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スーパーロボット大戦パーフェクト 第二次篇

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第百二十六話 明けない夜

             第百二十六話 明けない夜
「おい、どうしてなんだよ」
ロウがジブリールに食ってかかっていた。
「何で駄目なんだよ、言ってくれ」
「当然だ」
ジブリールは冷徹な声で彼にそう述べた。
「彼等は何だ?」
「エクステンデットだよ」
ロウは忌々しげにそう述べた。
「そうだな。だからだ」
「だから死ぬまで戦わせるのかよ」
「そうだ。その為にいるのだからな」
ジブリールはこうも言った。
「それを知らなかったとは言えないと思うが」
「わかってるさ」
ロウは一旦はそれを認めた。
「けれどよ」
「話すことはない」
ジブリールはこれ以上話をするつもりはなかった。
「何故ならこれ以上話しても平行線でしかないからだ」
「じゃあ行けってことか」
「そうだ。もうすぐ我々の作戦がはじまる」
彼は言う。
「スカンジナビアからの南下作戦がな。攻撃目標はベルリン」
「ベルリンにか」
「そこを第一の拠点としてもう一度欧州を制圧するのだ。そして君達にも参加してもらう」
「断ることは許されねえってか」
「そうだ。わかったなら」
「・・・・・・くっ」
「すぐに作戦に取り掛かってくれ。いいな」
「チッ、どうしてこうなっちまうんだ」
ロウは苦渋に満ちた顔で呟いた。だがもうどうにもなるものではなくなっていたのもまたわかっていた。
ティターンズが遂に北極から南下を開始した。既にロンド=ベルはドイツに達していた。
「さて、遂に来たわけだが」
グローバルはマクロスの艦橋でクローディアと未沙を前にしていた。
「我々としてもこれに迎撃しなくてはならない」
「はい」
まずは未沙がそれに応えた。
「その為の作戦だが」
「まずはスカデラック海峡を越えてオスロに向かいましょう」
「オスロにか」
クローディアの言葉に顔を向けてきた。
「そうです。そこでティターンズを迎撃するべきです」
「ふむ」
「スカンジナビア半島はフィヨルドと森林、そして湖に覆われています。進むのは容易ではありません」
「そのうえ守るにはいいか」
グローバルはそれを聞いて呟いた。
「そういうことだな」
「そうです。ですから」
クローディアは述べる。
「地形を利用してここで敵の攻撃を受け止めましょう。それから攻勢に移るべきです」
「わかった」
グローバルはその言葉に頷いた。
「ではそうしよう。全軍に伝えてくれ」
「はい」
「オスロに向かう。そしてそこで防衛ラインを敷くと。いいな」
「了解」
こうしてロンド=ベルの作戦も決まった。オスロに達しそこを中心として地形を利用した防衛ラインを敷いたのであった。
その中には当然ながらアークエンジェルもいた。彼等もまたマシン達と共に敵を待ち構えていた。
「今のところ敵はいないのね」
「はい」
サイがマリューに答える。
「レーダーに反応なしです」
「ミノフスキー粒子も散布されていません」
「そうなの」
ミリアリアの報告も受けてマリューはまずは安心した。
「とりあえずは間に合ったわね」
「そうですね」
カズイがそれに頷く。
「何か今回は結構楽にここまで来れましたね」
トールも言う。
「そうね。それでニコル君」
「はい」
モニターにニコルが姿を現わした。もうパイロットスーツを来ている。
「どう、そちらは」
「今のところ敵の姿はありません」
彼はブリッツの隠密能力を使って偵察に出ているのだ。
「そう」
「はい。引き続き偵察を続けます」
「お願いね」
