八条学園騒動記
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第三十四話 彼女ゲット!その二
春香のそんな心配をよそに浮かれるカムイと嫉妬の炎に燃える洪童。傍目には誰にもわかる喜劇であった。だがこれは唯の喜劇ではなかった。
その合コン当日になった。カムイは授業が終わるといそいそと教室を後にする。
「じゃあな」
やけにめかしこんで一張羅を着ている。それで学校を後にする。
「いよいよだな」
「ああ」
クラスメイト達はこれから壮大な失敗がはじまると見ていた。しかしカムイだけはそうは思っていなかった。洪童もそれは同じであった。
「コックリさんコックリさん」
今度は教室で一人コックリさんをしている。何かを全く別のものを見ていた。顔はやつれて目の下にはクマができている。それがかなり不気味であった。
「あいつはあいつで」
「妙なことになってるなあ」
「我が望み適え給え」
「コックリさんってそんなのだったっけ」
「さあ」
とりあえずそうではないだろうとは思っている。だが洪童には誰も言うことなく話はそのまま進むのであった。
カムイは後輩達と待ち合わせていた。喫茶店で紅茶を飲んでいる。
暫くして彼等が来た。すると明るい声をかける。
「よお」
「はい、早いですね」
「もういたんですか」
「おっ、早いか」
時計を見れば二十分も早い。彼はあまりにも急いで来たので時間すらわからなかったのだ。
「そうだな、早いな」
「そうですよ」
「まあいいだろうが」
しかしカムイはそんなことは気にはしなかった。だから言う。
「行こうぜ、いいな」
「わかりました」
「じゃあカラオケボックスに」
カムイと後輩達は店を出る。カムイは歩きながら彼等に問うのであった。
「それでよ」
「はい」
後輩達が彼の言葉に応える。
「その女の子ってどんな娘なんだ?」
「留学生です」
「留学生か」
カムイはそれを聞いてふと考える顔になった。それで問う。
「じゃああれか?ハサンかどっかか?」
「マウリアですけれど」
「ふうん、マウリアねえ」
「ええ」
彼等は答える。
「別にいいですよね」
「ああ、構いやしねえ」
楽しそうに笑ってそう述べた。
「可愛ければ誰でもな、いいんだよ」
「それを聞いて安心しました」
「これで駄目だって言われたらどうしようって思ってましたから」
「安心しろ、俺は寛大なんだよ」
得意満面で語る。
「誰に対してもな。仏のカムイさんって呼ばれてるんだよ」
これは限りなく嘘である。彼は常にカップルに嫉妬して洪童と二人であれこれと訳のわからないことをしている。二年S1組のもてない同盟として悪名高かったのである。
「言っておくがな」
「何ですか?」
「俺は歌うぞ」
ニヤリと笑ってきた。
「これでも歌には自信がある」
「そうだったんですか」
これは本当だ。いつも一人で怨みの歌を歌っているからだ。洪童は怪しげな儀式を行う。二人でそれぞれ芸風が違っていたりする。
「女の子にも思いきり聴かせてやるぜ」
「じゃあ楽しみにしてます」
「ここです」
話しているうちに目の前に七階建ての大きな建物が現われた。
「ここの三階に部屋取っていますんで」
「先に入りましょう」
「おう。それでな」
カムイは上機嫌で後輩達にまた聞いてきた。
「その女の子はどうやって知り合ったんだ?」
「委員会で」
「って御前等何いいんだ?」
「厚生委員会です」
そうカムイに言う。
「新しく委員になった先輩が合コンに参加したいって言っていて」
「それでだったんですよ」
「成程。そういう理由か」
そこまで聞いて腕を組んで頷く。
「それでもいいですよね」
「ああ、いいぜ」
彼も別に断る理由はない。
「じゃあ入るぞ」
「わかりました」
こうして彼等は店に入った。そしてあれこれと飲み物や食べ物を頼んでいたところで女の子達がやって来たのであった。
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