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スーパーヒーロー戦記

作者:sibugaki
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第48話 守護騎士

 ゴルゴムのアジト内に戻ってきたビルゲニアを出迎えたのは怒り顔の三神官達であった。

「おやおや、三人揃ってしかめっ面でのお出迎えとは…私何かやりましたかね?」
「キサマ、あそこまでブラックサンを追い詰めておきながら何故逃がしたのだ!」
「何故ですって? フフフ…ハハハハハッ!」

 答えを聞かれたと言うのにビルゲニアは突如笑い出した。それには不満に思ったのだろう三神官達が更に不機嫌そうな顔をする。

「何がおかしい?」
「いえいえ、私は自分自身の生まれを呪いたくなりましたよ。まさか次期創世王候補があんな程度だったなんて…同じ日蝕の時に生まれながら…もし私が後3万年早く生まれればきっと私は何の問題もなく創世王になれたと言うのに…己の悲運が恨めしい限りですよ」

 額に手を当てて嘆きを現すような仕草をするビルゲニア。三神官達の怒りは頂点に達していた。

「おのれ、言わせておけば!」

 遂にダロムが怒りに我慢できなくなったのか、ビルゲニアに向い精神波を放つ。しかしそれを同じように精神波で跳ね返す。跳ね返された精神波がダロムを苦しめる。

「うぐおぉぉぉ!」
「やれやれ、これ以上貴方達のしかめっ面を見ていると只でさえ不調なのが更に不調になってしまいます。しょうがないですからブラックサンを誘き出して抹殺してきますよ。丁度良い餌も見つけた訳だしな」

 不適に笑いながらビルゲニアは再び出陣していく。その姿を三神官達が見つめていた。

「やはり、あの男は危険だ…だが、奴がもしブラックサンを倒してしまえば…次期創世王は奴になってしまう」

 三神官達にとってそれは冗談ではない。下手したら自分達の命まで危うい事となってしまう。

「だが、今のブラックサンではとてもビルゲニアには勝てまい。奴の死は目に見えている」
「となれば、我等が生き残る方法は一つしかない…」
「うむ、バラオム! ビシュム! 一刻も早く目覚めさせるのだ! もう一人の世紀王。シャドームーンを!」

 三神官達は互いに頷き行動を開始した。急がなければならない。これには自分達の未来が掛かっているのだから。




     ***




「いたたたっ!」

 開始早々声を上げているのは南光太郎であった。今、此処は八神家であり戻ってきて早々ボロボロだったのをはやてに見つかり手当てして貰っていたのだ。

「全くもう! 博物館の前の階段ですっ転んで怪我するなんてホンマに光太郎兄ちゃんはドジっ子やなぁ」
「い、いやぁ…ちゃんと前は見たつもりだったんだけどね…前ばっかりに気を取られちゃってて足元を見てなかったよ」

 苦笑いを浮かべる光太郎。勿論それは嘘っぱちでもある。
 だが、はやてに真相を話す訳にはいかない。彼女を危険な目に合わせたくないのだ。
 総一郎が死に、両親も他界し、信彦も連れ去られた。今の光太郎にとって肉親と呼べる存在ははやてしか居ない。そして、彼女にとってもまた光太郎がたった一人の肉親同然でもあった。

「ほい、お仕舞い! あんまりムチャしたらあかんよぉ」
「有難う。はやてちゃん…」

 服を着ながら光太郎は部屋を後にする。家の庭に出るなり、光太郎は深く考え込んだ。

(あのビルゲニアとか言う敵…明らかに強い。今の俺の力では到底太刀打ち出来そうにない…どうすれば良いんだ!?)

 苦虫を噛み潰すような顔をしながら光太郎は悩んでいた。ゴルゴム打倒を目的としながらいきなり目の前に困難が現れてしまった。しかし、この困難を乗り越えない限り上には進めない。どうすれば良いのか。
 また、なのはも深く悩んでいた。光太郎とは違い二階のベランダで一人考え事をしていた。

「ねぇ、どうしてあの時私はセットアップが出来なかったの?」
【マスターが意図的に魔力供給をシャットダウンしたからです。魔力が無ければ私はサポートが出来ません】

 本来デバイスは魔力所有者のサポートを行うのが目的で作られている。従って魔力を使えない人間がデバイスを持ってても意味がない。それは今正しく、今のなのはに言える事であった。
 なのは自身意識しない中で魔力供給を止めてしまっていたのだ。
 その原因は只一つであった。