「何か今のところは平和なものだな」
ムウもモニターに出て来た。
「どうせすぐに賑やかになるんだろうけれど」
「そうですね。実際にティターンズが来ているのは本当ですから」
ノイマンがそれに答える。
「もう北部はあらたか押さえられたようです」
「じゃあ本当にもうすぐだな」
ムウはそれを聞いてまた言った。
「さて、今度はどんなのを出してくるやら」
「サイコガンダムかも知れねえな」
アルフレッドがここで笑って言った。
「何せティターンズだからな」
「まさか」
だがアークエンジェルの面々はそれは笑って否定した。
「それはないでしょう」4
「そうですよ、幾ら何でも」
「けれど何かとんでもないのを用意してきているかも知れないな」
ここでキースは考える目をして述べた。
「奴等のことだからな」
「ううん」
ボーマンはそれを聞いて考える顔になった。
「可能性としてはゼロではないですが」
「少なくともあの馬鹿げた強さの三機のガンダムは出て来るだろうな」
「ああ、あの連中ですね」
キースはアルフレドにそう返した。
「そうだ、あの連中は絶対に出て来るな」
「あとティターンズのエース連中も」
「どうやら今回も厳しい戦いになりそうで」
ムウは軽口を叩いたがそれはこれからの戦いを楽観視しているからではなかった。
「厄介なことだぜ、全く」
「その厄介なことをやるのが俺達ロンド=ベルだってな」
アルフレドが笑って言う。
「そうじゃねえのか?」
「俺結構成り行きでここに来たんですけれどね」
ムウはアルフレドにも軽い調子で返した。
「それがどうしてか何時の間にやら」
「アークエンジェルもそうですけれど」
「おっと、そうだったか」
マリューの言葉にも応えた。
「何か気付いたらって感じで」
「そうだったよな。ヒイロ達が来てな」
「そうです。キラ君達も入れて」
「俺一回死にかけたし」
「俺一度船降りてるし」
トールとカズイがその側で言う。
「何か凄いことになってるよな」
「凄く濃い面々ばかりだしね」
サイとルナマリアにしてもかなり変わった人生になってしまっているのは感じていた。この前までオーブにいたのに今では北欧だ。そうも言いたくなる。
「それでティターンズはどうなったんだ?」
ディアッカがモニターに出て来た。
「美人の艦長さん、そっちじゃ何かわかってるかい?」
「あら、いきなりナンパかしら」
マリューはディアッカの美人という言葉に反応を見せてきた。
「デートのお誘いは戦いの後よ」
「あれっ、そうくるか」
ディアッカはマリューの言葉に目を丸くさせてきた。
「てっきり大人をからかうんじゃありませんって来ると思ったんだけれど」
「甘いわね、まだまだ」
マリューはまた笑ってそう述べた。
「大人の女は誘いは無下には断らないものよ」
「そりゃまた」
「今のところこちらにも報告はなしよ。そちらのニコル君からの報告よ」
「そうだったのかよ」
「あとはボルフォッグが出ているから彼の報告もあるわね」
「そうか」
「ついでにフェイちゃんも出てるわよ」
「あの姉ちゃんね」
「こら、少年」
そこに早速フェイの声が出て来た。
「そんな呼び方はよくないわね」
「おっ、いたのかよ」
「このフェイちゃんの耳は地獄耳なのよ。覚えておきなさい」
「こりゃまた」
「御姉様と呼びなさい。いいわね」
「御姉様か。何かなあ」
「何?」
「あのベルサイユがどうとかいう漫画みてえだな」
「あら、少女漫画も読むの」
「漫画は結構好きだぜ」
ディアッカはそれに応えて言う。
「他には花とゆめとかああいうのもな」
「あんたって意外と色々な趣味持ってるのね」
「そうかね」
「そういうところ気に入ったわ。よく見ればハンサムだし」
「よく見ればかよ」
異様に引っ掛かる言葉ではあった。
「それでね」
