IS インフィニット・ストラトス~転生者の想いは復讐とともに…………~
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number-5 ability
前書き
実力。
休みの日もボーっとして過ごした麗矢。
一夏は幼馴染――――篠ノ之束の妹、篠ノ之箒――――にISを教えてくれるように頼み、なぜか剣道をしていた。まあ、あながち間違ってはいないが。
24時間とは短いものであっという間に月曜日が来る。
麗矢たちは千冬に連れられて、第三アリーナのA-ビットに来た。
あとは一夏の専用機待ちなのだが……
「遅い……」
そう、いまだに来ないのだ。本当であれば昨日のうちに届けられて、最適化を済ませて、一時移行《ファースト・シフト》を済ませておかなければならないのだが、いまだ来ない。
対戦相手であるセシリアは10分前にはB-ビットから出てきて、アリーナで待機している。
もう待たせるわけにはいかない。
そう判断した千冬は麗矢に呼び掛ける。
「夜神鳥、行けるな?」
「…………」
返事が返ってこなかった。
不思議に思った千冬が麗矢のほうを向くと――――
「Zzzz……」
――――寝ていた。
それも立ったまま寝ている。
バシン!と千冬が麗矢の頭を出席簿でたたくと、「へぶっ!」と変な声を上げる麗矢。が、話は聞いていたようですぐに準備する。まったく、器用な奴である。
「じゃ、行きます。」
「さっさと行って来い。」
千冬に軽く挨拶をして、カタパルトへ。カタパルトの前でISを展開するが、光が収まる前にアリーナへと飛び出していった。話しかけようとしていた一夏を無視するような形で。
残された一夏は思う。
――――麗矢と仲良くなるためにはどうしたらいいのだろうか。
「なんだ、まだあいつと仲良くなっていないのか。」
千冬に思っていることを言われ驚く一夏。千冬は笑いながら言う。
「声に出ていた。……まあ、あいつは気難しいところがあるからな。だが、大丈夫だろう。いつの間にか仲良くなっているんじゃないか? 男とはそんなものだろう。」
千冬の言葉には妙に説得力があった。少し安心した一夏はまた別なことを考え始めた。
麗矢と千冬の関係について、だ。
先ほどの会話は何か感じさせるものがあった。
――――麗矢は俺が知らない千冬姉のことを……
知っているのだろうか、と続ける前に考えを振り払った。隣で箒が「どうした?」と言っていたが、「何でもない。」と返した。
一夏は麗矢に嫉妬しているのかもしれない。けど、これからあいつのことを知っていこうと思った。
心の中で湧き上がった黒いものを抑えつつモニターに目を向ける。
麗矢の強さをこの目で見るために。
◯
「最後のチャンスを上げますわ。」
懲りることなく何か勘違いしたことを言っている。いい加減イライラして発散させてしまいたい麗矢は、開始の合図とともにセシリアに急接近し、ブレードを展開、そのまま斬りかかる。
油断していたが、右に旋回することで攻撃をよけ、距離を取る。
そこで改めて麗矢のISを見た。
機体名、《アルティメット・バード》
究極の鳥。
カラーリングは黒を基本として、赤いラインの入ったツートンカラー。禍々しい。
装甲は一般的なISとほとんど変わらないが、左腕は大きい。指先が足のつま先まで届いている。
何よりも背部装甲の後ろの非固定武装の翼。広げると優に5メートルは超えそうだ。
背部装甲にブースターが六つ。ブースターの上の肩甲骨のあたり、左腕に負けず劣らない長さの超電磁砲と思われる砲身が二つ。
そこから推測するに、先ほどの機動力を合わせると――――
広域殲滅型。高機動、高火力。――――《移動砲台》
左腕のことはまだわからないが……ピーキーな気体であることは確か、操縦者もそれなりの腕を持っている。
セシリアは自分が出した結論から、強敵と認め、舐めてかからず全力で落とすことに決めた。
「さあ、踊りなさい!! セシリア・オルコットとブルー・ティアーズが奏でる円舞曲で!!」
決め台詞と共に名前の由来となったBT兵器《ブルー・ティアーズ》を出し、麗矢へと向かわせる。
図体が大きい分当たりやすいはずなのに全く当たらない。攻撃を仕掛けることもなく木の葉のようにひらひらと動く。
全く攻撃が当たらないことがセシリアの集中を殺ぐ。
冷静さを失い、注意力散漫になってしまったセシリア。こうなってしまうと、勝てる者も勝てなくなる。
――――終わりにしよう。
麗矢はもう一本ブレードを展開し、両手に一本ずつ持ってセシリアに斬りかかる。
左腕が長く大きい分、リーチも左右で違う。
勿論、操っているのも大変だが、避けるのも大変である。
また、ビットを動かしている間は動くことがまだできない。故にセシリアが動いている今、ビットは空中に静止している。
「くっ……!」
麗矢は一旦離れ、苦し紛れに放ったビットの一発。
それは麗矢の左腕に当たり、爆発した。
「えっ……!?」
セシリアの目が見開かれる。何に気付いたというのか――――それはすぐに分かった。
黒煙の中から麗矢が出てくる。あの大きかった左腕は、右と同じ長さになっている。
「その腕は一体……? いやっ、それよりもなぜ絶対防御が発動しなかったんですか!?」
開放通信《オープンチャンネル》でセシリアの口から言われたことは当然、A-ビットにいる千冬たちにも届く。
「山田君!」
「はっ、はいっ! 本当です。あの爆発の時、麗矢君のISは絶対防御を発動していません。大きかった左腕は重りだったようです。」
千冬は頭を抱えたくなった。いきなりやってくれた。しかし、今は何もできない。
ただモニターを睨みつけるようにしてみた。
また、一夏の耳にも入っていた。
箒はただ黙ってモニターを見る。
一夏は麗矢との差を実感していた。初心者と熟練者、経験の差はとても大きい。
――――麗矢に勝てるのだろうか……
不安しかない。
一夏はモニターの麗矢を睨んだ。
その麗矢は何も言わなかった。
捉え方は人それぞれであるが、今回はそうでもない。ハンデであった。それもあからさまなハンデだ。
セシリアが何かまた言い出す前に麗矢はセシリアに近づく。
ただし、先ほどとは比べ物にならない速度で。
そこからの試合は圧倒的だった。
セシリアの積み上げてきたプライドをずたずたにした。それなのに、ISへのダメージは少なかった。
それが唯一の救いだったのかもしれない。
セシリアは精神的に完膚なきまでに叩きのめされた。
『勝者、夜神鳥麗矢。』
全力ではなかったらしい。
麗矢がセシリアを抱きかかえ、B-ピットへ。
そのまま、戦いへ。
《夜神鳥麗矢 VS 織斑一夏》
後書き
書いていた時に感じたグダグダ感。
修復は不可能であった……
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