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スーパーヒーロー戦記

作者:sibugaki
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第50話 強力タッグ、超獣をぶっ飛ばせ

 空には満天の星が輝き、天辺にはまん丸と満月が輝く。快晴の夜空の下、二人の魔導師が激しい戦いを繰り広げていた。
 なのはとヴィータの二人である。
 二人共バリアジャケットを纏いデバイスを手に激闘を繰り広げていた。

「これでも食らいやがれ!」

 ヴィータが複数の魔力球を放つ。なのははそれをかわし、回避した際に魔力弾をヴィータ目掛けて放つ。それを持っていたアイゼンで払い除ける。

「そんな程度ので私を倒せる訳ないだろうが!」
「だったら…これで!」

 レイジングハートを砲撃形態に変化させて収束砲を放つ。流石にそれを弾き返す事は出来ない、が避ける事も出来ず仕方なく防御結界を張り何とか耐える。
 が、その際に被っていた帽子が脱げてしまった。

「っこ野郎ぉぉぉぉぉ!」

 怒りを露にしたヴィータがアイゼンの姿を更に巨大な鉄槌に変える。そしてそれを勢い良くなのはに向けて叩き付ける。結界を張り耐えようとするもその結界をぶち抜きなのはを吹き飛ばす。

「きゃぁっ!」

 相等のダメージを受けたのか地面に叩きつけられ動けない。其処へヴィータが舞い降りる。

「う…ぐぅ…」
「これで…終わりだぁぁぁ!」

 トドメとばかりに動けないなのは目掛けて先ほどのアイゼンを叩き付ける。地面とサンドイッチ状態となり手足が痙攣し、やがて完全に動かなくなってしまった。




     ***




「あうぅ…また負けた…」
「へっへぇん、またあたしの勝ちぃ!」

 此処八神家にてゲームのコントローラーを握っていたのはなのはとヴィータであり、先ほどの戦いは勿論ゲームの画面である。

「いえぇい! お前案外ゲーム弱いなぁ」
「うぅ…ヴィータちゃん年上なんだから手加減してくれても良いじゃない!」
「甘えるんじゃねぇ。現実は甘いんだよちびっ子」

 散々勝ちまくったのかすっかり天狗になってるヴィータであった。
 グレンダイザーの出現からはや数日。今の所平和な日が続いている。その間も特に変わった事はなく皆思い思いの事をしている。

「ははっ、まぁゲームなんだから二人共仲良くしなきゃ」
「よぉし、それなら実際に勝負すっかぁ!?」
「……」

 ヴィータがアイゼンを取り出して挑発しだす。が、それに対しなのはは突如俯きだす。

「止めておけよ、ヴィータ」
「甲児」

 食事を終え歯を磨きながら甲児がヴィータに言う。

「何でだよ甲児?」
「こいつにも色々あんだよ。察してやれ」

 甲児の言葉にヴィータは応じたのかデバイスを降ろす。彼女等は知らなかったのだ。なのはが何故力を失ったのかを。

(やっぱトラウマになっちまうよな)

 甲児は微かではあるが震えているなのはを見た。彼女が魔法を使えなくなってしまった最もな理由、それは恐怖なのだ。
 他人を傷つけてしまう恐れから無意識の内に魔力を封じてしまいそのせいで殆どの能力が使えなくなってしまった。
 今では飛ぶ事すら出来ない。

「ま、折角の日曜日なんだ。此処は子供らしくスポーツでもして勝敗を決めたらどうだ?」

 甲児がそんな事を言い出す。今日は天下御免の日曜日である。即ち学校は皆休みとなっているのだ。
 その日、ヴィータは相変わらず家でなのはとじゃれあっており、ザフィーラは犬の姿となり不審者から警戒を怠らない。
 光太郎はツーリングに出ておりシャマルは自宅の掃除をしつつはやての身の回りの手伝いをしている。そしてシグナムは何故か例の書を持ち外出していた。
 理由を聞いたのだが「すぐ戻る」の一点張りで真相を明かしてはくれなかったので大して気にしてない。

「って、お前まだ激しい運動できなかったけ」
「えっと…ちょっとだけなら…」

 守護騎士達は知らないだろうがなのははつい半年前には重症を負い生死の境を彷徨っていたのだ。今では大分回復しては居るが決して完治した訳ではない。
 魔力を使って回復すれば早いのだが、生憎魔力も激減している状態では治癒力も落ちてる状態だ。無理出来る状態ではない。
 途端に暗い空気になってきたと察しなのはは咄嗟に話題を変える為に言葉を発した。