「ああ」
フェイは報告をはじめた。
「こっちも何もなしよ」
「そうか」
「敵が来ているのは確かだけれどまだ私達の前には来ていないわね」
「まあ時間の問題だろうな」
「そのうち目の前にドカッとおでましってわけだ」
ハッターが嬉しそうに言う。
「それで派手にバトルってわけだ」
「何かあんた楽しそうだな」
「おう!俺は何時でもハイテンションだぜ!」
「頼むぜ。あんたも頼りになるからよ」
「おう、行くぜブラザー!」
「・・・・・・・・・」
テムジンはそれに答えはしない。かわりにライデンが応えた。
「わかった」
「よっし!」
「めげないね、どうも」
ディアッカはそんなハッターを見て言う。今のところ彼等の前は穏やかであった。
だが次の日はそうはいかなかった。朝から警報が鳴りっぱなしであった。
「ティターンズ接近!正面からです!」
「数は!」
ブライトが報告したサエグサに問う。100
「三千程です」
「三千か」
ブライトはそれを聞いて顔を引き締めさせた。
「多いな」
「これまでになく」
「どうやらブルーコスモスのものも多数」
「そうだな。間違いない」
サエグサとトーレスに応えた。
「そのまま南進してきます。どうしますか?」
「決まっている、迎撃だ」
ブライトの考えはもう決まっていた。
「主砲発射用意!弾幕張れ!」
「はい!」
「マシンは前へ!一歩たりとも近寄せるな!」
すぐに指示が下る。そして前方に姿を現わしたティターンズの大軍との戦いに入ったのであった。
ティターンズの先鋒はあの三機のガンダムであった。いきなりカラミティが無差別に攻撃を放ってきた。
「おらおら!おめえ等邪魔なんだよ!」
前方にいるロンド=ベルに滅茶苦茶な攻撃を仕掛ける。そこにいたのはクワトロの小隊だったが彼等とて避けるのが精一杯であった。
「おい、何なんだよこの攻撃!」
ギュネイがその攻撃をかわしながら叫ぶ。
「出鱈目じゃねえかよ」
「あれがモビルスーツの火力!?」
クェスはスキュラの攻撃を何とかかわしていた。それから呟いた。
「何て火力。モビルアーマー以上よ」
「あいつをまずぶっ潰さないと話にならないな」
「そうね」
「じゃあ私がやってみる」
ロザミアのゲーマルクが出て来た。
「ロザミィ」
「火力なら多分負けてないから」
「いや」
だがそれはクワトロが制した。
「それには及ばん。あのガンダムは私が相手をする」
「クワトロ大尉」
「君達は他の敵に向かえ。いいな」
「了解」
三機はそれを受けて散開する。そしてそれぞれの相手に向かって行った。
「ああ!?何だこの赤いの」
オルガは目の前にいるサザビーの存在に気付いた。
「たった一機で俺とやろうってのかよ。なら!」
「強化人間そのものか」
クワトロはまた無差別に攻撃を仕掛けてきたカラミティを見て呟いた。
「だがその精神状態はより不安定か。かなり酷い強化をしたようだな」
「死ねよおっさん!」
そこに無数のビームが迫る。
「これでアウトだぜ!」
「そうはいかんよ!」
サザビーが消えた。
「なっ!?」
そしてファンネルが姿を現わした。上から一斉にオルガに襲い掛かる。
「うおっ!?」
ファンネルがあらゆる方向からカラミティに攻撃を仕掛ける。だがカラミティはその攻撃を受けつつも驚くべき身軽さで急所は外していたのであった。
「身のこなしも俊敏というわけか。どうして」
すっとサザビーが姿を現わしてきた。そして述べる。
「舐めた真似してくれるな、おい!」
オルガはそんなクワトロに対してさらに敵意を燃やしてきた。
「容赦はしねえ!殺してやるぜ!」
そしてまたクワトロにバズーカを浴びせる。それからまた無差別な攻撃に移り彼と戦っていた。
「やらせん!」
ドモンはレイダーと戦っている。そのミョッルニルを手で弾き返した。
