IS インフィニット・ストラトス~転生者の想いは復讐とともに…………~
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number-4 meet again
前書き
再会。
「えっ……ど、どうしてあなたがここに……?」
静かな再会だった。よく漫画とかで見るような、例えば敵同士だった親友と再会した時のような衝撃的な再会ではなく。静かな再会であった。
麗矢はここに楯無がいることを知っていた。けれども、楯無が麗矢の居場所に気づいたとして、接触はしてこないと思っていた。元より、今日が初登校であるためその可能性は低いが。千冬が麗矢に関する情報を楯無サイドに一切流さないようにしていたこともある。
楯無はここに何故麗矢がいるのかが分からなかった。学園にいる男は織斑一夏だけと思っていた。ルームメイトだって同じ女子だとばかり思っていた。
――――どうして。
考えることは同じであろう。
だが、楯無は麗矢よりも先に動いた。それは――――
「麗矢。どうしてあなたは何も言わずにいなくなったの? ねえ、教えなさいよ……。」
そう、夜神鳥麗矢と更識楯無は幼馴染である。それも物心がついたころから一緒にいた。血の繋がっていない兄妹に近いほど仲が良かった。しかし、麗矢は十歳のとき楯無の前から姿を消した。それもぱったりと、一夜にして消えた。
麗矢の両親はすでに死んでいたことから誘拐の線で警察が捜査したが見つからない。
楯無も父親に頼んで更識家の力を使って探した。それでも見つからなかった。
それが今目の前にいる。あれだけ探して見つからなかったのに。
「…………。」
麗矢は何も話さない。
そんな麗矢に楯無は一歩、また一歩と詰め寄っていく。
ベットに腰掛けている麗矢には逃げ場はない。とっさに立ちあがったが、目と鼻の先にまで近づいていた楯無に押されてベットに崩れる。
その上に楯無が覆いかぶさるようにする。
楯無の頬は赤らんで恥ずかしがっているようにも見えるが、楯無本人はそれどころではないのだろう。
「ねえ……教えなさいよ……麗矢……。」
それでも麗矢は答えない。話そうと思えば話すことはできるのだが、話してしまうと学園を敵に回しかねない。下手すると世界を相手に戦わなくてはいけない。
また、千冬にもきつく口止めされていることもある。だから、楯無に話すわけにはいかなかった。
「……お願いだから、教えて。」
再三の問いかけ。ここでようやく重い口を開くが、それは楯無が望んだことではなかった。
「…………悪い、これはどうしても言えないことなんだ。」
「…………。」
楯無は何も言わない。ただ麗矢を見つめる。麗矢の黒く濁った赤の瞳を。
――――どれくらい経っただろうか。
もう十分はこの体勢だ。
「…………分かったわ、今はもう聞かない。でも、いつか教えてもらうからね。」
そう言い、ようやく笑みを浮かべた楯無。それにつられるように麗矢も笑みを浮かべるが……
体勢は麗矢を楯無が押し倒しているように見えるままである。
これを見られるのはまずい、麗矢は楯無に上からどくように言おうとしたが……
「すいません、失礼しますよ。麗矢君は……」
もう遅かった。このシーンを山田先生に見られた。どうやって言い訳をしようかと思考を巡らせていると――――
バタッという音とともに真耶が倒れた。
あまりにいきなりすぎて二人は動くことはできなかった。
「……そろそろどいてくれないか?」
「あっ、ご、ごめん。」
楯無は顔を赤くしながら麗矢の上から動いた。ようやく今の体勢に気付いて恥ずかしくなったようだ。
そしてまず、麗矢がしたことは真耶を起こして、誤魔化すことだった。
◯
翌日。
幼馴染と再会した麗矢はいつも通りに怠そうにSHRに遅刻しつつも登校した。
麗矢は朝に弱いほうである。早起きは苦手だった。
そのうえ、夜型の生活を繰り返しているため徹夜なんて週に三日は普通だ。
当然のごとく千冬に出席簿で頭を叩かれ、机に付した。
今日は何事も起こらず、平和に暮らすことが出来ると思っていたが、それも三時間目が終わるまでだった。
「織斑、お前の専用機だが、少し時間がかかる。」
専用機。
ISの開発者、篠ノ之束が作ったコアの分――――467機しかない。
そのうち、実験などに使われているコアを除くと実質200から300機であろうか。
国家代表、その候補生。あとは軍。それぐらいにしか渡されることがない。
希少なものなのだ。
それを渡されるのだから、周りが羨むのも当たり前。
セシリアに関しては、これでISの性能差がなくなったぐらいである。
麗矢ももちろん持っているが――――それは追々話していく。
これで教室が少し騒がしくなったが……麗矢がまだ耐えられるぐらいであったようだ。
しかし、麗矢の機嫌は悪かった。周りから見るといつも通りに見えるが、そうでもない。
一夏とセシリアのことで不機嫌になっている。
一夏は懲りることなく仲良くなろうと麗矢に話しかけてくる。馴れ馴れしくするつもりはないのに。マナーとして挨拶だけは返してやっているが。
セシリアは相変わらずうるさい。自分の力を過信しているようにも思えた。これでは試合で油断して揚げ足を取られてしまう。関係なんてないが。
憂鬱である。
これなら楯無と話しているほうが数倍ましだ。
麗矢と楯無は共通する話題が多い。幼いころから一緒にいたというのも影響しているかもしれない。
それでも、いまさら分かっていることを復習しているより楽しい。
現実逃避をする。
一夏をぶん殴ってやりたいが――――姉に護衛を頼まれている。その対象を傷つけてどうするのか……
「……ハアッ。」
ため息。
頬杖を突きながら窓の外を眺めていた。
ストレスを発散することが出来ない。
イライラは募っていくばかり。
二重苦である。
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