ハイスクールD×D 万死ヲ刻ム者
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第五十一話 将来
一悶着あった後、サイラオーグはスタッフを呼び集めて、待合室の修復をさせた。そしてソーナやその眷属達とも合流をするとそれぞれ自己紹介をし、始まるまで席について待っていた。
(グレモリーがルシファー。シトリーがレヴィアタン。アスタロトがベルゼブブ。グラシャラボラスがアスモデウス。大王がバアル。大公がアガレス。今のこの場に六家がここ集っている。すごい組み合わせだ)
闇慈が考えていると一誠は緊張してきたのか表情を強張らせる。ここで匙が一誠に喝を入れる。
「おい、兵藤。間抜けな顔をみせるな」
「だってよ、上級悪魔の会合だぜ?緊張するじゃないかよ、皆強そうだし」
ここで闇慈も加わる。
「何言ってるの、イッセー。イッセーは赤龍帝なんだよ?もっとドンとしてた方が良いと思うよ?」
「黒神の言うとおりだぜ。眷族悪魔はこの場で堂々と振る舞わないといけないんだ。相手の悪魔たちは主を見て、下僕も見るからな。だからお前がそんなんじゃ、先輩にも失礼だぞ。ちったぁ自覚しろ。お前はグレモリーの眷属で、赤龍帝なんだぞ?」
匙が一誠に説教染みたことを言っていると使用人らしいが本会場の扉から出てきて、若手悪魔達と死神は中に案内された。若手悪魔たちを見下すように作られた高い所に置かれた席には悪魔のお偉いさんが座っており、もう1つ上の段にはサーゼクス、隣にはセラフォルーが座っていた。その隣にはベルゼブブとアスモデウスも座っていた。
そしてリアスを含めた若手悪魔6人が一歩前に出た。闇慈が気絶させたゼファードルも復活していたが、傷は完治していないのか顔を少し歪ませていた。
「よく集まってくれた。次世代を担う貴殿らの顔を改めて確認するため、集まってもらった。これは一定周期ごとに行う若き悪魔を見定める会合でもある」
初老の男性悪魔が手を組みながら威厳の声で言い、ヒゲを生やした悪魔が・・・
「早速やってくれたようだが・・・」
と皮肉げに言った。闇慈は自分のやったことに後悔はなかったように顔を変えることはなかった。
「キミ達六名は家柄、実力共に申し分のない次世代の悪魔だ。だからこそ、デビュー前にお互い競い合い、力を高めてもらおうと思う」
「我々もいずれカオス・ブリゲードとの戦に投入されるのですね?」
サーゼクスの言葉にサイラオーグが尋ね返したが・・・
「それはまだ分からない。だが、出来るだけ若い悪魔逹は投入したくはないと思っている」
「何故です?若いとはいえ、我らとて悪魔の一端を担います。この歳になるまで先人の方々からご厚意を受け、なお何も出来ないとなれば・・・」
「サイラオーグ、その勇気は認めよう。しかし無謀だ。何よりも成長途中のキミ逹を戦場に送るのは避けたい。それに次世代の悪魔を失うのはあまりに大きいのだよ。理解して欲しい。キミ逹はキミ逹が思う以上に、我々にとって宝なのだよ。だからこそ大事に、段階を踏んで成長して欲しいと思っている」
サーゼクスの言葉にサイラオーグは一応の納得をしたが、不満がありそうな顔をしていた。しかし闇慈は若手悪魔を心配するサーゼクスの言葉に感心を抱いた。
「最後にそれぞれの今後の目標を聞かせてもらえないだろうか?」
サーゼクスの問いかけにはサイラオーグは一番最初に答えた。
「俺は魔王になるのが夢です」
一番早く。そして迷い無く言い切ったサイラオーグ。その目標にお偉いさん達も感嘆の息を漏らした。
「大王家から魔王が出るとしたら前代未聞だな」
「俺が魔王になるしかないと冥界の民が感じれば、そうなるでしょう」
そしてそれに続いてリアスも今後の目標を言う。
「私はグレモリーの次期当主として生き、そしてレーティングゲームの各大会で優勝する事が近い将来の目標ですわ」