「そう言えば、あの時甲児さん達を助けてくれたあのロボットって、一体何だったんだろう?」
「さぁなぁ、いきなり出てきていきなり消えちまったしなぁ」
「……」

 甲児は無言のまま思い出していた。それは前回の戦闘が終わった後の事である。




     ***




 戦闘が終わった後、甲児は宇門博士の居る管制室に来ていた。其処で聞かされたのは思いもしない事であった。

「甲児君、今から言う事は決して嘘ではない。あのロボット…グレンダイザーは私が作ったロボットじゃないんだ」
「何ですって! それじゃあれはまさか…」
「そうだ、あれは地球から遠く離れた【フリード星】で作られたスーパーロボットなんだ。大介」

 宇門博士が呼ぶ。すると管制室に入ってきたのはパイロットスーツに身を包んだ大介であった。

「大介さん! まさかあんたは…」
「甲児君、出来れば巻き込みたくなかった。だが、こうなった以上手を貸して欲しい」
「どう言うことだよ?」
「今日襲ってきた連中はベガ星連合軍と言い、あらゆる星ぼしを侵略する悪魔の様な集団だ。そして、奴等は僕の母星であるフリード星を滅ぼした」

 大介が拳を硬く握り締めて言う。其処には憎しみの念が篭っていた。

「奴等の次の狙いはこの地球。だけど僕はそれを許さない! だけど僕一人じゃ奴等を殲滅できない。だから、かつてマジンガーZのパイロットを務めた君に協力を頼みたい…」
「良いぜ、付き合ってやるよ。ベガ星だかメガ盛りだか知らねぇが人の家に土足で入り込んで好き勝手なんかさせねぇよ!」

 甲児のその言葉は今の大介にはとても有り難い言葉でもあった。すると、大介が手を差し出す。

「僕は宇門大介。フリード星での名前はデューク・フリードと言う」
「兜甲児だ。改めて宜しく頼むぜ」

 二人がそう言い互いに硬い握手を交わした。今、此処に新たな力が加わった。それは戦力が低下していた現状ではとても有り難い事でもあったのだ。





     ***




 薄暗い空間の中、それらは居た。

「何時まで我等は燻っていれば良いんだ! ウルトラマンが居なくなった以上あの星を攻める絶好の機会であろうが!」

 机を叩き怒鳴るのは人ならざる姿をした者であった。
 かつてセブンを追い詰めたガッツ星人である。

「焦るなガッツよ。今はまだその時ではない。人間達もウルトラマン抜きで怪獣と渡り合える力を有していた。お前も見ただろう。ゼットンを倒したあの威力を…」

 腕を組みながらザラブ星人が言う。真ん中に映像が映し出される。それは、なのはが始めてスターライトブレイカーを撃った時の映像だ。その威力の前に宇宙恐竜ゼットンは粉砕されてしまったのだ。

「確かにあの力は強大だ。だが相手は所詮人間、それも子供。恐れる事はないのではないか?」
「侮るな。あの子供は以前ヤプールを退かせたと聞く。迂闊に手を出せばどうなるか…」

 ほかにも見慣れぬ異星人達が揃っていた。皆それぞれ議論している。そんな中、一人真ん中に鎮座し会話に参加しない者が居た。

「おいメフィラス! お前も何か意見を言え!」
「何をかな?」
「お前はこの中で唯一あの子供と接触したのだろう。何かあの子供に弱点はないのか?」

 皆が言葉を待つ。ウルトラマンに続いて危険なのはなのはである。今の所怪獣を仕留めたのは彼女だけなので異星人達は皆警戒しているのだ。

「ふむ、さて…聞いた様な聞かなかった様な…思い出せないなぁ」
「キサマ、しらばっくれるのも大概にしろ! 何故あの時あの子供を殺さなかった! そうすれば我等がこうも苦労する事はなかっただろうに!」
「やれやれ、これだから貴方達野蛮人は困る。私は悪魔で紳士的に話がしたかったのだ。殺しては元も子もない」
「ふん、貴様らしい上辺言葉だな!」