「この程度の攻撃で!」
「ヘン!もうそっちの攻撃はわかってるんだよ!」
クロトは空中からドモンのゴッドガンダムを見下ろして叫ぶ。
「御前の動きなんか見え見えなんだよ!」
「何っ!」
「これならどうさ!よけられるか!」
変形して突撃してきた。ドモンからの攻撃は左右に舞いかわしていく。
「ほらほら!当たらないよ!」
「クッ!」
「それで!」
ゴッドガンダムの前で変形してきた。そして口からアフラマツダを放ってきた。
「抹殺!」
それで仕留めようとする。だがここでドモンはその身を消した。
「なっ!」
「ムンッ!」
分身した。それでレイダーのアフラマツダをかわしたのであった。
「チッ!まぐれにしちゃよくやるじゃないか!」
「まぐれではない!」
ドモンはクロトに対して言う。
「これぞ明鏡止水!それがわからぬ貴様に勝ち目はない!」
「明鏡止水!?じゃあ見せてもらいたいもんだね!」
その言葉がクロトを余計に激昂させた。
「それで僕の攻撃をかわせるってんならさ!」
間合いを放つ。それと同時にまたミョッルニルを放つ。
「撃滅!」
「させん!」
それも分身してかわす。二人の戦いも激化していった。
ヒイロは空でフォピドゥンと対峙していた。彼は冷静な様子でその緑のガンダムを見ていた。
「只のガンダムではないな」
「御前・・・・・・うざい」
シャニはヒイロのウィングゼロカスタムを見据えて呟いた。
「うざいから・・・・・・死ね」
そしてビームを放ってきた。それは曲がってヒイロに向かってきた。
「ビームを曲げてくるというのか」
「そのままくたばれよ」
クロトはヒイロに言う。その声には不気味な狂気があった。
「天使だか何か知らないけれどな」
「確かに動きはいい。だが」
ヒイロはそのビームを前にしても冷静なままであった。
「ゼロは見ている。御前の動きを」
後ろに退く。それでそのビームをかわした。
「そして御前のこともまた」
「かわしたってのかよ」
「ターゲット確認、ロックオン」
ビームライフルを構えながら言う。
「敵を撃墜する」
そしてライフルを連射する。数条の光が緑のガンダムに迫る。
だがシャニはそれを避けようともしない。ただそこにいるだけであった。
「甘いんだよ」
そう言って。すると命中した筈のビームが曲げられてあらぬ方向に向かっていった。
「ビームなんて意味ないじゃん」
「そうか。攻撃を受けた場合もビームを曲げられるのか」
ヒイロはそれを見ても特に驚いてはいなかった。淡々と述べただけであった。
「なら」
決断をすぐに下した。右腕にビームサーベルを抜く。
それから向かう。そこにシャニが鎌を携えて向かって来た。
そこにいるのはその三機だけではなかった。当然ながらティターンズのエース達も皆参加していた。そしてロンド=ベルに攻撃を仕掛けてきていた。
「おらおらぁっ!」
ヤザンがラムサス、ダンケルを連れてモビルアーマー形態のハンブラビで突っ込んでくる。そのままガンダムチームへ向かってきた。
「またあんたかよ!」
「ジュドー、元気そうじゃねえか!」
ジュドーに向けて叫ぶ。
「久し振りに会ったが血色のいい面してるな」
「あんたもやけに楽しそうだな」
「おう、すっげえ楽しいぜ」
自分でもそれを認める。
「あんまり楽しいからよ。ついつい調子に乗っちまうんだよ」
「そりゃいつものことじゃねえのか?」
「さてな」
言いながらハンブラビを旋回させる。そして有利な攻撃ポイントを探っていた。
「どっちにしろ俺は戦えればいいしな。御前ともカミーユともな」
「戦いだけなのかよ、あんたは」
「ヘッ、生憎他に趣味もなくてな」
軽口を叩いてきた。
「後は酒だな。それだけだ」
「そうなのかよ」
「おめえは相変わらず女の子周りにいて何よりだな」
