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スーパーロボット大戦パーフェクト 第二次篇

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第百四十八話 サイレント=ボイス

                第百四十八話 サイレント=ボイス
ハマーンはアクシズから出撃した。それも一人で。
供の者は連れてはいない。彼女が一人で行動するなぞ有り得ないことであった。
だが彼女は行く。一人であっても。そのまま何かを見ていた。
「ハマーン」
ミネバはアクシズから彼女を見送っていた。その顔は彼女がこれまで見せたことのない不安げなものであった。自然な少女としての顔であった。
「死ぬなよ」
「大丈夫です、ミネバ様」
イリアが彼女に述べる。彼女が乗っていたリゲルグはアクシズでの戦いで撃墜されている。その為彼女の側にいるのだ。
「ハマーン様は必ず」
「そうじゃな」
ミネバは何とか彼女の言葉に頷く。
「ハマーンは。いつも私の側にいてくれると言ったから」
「そうです、ですからハマーン様を待ちましょう」
「うむ」
ミネバは頷く。そうしてハマーンを見送るのであった。
アクシズでの戦いを終えたロンド=ベルでも同じであった。ジュドーはダブルゼータで出撃していた。クワトロのサザビーも一緒である。
「もうすぐだよな、クワトロ大尉」
「ああ」
「ところでよ」
ジュドーはダブルゼータのコクピットからクワトロに声をかけてきた。
「あんた確かアクシズにいたんだよな」
「否定はしない」
一瞬だがシャア=アズナブルになっていた。
「昔のことだがな」
「そうか。それでな」
彼はさらに問うてきた。
「あんたはハマーンとは戦わないのか」
「私がか」
「あんたとはかなり因縁があるんだろ?確か」
「昔のことだ」
そう述べる。
「しかし今も続いている」
「あんたはそれを終わらせないんだな?自分で」
ジュドーはまた彼に問うた。
「その業ってやつを」
「最早私はシャア=アズナブルではない」
今度はクワトロ=バジーナに戻っていた。
「クワトロ=バジーナだ。だからこそだ」
彼は言う。
「彼女の業を終わらせるのは私であってはならない」
「クワトロ=バジーナだからかよ」
「そうだ。最早シャア=アズナブルであってはならないからな」
「わからねえな、それが」
ジュドーはクワトロのその言葉を聞いて述べる。
「あんたしかいねえと思うんだけれどな」
「私では駄目なのだ」
しかしクワトロはあくまでそれを認めない。
「君でなければ」
「俺がかよ」
「そうだ。それがわかる時が来る」
そうジュドーに対して言う。
「何時かな」
「ハマーンは死ぬかも知れないぜ」
ジュドーは今度はハマーンについて述べてきた。
「あの人あれでかなり思い詰めてるみたいだったしな」
「弱いのだ」
ハマーンをこう評してきた。
「見掛けよりはな」
「弱いってのかよ」
「そうだ。私は本当のハマーンを少しは見てきた」
あえて全てとは言わない。この言葉にも意味があった。
「だからわかることだ」
「あの人が弱い、ねえ」
「その弱さと業が彼女をああさせた。それを終わらせてやって欲しい」
「何かよくわからねえが戦いはするぜ」
ジュドーは言った。
「それでいいよな」
「その通りだ」
彼等は自然とある場所に向かった。それは何によって導かれていたのかはわからない。お互い感じあっていたのかも知れない。ジュドーがそこに向かうとすぐにハマーンもやって来た。二人はそこで対峙した。
「来てくれたか、ジュドー」
ハマーンはジュドーの姿を見て述べる。
「招きに応じてくれて何よりだ。礼を言おう。
「礼とかそんなのはどうだっていいさ」
ジュドーは彼女にそう返す。
「それよりハマーン」
そのうえで言う。
「何だ?」
「あんた、自分で納得してるんだよな」
そう彼女に問う。
「今の自分をよ」
「戯言を」
その言葉に笑う。
「私はミネバ様にお仕えしている。それ以外の何者でもない」
「いや、違うだろ」
