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八条学園騒動記

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第二百五十六話 猫と駱駝とジャッカルとその七


「ちょっとね」
「それでもよ」
「前に進まないとピラミッドまでは行けないわよね」
「ええ、そうよ」
 まさにその通りだというのだ。
「けれど。このジャッカル達って」
「大人しいわよね」
「まるで犬みたい」
 元々犬の仲間である。『みたい』に見えるのも道理だった。
「それよね」
「そうよね。これって」
「ああ、このジャッカル達も猫達もね」
 またしてもだ。何処からか声がしてきた。
「大人しいし決まったところでうんこするから」
「あっ、そうなんですか」
「じゃあ足元もそれ以外の場所も」
「安全だよ」
 若い男の言葉である。
「だから安心していいよ」
「そうなんですか」
「それじゃあ」
「そう、駱駝もいるしね」
 見ればだ。駱駝達もいた。エジプトにつきものの動物達が揃っている。
 そして駱駝のうちの一匹の上にだ。若い日に焼けた顔の男がいた。
 サファリパークに行く様な服を着たその若い男がだ。四人姉妹に言うのだ。
「マヤのピラミッドの方から連絡があったよ」
「こっちに来るってですか」
「その連絡が」
「そうだよ。従妹からね」
 ここでだ。思わぬ話が出て来た。
「連絡があったんだよ」
「従妹さんって」
「じゃああの女の人とお兄さんって」
「親戚同士なんですか」
「そうなんだ」
 この事実が今明らかになるのだった。
「驚いたかな」
「いえ、別に」
「これといって」
 姉妹達は普通に答えた。
「何となく見た目でわかります」
「ですから」
「そうなんだ」
 姉妹に言われてだ。お兄さんもだった。少し拍子抜けしながらも言うのだった。
「わかるんだ」
「はい、それでなんですけれど」
「このジャッカルは大丈夫なんですか」
「襲ったりとかしないんですね」
「ちゃんと飼育してるからね」
 それでだ。大丈夫だというのである。
「餌もあげてるし躾もしてるし」
「ジャッカルって躾けられるんですか」
 ベスは躾けられていると聞いてすぐに問い返した。
「それ。できるんですか」
「うん、できるよ」
 できるとだ。お兄さんはにこりと笑って即答した。
「だって。犬の仲間じゃない」
「犬の仲間だからですか」
「犬は躾けられるよ」
 この辺りはプロらしい確信に満ちた言葉だった。
「ちゃんとね」
「狼と同じですね」
「狼から犬になったから」
 このことは誰もが知っていることだ。犬は最初から犬だったのではないのだ。狼が人と共にいるようになりそれで犬になったのである。 
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