(あの時の赤い光…あれが私の中で目覚めてからだ。私の心が恐怖で一杯になってるのが分かる……怖い、魔法を使うのが……その魔法を使って誰かが傷つくって考えると、凄く怖い…)

 胸に手を当てながら自分の心の中を知った。今の自分の心の中は底知れぬ恐怖で一杯になっている。この恐怖が今重い足枷となり思う様に戦えないようにしてしまっていたのは明白だった。
 だが、どうする事も出来なかった。恐怖を振り払おうにもその根源は余りにも強大だったからだ。
 悩めば悩むほど重く沈んでしまう。二人揃って深く頭を下げる始末であった。

「ほぉい、お二人さん。そろそろご飯にしよやぁ!」

 下の階からはやての呼ぶ声が響いた。それを受けて二人は食卓に向う。だが、その二人共元気がなかった。すっかり沈み込んでいる。

「ふ、二人共何かあったんか? 何や偉いテンション低いなぁ…」
「え? な、何でもないよ。ね、なのはちゃん」
「う、うん…」

 言葉では否定するもののやはり元気がない。まるで顔に覇気が宿ってないのだ。それに仕切りに首を傾げるはやて。

「う~ん、二人共悩みの多い年頃ってのは分かるけどなぁ。私としては折角作った料理を仏頂面で食べて欲しくないんよ。だから悩みがあるなら私が相談に乗るよ」

 二人の負担を少しでも軽くしよう。そう言う思いがあったのだろう。はやてが二人に言う。だが、光太郎は答えられなかった。
 答えられる筈がない。とてもはやてが解決出来る問題じゃないのだ。その時、ふとなのはが口を開いた。

「はやてちゃん、はやてちゃんは怖いって思った事…ある?」
「ん? 何やいきなり。そりゃ私だって最初は一人は怖いって思った事もあったよ。でも要は慣れや慣れ。何時までも怖がってたら人生楽しくないやろ? 何時でもポジティブに行くのが私流なんや」
「そうなんだ…」
「なのはちゃん。何か怖い事でもあったん?」

 言葉は発さなかった。只、静かになのはは頷く。それも仕方ないとはやては思った。まだ自分もなのはも9歳。年的にはまだ子供の部類だ。怖い物があっても当然であろう。

「よっしゃ! ほなら今日はなのはちゃん私と一緒に寝よか。それなら怖い物もあらへんやろ?」
「え?」
「うん、決まりや! そうと決まったら早くご飯食べよ。折角のご飯が冷めてまうよ」
「そうだね。いただきます」

 何はともあれ三人は食事を開始した。何時戦いが起こるか分からない。今は腹に物を詰め込んでおく必要があった。
 食事を終え、体も洗い、一日の行いを全て終えた後、なのはははやての誘いを受けてはやての部屋で寝る事になった。
 はやての部屋に来るのはこれが始めてだった。部屋には本棚が設けられており沢山の本が並べられている。どれも分厚い本の小説ばかりだ。

「はやてちゃんって、小説が好きなんだね」
「まぁね。マンガも読むけど小説の方が長く読めるし」
「へ~…ん?」

 ふと、なのはは本棚の中に一つ奇妙な本が置かれてるのを見た。黒い表札に金色で十字の装飾が施された小奇麗な本が鎖で開かないようにされている。

「はやてちゃん、あれは?」
「う~ん、私もよぅ分からないんや。物心ついた頃にはあった奴やし」

 はやても分からない物らしい。それではそれを知る事は出来そうにない。

「それより早よ寝よぅや。夜更かしはお肌の敵やしな」
「あはは…うん」

 悩んでても仕方ない。今はとにかく寝る事にした。目を閉じて静かに体の力を抜く。
 やがて、静かに自分達の意識が体から抜けていく感覚に気づく。
 光太郎もまた一人寝ようとしていた。改造人間になったとは言え基本的生活に違いはない。物は食べるし寝る事も必要となる。
 だが、光太郎の脳裏には未だに晴れないモヤがあった。
 その為、光太郎が寝付くにはかなり時間を有したと言う。