ジュドーは彼女に言った。
「あんたは自分を誤魔化している。あんたは無理をしているんだ」
「馬鹿なことを言う」
「言葉じゃない、感じているんだ」
「何っ」
その言葉に目を鋭くさせてきた。
「あんたの心をな。あんたはザビ家の呪縛からも解き放たれたいんだ」
「私がか」
「そうさ、ミネバ=ザビだって本当は素直に接したい」
「ミネバ様はジオンの主であられる」
ミネバについても言った。
「それだけだ」
「違う、あんたはミネバについても本当は一人の女として接したいんだ」
「貴様、まだ戯言を」
「戯言じゃないのもあんたがわかってる筈だ」
また言葉を返す。
「だからあんたは」
「私はザビ家の人間だ。他の何でもないと言っている」
「ハマーン、何時までそうして自分に嘘をつく」
クワトロが横から言ってきた。
「シャア」
「御前はわかっている筈だ。自分の業を」
「業だと!?」
「ザビ家の業」
彼は言う。
「スペースノイドの業、女の業。そうしたものに全て囚われている。だからこそ」
「私を解放するとでもいうのか」
「少なくとも業は消せる」
そうハマーンに述べる。
「それは知っておけ」
「小賢しい。私の前から姿を消しておきながら」
ハマーンはその目に憎しみを込めてクワトロに対して言った。
「よくそんなことが言えるものだ」
「私は御前を受け止めることができない」
それがシャアの言葉だった。
「それがわかったからだ」
「違う!御前は私から逃げたのだ!」
ジュドーと対峙してからはじめて感情的な言葉を出してきた。
「私から!だからこそ私は!」
「ハマーン、あんた」
そのハマーンの感情はジュドーにも伝わる。それを受けて彼女に言った。
「だから今まで」
「御前さえ・・・・・・いや」
ハマーンは言う。
「誰かがいれば。私はそれで」
「あんたは何が欲しいんだ?」
ジュドーは彼女にまた問う。
「そうまでして自分を隠してきて」
「それがわからないから御前は」
ハマーンはまたジュドーに顔を向けて言うのであった。
「私のことを」
「いや、わかるさ」
それでもジュドーは彼女に返す。
「あんたの心が。あんたは側に誰かがいて欲しい」
さらに言葉を続ける。
「だから」
「ならばジュドー」
ハマーンはそんな彼に対して目を向けてきた。
「私のところに来るか?そして」
「いや、ザビ家なんて終わらせるべきなんだ」
ジュドーはザビ家というものも否定してきた。
「あんたにしろミネバ=ザビにしろ。もう終わらせなくちゃいけない」
「来ないというのか」
「あんたが来るんだ」
それがジュドーの考えであった。
「俺達のところへ」
「愚かなことを言う」
ハマーンはその言葉を受け入れようとしない。
「何故私が御前の、シャアのところへ」
「私のところではない」
クワトロはそれは否定した。
「私は御前を救えない。だがジュドーなら」
「俺だけじゃない。他の皆だって」
ジュドーはまた言った。
「だから来るんだ、ハマーン!」
「黙れ!俗物が!」
遂にハマーンが激昂してきた。
「御前に私の何がわかるというのだ!」
「わかるんだよ!その剥き出しの感情が!」
「何だと!」
「そうして自分に嘘をついたままでいいのかよ!だから今まで苦しんできたんだろ!」
「まだ言うのか!」
「言うさ!そしてあんたの業を消してみせる!」
ハマーンを見据えたまま言う。
「今ここでな!」
「なら見せてみろ!」
ハマーンはまた叫んできた。
「私にそれを!」
「くっ、やっぱりやるしかないのか!」
「ジュドー、行け!」
クワトロが横で言った。
「因果を断ち切る為にだ!」
「ああ、やらせてもらうぜ!」
ダブルゼータのエンジンを全開にさせてきた。全速力でハマーンのキュベレイに向かう。
「あんたの業をここで消し去る為にな!」
「御前ごときに私が!」
またハマーンは叫ぶ。
「止められるものか!」
派手にファンネルを放ってきた。無数の流星となってダブルゼータの周りを舞う。
「死ね!」
「こんなまやかしでな!」
ジュドーは周りをファンネルで囲まれても動じてはいなかった。
