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八条学園騒動記

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第三十三話 動物以下その四


 教室に入ると午後の授業がはじまる寸前であった。しかし何か事故が起こっていた。
「どうしたんだ?」
「ああ、帰って来たんだ」
 ロミオが二人に顔を向けて言った。
「実はさ、大変なことになったんだ」
「大変なこと?」
「うん、ほら見てあれ」
 見ると教室の窓が割れていた。そこからバスケットボールが入り込んできていた。
「何、あれ」
「急にさ。ボールが飛び込んできて」
 ロミオはジャッキーにも言う。
「それでね。窓ガラスが割れてさらに悪いことにその側にいたカムイの頭に当たって」
 その側にカムイが前のめりに倒れていた。後頭部に大きなたんこぶを作って倒れている。
「この有様なんだ」
「犯人がいるな」
 テンボはそれを見て言った。
「これは計画犯罪だ、一見事故に見せかけた」
「そうだったんだ?」
「そうよ、そうに決まってるわ」
 ジャッキーも力説する。懐疑的な顔をするロミオはもう目に入っていない。
「カムイは嫌われる理由だが」
 テンボの迷推理が早速はじまった。バスケットボールを見て言う。
「部活だな、カムイはバスケ部だ」
「そうね、それが重要よ」
 ジャッキーも相槌を打つ。そのうえで二人は推理を続ける。
「カムイにレギュラーを奪われるか何かで嫉妬を覚えた奴がやったんだ」
「そいつが犯人よ」
「そう、犯人は」
 奇想天外な推理がここで炸裂した。
「御前だ!」
「はぁ!?」
 フックが指差されて思わず声をあげた。
「俺バスケ部じゃないんだけれよ。何でそうなるんだ?」
「犯人は意外なところにいるからだ」
「意外も何もそれまでの推理と全然関係ねえだろうが」
「何処をどうやったらフックが犯人になるのかしら」
「全然読めないね」
 ジュディもロミオもこれには呆れ果てていた。
「だからだ。犯人は人の裏をかく」
「だからあんたなのよ」
「俺ずっと教室にいたんだけれどよ」
 フックは自分のアリバイを言う。
「で、外から飛び込んできたこのボールはどうやって投げ込んだんだ?超能力か仕掛けでもしてかよ」
「そうだ!」
 テンボはその通りだと断言してきた。
「フック、御前この前オカルト雑誌読んでいたな」
「まあな」
 それは認めた。
「アトランティスな。読んでたぜ」
「それだ。御前はそれで超能力を身に着けてそれで外からカムイを狙った」
「間違いないわね、それで」
「あのな、御前等」
 呆れ果てた声で二人に対して言う。
「そんなもんできたら今こうしてここにいるかよ」
「それがカモフラージュだ」
 テンボの奇天烈な推理は続く。
「違うか?それで」
「その推理が当たっていたら凄えよ、かえって」
 フックはそう反論する。
「シラを切るか」
「いい度胸ね」
 皆何と言っていいかわからない。完全に呆れていた。
「犯人誰だと思う?」
「少なくともフックじゃないのは確かに」
 ジュディはロミオにそう囁いた。
「間違いなく」
「そうだね」
 それだけは確実にわかる。誰もテンボとジャッキーの推理が当たっているとは思ってはいないのがミソである。
「さて、ネタはあがった」
「あたし達を甘く見ない方がいいわよ」
「・・・・・・御前等ネタじゃねえよな」
 フックは二人が酔っているのではなかろうかとさえ思った。しかしそうではなかった。
「一応聞くけれどよ」
 その間にマーフィはこっそり教室を出ていた。そのままグラウンドへ行く。
「何言っているんだ、フック」
「あたし達は何時だって大真面目よ」 
 本気であった。恐ろしいことに。
「わかってないようね」
「ああ、大真面目だったのかよ」
 フックも最早何と言っていいのか困ってしまった。 
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