     ***




 翌朝、はやては冷蔵庫を開ける。中は見事にすっからかんであった。

「ありゃりゃ。今まで一人やったから大して気にしてへんかったけんど。そろそろ買出しに行かなあかんなぁ…」

 一人冷蔵庫を見て呟くはやて。そうして一人玄関まで行く。

「はやてちゃん、何処かお出かけ?」
「うん、ちょいと食材の買出しに」
「だったら私も一緒に行くよ。一緒の方がはやてちゃんも楽でしょ?」
「うん、お願いするわ」

 二人は晴れ渡った空の下買出しに出かける事となった。二人が出かけた直後に、光太郎は目を覚ました。大きな欠伸をして背伸びをしながら起き上がる。

「も、もう朝か…結局大して眠れなかったな」

 どうやら夜通しで悩んでいたようだ。目元にはうっすらとだが隈が出来ている。部屋を見て回ったが気配を感じない。どうやらはやてとなのはは出かけて行ったようだ。

「やれやれ、俺一人で留守番かぁ…」

 どうも置いてけぼりを食らった気分であった。そのまま光太郎はソファーに座りテレビのリモコンのスイッチを押す。
 パッと電源が入りテレビに映像が入る。丁度画面にはその日のニュースが流れている。

【本日の速報です。昨夜某所にある博物館に展示されていた剣と盾の二品が何者かに盗まれる事件が発生しました。警察は懸命な捜査を行っておりますが以前として犯人の目処は立っておりません】

 其処には剣と盾の写真が映っていた。ビルゲニアが使っていたそれである。どうやらそれで話題は持ちきりとなっていた。
 無理もない。あの二品だけでも値段からしたら相等な値打ちになる筈だ。そんな代物が盗まれたのだから大騒ぎになって当たり前だ。

「ビルゲニアの剣と盾…あの硬い防御を抜いての攻撃が出来ない限り・・・俺に勝ち目はない。だが、一体どうすれば」

 ニュース画面を見ながら悩む光太郎。そんな中、別のニュースが流れた。

【次のニュースです。本日正午、海鳴公園内で剣を持った男性が暴れまわっているとの報告が入りました。男はまるで狂ったように暴れ回り『ブラックサンを出せ!』と仕切りに叫んでいました。警察当局は彼を博物館の展示品盗難の犯人と断定すると共に、付近の住民にブラックサンについての情報提供を求める方針だそうです】
「なっ!」

 突如光太郎は立ち上がった。海鳴公園と言えばすぐ近くだ。そしてあの剣は文字通りビルゲニアの持っていた剣であった。
 更に、ニュース映像の中に男性の他に二人の少女が映っていた。

「なのはちゃん! それにはやてちゃんも!」

 男性に襲われてるのは間違いなくなのはとはやてであった。剣を振り回す男相手に必死に逃げている。このままでは二人が危ない。

「くっ!」

 すぐさま家を飛び出し現場へと急行した。これが例え罠だと分かっていても行かなければならない。
 彼女を見殺しには出来ないのだ。




     ***




 海鳴市公園。其処はこの時間帯なら本来子供が笑顔ではしゃぎ回りその親が笑顔で情報交換を楽しむ場でもある。だが、今のその公園には誰も居なかった。居るのは剣を持って狂ったように暴れている男と二人の少女であった。その内の一人が男に捕まっていた。

「こらっ! なのはちゃんを離してや! 私達が何したって言うんや!?」
「ブラックサン! ブラックサンを出せ! でないとこの娘を殺すぞ!」

 なのはを抱えながら男がやたらめったらに剣を振り回している。その近くではやてが必死に叫ぶ。だが、男の耳には届いてないのか全く気にしてない。

「は、はやてちゃん! 早く逃げて」
「嫌やっ! 友達を見捨てて逃げられへんよ!」
「ウオォォォォ! 早く出て来い! ブラックサン!」

先ほど以上に激しく暴れまわる男。もう止めようがなかった。

「待て!」

 其処へようやく到着した光太郎。その光太郎を睨む男。凄まじい形相であった。目が血走り、歯を剥き出しにして光太郎を睨んでいる。人間の目ではなかった。

「何て目だ。人間の目じゃない!」
「光太郎兄ちゃん!」

 はやての声がする。どうやら彼女は無事だったようだ。

「はやてちゃん、大丈夫かい?」
「私の事は良いからなのはちゃんを助けてぇな!」
「分かった!」

 頷き、男に向い立つ光太郎。どうやら男はあの持っている剣で操られているようだ。

「うおぉぉぉぉ! 死ねぇっ! ブラックサン」
「いい加減その人から離れろ、ビルゲニア!」

 叫び、男の剣を持っている手に蹴りを当てる。衝撃の余り男は剣を手放してしまった。宙を放物線を描きながら剣が地面に突き刺さる。すると男もまた糸の切れた人形の様にその場に倒れこんでしまった。