「それって私達のこと?」
「そうらしいな」
プルとプルツーはそれを聞いてすぐに察した。
「そっちのお嬢ちゃん達は大きくなったら美人になるぜ。果報者がよ」
「あんたに言われると何か不思議な気分だな」
「そうかい。じゃあ果報者になりたかったらよ」
ここで言う。
「俺に勝つんだな。本気で行くぜ」
「俺だってだ」
ジュドーもヤザンに狙いを定めてきた。
「もっと楽しく遊びたいんだよ。悪いがあんたを倒させてもらうぜ」
「倒せるならな。じゃあ受けてみやがれ!」
急降下を仕掛けてきた。
「これをな!」
海ヘビを放つ。ジュドーはそれをビームサーベルで弾き返す刀でダブルビームライフルを放つ。ヤザンはそれをかわし急上昇する。そしてまた一撃離脱にかかるのであった。
ラムサス、ダンケルの相手はプルとプルツーがし他のガンダムチームの面々は彼等の下にいるモビルスーツ隊と戦っていた。ライラやカクリコン、マウアーにはエマやフォウが向かっていた。
そしてカミーユはジェリドと戦っていた。ジ=オの巨大なビームサーベルがゼータツーを襲う。
「まだだっ!」
カミーユは自身のビームサーベルでそれを受け止める。そのまま鍔迫り合いに入った。
「カミーユ、今度こそ貴様を!」
ジェリドは鍔迫り合いをしながらカミーユを睨みつけていた。
「まだ憎しみに支配されているのか!」
「五月蝿いんだよ!」
そう言ったカミーユを怒鳴り返した。
「御前は俺にとって壁だ!だから!」
「俺を倒すっていうのか!」
「そうだ!わかったら覚悟するんだな!」
彼は言う。
「ここが貴様の死に場所だ!」
「そのモビルスーツで!」
カミーユは今ジ=オを睨んでいた。
「御前は一体何を掴むというんだ!」
「上だ!」
ジェリドは言う。
「もっと上にいってやる!その為にもまず貴様だ!」
「くっ!」
二人の戦いも激化していく。ティターンズは数を背景に派手な攻撃を仕掛けてくるがロンド=ベルはそれを完全に防いでいた。やがていつものようにティターンズの損害が目立ってきていた。
「ジブリール殿」
ジャマイカンが彼に声をかけてきた。彼等は今後方で例によってスードリに乗り込んでいた。
「どうされますか」
「何、もうすぐだ」
ジブリールはその劣勢の戦局を見てもまだ冷静なままであった。
「もうすぐで全てが整う」
「全てがですか」
「そうだ」
彼は答えた。
「もうすぐだ。あれの用意はいいか」
「はい」
後ろにいる参謀の一人がそれに応えた。
「ようやく今整いました」
「よし、では投入しろ」
彼は言う。
「前線にな。主力モビルスーツ部隊は安全な場所にまで下がれ」
「はい」
「そしてあれで決める。いいな」
「あれとは何ですかな」
ジャマイカンはそれに問うた。
「何かあるようですが」
「巨人だ」
それに対するジブリールの言葉は一言であった。
「巨人!?」
「そうだ、巨人だ」
また答えた。
「それを使う。それでベルリンに入城するのだ」
「何かわかりませんが」
「何、すぐわかる」
ジブリールの血色の悪いその顔に笑みが浮かんでいた。彼には珍しい感情を露わにしたものであった。
「すぐにな。ではすぐに前線に向かわせろ」
「了解」
こうして何かが前線に向かった。今山が動いた。
それまで押していたロンド=ベルだがふと何かに気付いた。それは巨大な三体の巨人であった。
「!?何だあれは」
最初に気付いたのはカットナルであった。
「ブンドル、何か出て来たぞ」
「うむ。何か何処かで見たシルエットだな」
次にケルナグールもそれに気付いた。
「何だあれは」
「ふむ。ビグザムに似てるな」
ブンドルは前線にやって来る三体の巨人を見て述べた。
「だがビグザムはジオンのもの。ましてや陸上では使えぬ筈だが」
「そうだな。ではあれは一体何だ?」