 異星人全員が睨みを利かせる。そんな中、メフィラスは涼しい顔をしながら映し出されている映像を見続けた。
 その目はまるで求めるような目でもあった。

【殺セ! ソノ小娘ヲ殺セ!】
「こ、この声は!」
「ヤプール!」

 一同が騒然となる。突如空間の歪みが現れ、其処から傷ついたヤプールが現れる。

【ソノ小娘ノ力ハ危険極マリナイ! スグニ殺セ! 抹殺シロ!】
「承知しました。ヤプール」

 ヤプールの言葉に誰もが従った。そんな中、メフィラスは一人席を立つ。

「何処に行く気だ、メフィラス」
「やはり私は群れるのは苦手な様だ。一人でやらせて貰う」
「ふん、勝手にしろ!」
「そうさせて貰う」

 そう言い、メフィラスは一人部屋を出て行った。メフィラスを抜き、異星人達は話を始める。

「とは言うものの…どうするべきか」
「あの子供の力は強力だ。下手に挑めば返り討ちに合う」
「事前に情報を集めておく必要があるな」

 皆がそれぞれ意見を出し合っていた。来るべき地球侵略の為に。そして、光の子を抹殺する為の。




     ***




 海鳴市の町を一人の青年が歩いていた。中性的な顔立ちで服装は薄いシャツにジーンズで所々擦り切れている。道行く人々の目線が彼に注がれる。が、彼自身余り気にしてない。寧ろ彼は今別の事を考えていた。

(兄さん……果たしてこの町に居るのだろうか……何故かこの町から只ならない気配を感じたんだけど)

 青年は誰かを探していた。彼にとっては兄なのであろう。一刻も早く見つけ出したい。その思いの元町にやってきたのだと思われる。
 その時、突如目の前の空がガラスの割れるように割れる。その奥には異様な異次元空間が存在した。そしてその空間の中から現れるように怪獣が現れだし町に降り立った。

「あれは超獣! ヤプールの奴、遂に本格的に行動を起こしたのか?」

 怪獣を見るなり一目散に逃げ惑う人々。その後ろで一角超獣バキシムが町を破壊し始める。これ以上町に被害は出せない。
 青年が怪獣目掛けて駆け出す。しかし、その時超獣の前に一体の巨大ロボットが降り立った。グレンダイザーであった。




     ***




「あれは超獣! まさか異次元人ヤプールまでもがこの星に!」

 グレンダイザーを操縦する大介は驚愕していた。目の前に居るのはかつて地球に出現した怪獣を超える怪獣である。果たしてグレンダイザーで対抗出来るだろうか?

「気をつけろ大介さん。こいつは並の怪獣じゃねぇ!」
「分かった。君も気をつけるんだ!」

 隣で飛んでいるTFOを見る。今の所自分の正体を知っているのは甲児だけである。それは、彼もまた巨大ロボットの操縦者であり、彼ならば心強い力になってくれると父宇門博士の説得があったからである。
 そして、地上では既に守護騎士達とライダーブラック達もやってきていた。

「あれがちびっ子の言ってた超獣って奴なのか?」
「うん、でも何で突然…」
「理由など必要あるまい。主に危害を加える者は誰であれ我等守護騎士が討つ!」

 臨戦態勢を取り守護騎士達が皆空へと舞い上がる。そんな中、ザフィーラはその場で狼の姿になりなのはの方を向いた。

「高町、俺の背中に乗れ」
「へ?」
「お前はまだ飛べないだろう。それに俺は余り魔力弾の類は得意ではないからな」
「は、はい!」

 頷き、ザフィーラの背中に跨る。懐かしい感覚だ。以前アルフの背中にも跨った事がある。あの時はバードス島から逃げ出すのに必死で何も考えてなかったが、いざ跨ってみると不思議な感覚であった。
 狼に跨るとはこう言う事なのだろうと実感させられる。

「行くぞ、振り落とされるなよ」
「が、頑張ります」

 幾ら何でも数十メートルの高さから落ちたら命はない。乗せているザフィーラも乗っているなのはも必死であった。そして、ライダーブラックはバトルホッパーに乗りビルを駆け上る。

「あの超獣に、果たして仮面ライダーの攻撃た通用するか? いや、今は詮索してる場合じゃない。これ以上町に被害を出さない為にも、此処で奴を倒さないと!」

 ビルを駆け上がりそれをジャンプ台代わりにして飛び上がりバキシムの前に現れる。バトルホッパーから飛翔し顔面にライダーキックを叩き込む。
 真っ赤に輝く両足がバキシムの眉間に叩きつけられた。だが、流石に2m弱の人間と60強の超獣では質量に違いがあるのか大して効いてない。

「硬い、これが超獣の体なのか…」
「だったらこれでぶっ潰してやる!」

 ヴィータがそう言い、アイゼンに弾丸に似た物を数発装填する。その先端の姿がロケットのような姿に変わる。

「ぶち抜け! ラケーテンハンマー!」

 全体的にロケットの様なフォルムのラケーテンハンマーをバキシムの横面に叩き込む。流石にそれは効いたのかバキシムが多少よろける。しかし思った程ダメージは入ってないようだ。