リアスの目標を初めて聞いたイッセーは、リアスに使える眷族としてリアスを支援していくことを心に刻み込んだ。闇慈も出来れば『遊撃手』としてリアス達を守っていこうと思った。そして次々と若手悪魔達が夢や将来の目標を言って行き、最後のソーナは・・・
「冥界にレーティングゲームの学校を建てる事です」
「レーティングゲームを学ぶ所ならば、既にある筈だが?」
「それは上級悪魔と一部の特権階級の悪魔のみしか行く事が許されない学校の事です。私が建てたいのは下級悪魔、転生悪魔も通える分け隔ての無い学舎です」
身分に囚われない誰もがレーティングゲームを学ぶ事の出来る学校を作る。その夢に闇慈、一誠はすばらしい夢だと感心し、匙は誇らしげにしていたが・・・
『ハハハハハハハハハッ!』
お偉いさん達の声が会場を支配し、嘲笑うかのように次々と口にし始めた。
「それは無理だ!」
「これは傑作だ!」
「なるほど!夢見る乙女と言うわけですな!」
「若いと言うのは良い!しかし、シトリー家の次期当主ともあろう者がその様な夢を語るとは。ここがデビュー前の顔合わせの場で良かったと言うものだ」
闇慈は何故ソーナの夢がここまで馬鹿にされるのか疑問を抱くと、祐斗に尋ねた。
「祐斗。どうしてあの人たちはソーナ会長の夢をあそこまで否定するの?」
「今の冥界がいくら変わりつつあるとしても、上級と下級、転生悪魔、それらの差別はまだ存在する。それが当たり前だと未だに信じている者達も多いんだ」
闇慈はその事を聞くとかつて戦ったライザーのことを思い出していた。
(あいつらライザーと同じ、身分差別を食い物にしている石頭達か・・・)
闇慈は少し身分が高いことに付け上がっているその態度に段々怒りを抱え始めた。
「私は本気です」
セラフォルーもうんうんと力強く頷いていたが、お偉いさんは冷徹な言葉を口にする
「ソーナ・シトリー殿。下級悪魔、転生悪魔は上級悪魔たる主に仕え、才能を見出だされるのが常。その様な養成施設を作っては伝統と誇りを重んじる旧家の顔を潰す事となりますぞ?いくら悪魔の世界が変革の時期に入っていると言っても変えて良いものと悪いものがあります。全く関係の無い、たかが下級悪魔に教えるなど・・・」
その一言に匙は黙っていられなくなった。
「黙って聞いてれば、なんでそんなに会長の・・・ソーナ様の夢をバカにするんスか!?こんなのおかしいっスよ!叶えられないなんて決まった事じゃないじゃないですか!俺達は本気なんスよ!」
「口を慎め、転生悪魔の若者よ。ソーナ殿、下僕の躾がなってませんな」
「・・・申し訳ございません。あとで言ってきかせます」
「会長!どうしてですか!この人達は会長の、俺達の夢をバカにしたんスよ!どうして黙っているんですか!?」
「サジ、お黙りなさい。この場はそういう態度を取る場所ではないのです。私は将来の目標を語っただけ。それだけの事なのです」
「夢は所詮、夢。叶うことと叶わぬことがありますぞ。ましてや下級悪魔如きがレーティングゲームを学ぶために行き来する学校など・・・」
「下らないな・・・」
「なんだと?」
お偉いさんの言葉を遮り、闇慈が声を上げた。
そして踵を翻すと出入り口の扉に向かって歩き始めた。祐斗はそれを引き止めるように尋ねる。
(すみません。今は執事の言い付けを破らせてもらいます)
「闇慈君!?どこに行くつもりなの!?」
「何処にって、グレモリーの本邸に戻るだけだよ。ここに居続けると下手したら、そこに居る石頭達に・・・『死』を見せる事になるかもしれないからね。大事になる前に引き取らせて貰うよ」
「貴様・・・今我らの事を『石頭』と言ったか?グレモリーの執事はしつけがなっていませんな」
お偉いさん達が闇慈の言葉に怒りの表情とドスの効いた声を出したが、闇慈は構わずに続ける。