「なのはちゃん、無事かい?」
「は、はい…光太郎さん、あの剣は…」

 なのはの言葉に光太郎は静かに頷く。すると、剣から突如炎が湧き上がりそして、ビルゲニアが姿を現した。

「ビルゲニア! またキサマか」
「南光太郎。今日此処でキサマには死んで貰う。そしてキサマの中にあるキングストーンは私が貰う」
「何?」
「キングストーンは次期創世王の証。キサマには過ぎた代物だ。だから私が有効に使わせて貰おう」

 剣を構えてビルゲニアが不適に笑う。それに対し光太郎は構えた。

「だとしたら貴様等悪魔達にこれは渡さない。渡す訳にはいかない!」
「い、一体何の話をしとるんや? ビルゲニア? キングストーン? 訳分からんよ」
「ふん、ならば教えてやろう。この男、南光太郎についてを…」
「止せ! ビルゲニア」

 光太郎が叫ぶも時既に遅し、ビルゲニアが語りだした。

「この男、南光太郎は既に人間じゃない。我等ゴルゴムが次期創世王にする為に改造した言わば『改造人間』よ!」
「か、改造人間!!」
「くっ……」

 光太郎の顔が重く沈んだ。出来ればはやてに知られたくない。そう思っていたからだ。だが、知られてしまったからには仕方ない。
 意を決し光太郎は変身の構えを取った。

「変……身…」

 弱弱しく叫ぶ。その体から閃光が放たれ。光太郎の姿が黒き仮面の戦士へと変わっていく。

「こ、光太郎兄ちゃんが…バッタの化け物になってもうた!」
「現れたな、仮面ライダーBLACK!」
「ビルゲニア…お前が人々を苦しめるなら、俺は戦う! 人間の自由と平和を為に!」
「大層な自信だな。そう言うのは俺に勝ってから言え!」
「ならば今勝たせて貰う!」

 その言葉を皮切りにライダーブラックと剣聖ビルゲニアの戦いが始まった。やはりビルゲニアの力は圧倒的であった。
 華麗な剣捌きに加えライダーブラックの攻撃を物ともしない盾。その二つの武器の前にライダーブラックは有効打が打てず苦しい戦いをなっていた。

「どうしたブラックサン! それでも世紀王なのか? それで次期創世王になろうと言うのか? 笑わせる!」
「俺は、俺は世紀王になったつもりなんてない! それに、次期創世王になんてなりたくもない! 俺は人間で沢山だ!」
「ならばそのキングストーンは俺が貰う! 死ねっ!」

 盾を前に突き出しライダーブラックを吹き飛ばす。起き上がろうとした所にビルゲニアが足を乗せて身動きを取れないようにする。

「くっ…」
「終わりだ! 死ねぇっ! 仮面ライダーBLACK!」

 ビルゲニアの剣の切っ先がライダーブラックの心臓目掛けて突き進んでいく。だが、その直後背後に何かが当たる感触を感じた。

「ん?」
「こらっ、光太郎兄ちゃんを元に戻せ! この白顔!」

 見ると、其処にははやてが石を掴んで必死に投げている。それがビルゲニアの体に当たっているのだ。

「キサマ…人間の分際で私の美しい体を汚すとは…」
「ま、待て! 彼女は関係ない…」
「フッ、ブラックサン。キサマを殺すのは後回しだ。まずはあの小娘から血祭りにあげてやる!」

 ビルゲニアの凶刃がはやて目掛けて飛び込んできた。車椅子状態の彼女では回避など出来ない。只ゆっくりとその剣が自分を切り裂くのを待つしか出来なかった。

「はやてちゃん!」

 咄嗟になのはがはやてを抱えて飛びのく。ビルゲニアが切ったのは車椅子だけであった。その車椅子が縦一文字に真っ二つにされる。
 獲物を仕留めそこなったビルゲニアが舌打ち混じりに二人を見る。