「サイコガンダムでもないぞ」
「うむ。見たこともないモビルスーツだな」
「あれは一体」
「何だ、このプレッシャーは」
アムロはその三体の巨大なモビルスーツから得体の知れないものを感じていた。
「何かあるというのか、あれに」
「アムロ中佐、変ですよ」
ここでケーラが言ってきた。
「ティターンズのモビルスーツが距離を置いてきました。これは一体」
「距離をか。まさか」
アムロの鋭い勘がそれを教えていた。
「総員散会しろ!」
そしてすぐに指示を下した。
「あの巨大なモビルスーツから離れてだ!急げ!」
「!?了解」
まずはケーラがそれに頷いた。すぐに後ろに下がり間合いを取ってきた。
皆それに続いて散会し巨大モビルスーツと間合いを取る。するとそこに巨大な四門の主砲による砲撃と周囲へのビームでの一斉攻撃が行われた。
「なっ!?」
「何だこの攻撃は!」
皆何とか致命傷は避けたが殆どの者がダメージを受けていた。それは戦艦にも及んでいた。
「消火班急いで!」
クサナギでも同じであった。ユウナが強張った顔で指示を出している。
「負傷者の手当ても!そう、そこは負傷者を優先させて!」
慌てた様子だが指揮はわりかしまともだった。
「何やってんの!今そっちにキサカ一佐が行くから落ち着いて!」
「またえらいのが出て来ましたね」
アズラエルはその横で前にいるその巨大モビルスーツを見据えていた。
「まさかこんな隠し玉があるとは。驚きですよ」
「驚いている暇じゃないと思いますが」
ユウナは彼にそう述べた。
「もう一撃来たらまずいですよ」
「駄目だ、ありゃ」
トッドがモニターに出て来た。
「近寄れねえ。悪いが俺でもどうしようもねえ」
「君でも無理なの?」
「ああ。ショウもバーンの旦那もだ」
「参ったね。ダンバインでも無理だなんて」
「俺が行く!」
ダイゴウジが名乗り出てきた。
「ゲキガンアタックで一撃で仕留めてやる!」
「ヤマダさん、止めて下さい」
だがそれはすぐにルリに止められた。
「何故だ!」
「あのモビルスーツはそうそう倒せるものではないようです。ここでは迂闊な行動は控えるべきです」
「大丈夫だ!このエステバリスなら!」
「そもそもフィールドの外ですよ」
「何っ!?」
それを言われて動きが止まる。
「じゃあ下手に出たら」
「そうです。無残にもエネルギー切れで踏み潰されるでしょう」
「くっ、どうしようもないのか」
「駄目だ、俺のガンダムのヴェスパーじゃ効果はない」
ハリソンが通信を入れてきた。
「シーブック達は今は手が一杯だしな」
「そうですか」
「どうするのだ?バイタルジャンプで懐に飛び込もうか」
「俺も行くぜ」
クインシィとジョナサンが名乗りをあげてきた。だがルリはそれにも首を縦には振らなかった。
「それもいいですが」
「駄目なのかよ」
「はい、今は敵のことがよくわかっていません」
彼女は言う。
「ですから」
「わかった。じゃあそれは止める」
クインシィはそれに従うことにした。
「そういうことだな」
「お願いします」
「だが。どうするんだい?ホシノ少佐」
ユウナがルリに問うてきた。
「この状態でもう一撃受けたらまずいよ」
「はい、ここは一時撤退するべきです」
ルリはそう提案してきた。
「そしてベルリンに戻りそこで態勢を整えて」
「再戦か」
「そうするしかないと思いますが」
「そうだな」
ブンドルもそれに賛成してきた。
「マドモアゼル=ルリの言う通りだ。ここは撤退すべきだ」
「おい、敵を前にしてかよ」
甲児がそれに反対を述べる。
「あんな奴俺だったら」
「ムッシュ=カブト。無理は禁物だ」
だがブンドルは彼に対してこう述べた。
「それはわかっていると思うが」
「無茶は承知なんだよ」
だが甲児は甲児である。こう言い返した。
