけだった。だからだろう、その残り二人が大変なことになっていることに気付かないのは。
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