「余計な事を…そんなに死にたいのなら二人纏めて殺してやる!」
「や、止めろビルゲニア! お前の相手は俺だろう! 俺と戦えぇ!」
「案ずるなブラックサン。こいつらを血祭りに挙げた後、キサマをゆっくりと料理してやる!」

 まるでライダーブラックの反応を楽しむかの様に言い放った後、無情にも二人目掛けて剣を振り下ろす。

「止めろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 光太郎が叫ぶ。助けに行こうにも今のライダーブラックでは間に合わない。彼の脳裏に真っ二つにされて絶命する二人の少女の姿が映し出される。
 そして、その光景は今切られようとしているなのはも同じであった。
 なのはは動けなかった。今正に自身に降り掛かろうとしている死の恐怖に体が硬直していたのだ。

(死ぬ…死ぬの?…はやてちゃんを守れないまま…私死んじゃうの?)

 なのはの脳裏にその考えが浮かんだ。本当に怖いのは何か。それは他人が傷つく事、そして他人が死ぬ事だ。それ程なのはにとって怖い事はない。死にたくない。死なせたくない。その思いが強く心の中で芽生えた。

(嫌だ! 嫌だ嫌だ嫌だ! 何も出来ないまま死ぬなんて…絶対に嫌だ! 守りたい…大切な友達を……だから、もう一度…もう一度私に力を! 誰かを守れる力を!!!)

 強く願った。力を持つ事が怖い。とてつもなく怖い。だが、力を恐れて誰かを守れない事の方がよっぽど怖い。ならば、それならば力を求めよう。誰かを守る為に。大切な人を守り抜く為に今一度力が欲しい。
 そう願った時、レイジングハートが突如光を放つ。その光は彼女の体を包み込み、やがて白い戦闘衣服を纏わせ、その手には一本の杖が握られていた。
 その杖でビルゲニアの剣を受け止める。

「な、何!?」
「なのはちゃん!」
「あ……出来た…また、私に力を貸してくれるの?」
【貴方の恐怖を打ち払ったのは、貴方のその優しさと、そして勇気です。恐怖を恐れない勇気が再び貴方に力を与えてくれたんです】

 淡々とレイジングハートが語る。恐怖を振り払ったもの。それはなのはの勇気であった。力を恐れず、誰かを守る為に力を求める。その強い勇気が再び彼女に戦う力を与えてくれたのだ。

「はやてちゃん、私の後ろに居てね!」
「う、うん!」
「おのれ生意気な! たかが変身しただけで俺に勝ったと思うなよ!」

 そう言うなり一旦距離を開ける。剣では届かない距離であった。だが、ビルゲニアには攻撃する手段はあった。

「吹き飛べ! ビルセイバー・ダークストーム!」

 それはビルゲニアがライダーブラックを倒した武器の一つであった。剣を振り回し猛烈なエネルギーを纏った突風を放ったのだ。

「レイジングハート!」
【プロテクション】

 なのはが手を翳し、防御結界を張る。二人を包み込んだ防御結界の上からダークストームは降り掛かってくる。凄まじい衝撃がなのはに伝わってきた。
 確かに魔法は戻った。だが完全にではない。今のなのはの魔力は半年前の時と比べるとおよそ半分にも至っていないのだ。

「ぐっ…うぅ…」

 なのはの顔に苦悶の表情が浮かび上がる。魔力が低いだけでなく、彼女はまだ病み上がりの身である。無理が出来ない体なのだ。

「フハハハ、何時まで保つかな?」

 不適にビルゲニアが笑いながら、更にパワーを増幅させる。先ほど以上の力が襲い掛かってきた。
 張っていた結界に徐々に亀裂が入りだした。これ以上は限界である。

「お願い…保って! ぐっ…」

 突如、なのはの膝が折れた。ガクリと膝が崩れ落ち杖を持っていた手が地面につく。これ以上は彼女自身も限界であった。

「なのはちゃん。まだ、あの時の傷が…」

 それは、今からおよそ半年前のミケーネ戦闘獣軍団の襲撃の際であった。なのはははやてを庇った際に重症を負ってしまったのだ。その傷がまだ残っていたのだ。このままでは結界が破れる前に彼女の体がもたない。

(なのはちゃんが死んでまう…友達が死んでまう…そんなの嫌や! 誰か…誰か助けて! なのはちゃんを…光太郎兄ちゃんを…助けて!!)