「ここでやらなきゃよお」
「駄目だ、甲児君」
しかしそれは鉄也が抑えた。
「皆ダメージを受けている。ここは下がるべきだ」
「鉄也さん」
「鉄也君の言う通りだ」
大介も言ってきた。
「残念だがここは撤退しよう。いいな」
二人に言われては甲児も聞くしかなかた。止むを得なくこう言った。
「わかったよ。じゃあベルリンまでだな」
「はい。では総員撤退です」
「了解」
こうしてロンド=ベルはベルリンにまで撤退することになった。後には勝ち誇るジブリールがいた。
「どうだね、圧倒的ではないか」
彼はグラスにあるワインを手にこう述べていた。
「デストロイガンダムは」
「確かに」
ジャマイカンもそれには頷いていた。
「これでベルリンまで向かう」
「オスロを拠点としてですか」
「そうだ。全軍に伝えてくれ」
そして言う。
「市民や施設には手を出すことのないようにな」
「またですか」
「彼等を害することはない」
ジブリールはここで実業家としての考えで動いていた。
「彼等は財産だからな」
「はあ」
「わかったな」
「わかりました。それではそのように」
「そしてベルリンもな」
彼は言う。
「出来れば無傷で手に入れたい」
「あそこは上手くいきますかどうか」
「いかせたい。ベルリンは見事な街だ」
「見事な」
「そうだ。あの辺りの工業地帯も魅力がある。だからこそ」
「無傷でと」
「わかったな。ではオスロを占領した後でデンマークからドイツに入る。いいな」
「了解」
勝利を収めたティターンズはドイツに向かうことを決定した。ロンド=ベルはそれに対してすぐにベルリンにまで下がっていた。
「ドイツね」
アスカが何故か不機嫌な顔をベルリンの街に向けていた。
「まさか故郷の一つがこんなに嫌なものに見えるなんてね」
「どうしたんだ?」
ライがそれに問う。
「戦いなら慣れていると思うが」
「思い出すのよ」
その不機嫌さを維持したまま言う。
「あの変態忍者をね」
「わからないわ」
レイは後ろでそれを聞いて呟く。
「あんな凛々しい方を」
「凛々しい、ねえ」
ジュンコがそれを聞いて難しい顔をしていた。
「ちょっと違うんじゃないかな、それは」
「格好いい」
「それもちょっとね」
ジュンコはそれにも否定的だった。
「違うと思うよ」
「違うも何もあれは人間じゃないでしょ」
アスカは彼がマスターアジアと同じ位嫌いであった。
「サイボーグか何かでも驚かないわよ」
「サイボーグでもか」
「ええ・・・・・・あっ」
宙に気付いた。
「いや、いいけれどな。ただ」
「御免なさい、ちょっとね」
「あれはサイボーグではないと思うぞ」
「そうなの」
「いや、どうかな。とにかく俺にもよくわからない」
宙は言う。
「だが普通じゃないのは確かだな」
「そうね。それは確実ね」
「また来て下さるかしら」
レイは何かを期待していた。
「あのお姿で」
「何かレイの男の趣味って変よね」
クリスが横で難しい顔をしていた。
「どうにも」
「まあ人の好みはそれぞれだからね」
それに対するバーニィの意見は大人のものであった。
「実際マスターアジアに憧れてる人も多いだろうし」
「私は何か拒否反応あるけれど」
「それでもだよ。格好いいって思う人は思うんじゃないかな」
「そういうものなのね」
「うん、そうだよ」
「それはそうとしてよ」
今度はリュウセイが言った。
「またえらく厳しい戦いになりそうだな」
「そうだな」
イルムがそれに頷く。
「あの三機のデカブツはな。そうそうヤワじゃねえな」
「他にもあの三機のガンダムにティターンズの主力。厳しい戦いになるわよ」
「何、厳しい戦いには慣れている」
レイザムはマオにそう返す。
「いつものことだからな」
「ではいつも通りだな」
ゼンガーは前を見据えていた。
