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八条学園騒動記

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第二百四十八話 記事その六


「また別のものなのよ」
「じゃあそれで?」
「いいのよ、それで」
 実際にそうだと言うナンシーだった。
「そういうことでね」
「そうなんですか」
「そうよ。私にとって貴方はナイトだから」
「騎士ですか」
「まあ私はね」
 自分のことも話す。するとだった。
 あまりはっきりしない笑顔になってだ。こんなことを言うのだった。
「お姫様じゃないですけれど」
「いえ、それは」
「違うっていうのかしら」
「はい、先輩は僕にとっては」
 真剣な面持ちでだ。彼はナンシーに話す。
「お姫様です」
「プリンセスなのね」
「そうです、プリンセスです」
 あくまでだ。そうだというのだ。
「僕から見ればそうです」
「ううん、そうは思わないけれど」
「多分。これも」
「主観?」
「そうだと思います」
 まさにだ。それだというのだ。これが後輩の言葉だった。
「僕の主観と先輩の主観って違うんだと思います」
「そうね。人それぞれだから」
「ですから。僕から見た先輩は」
「プリンセス」
「はい、プリンセスなんですよ」
 後輩は今度は笑顔で話す。
「本当にそう思います」
「あまり可愛くないプリンセスね」
「それもとんでもないですよ」
 本気でだ。うわずった声で話す後輩だった。
「先輩は可愛いですよ」
「また主観なのね」
「そうなりますね」
「そうね。主観ね」
「それですね」
 二人で笑顔になってだ。それでこう言い合うのだった。
 主観と主観だ。しかしそれは衝突ではなくだ。融和であった。
 その融和の中でだ。二人は話していくのだった。
「僕達ってその主観で」
「御互いを見て」
「客観的に見たらどうなんでしょうか」
 後輩はこんなことも言った。主観性となればその対比は客観性になる。その客観性においてはだ。二人はどうかというのである。
「僕達って」
「客観的にはね」
「はい、どうなるんでしょうか」
「だから。それはね」
 その客観的という言葉にはだった。ナンシーは顔を曇らせた。
 そしてだ。こう彼に言うのだった。
「なしにして」
「なしですか」
「だから。見られたくないから」
 それでだというのだ。なしにして欲しいというのだ。
「そういうのはね」
「誰にもですね」
「だから。その話はね」
「はい、わかりました」
 後輩はナンシーの今の言葉に素直に頷いた。
「それじゃあそれで」
「そうしてね。後ね」
「後は?」
「主観でいいのよ」
 それでだ。いいというのである。
「恋愛って主観だから」
「それに基づくものだからですか」
「そう、それでいいのよ」
 これがナンシーの恋愛への考えだった。それを話すのだった。
「別にね。そういうことでね」
「ですか」
「そう。それにしてもね」
 ナンシーはここまで話してだった。ふと話題を変えてきたのだ。 
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