 はやては強く祈った。大切な人を助けたい。その強い願いを。
 突如であった。ビルゲニアとなのは達の間に割って入るかの様に一冊の本が姿を現す。

「あ、あの本!」
「な、何だこの本は!?」

 驚き思わず攻撃の手を止めるビルゲニア。そんなビルゲニアの前で本を止めていた鎖が千切れ飛び、パラパラとページが捲られていく。

「主の命により闇の書、システムを起動致します」

 機械音のような音声が本から放たれる。すると、その本の中から四つの光が現れる。それぞれ赤、緑、青、桜色の四つであった。その四つの光がビルゲニアに当たりそれを跳ね除ける。

「おわっ! 何だ今のは?」

 よろけながら見るビルゲニアの前で四つの光はなのはとはやての前に降り立つ。すると眩い閃光を放つ。閃光が止むと、其処には四人の人間が跪いていた。それぞれ違った外見をしていた。
 筋骨隆々な銀髪の男。小柄なオレンジ色の髪の少女。ショートヘアーで金髪の女性。剣を持った桜色でポニーテールの女性。
 その四人のメンバーがはやての前で跪き頭を下げていた。

「主の命により、我等守護騎士【ヴォルケンリッター】参上致しました。主よ、何なりとご命令を」
「え? あ、主? 私が主なん?」

 いきなり言われたので動揺しまくるはやて。そりゃそうだ。突然見知らぬ人間が出てきていきなり主などと呼ばれたらそりゃ誰でも動揺する筈だ。

「えぇい、何だ貴様等は! 邪魔するなら貴様等も容赦せんぞ!」
「うっせぇぞ三下! てめぇは黙ってろ!」

 睨みを利かせながら小柄な少女がビルゲニアに向って言う。まさかビルゲニアに向い三下とは良く言った物だ。そんな中、はやては固唾を呑み四人を見る。

「ほ、ホンマに…私の頼みを聞いてくれるん?」
「当然です。我等が主は貴方一人なのですから」
「そやったら・・・早速お願いするわ。アイツをやっつけて! 私の大切な人達を守ってぇな!」
「承知致しました」

 頷き、四人は立ち上がる。そして、ビルゲニアに対し構える。

「貴様等、人間の分際でこの俺に挑むと言うのか?」
「主の命だ。覚悟しろ!」
「ふん、ならば先にキサマから殺してやる!」

 剣を構えてビルゲニアが切り掛かってきた。それに対しポニーテールの女性が持っていた剣を振るい剣同士がぶつかり合う。

「キサマも剣を使うのか?」
「ヴォルケンリッター。烈火の将・シグナム。この私に剣で挑んだ事を悔いるが良い!」
「ほざけ!」

 距離を開けて構えなおす。

「所詮は女の剣! 剣聖と謡われた俺の敵ではない! ビルセイバー!」
「女と思って侮ると痛い目を見るぞ。レヴァンティン!」

 互いの武器の名を叫び構える。その刹那。一瞬の内に互いの切りあいが行われた。よろけるビルゲニア。見れば彼の鎧には斜め一文字の傷が出来上がっていた。それに対しシグナムと呼ばれた女性は無傷であった。