「さっきから聞いていれば、他人を見下す、人の夢を侮辱する、伝統だとか誇りだとか古臭い考えを持ち出し自分がいかに正しいか他人に押し付け、意見を聞こうとしない。まあ自分の身分左右されなかったサイラオーグさんやリアス先輩の夢はとやかく言わなかったみたいですが、そんなことしか頭の中に入っていない人たちを『石頭』と呼ばずになんと呼べと良いんですか?いや。寧ろ将来のことが心配になってきましたね。お偉いさんがこんな人達じゃ、冥界の将来が気になって仕方ないですね」
「貴様ァ!執事の分際で我らを侮辱し、意見するつもりか!?」
お偉いさんの一人が耐え切れなくなったのか勢い良く立ち上がり、闇慈を指差しながら怒声を上げた。
「僕は自分の考えを述べただけです。それは貴方の勝手な解釈でしょう?結論から言うと僕は人を苛む人が居るところに居たくない。それだけです・・・そして」
闇慈が真紅の魔眼と魔力の覇気を立ち上がったお偉いさんに向けるとその人物もゼファードルの眷属同様に泡を吹きながら失神してしまった。
「っ!?」
他のお偉いさんは何が起こったのか分からないようだった。
「あまり俺を怒らせるなよ?長生きしたかったらな・・・」
闇慈が静かに呟き、扉に手をかけると・・・
「アンジ君の言う通りだよ!ならなら!うちのソーナちゃんがゲームで見事に勝っていけば文句も無いでしょう!?ゲームで好成績を残せば叶えられる物も多いのだから!」
セラフォルーが怒りながら提案してきた。
「もう!おじさま達はうちのソーナちゃんをよってたかっていじめるんだもの!私だって我慢の限界があるのよ!あんまりいじめると私がおじさま達をいじめちゃうんだから!」
セラフォルーの涙目でお偉いさんに物申した。お偉いさんたちは反応に困っていたが、ソーナは恥ずかしそうに顔を手で覆っていた。
(ありがとうございます、セラフォルー様)
闇慈がセラフォルーに笑顔を送っていると、セラフォルーもそれに気付いたのかピースで返してくれた。ここでサーゼクスがリアスとソーナに提案を出した。
「丁度良い。ではゲームをしよう。リアス、ソーナ、戦ってみないか?」
2人は顔を見合わせ、目をパチクリさせて驚くがサーゼクスは構わず続ける。
「元々、近日中にリアスのゲームをする予定だった。アザゼルが各勢力のレーティングゲームファンを集めてデビュー前の若手の試合を観戦させる名目もあったものだからね。だからこそ丁度良い。リアスとソーナで1ゲーム執り行ってみようではないか。対戦の日取りは、人間界の時間で8月20日。それまで各自好きに時間を割り振ってくれて構わない。詳細は後日送信する」
サーゼクスの決定により、リアスとソーナ会長のレーティングゲームが開始される事になった。こうして若手集会はこれで終了となった。
~~~~~~~~~~~~
「アンジく~ん♪」
「セラフォルー様」
集会が終わり、一人で考え事をしているとセラフォルーが闇慈の元に寄ってきた。
「今日はありがとう♪ソーナたんのこと庇ってくれて嬉しかったよ♪」
「僕は自分の意見を述べただけです。気にしないで下さい。あと・・・ソーナ会長は?」
「大丈夫だよ。酷く言われていたみたいだけど、ソーナたんは何時も通りに戻ってたよ♪さっきだってせっかくお姉ちゃんが心配で来たのに『大衆の前であんな言い方は控えてください』って怒られちゃったんだよ?」
「あはは・・・」
闇慈はそのことに苦笑しか出来なかった。
「セラフォルー様。ソーナ会長に伝言をお願いできませんか?僕には時間がないので」
「良いよ♪何かな?」
「『誰にも他人の夢をけなす権利はありません。そして誰にも夢を見る権利があります。ソーナ会長は自分の信じた道・・・あの素晴らしい夢を追いかけ、そして叶えてください』と。では失礼します」
闇慈は執事挨拶をすると部員の元に戻っていた。
「アンジ君って本当に素敵な男性だね。本当に惚れちゃいそうだよ♪」
セラフォルーはその姿を笑顔で見送ると自分もその場から居なくなった。
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