「あんたはずっと誤魔化せると思っているのかよ!」
「まやかしだと言うのか!」
「そうじゃないか!」
ジュドーはまたハマーンに言い返す。
「あんたは本当はわかっているんだ!自分が!」
「黙れ!」
それでもそれを認めようとはしない。
「子供が私に!」
「あんただって子供だ!」
「くっ!」
この言葉には何故か言い返せない。ここでジュドーも反撃に移ってきた。
ダブルビームライフルを放つ。ハマーンはそれをかわして体勢を立て直す。
「その証拠に!詰まらないものにばかりしがみついている!」
「詰まらないだと」
「そうじゃないか!ニュータイプだってそうだ!」
ジュドーは今度はミサイルを放つ。キュベレイのファンネルがそれに向かう。
「普通の人間と変わらないんだ!そんなもんなんだよ!」
「知った口を!」
ミサイルを撃ち落としながら言い返す。
「何処まで小賢しい!」
「俺は見たんだよ!ロンド=ベルでな!」
しかしジュドーの言葉には根拠があった。
「だから全部わかるんだ!ハマーン!あんたは何も見ようとしていないだけだ!目を見開くんだ!」
「見開く」
一瞬だがハマーンの動きが止まった。
「私がか」
「そうさ!見るんだ!」
ジュドーはまた言う。
「よくな!全てを!」
「私は見ている!」
それでもハマーンはまた否定してきた。今度はキュベレイの腕からビームを放つ。
「全てをな!今を!」
「なら俺の動きも見えるんだな!」
「当然だ!」
ハマーンは言う。
「貴様の動きなぞ・・・・・・むっ!?」
しかしそれは違った。ジュドーの姿が目の前から消え去った。
「何処だ、何処に消えた」
「ほら、見えていないじゃないか」
ジュドーの声だけが聞こえた。彼は心に直接語り掛けてきていたのだ。
「結局あんたは何もわかっちゃいないんだ」
「くっ・・・・・・」
「見るんだ、ハマーン」
ジュドーは彼女にさらに語り掛ける。
「あんたの本当の心。あんたは一体何が欲しいんだ?」
「私の心か」
「ザビ家の復興なんて本当は望んじゃいないんだろう?」
ハマーンの心に直接問う。
「そうなんだろう?」
「わかっているのだったな」
ジュドーのその言葉にすっと笑みを浮かべる。
「やはり」
「わかるさ、あんたは素直だから」
「素直、か」
「あんたの心は捻れているだけなんだ。それさえ戻れば」
「では聞こう、ジュドー」
彼に問うてきた。
「御前は私が欲しいのだと思っている?」
「側に誰かいて欲しいんだろ?」
ジュドーは優しい声で答えてきた。
「そうじゃないのかい?」
「誰かか」
その声に微笑む。
「そうなのかもな、確かに」
「ミネバだってそうなんだろ?」
ジュドーはまたミネバについて問うた。
「側にいて欲しいから」
「ミネバ様は私にとっては主であると共にかけがえのない方だ」
自分でもそれを認める。
「娘、いや友人だ」
「そうか、やっぱりな」
「だからだ。しかし」
ここでまた述べる。
「今の私では」
「いや、ハマーン」
ここでミネバの声がした。
「!?まさか」
「聞こえている」
ミネバが現われた。ハマーンを見て微笑んでいた。
「ミネバ様、どうして」
「私もまた。御前と同じのようなのだ」
そうハマーンに語る。つまり彼女もニュータイプであったのだ。
「御前の心は今わかった。もうよい」
「よいとは」
「私の為に苦しむな。無理をすることもない」
「ですがザビ家は」
「よいのだ。もうそれは果たせぬのであろう?」
「・・・・・・・・・」
俯いてしまった。答えられない。グレミーの反乱により崩壊した戦力の建て直しは最早困難であった。それはハマーンが最もよくわかっていることであった。
「それに。私はザビ家よりも御前と一緒にいたい」
「私と」
「何時までも一緒にいてくれ」
彼女は言う。
「私にとっても御前は母親、いや姉か友人なのだ」
そう語る。
「だからな」
「宜しいのですね」
ハマーンはミネバに問い返す。
「ザビ家も。もう」
「いいのだ。私は御前と共にいられれば」
「ミネバ様・・・・・・」
「ハマーン、どうするんだ?」
またジュドーが問うてきた。
「これから。あんたは」