「ば、馬鹿な…この俺の鎧に傷がつくだと!?」
「フッ、鎧に命を救われたな。それがなかったら今頃キサマの命はあるまい」
「おのれぇぇぇぇ!」

 怒りを露にしたビルゲニアが再度切りかかる。しかしその前に突如現れたのはあの小柄な少女であった。

「おいシグナム。次はあたしがやっても良いよな」
「好きにしろヴィータ。弱者を切る程私は落ちぶれてはいない」
「あいよ。そんじゃ行くぜぇ三下ぁ!」

 ヴィータと呼ばれた少女が持っていたのは鉄槌であった。明らかに打撃系であろう。

「おのれぇ! この俺を侮辱するなぁ!」
「ギャンギャンうるせぇんだよ三下がぁ!」

 ヴィータが叫び、鉄槌をハンマー投げの要領で振り回す。遠心力で勢いのついた鉄槌がビルゲニアの脇腹に突き刺さる。

「ぐぼぁっ!」

 口から血を噴出しその場に崩れる。そんなビルゲニアの前にヴィータが鉄槌を地に付いて立っていた。

「だから言っただろうが。少しは自覚しろよこの三下ぁ!」
「おのれ…おのれぇぇぇ!」

 突如、起き上がりヴィータ目掛けて剣を振るう。だが、剣の切っ先がヴィータの目の前で止まる。それは剣だけではなかった。
 体全体がピタリと止まってしまったのだ。

「ヴィータちゃん。口が悪いのはいけないってあれほど言ったでしょ!」
「へいへい、相変わらずうっせぇなぁシャマルはよぉ」

 見れば背後でシャマルと呼ばれた金髪の女性が手から細い糸の様な物を放ちビルゲニアを雁字搦めに絡め取っていたのだ。
 体全身に絡みついたこの細い糸は相等強度があるのか切れない。其処へヴィータの変わり銀髪の青年が腕を鳴らしながら現れた。

「盾の守護獣・ザフィーラ…主を傷つける者は誰であれ許さん!」

 名乗り終わりと同時にビルゲニアの鳩尾に野太い腕から放たれた一撃が飛ぶ。体がくの字に曲がった。相等の威力が想像される。

「ぐっ…がぁっ…」

 よろけるビルゲニア。鎧はボロボロになり立つのもやっとだ。

「まだやる気か?」
「と…当然だ! ブラックサンを倒すまで…貴様等程度に負けてなるか!」

 再び剣を構えるビルゲニア。だが、その背後に突如三神官が現れる。

「此処は退くのだビルゲニアよ」
「俺に命令するな!」
「状況は圧倒的に不利だ。此処は一旦退いて態勢を立て直す事が大事だ」
「くっ…ブラックサン! 命は預けたぞ!」

 捨て台詞を放ち、ビルゲニアと三神官達は霧の如く姿を消してしまった。残っているのは守護騎士達となのは達だけである。

「す、凄い…凄い強いわぁ…あんがとなぁ」
「礼には及びません。これも我等の使命なのですから」

 はやての言葉に当然とばかりに受けるシグナム。其処へ傷ついた体の光太郎がやってきた。

「有難う。はやてちゃんを守ってくれて」
「礼には及ばんと言った筈だ。それより、何故キサマが此処に居る…世紀王!」

 突如、シグナムの目が鋭くなる。それだけじゃない。回りに居た三人もまた鋭い目つきで光太郎を睨む。明らかに友好的とは言えない目つきである。

「ちょい待ちぃ! 皆何か勘違いしとるでぇ! その人は南光太郎って言って私のお兄ちゃんや」
「主の? 次期創世王ではないのですか?」
「う~ん、よぅ分からんけど、光太郎兄ちゃんはそう言うのにはならへんって言うとるでぇ」
「どう言うことだよ。世紀王って言ったら皆次期創世王になれる筈だろ?」

 四人が疑問を感じ話し始める。それを割るように、光太郎が話し始めた。

「俺は、その創世王になる気はないよ。只、この力を人類の平和の為に使ってるだけなんだ」
「その言葉…信じて良いのだな?」
「勿論だ」
「分かった。さっきは睨んで済まなかった」
「こちらこそ、危ないところを助けてくれて感謝します」

 どうやらお互い誤解は解けたようだ。

(にしてもいきなり家族が増えたなぁ…こりゃ結構賑やかな日が来るかも知れへんなぁ)

 そんな中、はやては一人嬉しそうに微笑んでいる。そんなはやての膝の上では、疲れ切った為かなのはが静かに寝息を立てていた。
 その顔には、今までの恐怖に歪んだ顔ではなく、純粋な少女の寝顔が其処にはあった。




     つづく 
 

 
後書き
次回予告

ミッドチルダから帰国してきた兜甲児。
彼と共に訪れた宇宙科学研究所で突如現れる外宇宙からの脅威。
その時、一人の青年と宇宙の王者が戦いに赴く。

次回「飛べ!グレンダイザー」お楽しみに 
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