「がっ、かってぇ…」
「変われ! ヴィータ」

 続いてシグナムもまた弾丸を装填する。刀身に青い炎が纏われそれを居合いの要領で構えた後振るった。

「切り裂け! 紫電一閃!」

 シグナムの一閃がバキシムに当たる。こちらも切り裂かれた箇所がこすれあい火花こそ舞い散る物の決定打にならない。

「思ったより頑丈な奴だ。これではこちらは消耗戦になるな」
「皆、下がるんだ!」

 地響きを立てながらグレンダイザーが向ってきた。唸りを上げて鉄拳が放たれる。左右交互にバキシムの顔面に叩きつけられる。その後、バキシムの胴体目掛けて二本のスクリュークラッシャーパンチを放った。
 衝撃と共にバキシムが数十メートル先まで下がる。しかし雄叫びを挙げて威嚇のポーズをとる。やはり決定打になってない。
 と、バキシムの両手から夥しい数のミサイルが放たれた。

「うわっ!」

 そのミサイル全弾がグレンダイザーに命中する。爆煙が巻き上がり、グレンの姿を覆いつくしていく。

「大介さん! この野郎!」

 甲児のTFOがバキシム目掛けてミサイルを放つ。小さな爆発が起こるもバキシム自体全く効いた素振りがない。爆煙が止み、其処には片膝を付くグレンの姿があった。

「くっ、強い…」

 思わず大介が呟いた。強敵である。伊達に超獣を名乗っている訳ではないのが目の前のバキシムを見て分かる。

(あの超獣を倒すには…あの時の力を使うしか……でも…)

 ザフィーラの上に跨りながらなのはは思い出す。彼女の心を支配した赤い怒りの光。あの力ならば超獣を倒す事が出来る。だが、同時にそれは自身の制御を離れ破壊の化身となってしまう悪魔の力でもあった。
 あんな恐ろしい力、出来れば二度と使いたくない。だが、使わなければ海鳴市は壊滅してしまう。
 迷ってる時間はなかった。

「ザフィーラさん、あの超獣の頭上に飛んでください」
「正気か? 危険だぞ」
「分かってます。ですからお願いします」

 必死に頼むなのは。何か策があるのだろう。そう察したザフィーラは静かに頷く。

「分かった、だが無理はするな」
「うん!」

 バキシムの攻撃を掻い潜りザフィーラはその頭上に辿り着く。其処でなのははレイジングハートを構えた。

「レイジングハート、ディバインバスターを使うよ」
【危険過ぎます。今のマスターの体にその衝撃に耐えられる保障は無いのですよ】
「それでもやるしかないの! お願い、撃たせて」
【承諾できません。それは自殺行為です!】
「……」

 承諾を受けられなかったなのは。するとその忠告を無視してなのはは砲撃態勢に入る。

【マスター!】
「御免、レイジングハート……でも、もうこれ以上誰かが傷つくのを黙ってみてるなんて出来ない!」

 レイジングハートの先端に桜色の魔力が収束していく。

「お願い、効いて! ディバインバスター」

 収束した魔力砲が放たれる。その光はかつてのそれよりも数段太く力強い輝きを有していた。その光がバキシムに当たる。バキシムの巨体を軽々と持ち上げ、やがて地面に叩き付ける。体中に傷が出来上がりかなりのダメージを与えたことは確実でもあった。

「す、すげぇ…あれがあのちびっ子の力かよ」
「つくづく奴が敵じゃなくて良かったと思うな」

 正直な感想であった。あんな代物を受けよう物なら無事では済まない。そして、それを最も感じていたのはザフィーラであった。

「凄まじいな。こうして姿勢を維持するだけでも骨だった。流石だな、高町」
「……」
「どうした? 返事しろ」

 幾ら語りかけても返事が来ない。不審に思い視線を背中に乗っているなのはに向ける。其処になのはの姿は無かった。

「しまった!」

 余りの衝撃で気づかなかったのだろう。下を見るとなのはが地上に向けて落下しているのが見える。

「くっ!」

 咄嗟に人間形態に戻り落下するなのはを受け止める。だが、其処で始めて彼女の状態に気づいた。
 なのはの顔面は蒼白しており、胸に手を当てて苦しんでいる。

「高町、どうした?」
【反動が来たんです。今のマスターに収束砲に耐えられる魔力も身体も備わっておりません】
「なんだと!」

 無理が生じた結果であった。確かに威力は増した。が、その分自身に帰ってくるダメージも増した事になる。最悪1発撃っただけでも命の危機に障ることは明白でもあった。
 その時、再び雄叫びが木霊する。見ればバキシムが再び立ち上がったのだ。
 まだ死んでいなかった。しぶとい相手である。