「決まった」
すっと笑みを浮かべて答えてきた。
「私はもう」
「そうか。それじゃあ」
「うむ」
ダブルゼータの動きが止まった。キュベレイの喉元にビームサーベルを斬りつける寸前で動きを止めていた。
「終わりだな、これで」
「どうやら私もこれで終わりらしいな」
ハマーンは穏やかな笑みを浮かべてこう言った。
「ザビ家の女としては」
「これからはハマーン=カーンなんだよ」
そうジュドーは答えた。
「それでいいな」
「うむ」
「姉さん」
そこに通信が入って来た。見ればゼータが一機こちらに来ていた。
「セラーナか」
「ようやく間に合ったのね」
「そうだ。長くかかったがな」
「けれど。きっと来てくれると思っていたわ」
セラーナは優しい顔でそう述べる。
「姉さんなら」
「御前のところにか」
「ええ、ロンド=ベルにね」
セラーナは姉を誘う。
「行きましょう。もう一人ではないから」
「宜しいですか、ミネバ様」
今度は通信を入れてミネバに問うてきた。
「それで」
「待て、ハマーン」
しかしミネバは彼女を止める。
「御前一人で行くのか?私も一緒ではないのか?」
「申し訳ありません。そうでした」
「グワダンを持って行く」
ミネバは言った。
「今日を以ってネオ=ジオンは解散する。そして私は御前と何時までも一緒だ」
「有り難き御言葉」
「どうなるかって思ったけれどハッピーエンドってわけだな」
ジュドーは三人の言葉を聞いて言った。
「しかしセレーナさんがハマーンの妹さんだったなんてな。驚いたぜ」
「御免なさい、ずっと隠していて」
「まあいいさ。じゃあ戻るか」
「ええ。ロンド=ベルにね」
こうしてハマーンは一人ではなくなった。クワトロはそんな彼女を暫く見ていたがすぐに一人でロンド=ベルに戻った。
ネオ=ジオンは解散し彼等との戦いは終わった。その軍は連邦軍に組み入れられることとなりハマーンとミネバ、そして多くの面々がロンド=ベルに加わることとなった。
「そういうことだ」
ゴットンを引き連れたマシュマーがジュドーに挨拶をしてきた。
「今日からは戦友ということになる。宜しくな」
「あたしもいるからね」
見ればキャラも一緒だ。他にはイリアやランス、ニーもいるが彼等はモビルスーツは持って来ていないようである。
「何かまた派手な面子が来たな」
「それは褒め言葉と受け取っていいのだな?」
マシュマーはそうジュドーに返す。
「それならば幸先がいい」
「そう思ってくれるんならいいけれどよ。しっかしねえ」
ジュドーは言う。
「イリアさんの格好はまた凄いね」
「そうか?」
本人にはあまり自覚がないといった顔であった。
「私はそうは」
「いや、かなりだ」
イザークが言う。
「最初見た時は何処のロック歌手かと思った」
「キャラさんもですよね」
シホも付け加える。
「何かヘビメタみたいな」
「おや、あたしの音楽の趣味がわかるのかい」
「やっぱり」
シホだけでなく皆それを聞いて納得した。
「これでもギターとか好きだよ」
「私もだ」
イリアも言う。
「派手な音楽が好みだな。ロンド=ベルではランス、ニートミネバ様のお側にいる」
「モビルスーツには乗らないのか」
「それはマシュマー達に任せる。愛機がなくなったこともあるが艦橋要員の関係でな」
「そうか」
話を聞いたアムロはそれに頷く。
「それもいいな」
「それでだ」
今度はバサラが彼等に声をかけてきた。
「そっちの人がギターならあんたは何なんだ?」
「私か?私はベースだ」
イリアはそう答える。
「それがどうかしたか?」
「面白いな。それじゃあ今度ジョイントしようぜ」
バサラは笑ってこう言ってきた。
「それでいいな」
「熱気バサラとライブか。こちらこそ光栄だ」
「じゃあよ。派手に行こうぜ!」
「しっかしバサラって誰でも頓着しないのね」
アスカがそんな彼を見て言う。
「それはかなり凄いわね」
「まああの人やからな」
トウジが述べる。
「それもありやろ」
「ありなの」
「そやろ。破天荒な人やからな」
「破天荒過ぎるけれどね」
「それ言ったらおしまいだよ」