「目の前の敵を斬る。それだけだ」
「そういうことだ。では」
「迎え撃つとしよう」
彼等には迷いはなかった。だがキラはそうではなかった。
「大丈夫かな、今度の戦いは」
サイ達と一緒の場で暗い顔で呟いていた。
「皆残れるよね」
「少なくとも残る努力はするよ」
カズイがそれに応えた。
「俺達だって死にたくはないし」
「そうだよな。本当に拾った命だし」
トールが次に言う。
「折角だから最後まで真っ当したいよ」
「そうよ。勝手に死んだら許さないから」
ミリアリアがそれに応えて言う。
「いいわね」
「わかってるよ」
「やれやれ。二人だけで話が収まってるよ」
カズイはそんな二人に顔をやって苦笑いを浮かべている。いつものにこやかな仲間達であった。
「けれど」
ここでサイが言う。
「今度の戦いが厳しいのは事実だろうね」
「うん」
キラがそれに頷く。
「だからなんだよ」
「ベルリンに到着するまであと二日ってところだろうな」
カズイが述べた。
「その間にシンとレイも復帰するし」
「少しはましだと思うけれどね」
トールもそれに同意した。
「けれどシンも大丈夫かしら」
しかしミリアリアはそうではなかった。
「最近の彼変に尖ってるし」
「確かにな」
サイがそれに頷く。
「前からそうだったけれど最近特に」
「牢の中でも相当荒れてるらしいね」
「ああ、ディアッカが言ってたね」
カズイとトールが続く。
「随分荒れて暴れかけたりで」
「だからよ。あの子大丈夫かしら」
「難しいだろうな」
サイはそれに応える。
「今の彼は制御が利かない。若しここで何かあったら」
「最悪の事態になるかも知れない」
キラはそれを聞いてポツリと呟いた。
「最近彼のことがわかるような気がするんだ」
「キラ・・・・・・」
「彼も僕と同じなんだよ」
「そうなのか?」
トールはその言葉にはどうにも賛同できかねていた。
「俺はそうは思わないけれどな」
「ううん、それってキラにしかわからないものなのかも」
だがミリアリアがそれをフォローする。
「はじめてガンダムに乗ってすぐに戦ってきた相手だから。違う?」
「そうかも知れない」
キラは俯いてそれに応じる。
「彼が僕をどう思ってるのかはわからないけれど」
「ザフトのトップエースか」
サイは上を向いてそれを言った。
「どうなるのかな、これから」
「けれどそれはさ」
カズイが突っ込みを入れる。
「俺達じゃどうしようもないよ」
「そうなんだよな」
トールがそれに頷く。
「俺達は何かを言うことはできるけれど最後に決めるのは」
「彼なのよね、結局は」
「誰だってそうなんだよ」
サイはそれをよく理解していた。
「最後に決めるのは自分なんだよ」
「自分・・・・・・」
「キラ、御前だってそうだったんだろう?」
サイは今度は言葉をキラに向けてきた。
「自分で皆を守るんだと決めてここに戻って来たんだろう?」
「うん」
キラはそれに頷いた。
「ラクス嬢に言われたけれどそれは自分で決めたよ」
「それと同じなんだよ、結局は」
サイはまた言う。
「誰だってさ。俺達だって皆ここで戦うって決めて今ここにいるし」
「そうだよな。俺一度は去ろうって決めたけれど」
カズイには強く思い当たる話であった。
「やっぱりさ」
「そうなんだ。結局最後は自分で」
「決めるしかないんだね」
「ああ、御前と同じさ」
「シン・・・・・・」
キラは最後にシンの名を呟いた。ベルリンに今自由の天使と運命の天使が舞おうとしていた。あがらえぬ運命に束縛された少女を自由の剣で解放する為に。今彼等は運命を前にしていた。

第百二十六話完

2006・11・23  
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