「だ……だったら…もう、一度……」
「何を言ってるんだ。その体で撃てる筈がないだろう! 次こそ本当に死ぬぞ」
「で、でも…」

 尚もなのはは食い下がる。倒したのだ。しかし肝心の収束砲を撃った際の反動が大きすぎる。幼い少女でそれを受け止めるには余りにも酷な世界である。




     ***




 戦いは余りにも旗色の悪い状態であった。このままではあのロボットも空を飛びまわっている人間達も倒されてしまう。

「彼等を見殺しに出来ない! こうなったら…」

 青年は中指に嵌めている指輪を見る。そして、空手の型のような構えを取り、拳を突き出す。青年の体を閃光が包み込み、やがて青年を巨大な巨人へと姿を変える。

【これ以上お前達の好きにはさせないぞ!】

 変身した巨人はバキシムに向い構えた。




     ***




「あれは、ウルトラマン!」

 甲児は突如現れた巨人を見て驚愕した。半年前に現れた光の巨人とはまた違う姿の巨人であった。全身が真っ赤に燃えているのだ。

「甲児君、君は光の巨人を知っているのか?」
「あぁ、半年前に俺達はそのウルトラマン達と一緒に戦ったことがあるんだ」
「そうだったのか」

 大介は納得する。どうやらフリード星人である彼も光の巨人の事は知っているようだ。目の前で光の巨人とバキシムが戦いを始める。まるで空手の様な動きでバキシムに拳と蹴りを叩き込んでいく。先ほどの収束砲で傷ついていたのか思うように反撃が出来ない。

【見ているかヤプール! お前達の好きにはさせない。これがその証拠だ!】

 光の巨人は飛翔し真っ赤に燃える足をバキシムに叩き込んだ。その蹴りを受けたバキシムの胴体には巨大な風穴が開き、やがてその体は木っ端微塵に弾け飛んだ。

「やったぜぇ!」

 超獣を倒せたことに皆が喜ぶ。そんな中、巨人は大空へと飛び立ち姿が見えなくなっていった。戦いは終わった。被害はそれなりにあった物の幸い壊滅は免れた。
 戦いの終わったその地で皆は集まった。

「兜、あれは一体なんだ?」
「あれはウルトラマンって言って俺達人類を滅亡から救ってくれる光の巨人なのさ。前にも二人居たんだけどちょっと訳ありでな」
「へぇ、あいつウルトラマンって言うのか」

 皆がウルトラマンの話題で盛り上がっている時、ザフィーラがようやく合流してきた。そしてその手にはグッタリしたなのはが抱かれていた。

「なのは! 一体何があったんだよ?」
「先ほどの収束砲の反動だ。大分落ち着いてはいるが一刻も早くシャマルに見せた方が良いな」

 どうやら先ほどの収束砲の反動のせいなのだろう。此処までダメージを負ってしまうと言うのは相等な物だ。

「とにかく、早く戻るとしようぜ。なのはの事もそうだけど俺腹減っちまったよ」
「いかにも甲児らしい言い分だな。ま、あたし等もそうだけどさ」

 実は全員まだ昼食をとってなかったのだ。昼食を取ろうとした際に突然の襲撃である。一同は急ぎ八神家へと戻る事となり、大介だけは甲児以外に正体を明かすのはちょっと気まずい為一人宇宙科学研究所へと戻って行った。
 そんな一同の去り行く姿を先ほどの青年は見ていた。

「あの子…僕達に似た力を感じた。もしかしたらあの子なら兄さんの居場所を知ってるかもしれない。待っててね、レオ兄さん。きっと見つけ出すから」

 兄との再会を胸に、光の戦士「アストラ」はこの地に留まり戦う事を決意した。そして、この日を境に人類と超獣、そして宇宙人連合との激闘の幕が上がったのである。




     つづく 
 

 
後書き
次回予告

ウルトラマンの助力により辛くも怪獣を撃退に成功する一同。しかし、難関はまだ続く。
海鳴市で謎の女性失踪事件が勃発しだした。
その裏にはヤプールの放った超獣の影があったのである。

次回「対決、大蟻超獣」お楽しみに 
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