シンジがそれに突っ込みを入れる。
「バサラさんには」
「まあこれでまたメンバーが増えたわね。また賑やかになるわ」
「それではミネバ様」
ハマーンがミネバに対して何か言っていた。
「これが終わりましたら夕食に」
「ハマーン、何を作ってくれるのだ?」
「えっ!?」
皆今のミネバの言葉に目を丸くさせた。
「今日は」
「今日はって」
「何かおかしいのか!?」
驚いた顔の一同にキョトンとして顔を向ける。
「ハマーンの料理は見事だぞ。一度食べてみるか?」
「いや、ハマーン=カーンが料理って」
「それはちょっと」
「のうハマーン」
ミネバは顎が外れそうになっている一同を見てからハマーンに問うた。
「あの者達は何をそんなに驚いているのだ?私にはわからないが」
「さて」
ハマーンもわからないといった顔をしている。
「どうしてなのか」
「だって有り得ないだろ」
ジュドーが言う。
「あんたが料理だなんて」
「私だって女なのだぞ」
ハマーンはこう返す。
「料理はする。ミネバ様に御教えさせて頂くこともある」
彼女はミネバの教育係でもある。そこでもかなり深い関係にあるのである。
「だからだ」
「しかしあんたが料理ねえ」
「意外ね」
エマも言う。
「それも上手だって」
「では私と共に食べよう」
ミネバが言ってきた。
「それでよいな」
「はい、それでは用意しますので」
「うむ。楽しみにしているぞ」
こうしてロンド=ベルの面々はハマーンの手料理を食べることになった。それは実際に美味かった。
「どうだ?」
ミネバが誇らしげな顔で彼等に問う。
「美味しいであろう」
「嘘みてえだ」
トッドが唸った。
「こんなことってよ」
「普通に美味しいわね」
マーベルも言う。
「これは」
「味付けも火加減もしっかりしている」
ショウは太鼓判を押してきた。
「こんなにいいなんてな」
「ハマーンは他にお裁縫とかも得意じゃぞ」
そう言うと一気に所帯じみてきた。
「そうしたことがな。何よりもな」
「意外と家庭的なんですね」
「言っただろう。女なのだと」
ハマーンはそうファに返す。
「それだけのことだ」
「あたし女だけれど全然駄目だぞ」
リョーコが言った。
「というか興味すらねえ」
「リョーコさんはパイロットですからね」
「熊の刺繍ができないでくまった」
ヒカルに続いてイズミが久し振りに駄洒落を飛ばすと場の空気が一変した。
「・・・・・・イズミ、場所選べよ」
リョーコの突っ込みも虚しい。イズミの駄洒落がまた炸裂したのであった。
「今のは何じゃ?」
しかしミネバにはわかっていない。
「何か空気が変わったが」
「ああ、何でもない」
カミーユがそう返す。
「だから気にしないでくれ」
「左様か」
「ああ」
「しかしだ」
クワトロもそこにいた。そしてハマーンの料理を食べていた。
「また腕をあげたな」
「御前に言われてもな。嬉しくはないな」
ハマーンはそう彼に返す。
「そうだろう?クワトロ=バジーナ」
「ふふふ、そうなのか」
「そういうことだ」
「しかしハマーンさん」
ナタルがここでハマーンをさん付けした。
「この料理は」
「いや」
しかしここでハマーンは言った。
「何か?」
「さん付けは少し止めた方がいい」
「何故ですか?」
「バジルール少佐は二十五だったな」
「え、ええ」
ナタルは歳のことを言われ内心不快だったがそれを隠して応える。
「私は四つも年下なのだが」
「四つというと」
「えっ!?」
皆ここで衝撃の事実に気付いた。
「ハマーンさんってまだ二十一なんですか!?」
「そうだ」
思わず立ち上がって問うフレイに答えた。
「わかってくれたか」
「いや、二十一って」
それを聞いても受け入れられない者が殆どであった。
「そんな」
「まさか」
「嘘だな」
シンは一人余計なことを言った。
「四十二の間違いだろ。何処にこんなおっそろしい二十一歳がいるんだよ。幾ら何でも倍も歳を偽るってのは・・・・・・ぐわっ!?」
ハマーンが後ろから彼の頭を右手で掴んできた。アイアンクローの要領で締め付けていく。、
「あ、あが・・・・・・」
シンの頭からメキメキという音が鳴っている。彼はその中で苦悶の声をあげていた。
「本当じゃぞ」
ミネバがここで皆に言った。
「ハマーンはまだ二十一じゃ。私が保証する」
「ううん」
「まさか」
「これが昔の写真じゃ」
ミネバは今度は一枚の写真を出してきた。
「六年前だったかの」
「おい・・・・・・」
「何だよ、これ」
そこに映っているのは赤紫の長い髪を後ろで束ねた美少女だった。スタイルもよく女の子らしい服が実によく似合っている。
「あの、ミネバさんでいいかな」
「ミネバでよいぞ」
そうシンジに返す。
「じゃあミネバ。これって」
「だからハマーンだ」
ミネバは言う。
「見てわかるであろう」
「わからねえよ」
シンは言う。
「誰だよこれ、一体どうやったらああなっちまうんだ」
「ちょっとシン」
ルナマリアが彼に注意する。
「そんなこと言ったら」
「つうか何なんだよ、これってやっぱり詐欺か何か・・・・・・ぐわっ!」
今度はハマーンの手刀が浴びせられた。そのままネオ=ジオンから来た兵士達に何処かに連行されていく。彼等は気を失ったシンを左右から抱え込み引き摺っていた。
「それでじゃ」
ミネバは何事もなかったかのように述べる。
「これでわかったじゃろう。ハマーンのことが」
「はあ」
シンがどうなるのか考えながら彼女に応える。
「これからも宜しく頼むぞ。なあハマーン」
「はい」
ハマーンはミネバの横で応える。
「そういうことじゃ。ではな」
「それではミネバ様」
ハマーンは横方彼女に言う。
「後は」
「うむ。私は皆と一緒にいたい」
「戻られないのですか」
「少し話をしてみたくなったのじゃ」
にこりと笑って述べる。
「駄目か」
「いえ、でしたら」
「そなたもくつろぐのじゃ。よいな」
「はい」
こうしてミネバはハマーンと別れてジュドー達のところに入る。ハマーンはそれを複雑な顔で見送っていた。
「妬ける?」
そこにミサトがやってきた。
「貴女は」
「葛城ミサト。知ってるわよね」
「ネルフだったな」
「今はロンド=ベルにいるけれどね。そうよ」
そうハマーンに答える。
「今まであの娘とずっと一緒だったのよね」
「そうだ」
ハマーンはそう答える。
「わかるわ。あんたってあの娘をずっと見てたから」
「ザビ家でなくなってもミネバ様は私にとってはかけがえのない方だ」
「そうなの」
「だからな。つい」
「まあここにいたら大丈夫だから」
笑ってそうハマーンに返す。
「安心しなさいって」
「ならいいがな」
「そうよ。ところで」
ここでミサトは表情を明るくさせてきた。
「何だ?」
「お酒はいける?」
「酒か」
ハマーンはその言葉に顔を向けてきた。
「ワインならな」
「そう。じゃあ付き合ってよ」
それを聞いて今度はにこやかな笑みになってきた。
「皆で飲む筈なのにリツコが急に出られなくなっちゃって」
「何かあったのか?」
「サコン君と打ち合わせなのよ。大文字博士ともね」
「そうなのか」
「だから」
またハマーンに声をかける。
「付き合ってよ。いいでしょ」
「わかった。ではこちらで用意しておく」
「用意って?」
ミサトはその言葉に顔を向けてきた。
「何するの?」
「ワインを用意するのだが」
彼女はそうミサトに返した。
「それが何か」
「何かって」
ミサトは面食らった様子で彼女に返す。
「お酒ならもうあるわよ」
「そうなのか」
「そう、ビールがね」
ミサトはそう述べる。
「ワインもあるわよ」
「そうか。実はだ」
ハマーンは言う。
「年代ものを数本出そうかと思っていたのだが」
「あら、そうなの」
ミサトはその言葉を聞いてまた顔を明るくさせた。
「そうだったのだが。いいのか?」
「ええ、凄くいいわよ」
そう彼女に返す。
「じゃあ持って来て。それで皆で」
「わかった」
ハマーンはその言葉に頷く。彼女もまた本来の場所に入ろうとしていた。一人ではいられないということに彼女も気付いたからだ。

第百四十八話完

2007・3・3  
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